第3話「ハローワークの検索機」

「なぁ、よしの、俺、パソコンを習おうかと思っているんだ」


 武田の自宅。借家で妻と二人で暮らしている。よしのは鉄男の妻である。


「あなたがパソコン? 何に使うの?」

「今はパソコンが出来て当たり前みたいな時代じゃないか、俺もやってみたいんだ」

「別にいいけど……」


「失業保険の受給中は、職業訓練ってのを受けることが出来て、パソコン教室もあるんだ! しかも、授業料はタダ! 無料で三ヶ月パソコンを習うことができるんだ!」


「三ヶ月もパソコンを習ってタダ? そんな馬鹿な……体験授業で三日じゃないの?」

「これは、国がやっている就職の為の支援なんだ。俺がパソコンを習うのは今しかないと思うんだ、なぁ、いいだろ、行っても……」


「あたしは、別にかまわないわよ。家でゴロゴロされるよりかえっていいわ」

「そうか! よし、やってみるか……」


 ❃


 失業保険受給中は月2回以上の職業相談をハローワークで受けないと行けない。武田は、またハローワークに出かけた。


 ハローワークの玄関前には、青いベンチコートを着たパソコンの職業訓練のチラシを配る人がいた。

 あれっ!? この間の若い女の子じゃない……今日は、オジサンだ。


「職業訓練のお知らせです。パソコンを習いませんか?」

 チラシを配るオジサンに近寄る。

「あの……パソコンの授業は難しいんですか?」

「これは、基礎を教えるコースなので難しくないですよ。ローマ字で文字入力はできますか?」

「……文字入力くらいなら」

「文字入力ができれば授業についていけると思いますよ」

「そうですか、僕みたいな歳でも大丈夫でしょうか?」

「えっと、ですね……毎回ばらばらなんですけど50歳以上でパソコンを習いに来る人は多いです。かえって若い人は基礎的なことは小・中学校で教えるので職業訓練のパソコン教室に来る人は少ないです」


「初心者でも文字入力ができれば授業についていけるんですか?」

「大丈夫だと思います。授業が始まるまで、まだ1ヶ月以上ありますから、できればタイピングの練習をしておくといいですよ」


「タイピングとは、何でしょうか?」


「あぁ、文字入力の事です。職業訓練はローマ字でやりますから、ローマ字での文字入力を授業開始までに練習しておくと授業が楽だと思います」

「そうですか、タイピングね……」



 ハローワークに入り、パソコンの検索機で求人を見る武田。

 これ、どうやって使うんだ?

 どうやったら求人を見れるんだ?

 求人情報はパソコンを使って自分の希望の仕事を探すが、情報量が多いので、まったくパソコンができない人には難しい。

 

 検索機の使用は30分まで、武田は求人情報をまったく見ることができずに時間になってしまった。

 パソコンが使えないと求人情報も見れないのか!?

 これは、やはりパソコンを習う必要があるな……

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