真夜中の夢

水谷一志

第1話 真夜中の夢

 僕は夢を見た。

 それは真っ昼間に自分がいる夢。そこは断崖絶壁。そんな所に自分が一人ポツンと立っていて、太陽の光が眩しいくらいだ。

 なぜ、僕はこんな所にいるのだろう?どうして、僕は一人でいるのだろう?


 思えば僕は物心ついた時から考え事をしていた。

 その考え事は日に日に深まり、後戻りできない所まで行くぐらいになった。

 そして僕はその考えを文章にしたためたいと思うようになった。

 一生懸命考えた結果を、誰かに読んで欲しい。そして、誰かに知って欲しい。

 そう考えることは人にとって自然なことではないか?

 僕は、そんな風に思う。


 僕は都会生まれだ。

 それも大都会。ただ僕は夜の喧騒は苦手だ。

 考え事をしたい僕にとって、喧騒は天敵に他ならない。

 なので僕はずっと田舎に憧れ、いつかは田舎に住みたいと思うようになった。


 いつしか僕は人から憧れられるようになった。

 僕は大したことをしているとは思っていないのに、僕の考えたことが認められるようになったのか?

 それは良いことだが、僕としては戸惑っていることも否めない。

 僕なんかがそんなに認められていいのか?もっと他に尊敬されるべき人がいるのではないのか?

 しかし人はふとそう考える僕を放ってはおかない。

 いつしか僕はある程度の地位を持つようになった。


 しかし、僕はそんな地位はどうでもよくなった。

 もっと自分の考えを深めたい。自分を磨いていきたい。

 僕の考えはそのような方向に推移していった。

 そして、僕は引っ越すことに決めた。

 大都会を離れ、昔憧れていた田舎で暮らすのだ。

 そんな中、僕は夢を見た。そして今目が覚めた。


 うん?今は真夜中のはずなのに、まだ明るい。

 そうだ。そうだった。僕は引っ越したのだ。


 【ノルウェーのショルデンという田舎に】

 【そう、僕の名はルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン】  


 PS 20世紀を代表する哲学者、ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン。僕、水谷一志が大好きな人物の一人です。 (終)

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真夜中の夢 水谷一志 @baker_km

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