第3話 購買の魔力(魅力)

初登校の日

緊張した・・・・・・

試験を首席で合格してから1日。今日は私の初登校の日だ。首席なので、学力も問題ないと認められ、だいぶ遅れたが途中から高校1年生として入学することを認めてもらった。

とは言っても、もう冬なのですぐに新学期に入ってしまうのだが。

そしてたった今、自己紹介を終えて、席に着いたところである。

「はい、じゃあ今日は余弦定理の応用ね~」

若い美人な先生が教科書を持って言う。

ほぉ。コサインか。・・・・・・ていうかさっきから思ってたけど、ノートじゃなくてタブレットパソコンなんだが。

シュポン

おぉ、なんか送られてきた。

・・・・・・なるほどな。こうやっていちいちプリントとかを配布する時間を減らして、全力で授業に向き合えるようにしているのか。やるな。

日菜はどんな顔してるのかな~

私は日菜の顔をのぞいてみる。(私と日菜は席が隣同士。・・・・・・というより日菜が先生に頼み込んで強引にこの席になった。)

「えぇ・・・・・・?」

なかなかすごい顔をしてるな・・・・・・まるでカ○ジじゃん。

おっと、私も早く解かないと。


5分後

簡単だったな。で、この回答を先生に送信してっと。

「実ちゃん(小声)」

「何だ・・・・・・ってお前全然解けてねぇじゃん。さっさと解け」

「解けるのならとっくに解いてるよ・・・・・・! ねぇ、解き方教えてよ・・・・・・」

「解き方っていっても・・・・・・全部暗算だし。こっちも仕方なく解法記入しているだけだから」

「じゃあその解法を!」

「もう送信したよ。諦めて自分でやりな」

時には突き放すことも必要だ。甘やかしてばっかりではいつまで経っても成長しない。

「やれば出来る、君なら出来る、みんな出来る!」

「みんな出来るってことは、私だけ出来ていないっていうことなんじゃ・・・・・・」

うん。言葉の選択間違えた。今のはごめん。

その後、必死に問題を解いた日菜だったが、結局時間切れになり、宿題になってしまったのだった。


3時間目終了。

ぐぅ~

「あぁ・・―・・・・・・腹減った」

私は、今朝から何も口にしていないのだ。その原因は寝坊である。

「深夜までネトゲするんじゃなかった・・・・・・」

しかし、ネトゲユーザーなら深夜までゲームに時間を費やすのは当たり前のことだ。うん。これは運営に対するご奉仕だ。

今までなら、食べたいものがあったら好きなときに好きなだけ食べられた。

だが、今は学校だ。よくフィクションとかで、早弁をする生徒がいるが、あいにく私の席は最前列のど真ん中だ。早弁なんてしたら一発でバレる。

でももう大丈夫! 今は昼休み! やっと飯が食える!

そう思いリュックサックの中の弁当を探す。

「ん? おっかしいな・・・・・・あ!」

思い出した。今朝は寝坊して弁当を作っていないんだった・・・・・・! さすがに今から弁当を作る気力なんてどこにも残っていない。

「最悪だ・・・・・・どうして私は昨日夜更かしなんて・・・・・・」

多分、今までの生活リズムが戻っていないのだろう。

にしても・・・・・・本当にどうしようか・・・・・・

私の頭の中で私の姿そっくりの「考える人」が出てきた。

「仕方ない。略奪するか」

「させないよ~?」

殺気を感じて後ろを振り向くと、まぁなんということでしょう。その笑顔からは怒りがあふれ出し、両手をボキボキと鳴らしまくっているではありませんか。

「お、おちつけ!」

「お仕置きが必要かな~?」

「や、やめろ! 俺の体はボトボトだ!」

「歯を食いしばってね?」

こうなったら・・・・・・!

くるりと90度後ろを向いた。

「逃げるんだよぉ~~!」

「あっ!」

私の顔が一瞬濃くなったような気がするが気のせいだろう。


その後、私は日菜に捕らえられ、関節技をたくさんくらった。何こいつ、柔道でもやってるの?

「まったく・・・・・・弁当とか持ってきてないの?」

「私が弁当作ると、全部私の好み(揚げ物)になるから健康によくない」

「余計な真面目さ!」

「仕方ないなぁ。購買にでも行く?」

「購買・・・・・・!」

購買ってあの、よく学園ものアニメとか漫画に出てくる、生徒たち専用の食堂・・・・・・!

ぜひ行きたい! 行って食堂の食べ物全部食べつくしたい!

「よし、早速行ってみるか」


「あれ? 売り切れてる」

「どういうことだ?」

スーパーマーケットを思わせるくらいの大きさの購買には、商品が1つもおいてなかった。

「あ、何か張り紙はってある」

私と日菜は壁紙の内容を読む。

『本日、妻の誕生日なので旅行に行きます。1週間後再開します』

「いや公私混同! 妻の誕生日でも仕事せい!」

「仕方ない。今日は学食に行こうか」

「学食なんてあるんだ」

「いや、この規模の学園で学食なかったら逆におかしいでしょ・・・・・・」

その逆に学食なくてもいいだろ。登校するときに、ファストフード店とか、カフェとかいろんな飲食店あったんだが。焼肉屋もあったし。

「本当は学食あまり使いたくないんだけどね・・・・・・」

「何でだ?」

日菜はお通夜レベルの深刻そうな顔をして言う。

「いやー・・・・・・学食ってめっちゃ混むんだよね・・・・・・」

「あぁー・・・・・・確かにありえる」

だが、ここで学食に行かなくては、私は本日何も口にしていないということになる。

「よし。少し無理するかもだけど、がんばって行くか」

「その意気や、よし!」

エレベーター内

「なぁ、学食に行くだけでこんなに時間かかるってどういうこと?」

「広いからね~」

「広いからね~」で済む時間ではないだろこれは。腕時計に目を通すと、余裕で20分はかかっている。

ちなみに私の腕時計は、祖母からもらった年代ものだ。今売ったらいくらするのかな。

『6階、食品エリアでございます』

「スーパーマーケットか」

「はじめはそう思うよね・・・・・・」

エレベーターの扉が開き、私たちの目の前に広がったのは・・・・・・

「すごい・・・・・・ここ本当に学校か?」

横○中華街とかそういうレベルの、食堂街が広がっていた。これは比喩ではなく本当の意味でだ。

「何食べたい? 奢るよ」

「いや奢らなくても良いから。自分で飯食えるだけの金は常に持ってるから」

「そう? で、何か食べたいのある?」

「ラーメン」

「本当にラーメンが好きだね。しかも2話連続って・・・・・・」

「ラーメンは腹にたまるし、食事にそんなに時間をかけなくて良いし、何より美味いし」

「うん、それ前回も聞いた。まぁいいや。それじゃあ早く並ぼうか。早くしないと混んできちゃうよ」


注文したラーメンが到着。

「そんなに食べられるの? 私は食べられるけど・・・・・・」

「自分で注文したものを残すなんて店側に失礼だろう」

私の目の前には、特盛のチャーシュー麺、大盛のチャーハン、餃子10個が並んでいる。

「「いただきまーす」」

ズゾゾゾ

「おいしいね、実ちゃん」

「うむ。なかなか」

ズゾゾゾ

「・・・・・・」

「・・・・・・何だ? 私の顔にチャーシューでもついてる?」

「仮にそれで気付かないんだったら病院に行ったほうが良いと思うよ?」

「じゃあ何」

「・・・・・・一口頂戴」

「いいけど。すいませーん! 取り皿ひとつお願いします!」

「かしこまりましたー」

「何で取り皿!?」

「え? まずかったか?」

「いや私幼児じゃないんだけど・・・・・・」

「・・・・・・そういうことは自分の姿を鏡で見てから言おうな?」

まずその見た目だと、小学生低学年と見られても文句は言えないと思うぞ? 

「お待たせしましたー」

「ありがとうございます」

取り皿を受け取り、私は取り皿に麺とスープを盛り付ける。

・・・・・・ちゃんとチャーシューも入れますよ。そこまでケチじゃないよ。

「ほい」

ズゾゾゾ

「ってもう食ってるし」

「おいしい! じゃあ、お礼に私も一口あげる!」

日菜は麺を箸でつかみ私に近づけた。

「はい、あーんして?」

「は!?」

いや、あーんて。そもそもラーメンをあーんするなんて聞いたないんだが。どう考えても食いづらいだろそれは。

「実ちゃん・・・・・・?」

だぁぁぁ! そんなうるうるとした目でこっちを見るなぁ! 可愛過ぎるから!

パク

「おいしい?」

「うん。美味い」

正直な感想。恥ずかしくて何の味か分かりませんでした。

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