名付けと引き受け

「名付けと流行りの婚約破棄と真夜中デート」という華麗な言葉の組合せに心躍らされる、素敵なラブストーリー。心配症の女教師は意中の天狗との関係にやきもきやきもき、想像力が暴走して、天狗の本心を見抜けません。

名付けという行為が、この作品では重要な意味を持ちます。〈名前〉に関する呪術的要素はファンタジー作品にはつきものですが、これは命名行為が持つ原初の暴力性への感受性に根ざしています。これに対してこの作品が大切にするのは、〈名付け〉を受け入れるという優しさと責任感。名前を授かることは、ただ権威的に支配されるのではなく、相手の想いを引き受けるということでもあるのです。

ところで、天狗といえば空中浮遊している印象がありますが、この作品の天狗は地に足のついた良い男です。そこんとこ、要チェックですよ。