第4話 戻って来るよね?

「うわっ」

「今日も、勝負ありだな。」


1日1回、恒成を殺しても良い。恒成を殺したら多額の賞金。

女っ気のない得意なことは剣術だという私にはおいしい話のはず。

だが、この恒成というやつはやっぱり強すぎる!!!!


〜女友達〜


「僕が真琴まことで、こっちのひ弱なのが惣一そういちな。」

「ひ弱ではない。お前が強いだけだろ。」


とても仲が良いのだろう。いつものように喧嘩をしているが、すぐに仲直りをして冗談言い合っている。


「お、おう。私は小薗。」


真琴がどうして男装しているのか聞いても良いのだろうか。

でも、惣一はその事に気付いていないのか物凄く馴れ馴れしい。

これは黙って置いた方が良いのだろう。


「真琴、小薗がびっくりしてるだろ。もう少し自重しろ。」

「あはは。ごめんごめん。だって小薗可愛いから。」

「あ、ありがとう。」


剣道場から出てすぐにある甘味屋で甘いものをじっくりと味わう。


「おいし〜い。」

「真琴て、甘いもの好きなのか?」


聞くとブンブンと顔を縦に振る。そんなに好きなんだ。


「真琴は甘いものには目がなくてさ。怒ったときはここの大福あげるといいよ。」

「変なこと小薗に教えるなよ。な、小薗。」


そんな2人のやり取りが面白くて小さく笑った。


「羨ましい。」


と言うと2人の顔色が変わった。


「私、そんな仲がいい友達が居ないんだ。見ての通り、女らしいことはしてこなかったから誰も認めてくれないし。母親には結婚しろ、てうるさいし。」


すると2人は顔を見合わせると、満面な笑みでこちらを向いた。


「なら、うんと仲良くならないとな!」

「そうだ!そうだ!」


初めての女友達と、野郎以外の一緒に頑張ってくれる友達...。


「おう!」


と勢いよく頷いた。


〜稽古〜


「はい!はい!はい!」


汗が散る昼前の剣道場内で、掛け声とともに振り上げられる木刀。

私と恒成、真琴、惣一の四人は今日も今日とて練習中。

初めて恒成に会った日から早3週間が経ちました。

それでも恒成にはまるで歯が立たずじまい。


―――・・・


「まだ3週間経ったぐらいで私に勝てるなんて甘すぎるんだよ。お嬢ちゃん。」

「くそっっっ。」


渋い顔をしてそう吐き捨てる。私だって分かってる。

それでも、内心焦っている自分がいた。こんな屈辱的な気持ちを晴らしたい。

そして、認めてほしい。自分が今のままで生きること。

今のままでも家の役に立てるんだってこと。


「そんなんで、僕に勝てるとでも思ってるのか!もっと努力しろよ。」

「お前に言われなくたって分かってるわ。自分のことぐらい自分でやる。」

「それ言ったのは何回目?」

「そもそもなんで俺より細い腕してんのにそんなに強いんだよ。」

「お前より技術が充実してるか、腕が細いのは見た目だけで筋肉がある。それだけだろ?」


また喧嘩してる...。毎日こんな感じでよく飽きないものだ。


「なぁ、恒成。どうしてこいつらと稽古することになったんだ?」

「あー、あの惣一ていうやつを育ててほしいという真琴の要望でな。その代わり、この剣道場を小園との専用に使っていいか頼んだら了承してもらえた。ただそれだけだ。」

「へぇ〜。」


惣一は自分より強くはないが、きっとこの街の男との強さは平均ぐらいだろう。

なのにどうしてそんなに強さを求めるのだろうか。

ついでに真琴も。何かしらの理由はあるのだろうけど。 


「さぁ、休憩は終わりだ。お〜い。そろそろ喧嘩をやめろ!」


恒成が立ち上がったのを見上げながら思った。

そういや、どうして私はこんなにも強さを今まで求めていたのだろう。

剣術が好き。この感情に今まで価値があったのだろうか。

そんなネガティブな考えに頭を振って消し去り、恒成に続いて立ち上がったのだった。


〜戻ってくるよね?〜


「あれ、今日恒成は?」


いつもの時間に剣道場に来ても恒成の姿が見当たらない。


「あれ、本人から聞いてない?」


真琴の不思議そうな顔を見るとさらに私は首を傾げる。

どういうことなのかがなんにも分からない。


「どういうことだ?」


すると心配そうな顔をした惣一が口を開いた。


「今日ここを出ていくんだってよ。」

「ちょっ惣一。小園に変な解釈させるなよ。」


?どういうことだ?なんで、いきなり。

真琴の仲裁を妨げて惣一は言った。


「まだここからそんな離れてないと思うから追いかけたら?」


私はコクッと頷いて「分かった。ありがとう。」と言い捨てて駆け出した。

その一方、真琴は。


「惣一!」

「なんだよ。」

「なんなんだよ。こんな一生ここからいなくなるみたいな言い方。」


怒気を含んで言っても惣一は何の悪びれもなく言った。


「ああいうのは本人から聞くものだろ。」

「そうだけどさ。」


真琴は珍しく呆れた声を発した。


―――・・・


「3ヶ月!?」


恒成の後ろ姿を目撃して真実を伝えられた瞬間思わず大声を出してしまった。

何もここから出ていくといっても一生というわけではなく3ヶ月故郷に帰るということだったらしい。


「なんで何も言わずに出ていこうとすんだよ。」

「すまん。すまん。急なことだったからな。それとも、私がいなくなって寂しいの?小園ちゃんは。」

「は!?そんなんじゃなねぇし。」


いつものへらへら。やっぱりイライラする。


「素振りちゃんとするんだぞ。」

「あ、あぁ。その代わり絶対帰ってこいよ!次こそは絶対殺してやる!」

「ははっ楽しみにしてるよ。」


そう言って恒成はヒラヒラと手を振ってその故郷があるという方角へ歩いていった。

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