第3話



 亮太を好きになって三年。


 高校二年生の夏休みに俺は亮太と一ヶ月間、亮太の祖母の家で過ごすことになった。


「もう随分前に死んだばあちゃんの家なんだけどさ。片付けに行けって頼まれて。すげえ山の中なんだよ。俺一人じゃ怖いからさ、片瀬付き合ってよ」


「へえ。別にいいけど?」


 何だよそれ。


 じゃあそれって亮太と山の中で二人っきりってことかよ。


「マジで? 助かるわ。サンキュー」


 ヤバい。


 顔がにやける。


「おう」



 そして夏休みに入るとすぐに俺たちは亮太の親戚のおばさん家に出発した。


「まあ亮ちゃん久しぶり。随分男前になって。こちらの彼もまた男前ねえ。遠い所までありがとうね」


「いえ、初めまして。片瀬敏行です」


「片瀬くんね。よろしくお願いしますね」


「はい」


「膝が痛くてね、山まで行くのがつらいのよ。本当に助かるわ」


 おばさんは亮太にどことなく雰囲気が似ていて気さくで明るい人だった。


 お婆ちゃんの家まではおばさん家からバスに乗り、山のふもとで降りてから三十分程歩かなければならなかった。


「見えた。アレ」


 亮太の目線の先にあるのは想像していたよりもはるかに大きな山小屋だった。


「デカッ」


「そうなんだよ。俺一人じゃ無理だろ?」


「確かにこれは大変だな」


 山小屋は平屋だが横に長く、十年以上人が立ち入っていないのがすぐにわかるくらい荒れていた。


「悪いな片瀬。大事な夏休みなのに」


 大事な夏休みをお前と過ごせて嬉しいよ。


「ああ、いいよ。一つ貸しだからな」


「はは、おう」


 そう言って笑う亮太の笑顔がただ眩しかった。






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