第9話 久莉彩爆弾再び
昨夜はクリ姉ぇに少しずつ頑張る事を伝えた。クリ姉ぇの機嫌も良く、特に問題なく夜を迎えた筈だが、朝のクリ姉ぇは絶望に憔悴しきった顔をしている。
「クリ姉ぇ、顔色悪いよ。風邪でもひいた?」
「……昨夜、電話でラキ姉ぇに怒られた……」
うわ~~~、それはキツイ!
俺とクリ姉ぇはラキ姉ぇには絶対服従だ。歯向かう事は一切許れされない。
ラキ姉ぇは俺の6つ上の姉になる。ラキ姉ぇは昔から凄かった。勉強もスポーツも習い事も完璧だった。
葵原高校から初の東大かとの話しもあったが、「大学行ってどうするの。医者も官僚も興味無いし」と一蹴して、大手企業に就職。
大手企業ならではのダイバシティへの取り組みもあり、高卒ながら毎年昇進し、ラキ姉ぇがトップの新商品企画部を立ち上げたとの事だ。
「で、どうなったの?」
「最初は、桐芭が芭月ちゃんと付き合うかもしれないって話しで、ラキ姉ぇも喜んでたんだけど……。あたしがしゃしゃり出過ぎた事を凄く怒られた……」
「お、俺はクリ姉ぇに感謝してるよ。七瀬川さんも喜んでたし」
「……今はね……」
今は?
「はぁ、今日芭月ちゃんに謝らないと……」
元気無く朝食を食べたクリ姉ぇは肩を落として登校した。
◆
昼休み、俺達四人は校庭のベンチで昼食を食べていた。
俺と健流は購買で買ったパンと牛乳を、七瀬川さんと星野さんは手作りお弁当を食べながら、今朝の1組クリ姉ぇ再び事件について話しあっていた。
「クリ姉ぇが朝1組に行ったのは、昨夜ラキ姉ぇに怒られたからなんだ」
「何が柊さんの逆鱗に触れたんだ?」
「俺にはよく分からなかったけど……、七瀬川さん、クリ姉ぇは何か言ってた?」
「ご、ごめんなさいって…。その時が来たら絶対守るって…」
「どういう事だ桐芭?」
「いや、俺にも分からないんだけど?」
「そ、そ、それともう1つ……」
七瀬川さんが頬を赤くしてモジモジしている。
「つ、次の月曜日に……桐芭君の家に行く事に……なりました」
「はい? どういう事?」
「そうそう! 久莉彩さんがまた爆弾落としたのよ!『芭月ちゃんに姉が会いたいんだって。三連休の月曜日って空いてる?』って言って芭月が頷くと、『それじゃ家に遊びに来てね!』って帰って行ったんだけど、その後のクラスはまたしてもパニックよ、パニック! あの柊さんのご指名なんだよ! あたしもパニックっちゃったよ」
……月曜日って、俺、聞いてないよ?
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