夜に光を

無頼 チャイ

チャンチャカ帽子

 真っ暗。真っ暗。真っ暗だ。


 チャンチャカチャンチャカ鳴る帽子。僕の名前はチャンチャカ帽子。真夜中に生きる住人。

 真っ暗な世界で見えるものは無い。触ると冷たければ水で、触ると暖かいのが土。チャンチャカ鳴る帽子は彼の名前。チャンチャカ音がなればごきげんようチャンチャカ帽子と挨拶がやってくる。

 チャンチャカチャンチャカチャンチャンチャン。

 ある日、黒とは違う何かを見つけた。近付くと丸っこい。触ろうと手を伸ばすと、目の前に見たことないものが見えた。それに触ろうともう片手を伸ばすと、同じものが見えた。僕は舐めようと近付くと、丸っこい何かに帽子を被った顔が見えた。

 これは面白い。持ってみんなに見せに回ろう。


 チャンチャカチャンチャカごきげんよう。


 うわ、眩しい!


 大きな木の上にフクロウが、


 チャンチャカチャンチャカごきげんよう。


 うわ、眩しいな!


 水の中に魚が、


 チャンチャカチャンチャカごきげんよう。


 うわ、眩しいよ!


 草の中にお花が、



 チャンチャカ帽子は喜んだ。丸っこい何かを照らすと、見たことない色んなものが見えたから。

 チャンチャカ帽子はその日から毎日丸っこいものを持って歩くようになった。


 チャンチャカチャンチャカチャンチャンチャン。


 ある日、チャンチャカ帽子がいつものようにフクロウのおじさんに挨拶すると、フクロウのおじさんが「トホホ……」と言った。


「どうしたの?」


「チャンチャカ帽子。それを見ると最近元気がでなくてな。悪いが出来るだけ見せないでくれるか?」


「うん。分かった」


 チャンチャカ帽子はその日から丸っこいものを家に置いて散歩するようになった。


 チャンチャカチャンチャカチャンチャンチャン。


 ある日、チャンチャカ帽子がいつものようにお花に挨拶すると「はぁ〜」とお花がため息を吐いていた。


「どうしたの?」


「チャンチャカ帽子。最近あの丸っこいのを見なくなってからどんどん元気がなくなって来ちゃったんだ。お願い、良ければ出来るだけ見せてくれない?」


「うん、分かった」


 チャンチャカ帽子はその日から出来るだけ丸っこいものを持って外を散歩するようになった。


 チャンチャカチャンチャカチャンチャンチャン。


 ある日、チャンチャカ帽子がいつものように散歩していると、フクロウとお花が喧嘩していた。

 慌てて止めに入ると、フクロウのおじさんが、「丸っこいのは必要ない!」と怒鳴ってました。お花は「丸っこいのは必要だ!」と怒鳴ってました。

 チャンチャカ帽子はどうすれば良いのか分からなくなって、お魚に相談しました。


「それなら僕に良い考えがあるよ」


 チャンチャカ帽子はまず、お魚に言われた通りお魚を一番高いところに連れて行きました。

 そして、丸っこいものと石ころをお魚に渡すと、真夜中の海にお魚を投げ入れました。

 すると、真夜中に光が差して辺り一帯を光りで照らしました。

 光を見て元気になる者たちは喜びました。同時に、光を見てどんどん元気がなくなっていく者たちがいて、チャンチャカ帽子が空のお魚に向かって教えると、途端に世界が真っ暗になりました。

 でも、完全に真っ暗ではありません。丸っこいものをお魚が持っていた石で叩くと、小さな小さな明かりが付きます。逆に、光を見て元気がなくなる者たちのために、お魚は仲間を連れて空を泳ぎ、丸っこいものを隠すよう工夫したりしだしました。

 この日から、お魚とチャンチャカ帽子のおかげで朝と夜が生まれた。真夜中は一日にほんの僅かだけ訪れるようになりました。

 でも、チャンチャカ帽子は心配症なので、一日一回だけ高いところから皆を覗くようになりました。その際、大きなチャンチャカ帽子の赤い帽子が空に映るのです。


 おしまい。

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