ウルカ歴000250年~ウルカ歴000254年まで

ウルカ歴000250年。ノウルトゥムで着々と国を興す準備を行うクルスの下には、何人もの暗殺者が訪れては返り討ちに遭っていた。何しろ『死なない』のだからどうしようもない。寝込みを襲われてナイフを胸に突き立てらえても、戦斧で首を落とされても死なず、たちまち回復して反撃してくるとなれば。中には色仕掛けで油断させて暗器を使ったり毒を盛ろうとした暗殺者もいたものの、ことごとく失敗する。そんな暗殺者の中には、わずか十二歳の少女<マティア>がいた。マティアはクルスが壊滅させた組織で暗殺者として教育を受けていた孤児であった。しかもマティアは、クルスが他の街で組織を壊滅させた際に巻き添えになった夫婦の娘だった。そんなマティアはクルスの身の回りの世話をする使用人見習いとして近付くも、失敗。クルスに容赦なく斬殺される。


ウルカ歴000252年。クルスの下には五万人を超える賛同者が集まり、討伐のためにアムルゼヌ四世が差し向けた軍をことごとく撃破。遂にアムルゼヌ四世に反旗を翻し、王都<ヨブセイトゥム>へと進軍開始。本格的な内戦へと突入する。


ウルカ歴000253年。破竹の勢いでヨブセイトゥムへと迫るクルスの軍になすすべなく壊走を繰り返す軍の様子にアムルゼヌ四世はクルスに対し国の三分の一の領土を与えそこの統治のための全権を与えることを提案するもののクルスはこれを拒否し、あくまで国そのものの収奪を目指すと宣言する。


ウルカ歴000254年。クルス率いる反乱軍は、寝返った国軍なども合流し、十五万の大軍となる。王都ヨブセイトゥムを包囲したクルスはアムルゼヌ四世に王位を移譲するかこのまま戦うかの選択を迫り、アムルゼヌ四世が王位の移譲を拒んだことで反乱軍が王都を総攻撃。徹底的に蹂躙する。しかし一説ではアムルゼヌ四世は王位の移譲を承諾しクルスを城に招こうとしたがクルス側がこれを無視、反乱軍の参加者に<褒美>を与えるために王都での略奪行為の名目を作ろうとしたとも言われている。これによりアムルゼヌ四世は捕らえられてそのまま斬首刑とされ、さらにクルスが王になることを宣言しようとしたその瞬間、落雷が直撃。不死のはずのクルスは黒焦げとなり死亡する。これは、クルスの命を狙って逆に殺されたマティアが死の直前、クォ=ヨ=ムイと契約、眷属となることと引き換えにして、クルスが一番の幸福を感じた瞬間だけに効果のある必殺の一撃を授けたことによるものだった。こうしてアムルゼヌ四世もクルスも失ったヌグレド=カッファイトは国を差配する者が不在となり、そこに一度は撃退したはずの魔獣トロファヌが再び現れ、国を焼き尽くした。


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