マダミス GM視点

【マーダーミステリー】透明人間は見えない【男執事ナトリ/GM視点】《伊崎ミサキ》

同接:1600人



「はい、ということで今から15分間は各プレイヤーの皆様にHOハンドアウトを読み込んでもらう時間になりますわ!!  視聴者の皆様には改めて、こちらの配信ではGM視点──つまりネタバレありで進めていきますことご了承願いますわ。もし、ネタバレなしで楽しみたいという方が居られましたら、各プレイヤーの皆様の視点に移っていただけますようお願いいたしますわ!!」



コメント:りょうかい!!

コメント:犯人は◯◯

コメント:あ、そうなんだ……じゃあ別視点見に行こ

コメント:さっそくネタバレしたがってるやつがおるぞ



 そう言って、ミサキは15分間のタイマーをスタートさせた。


 もう注意は済ませた。この視点に残っているのは、すでに一度このシナリオを見たことやったことがある人かネタバレありで楽しみたい人たちだけになっているはずだ。


 ならば、ここから先の15分間はネタバレありの無法地帯。コメントも、容赦なく話題を振ってくる。



コメント:そういえば、両目が見えないはずのトーカが探索フェーズに参加してカード集めるのってなんか違和感あるんだけど、そこらへんってどうなってんの?

コメント:あー、確かに



 まず話題に上がったのは、ある種のメタ推理的な考察。


 トーカとはPLプレイヤー2──殺害された当主の娘で生まれつき両目が見えない少女のこと。


 本来設定上、目が見えないはずの人間が屋敷を歩き回って情報集めとは?という疑問。


 それに対する回答は簡潔だった。


「それに関しては、執事のナトリがトーカの探索に付き添っているという裏設定がありますので、問題ありませんわ」


 『カード』というのは推理に用いられる情報が書かれたもので、プレイヤーたちはマップ上に散りばめられたカードを『探索フェーズ』にて回収し、そこに書かれた情報と自分たちに配られたHOの内容をもとに推理をしていくことになっている。


 このシナリオではプレイヤーたちは嘘をついても問題ないが『HO』と『カード』には全て真実が書かれている。


 HOは他のプレイヤーには開示できない設定資料のため、プレイヤーはカードに書かれた内容を真として事件の真相を詰めていく。


 ちなみに細かいことではあるが、プレイヤーには『カード』という単語や『設定を読み直す』という言葉は世界観が壊れてしまうためできるだけ使わないようにとお願いをしている。


 今回のシナリオはHO読み込みフェーズが終わった後は、次のような流れで進行していく。



・HO読み込みフェーズ『自分のキャラクターの深堀り』


 ↓


・プロローグ『死体発見から探索までの流れ』


 ↓


・探索フェーズ①『カードを回収し情報収集』


 ↓


・前半議論フェーズ『全員での議論 1回目』


 ↓


・探索フェーズ②『残りのカードを回収し情報収集』


 ↓


・後半議論フェーズ『全員での議論 2回目』


 ↓


・推理披露フェーズ『1人ずつ、この事件の真相についての推理を披露する』


 ↓


・投票フェーズ『誰に投票するのかをGMに伝える』


 ↓


・エンディング『投票に応じたエンディング分岐』


 ↓


・振り返り & ポイント集計『シナリオのネタバレを含めた各個人の振り返りとミッション達成によるポイント集計』



「視聴者の皆様は何か気になることはありますか? 今なら何でもお答えしますわ」



コメント:何でも?

コメント:え、いま何でもって……

コメント:ガタッ

コメント:じゃあお嬢のスリーサイズを

「このシナリオについてですわよ?」

コメント:ア、ハイ

コメント:ですよね~

コメント:釘指し早かったなw

コメント:じゃあ各プレイヤーのミッションとか

コメント:事件の真相とかもちょろっとよろ

コメント:被害者について



「えー……それでは時間もあまりありませんから『3人のキャラクターについて』資料をお見せしながら説明していきますわ」


「今回、各プレイヤーがRPロールプレイするキャラクターはアキト、トーカ、スバルの3人ですわ。簡単に説明しますと、アキトは『家族想いの兄』、トーカは『とある秘密を抱えた妹』、そしてスバルは『自分が何者なのかを探している少女』になりますわ」


「そしてここで、PL1アキトのHOの冒頭を皆様にお見せしますが──」


ーーーーー

【この事件について】

 あなたはこの事件の犯人かもしれない。

 ただし、あなたが当主を殺害した場所から死体の位置が移動している。

 誰かがあなたを庇っているのか、それともあなたは当主を殺害できていなかったのか。

 屋敷の中を調査し、見極める必要がありそうだ。

ーーーーー


「──この冒頭部分ですがフレーズが記載してありますの。つまり、3人全員がと思っている状態で物語が始まりますわ」



コメント:ほえ?

コメント:なにそれ

コメント:へぇ!

コメント:ふんふん、なるほど!?

コメント:おもろいよなぁ



「それでは3人の人物背景とミッションを見ていきましょう。流石に全員の『事件当日の動き』までここでお見せするには時間が足りませんので、それについては議論を聞いて推理してみてくださいね。まずは、PL1アキトの人物背景とミッションについて」


ーーーーー

【アキトの人物背景】

 あなたは、生まれつき右目がないため見えない。

 そしてあなたの双子の弟であるカズトは左目がないため見えない。

 片目が見えないこと以外は特に不自由のない自分とは違い、弟は病弱な体質だった。

 『温厚な性格の弟を兄として守ってやらないと』と、あなたはそう思っていた。

 当主である父は薬剤師の資格を持っており、カズトの治療を自作の調合薬で行っていた。

 年々、弟が衰弱していっているように思えたが、父に任せておけば心配はない。

 11年前に何者かに襲われ植物状態となった母もいつか目を覚ますと、そう思っていた。

 1年前に屋敷が全焼した──その日までは。

 この火事で母は死に、カズトは行方不明になった。

 カズトは1年経った今でも発見されていない。

 体が弱く片目が見えないカズトが1人で生きているとは思えない。考えたくはないが、生存している可能性は極めて低いだろう。

 カズトの左目用の眼帯は今も形見として持っている。

 あなたは火事があったその時、偶然3つ年下の妹であるトーカと共に男執事を連れて屋敷の外に出ており無事だった。

 屋敷の中にいた父を救出した女使用人のメイは軽い火傷を負ったが命に別状はなかった。

 屋敷が再建されるまでこの1年間、あなたは男執事、そして父とともに別荘に遭難することになった。

 妹のトーカは生まれつき両目が見えないこともあり女使用人の家で世話になることになった。

 2人の家族を失うことになったあの火事は、あなたの心に深い傷となって残った。


 1年前の火事は、ただの事故だったのだろうか。

 あの日、屋敷にいた父なら火事について何か知っているかもしれないが、何度話を振っても話をしてくれなかった。

 もしかしたら、父が書いている日記になら何か書いてあるかもしれない。

ーーーーー


ーーーーー

【アキトのミッション】

1、自分が犯人として投票されない

 →真犯人が自分以外にいた場合、その人に投票する

 →+5点


2、11年前、母に何が起きたのかを明らかにする

 →エンディングまでに証拠となるアイテムを回収する

 →+5点


3、1年前の火事の真相を明らかにする

 →エンディングまでに証拠となるアイテムを回収する

 →+5点

ーーーーー



コメント:右目自体がないのね

コメント:弟絶対守るマン

コメント:父親については信頼してんのか

コメント:今回死んだ父親が弟君の治療……なんか不穏だな

コメント:11年前と1年前、なにがあったんだ?

コメント:なんで父親を殺したんだろう?

コメント:母についてと火事の真相を明らかにするのが目的か

コメント:15点満点ね



「それでは続いて、PL2トーカの人物背景とミッションについて」



ーーーーー

【トーカの人物背景】

 あなたは生まれつき両目が見えない。そのため、聴覚に優れている。

 目が見えないあなたにとって、あなたの世界は自分の住む屋敷の中だけだった。

 無愛想な父に寝たきりの母、元気の良い長兄に病弱ながらも優しい次兄。

 堅物な男執事と身の回りの世話をしてくれる女使用人。

 しかし、そんな世界は屋敷を全焼させた1年前の火事によってあっさりと崩壊した。

 その火事で、母が死に次兄のカズトが行方不明になった。


 あなたは屋敷が再建されるまでの間、女使用人の家で世話になることになった。

 そこで出会ったのが、女使用人の娘──スバルだった。

 彼女とはすぐに打ち解けた。

 火事で女使用人が火傷を負ったこと、そしてスバルと年齢が近いこともあり、自然とスバルがあなたの世話をしてくれるようになった。

 ある日、あなたはスバルが毎晩服用しているという薬を誤って飲んでしまった。

 次の瞬間、瞼の裏が熱を帯びたのを感じた。

 不安に思い両目を覆う眼帯を外すと、これまで当たり前だった暗がりの世界が一変した。

 目が見えるようになったのだ。

 その日から、スバルの薬をこっそり飲んで『見る練習』と『文字の勉強』をするようになった。

 どうやら飲む量によって薬の効果の持続時間が変わるようで、おそらく1ビンで24時間だ。

 薬を飲んで目が見えるようになったことは、まだ誰にも明かしていない。

 それが父に知られれば学校に行かされる上、政略結婚の道具にも使われてしまうだろう。

 つい先日、屋敷が再建された。

 屋敷に戻っても、この秘密は誰にも明かすべきではないだろう。


 あの薬は一体何だったのか。

 なぜスバルはあの薬を毎晩服用しているのか。

 スバルに直接聞いてもはぐらかされ、教えてはくれなかった。

 あの薬のレシピでもあれば、自分で作ることができるかもしれない。

ーーーーー


ーーーーー

【トーカのミッション】

1、自分が犯人として投票されない

 →真犯人が自分以外にいた場合、その人に投票する

 →+5点


2、薬のレシピを回収する

 →エンディングまでに証拠となるアイテムを回収する

 →+5点


3、『薬を飲むことで目が見えるようになる』ということを知られない

 →推理披露フェーズ時に誰も『トーカは薬を飲むと目が見える』という趣旨の発言をしない

 →+5点

ーーーーー



コメント:生まれつき両目が見えないとか想像つかんわ

コメント:ん?なんかアキトと目の部分の記載が違うくない?

コメント:アキトと違って目自体はある……のか?

コメント:目が見えるようになった薬ってなんだ?スバルもじつは両目見えないとか?

コメント:こっちの視点でもやっぱ1年前の火事はターニングポイントみたい

コメント:意外とたくましい性格してたw

コメント:政略結婚に疑問符だったけど、時代背景って明治時代か。なら納得

コメント:この子も人物背景的に父親を殺しそうにないな

コメント:まぁトーカ的にはレシピも欲しいけど薬自体も欲しいよね



「そして最後に、PL3スバルの人物背景とミッションについて」



ーーーーー

【スバルの人物背景】

 あなたは生まれつき両目以外が無色透明の『透明人間』である。普段は『還元薬』という特殊な薬を飲むことで色が戻り、普通の人間として生活できている。

 自分が普通の人間でないことは物心ついた頃から自覚していた。血液でさえ無色透明なのだから。『自分は一体何者なのか』そんな疑問をこれまでずっと抱えて生きてきた。

 母からもらった還元薬のレシピは肌身離さず持ち歩いている。

 1ビンで24時間しか効果が続かないため、薬は毎晩服用している。母はメナシ家という華族に仕える使用人だ。自分が透明人間であることは母しか知らない。

 1年前、その華族の屋敷が全焼する事件があり再建されるまでの間、その家のお嬢様を預かることになった。屋敷のお嬢様──トーカと出会ったのは、その時が初めてだった。

 華族であったトーカとは意外にもすぐに打ち解けることができた。年齢が近いこともあり、母に代わって自然とトーカの世話をするようになったからだ。

 トーカは生まれつき両目が見えないらしく、還元薬をうっかり飲み忘れた時も、自分が透明人間であることは気付かれることがなかった。この間、トーカから還元薬について聞かれたが、説明ははぐらかした。


 メナシ家の屋敷はつい先日再建され、トーカも屋敷に戻るという。

 メナシ家には透明人間が住んでいるという噂がある。

 山の麓の村では有名な噂話だ。

 とても他人事とは思えない。もしかしたら自分の事について何か分かるかもしれない。

 母に頼んで使用人見習いとしてメナシ家に仕えられるよう交渉してもらった。

 自分は一体何者なのか、屋敷に行けば何か分かるかもしれない。

ーーーーー


ーーーーー

【スバルのミッション】

1、自分が犯人として投票されない

 →真犯人が自分以外にいた場合、その人に投票する

 →+5点


2、『自分が一体何者なのか』を明らかにする

 →エンディングまでに証拠となるアイテムを回収する

 →+5点


3、『自分が透明人間』であることを知られない

 →推理披露フェーズ時に誰も『スバルが透明人間である』という趣旨の発言をしない

 →+5点

ーーーーー



コメント:おぉっ!!

コメント:なるほどなんとなくわかってきた……ような?

コメント:還元薬……へぇ

コメント:そっちか、てっきり透明化薬の方だと思ってた

コメント:メナシ家の女使用人がレシピ持ってたのね

コメント:トーカが飲んだのは還元薬?

コメント:トーカは目が透明なだけってこと?

コメント:タイトル考察捗るぅ!!

コメント:第三ミッション見る限り、第二ミッションの答えが透明人間じゃダメってことだよね

コメント:あれこれもしかしてこの子って……そういうこと!?

コメント:どうなってんだこれ?

コメント:全員『自分が犯人として投票されない』が第一ミッションで草



「さてさて皆様、盛り上がってきたところでもうすぐ15分ですわよ。続きはプレイヤーの皆様の議論を聞いて考察を進めていきましょうか」




◇◇◇


 HO読み込みフェーズ → プロローグ


◇◇◇




早朝 7:00 ダイニング


男執事(伊崎ミサキ)「先ほど、旦那様の死体を浴室にて発見いたしました。昨晩、いったい何があったのですか?」


アキト(指宿アキラ)「い、いや、俺にも何が何だか……トーカはどうだ?」


トーカ(井川#111)「……ごめんなさい。……トーカもお父様が亡くなったと聞いて気が動転してしまって……ただ、昨晩はいつもと何も変わらなかったと思います。……スバルはどうかしら?」


スバル(一円。)「す、すみません。私も昨晩は特におかしなことはなかったと思います。私がいながらこんなことになってしまって……申し訳ありません」


男執事(伊崎ミサキ)「どうやら皆様、状況が把握できていないご様子。まぁ無理もないことでしょう。幸いにも邏卒らそつ(明治時代の警察)の者がこちらに到着するまでまだ時間があります。それまでの間に屋敷の中を調査して、昨晩いったい何が起きたのか皆様で状況を整理いたしましょう」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る