フォルゴル大陸 聖歴127114年(連邦歴0191年)~聖歴127170年(連邦歴0247年)まで

聖歴127114年(連邦歴0191年)。アゼルス連邦共和国の軍の駐屯地を次々と襲撃し大きな成果を上げていたセンザ達だったが、しかしそれは大局にはさほど影響しない<自己満足>に過ぎなかった。何しろ、『祖国の平和を守りたい!』として軍に志願する者は後を絶たず、対してセンザ達は、一人、また一人と仲間を失っていく。そんな中、ラティナが遂に拘束され、国家反逆罪の罪で形だけの裁判の後、公開処刑されることとなる。取り調べとは名ばかりの苛烈な拷問の果てに茶番劇でしかない裁判を午前中に負えて午後には処刑場へと移送されて磔刑に処されることが決まる。仲間に『俺達をおびき出すための罠だ。行くな』と引き留められたセンザだが、自分達の行いに先がないことを悟っていたセンザは、「死に場所は自分で決める」と告げてラティナの下に駆け付け、警備の兵士二十人を倒して満身創痍になりながら磔にされたラティナに「迎えに来た。これからはずっと一緒だ」と告げて、共に槍で突かれ、短い生涯を終える。しかしこの時の光景は、公開処刑を見物に来ていた市民達に少なくない影響を与え、二人を題材にした戯曲が作られるなどして従来の価値観を揺さぶる結果となる。


聖歴127152年(連邦歴0229年)。ラティナとセンザが処刑されて三十八年後、連邦総議長として就任した<ドメール>は、<フォルゴル人>に対する迫害は国益には繋がらないとしてこれを禁ずる法を制定する。ドメールは実は、ラティナの幼馴染であり、陰で彼女を支援していた人物だった。ゲリラ活動では結局救われないという想いから政治家を目指し、才能を開花させた結果であった。ラティナとセンザの公式な墓はなかったが、二人を題材にした戯曲が人気になったことで建てられた記念碑に花を添え、ドメールは涙する。


聖歴127170年(連邦歴0247年)。<フォルゴル人>に対する迫害を禁止する法律は施行されても、染みついた差別意識はすぐには解消されず、フォルゴル人は、限られた保護区で細々と暮らしているだけだった。決して『<アゼルス人>と仲良く一緒に暮らす』というわけにはいかなかったのだ。その中でも、ラティナとセンザのような関係を築く者達も、数は少ないものの確かにいて、<ラティシア>と<センジ>もそういう者達の一人だった。二人は力を合わせて学校を作り、『教育がこれからはよりいっそう大事になる』と考え、フォルゴル人もアゼルス人も関係なく受け入れ、熱心に教育を行うようになる。もちろんそれも容易な道のりではなかったが。


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