第6話 06時35分

 沓掛家に来て少し。俺は少しぶりに久梨亜の部屋の前に来ていた。普通なら異性の部屋——あれ?俺久梨亜が女って言った?言ってない?でも名前で何となくわかってるよな?うん。ガキってことで通じているよな。っていうことにしておき。普通なら異性の家。部屋の前とかまあなんかいろいろ思うことがあるかもしれないが。今の俺には、ほとんど自分の家と同じ感覚だ。何の緊張もない。ただ幼馴染の部屋の前に立っているだけである。って、部屋の前で無駄な時間を過ごす必要はないので俺は――。


 コンコン。


 久梨亜の部屋のドアをノックする。まあ無意味なのは今までの経験上重々承知なのだが――確認は大切なのでね。ドアの向こうに居るのが同級生の女子なので、もしも。もしも。ということがあるので、でも――俺の知っているいつもの光景だった――無言である。いつもの事だ。


「久梨亜入るからな。ノックしたからな」


 ガチャ。


 そう言いながら、俺は躊躇することなくドアを開ける。いや遅刻しないためにスムーズにいかないとだからな。俺は久梨亜の部屋へと入室した。


 久梨亜の部屋は女の子らしいかわいいもの。ぬいぐるみとかが多い部屋だ。今はちょっと薄暗いが――カーテンをちゃんと閉めてなかったらしく。少しだけ光が外から差し込んでおり。室内の様子はわかる。ちなみに――この家の娘。ガキ。俺の幼馴染は現在……ベッドの上で丸まっている。普通に寝ている様子だ。無防備というのか。泥棒が入って来てもこの様子な気がする大変心配なガキ。これが――久梨亜だ。

 ちょっと今は布団に隠れているが――ボブカットで黒ではなく。ちょっと明るめの髪色。そして基本初めて久梨亜を見る人は可愛いという。ちょっと小柄だが。ほぼ平均ですらっとしている体型だ。だらけている割にはすらっとしている。まあ――よく母と比べられて――怒っているが。今は触れなくていいだろう。そのうち何が――というのはわかると思うのでね。すらっとしているんだよ。ちなみに母は――なんて表現するんだろうな?巨乳——?って、あれ。そのまま表現しちゃったか。うん。まあいいや。考えないでおこう。


 ちなみに俺はちょっと余計な事を考えていたが。まず久梨亜には見向きもせず。カーテンをちゃんと開けに窓際へと向かう。


 ササッ――。


 勢いよくカーテンを開けると久梨亜の部屋が一気に明るくなる。この部屋朝の日当たりは抜群だからな。


「あぅ――眩しいよ……あと――3時間」


ほら、室内にちゃんと太陽の光が入るとベッドからそんな声が聞こえてきたのだった――なんかふざけたことを言っているのは――気にしないでやってく――いやちゃんと言おう、新学期だしな。


「ふざけるな!新学期だよ!起きろ!何が3時間だ!学校終わるわ!」


 俺は言い終えると迷いなく。久梨亜が丸まっている布団を掴み。容赦なく引き剥がす。


バサッ。


「きゃあ――!?グー」

「——その悲鳴はなんだ……」


 俺が布団を引き剥がすと久梨亜は少し転がりながらもベッドからは落ちることなく――そのまままだ丸まっていた。かわいいハリネズミオンパレードのパジャマが丸見えになっただけ。あと久梨亜の丸まってる姿がはっきり見えるようになったくらいだな。これは平日のよくある光景だ。冬場ならこれだけで充分効果があるのだが――さすがに4月となると――布団などなくても寝れるらしい。

 冬場なら引っ張り合いなんだがな。布団の取り合い。そしてその流れのまま立たせて着替えへと持っていく。しかし今の時期はそれが出来ない。冬早く戻って来てくれ。

 まあ――夏場は夏場で困るんだがな。超薄着で寝ていると――まあ引き剥がした瞬間に大騒動――って、感じでね。まあそれはそれですぐに起きてくれるが……うん。この時期は一番大変な時期である。


 ぺちぺち。


「朝だよ。久梨亜」


 俺は久梨亜の頬っぺた叩く。優しくもちょっと強めがいつものやり方である。優しいだけだとこいつ寝ていくんでね。


「——いじめだ」

「起こしてるんだよ」

「引きこもるー」


 寝転がりながら何か言っているが俺は叩くのをやめない。


「起きろ」

「嫌ー。まだ寝たいー」


 ぺちぺちぺちぺち。


 先ほどより多めに久梨亜の頬を叩く。ちなみに大変柔らかいいい触り心地である。まあボサボサの髪を揺らしながら久梨亜が逃れようとするが――左右交互に俺が叩くため全てヒットしている。


「いじめられたー。叩かれたー」

「毎回懲りずに同じやりとりという――」


これここ最近。まあ今は久しぶりだが。学校がある時の平日毎回していることである。


「久梨亜。朝だって」


 頬を叩くくらいでは起き上がらない久梨亜の腕を俺は今度は引っ張る。すると。


「じゃ、抱っこー」


 なんか意味わからない声が聞こえてくる。これもよくあることだ。


「絶対起きてるのにだらけてるよな?」

「ぐー」

「嘘寝をするな」

「——抱っこしてくれた起きるー」

「馬鹿か。起きろ」

「抱っこ。抱っこ。お姫様抱っこ」

「……」


 今日こそ窓から捨てていいだろうか?そんなことを真剣に俺が考え出すと――何かを察知したのだろうか?久梨亜はむくりと起き上がり目を擦りながらベッドに腰掛けた。なんか知らんが――まず起こすのは成功?したらしい。ってか、こんなやり取りを俺達は毎日しているのだった。

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