4
「新人が入って来たよ。三人。誰が雇ったんだか知らないけどね。あんたが面倒見な」
「承知しました」
「ったく。また私らの給料が下がるじゃないか」
キャブリはブツブツと文句を言いながら、その場を去って行った。
「新人の者どもこちらへ」
ミナールに案内されて、三人はあいた口が塞がらないまま彼女の後について行く。
全く人気のないところに到着したところで、アンドレアが声を発した。
「ミーナ。君は一体こんなところで何をやっているんだ」
「声が大きいですよ。新人。あなたこそ、こんなところにリーリエ様をお連れして何を考えているんですか?クノリス様にこの件はご報告させていただきますから」
「待って。ミーナ。これは私が言い出したことなの」
リーリエが間に入るとミーナは「そういう問題ではございません」と厳しい表情で首を横に振った。
「リーリエ様。この国は危険ですから、即刻アダブランカ王国にお戻りください」
「駄目よ。ミーナ。私決めたのよ。これから王のところへ行ってモルガナ妃の日記を見せなきゃいけないから」
「それは難しいと思われます。リーリエ様。私はこの城で少しの間働いておりますが、王のことを見かけたことはございません」
「どういうこと?」
「この城はモルガナ妃が全て仕切っております。噂によると、王は病気で伏しているとかで、王室への侵入は固く禁じられております」
「そんな……」
決していい父親ではなかったが、そのような状況になっているとは夢にも思っていなかった。
「毎日誰かが首を切られ、ひどい目に合っています。それに、リーリエ様はアダブランカ王国に暗殺されたことになっていますから、あなたが生きていることが知られれば、今度こそモルガナ妃の手によって殺されると思います」
「分かっている……でもクノリスがここに来るの」
「知っています。私とマーロ、ガルベルが情報をクノリス様に流しておりましたから」
ミーナの言葉を聞いてリーリエは更に驚いた。
***
「彼らもいるの?」
「ええ。リーリエ様にも他の方にも伝えていなかったですが、クノリス様より作戦をお伺いし、先にスパイとして入国しておりました。情報が漏れるといけませんので、私たちは解雇されたということで話が通っていたはずです」
「だからいくら探してもアダブランカ王国にいなかったのですわね。随分と人を使って探したんですのよ」
まさかそんなことになっているとは知らず、リーリエは心の底から驚いた。
「だったら尚更、私はお父様のところへ行かなくてはならないわ」
リーリエは真剣な表情で言った。
「なぜ、そこまで……」
「私は、今日モルガナ妃を失脚させに来たの」
「ええ、ミーナ。リーリエ様はとんでもないものを発見されたのですわよ」
リーリエの言葉を応戦するように、メノーラがミーナに向かって言った。
「だからって、リーリエ様がリスクをおかす必要はないんです」
「お願い。もうここまで来てしまった。だから、協力して」
リーリエが懇願に近い様子で頭を下げると「分かりました……」と呆れたようにミーナは答えた。
「アンドレア。メノーラ。きっと私たち全員本当にクビよ」
「そうでしょうね。本当に困ります」
ミーナの言葉にアンドレアは同意したが、心なしかアンドレアはミーナに会えて嬉しそうだった。
メノーラは「大丈夫ですわよ」となぜか自信満々だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます