鏡越しの会話

美容室での会話が苦手だという人は多い。

よく聞くのは「そもそも人と話すのが苦手」とか「会話が続かないと気まずい」とか。


私は初めて会った人ともストレスなく会話できるタイプなので、それ自体はストレスではないが、違うベクトルで苦手なことが2つある。


「知らない人同士の会話が耳に入ること」そして「相手が感じている会話へのストレスに気づいてしまうこと」だ。


美容室では、そのつもりがなくても同じ空間にいる人間の会話が耳に入る。

パートナーの愚痴、仕事のストレス、出身地、学校の行事など。中には聞きたくないような下世話な話や、共感性羞恥が働くような応酬が聞こえてきて、これが結構しんどい。


スマホや雑誌を見ながら、修行だと思ってやり過ごすしかない。

そんな時、担当していただいている方から、自分に対して話しかけてもらえるのは気が紛れるので大変助かる。


ただ美容師さんも会話が得意な人ばかりとは限らないわけで。

「あ、この人はあまりお話好きじゃないんだろうな」という瞬間もある。


髪に対するアレコレが本業なので、会話の良し悪しをどうこういうつもりは毛頭ない。

ただ、営業や水商売などといった、コミュニケーションが資本となる環境に身を置いたことがあるので、相手がどういう会話をするかが、どうしても気になる。


「今、次に何を話すか考えているんだろうな」「さっきの返しは、他にもあったよな」「こちらから新しい話題を提供したほうがいいだろうか」などなど。


先方からすると「黙って髪を切られていろよ」と言われても仕方がないくらい大変迷惑な話であるが、この件に関しては私もまあまあ困っているのだ。



早く、私の未熟な心が美容室の環境に適応しますように。

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