人生って残酷だなって……

Magical

神ってなんだろう……

母の親友が余命宣告を受けた。

ステージ4の膵臓癌らしい。


電話をもらった時、そこまでとはわからず母はその知らせを聞いて涙を流していた。


まだ45歳……、いくらなんでも早すぎる。


母の親友の方については、母からよく聞いていた。当時、自分が貧乏な家に住んでいることを誰にも話せなかった母が、唯一そのことを打ち明けられた人であり、地元から離れて暮らしていても定期的に連絡を取り合い、年に一二度会いに行く程今でも仲がいいと。


実際、ずっと話を聞いてきて、いい人であることは私にすごく伝わっていた。


そんな人が、この歳で余命宣告を受ける……。


その人はいつも家族のことを愛し、支えてくれている旦那さんと、まだ十五歳の息子さんがいる。


旦那さんは優秀な研究者らしく、頭も良く、稼ぎもあり、家のことも手伝ってくれる優しい方だそう。この病気であることを知って、泣き崩れてしまったそう……。


息子さんの方は元々、両親に心配など一切かけたことの無いいい子で、有名な中高一貫校に入り、成績自体も申し分なく今年の共通テストの数ⅠAを解いてみたところ、この歳で八割を超えていた程すごく優秀な子だ。本人が受け入れられているかはわからない……。


そんな家族にかこまれて、幸せそうだと母は嬉しそうに話していたことを思い出す。


その人は当時では珍しかった母子家庭の家であり母はそのことを知っていたから余計だろう……。


これからも息子さんの成長を見届けたい、これからも家族で生き続けたい、そう思っていたはずだ……。


でも、現実とは残酷なものだ……。


生きたいと思っている人に限って、先の見えたタイムリミットが言い渡される。


医師からの説明ではあと一年だそう……。


それを聞いても、母には「息子が大学に入るところまでは、生きたい。」と元気に答えたそう。


私は、すごい人だなとただただ尊敬した。



これに基づいて、私は改めて考えた……いや、考えてしまった。


人は人生という「価値」というものにおいては、ある意味平等なのだと……。


これから先、生きたいと思っている人に限って長くは生きれない……。


だが逆に、早くいなくなりたい、消えてしまいたい……、生きている意味なんてない、その世の全てに絶望してしまったような人達には、これから先の時間が用意されている。


そう考えてしまうと、「人生」というものは言い方を選ばなければ、平等なのかもしれない……。


しかし、この平等は、これから先の幸せを望み、そのために生きるという選択肢を取ろうという人達から時間を奪い、生きることを諦めようとして死というものを選択肢として挙げている人達には、ある意味牢獄のような時間を押し付けられるのだ……。


このように先の時間というのは、平等では無い。人によっては、何よりも失いたくない大切なものであり、また逆に地獄の拷問のようなものでもある。


時間を価値とするならば、長い時を生きる方が得をしたように感じられるだろう。


ただ、時間の価値は先に述べたように平等では無い。だからこそ「人生」というものが平等に近しいものとなりうる。




ただ、この平等は双方においてもただひたすらに残酷なものであることに、変わりはない……。

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