第16話 07時28分

 なかなか親子の会話が終わらなかったので俺が口を挟む。


「焦げたパン食ってるやつ。話すより食べろ」

「ちょゴウちゃん。パンにはあんバターだよ。ゆっくり食べないとなの。味わうの」

「なんか会話がおかしいな。それにそれはいつも聞いてる」

「ってか、ゴウちゃん私学校行く準備なんてしてないよ?」

「——アホか!」


 うん。こいつこののんびりで準備までしてなかったと?っか、それなら先に言えよ。俺今暇してたから久梨亜の準備くらいすぐにしたよ。久梨亜の部屋なら普通に何があるか知ってるからな。準備できたよ。っか――今日は確か式だけだったので――。


「っか、どうせ式しかないから、そのまま手ぶらで行け、問題ないだろ」

「なっ、て、手ブラ?!ごごご、ゴウちゃん何を言いだすの!」


 すると何故か顔を真っ赤にする久梨亜――うん。こいつポンコツだからな。変なところだけ切り取った。認識ミスだろう。良くあることだ。まだ寝ぼけていたらしい。


「——こいつポンコツだわ」

「仲良いわねー。ほんとラブラブカップルねー」

「だから付き合ってませんから」

「あらあらー」


 1人ポンコツ。1人楽しんでいる。1人呆れている。そんな空間。うん。俺は――早く出たいな。とっとと久梨亜に食べさせて学校行こうである。


 まだ沓掛家を出れない俺だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る