君との交換日記

アキノリ@pokkey11.1

3日の万華鏡

40年前の記憶

記憶が無くなる少女と大切を願う少年

俺の名前は五十嵐塔矢(いがらしとうや)。

黒髪の短髪に読書部。

そして優しい顔立ちと言われている顔立ち。

だからこんな俺だが人生は恵まれていると思っている。

だけど全てが上手くいくとは限らない。


俺は彼女の遠山奈緒(とおやまなお)に今日も振られた。

美少女であり柔和な感じの女の子。

彼女と彼氏の関係なのに、だ。

苦笑しながら俺は奈緒を見つめる。

また忘れたんだな、と思いながら、だ。


実は彼女は脳に障害がある。

腫瘍による後遺症。

つまり.....記憶が僅か3日しか持たない。

その為に何十回も彼氏彼女ながらに振られている。


でも俺は慣れている。

思い付いた俺は記憶を取り戻した時に提案した。

奈緒に、だ。


日記を書いてみてはどうだろうか、と。

その事に奈緒は笑顔で賛成してくれて.....今。

交換日記を書く事にした。

そしてまた明日になって記憶が無くなる前日。

3月の事だが俺は学校で日記を交換した。


「ねえ。塔矢。何でこんな私に付き合ってくれるの?」


「.....俺は君を心から好いているからだ」


「そんなの.....面倒臭いでしょ?キツイでしょ?」


「面倒臭くないからやっているのさ」


「.....意味分かんない」


俺は悲しげになる奈緒を見る。

菜緒の涙を拭きながら俺は抱きしめた。

そして笑顔を浮かべる。

大丈夫。きっとまた.....、と言いながら俺は見つめる。

奈緒は涙を流して拭いてを繰り返す。


「私は馬鹿だよね.....こんなの」


「責めるな。自分を。俺は気にしてない」


「.....何でそんなに塔矢は優しいの?みんな嫌っていったんだよ?これまでの人達は.....みんな」


「繰り返させるなよ。俺はお前が心から好きだ。だからずっと一緒だよ」


「.....塔矢.....」


号泣しながら俺を見てくる奈緒。

俺は必死に抱きしめながら。

そしてそのまま放課後の教室で手を繋ぐ。

それから笑顔を浮かべた。


「奈緒。お前は仕方が無いんだから。だから.....自分を責めないでくれ」


「.....こんな面倒臭い女に付いてくる君の心理が理解出来ない。絶対に」


「そんな事言うな。.....俺が悲しくなるから」


「でも!」


そして号泣する奈緒。

俺はその姿を見ながら、大丈夫、と言いながら後頭部を撫でた。

それから抱き締める。

グッと、だ。



そして翌日になって.....奈緒は記憶を失った。

だけど日記を見て全部を思い出した様だ。

俺は、初めまして。彼氏くんだよね?、と聞いてくる。

頷きながら俺は笑みを浮かべる。


「俺は君の彼氏だ。.....初めまして」


「格好良いね。君」


「.....そうだな」


そんな日々は.....3年生の卒業の春を迎えても続いた。

のだが.....信じられない奇跡が起こる。

どんな奇跡かといえば。


奈緒の後遺症が緩和していた、と言う点で、だ。

4日目になっても記憶が僅かながらに残っていたのだ。

だけどその代わりに.....腫瘍が再発した。


「.....」


「大丈夫だよ。君が居れば」


腫瘍を取り除く為に手術をする事になり入院していた。

それから包帯の頭で涙を浮かべながら流す奈緒を見つめる。

そして.....号泣した。

俺はその姿にたまらず抱き締めて。

そうしてから頭を撫でる。


「奈緒。俺は祈っているから。お前の事」


「.....うん。記憶を継続したいから頑張る」


「ああ。祈っているぞ」


それから奈緒は手術室に向かった。

そうしてから俺は見送っていく。

その後に涙が止まらなくなった。


そして5時間待ってから。

手術はどうなったかというと成功した。

だが問題が発生してしまう。


どういう問題かといえば日記の事を忘れてしまったのだ。

つまり記憶が0からのスタートになった。

そして.....奈緒は。

自殺を図った。



「.....私は君と付き合っていたんだね。でも全部忘れたから。嫌だ。こんな自分がもう嫌だ!!!!!!!!!!」


「奈緒.....」


「こんな身体.....もう捨てたい。私は.....君を忘れたくない!」


入院病棟で叫ぶ奈緒。

俺はその姿に、そうだな、と言い聞かせる。

でも幾ら嫌であっても。

身体を捨てる事なんて出来ない。

から俺は.....菜緒の後頭部を撫でる。


「お前は大丈夫。絶対に。俺が居るから」


「もう嫌だ!!!!!いやぁ.....」


「落ち着け。奈緒」


「もう嫌だ.....」


忘れるなんて.....嫌だ。

本当に嫌だから!!!!!

何で私?何で?、と聞いてくる奈緒に。


俺は抱きしめざるを得なかった。

奇跡は必ず起こると。

そう言い聞かせながら。


「奇跡なんてそうそう起こったりしないよ。今だって私は人に聞いて貴方を思い出したんだから!」


「俺達はそんな関係でもずっとやってこれたじゃないか」


「.....!」


「俺は絶望なんかしないよ。お前が幸せになるまで.....ずっと側に居るから」


「.....塔矢.....」


そして奈緒を必死に抱きしめる。

それから.....頭を必死に撫でた。

俺も涙を流している。


ずっと、だ。

こんな絶望のクソッタレなんぞ吹き飛ばしてやる。

そんな決意をしながら。



そんな記憶はかれこれ40年前の記憶になった。

私は横に居る奈緒を見る。

歳を取った奈緒は私を見ながら話を聞いていた。


懐かしいお話ですね、と奈緒はクスクス笑う。

40年前から奈緒は記憶がずっと持っていたままだった。

0から埋めていった記憶。

でも私達は今でも交換日記をつけている。

それはあの日の絶望を.....忘れる為に、であるが。


「私達も歳をとりましたね。お爺さん」


「.....そうだな。婆さん」


「貴方と歩んで来れた40年。本当に幸せしかないですよ。お爺さん」


「.....40年も忘れないでくれて有難うな。婆さん」


「あの日、0になりましたけど.....あれがスタートラインだったんですね」


私達は見つめ合いながらお茶を飲む。

縁側で、であるが。

今日は孫達が来る予定である。

その事は本当に楽しみに近いのだ。

孫は若い頃の婆さん似になっている女の子だ。


「.....それにしても今更になっても交換日記。恥ずかしいです」


「もう1000冊は書いたな。交換日記」


「はい。お爺さんが続けたいって言ったお陰です」


「.....死ぬまで一緒だ。奈緒」


「そうですね。お爺さん」


それからどうやら孫達が来た様だ。

玄関が賑やかになった。

私達は見つめ合ってそのまま立ち上がる。


それから手を繋いでから離して。

そして玄関まで迎えに向かう。

すると風が吹いた。

交換日記のページが捲れていく。

それから現れたそのページは.....40年間前の結婚式のメモリーだった。


fin

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