もふもふ天国

雨夏

もふもふ

「んん~!気持ち~!」


背伸びをしながら窓を開く女の子。


髪は黄色く腰にまで届き、胸は…巨乳、脚もスラっと長く、表情は穏やかににこにこ。


この女の子、メイこそがこのお話の主人公なのである。


「今日ももふもふ広場行きますか!」


メイは何やら準備をはじめ、したくが終わると「ふふっ」と笑いながら窓から外に出た。


親にはヒミツだからこそ、笑みがこぼれるのもしかたがない。


「わあ~ひつじさん!待って~マーヤ!」

「メェェェ‼」


メイは真っ白でいかにももふもふなひつじを見つけ、追いかけ始めた。


マーヤと呼ばれたひつじはメイから逃げていく。


実はマーヤ、前にもメイに見つかり、もふもふされまくる地獄の経験者なのだ。


おそらく、今のマーヤの思っていることはこんなものだろう。


(いやー‼くんなメェェ!おっと、あそこに他のひつじがいるメェ。なすりつけてやるメェェ‼)


「しっしっし」とでも言いそうなほど笑うマーヤに首をかしげながらメイは追いかけ続けた。そして、もう一人のひつじを見つける。


「わ~!かわい~!もふもふ~!」

「メェェェェェェェェ‼‼」


むなしく響くひつじの絶叫。


見事マーヤの作戦は成功。メイは別のひつじにもふもふ地獄を始めた。


「メェェ!」

「あなたの名前はマーチよ!オスでしょう?え~、なんで逃げようとするの?めっ、よ!」


逃げ出そうとするひつじにマーチと名付けたメイは、マーチを取り押さえる。


オスだと判明させるにはあれが必要。それをされたマーチはもう死にたいほど恥ずかしい。


さらにメイはマーチに抱き着いた。


「もふもふしてるわね!あったかいし、ここで眠れそう……」


目をつむりながら力強くマーチを抱きしめるメイ。


メイの巨とも呼ばれる胸を押し付けられ、マーチは夢心地だ。なんてったって、オスなのだから。


「メェ」

「むにゃむにゃ……」


とろんと眠りだしたメイをマーチは優しく見つめる。


………が。


「もふもふもふもふ~~‼」

「メェェェ‼」


おなかを撫でられたり、ひつじの綿の部分をもんだりもふもふしまくり、胸も離れマーチは再び悲鳴をあげる。


その後、もう一度抱きしめられ、マーチは夢心地のまま眠りはじめた。


それを見たほかの動物もふもふたちがメイとマーチの周りに集まってきた。


が、すべてオスだ。


おそらく、(胸~、巨乳~、欲し~)とでも思っているのだろう。


いや、あれはオスの本望なのだから仕方があるまい。


「おや?もふもふたちよ、私にもふもふされたいのかい?」


もふもふ地獄の恐ろしさを知らない動物もふもふたちはメイの周りの陸に集まった。


「おお、いーよいーよ。私がもふもふしてあげよう」


パンパン、とメイが手をたたくと、頭上に大きなジェット機が現れ、メイと動物もふもふたちを丸ごと囲えるほどの檻が落ちてきた。


「ヒェッ」と動物らしくない悲鳴をもらし、震える動物もふもふたち。だが、今頃気づいてももう遅い。


「逃げられないわよ~、もふもふちゃん?」


手をもふもふするときのイメージで動かしながら動物もふもふたちに近づくメイ。


「えいやーっ!」

「ーーー‼」


その後、メイが満足してもう一度手をたたくまではこのもふもふ地獄は終わらないのである。




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もふもふ天国 雨夏 @mirukukoka

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