勇者はお姫様を救うのがお仕事です!~お姉ちゃんの魔王討伐を手伝ったら何故か僕にプロポーズしてきました?~

あずま悠紀

第1話

僕はそのメールを見た瞬間すぐに削除ボタンを押した。こんな物を見せられて、誰が好き好んで読むというのか。

確かにこの物語自体は非常に面白かったし、続きを読んでみたい気持ちもあるが流石にこれはアウトだろう。なんというか、こう、倫理観の問題というか。それに何よりも内容が僕の黒歴史ノートと丸被りだと言うことが、僕が一番許せなかったのだ。

そんなことを考えている間に、再び僕の携帯が鳴り響く。しかしそれはメールではなく着信を知らせるものだったため、今度は何かと思って画面を見てみれば電話の相手は父だった。一体何の用だろうか?と不思議に思いながらも通話ボタンを押す。すると受話器越しからは慌てたような父の声が聞こえてきた。

「和樹っ!!大変だ!!」

その声を聞いて嫌な予感を覚えると同時に、「やっぱりか」という思いも覚える。どうやら僕の平穏はここまでらしい。

「どうしたの父さん?」

そう尋ねる僕の声には隠しきれない疲労の色が出ていた。

「ああ実はお前の部屋を整理していた時にな、一冊だけ他のものと毛色が違う本が見つかっちまったんだ!」

そんなことを言ってくる父に対して僕は、まぁ大体予想通りの展開だと溜息をつく。やはりバレてしまったようだ。しかも最悪なことにもあの『俺と彼女の妹日記』がだ。おそらく父が言う本というのは例の禁書の方だろう。よりによってそれを発見されるとは本当に運がないと思うが今はそれよりも大事なことがある。それはつまり、僕の妹との約束を破ることになるということで─── そこで僕はあることに気づいた。そうだよ何を悩んでいる必要がある?別に悪いことなんて何もしていないじゃないか。僕はただ自分が好きなものを好き勝手に書いていただけだしそれの何が悪いっていうんだよ。そうだよ別に隠すことなんてなかったんだ最初から素直に言えば良かったんだよ。僕はもう吹っ切れたので先程までの考えを全て捨てるといつも通りに振る舞った。

「いや〜、ごめんね父さん今まで黙っててさ。それが父さんの見つけた奴のことだよ。あれ?もしかしてその表紙見てわかった?実はそうなんだよ。恥ずかしながらその本のことは昔色々あって誰にも言えないんだけど。だからあまり言いふらすようなことはしないでくれるかな?」

父は僕の様子が変わったことに少し戸惑いを見せたようだったがすぐに立ち直ると言った。

「そっか。なら安心したぞ!実を言うと父さんもそれを見つけてすごくびっくりしてたんだがな!まさかお前がその手の本を書いちまうくらいに拗らせていたなんて思ってもみなかったぞ!」

「えっと父さん?なんか勘違いしているような気がするけど僕は決してそういう系の趣味を持っているわけじゃ無いからな?確かに俺はそういったものも好きだがどちらかと言えば可愛い女の子がたくさん出てくるような作品が好きなだけでさ。だからその、あんまり誤解しないでくれよ」

なんだか話が妙な方向へ進んでいるので、僕は急いで修正を図る。すると父は納得してくれたようですぐに了承の言葉を口にした。

「ん、あー、ああ、なるほど、そういう感じか。うん了解した。ところで一つ聞きたいのだがな、和樹。お主いつの間に女になったんじゃ?」

そう言って笑う父の表情がとても腹立たしかった。どう考えてもその言い方は誤解を生む表現であり、もし誰かが聞いていたら間違いなく変態扱いされること請け合いである。僕はすぐに訂正をしようとした。

「ちょっ、ちげーよ父さん!変な風に捉えないで!俺はちゃんとした男だっての!それにほら、よく思い出してくれよ!小さい頃の写真を!その写真のどこを見ても絶対に女の子には見えないでしょ!?なっ、ねっ?」

「お、おう。そうだな」

そうやって勢いに任せて詰め寄ってきた息子の必死の形相を前にした父は、気圧されて若干引いた様子を見せる。僕はそれを気にせず言葉を続けた。

「そう、そうなんだよ!そもそも父さん、今の時代に性転換とか手術で性別を変えるのはまだわかるけど薬を使ってまで女性になりたい人なんていると思うか?」

そう、僕が必死になるのには理由がある。それは僕のこの身体に施された呪いが原因だった。僕が生まれた時、医師の診断ミスか何らかの理由で、僕の肉体はその男性としての特性を失ってしまい、完全な女性のものとなったという過去があるのだ。この話は当然公けのものではないため知る人は限られているはずなのだが。

(なんだろう、なんか僕の周りでは秘密を暴露する事件が多発してるんだけど。もしかしたら何かの因果律みたいなものが影響しているのかもしれないな)

そんな事を考えつつも僕の話はまだ続く。

「だいたい、父さんが見つけちゃったっていうその本の内容だって俺が自分で考えたものじゃないよ。それはあくまで妹の日記を参考にしただけであって。決して自分の理想とするキャラクターを当てはめた訳じゃなくて─────」

と、そこで急に受話器の向こう側で大きな笑い声が響いた。どうやら父が大爆笑を始めたようだ。何がそんなに面白かったのかわからないので戸惑ってしまう。

「おいちょっと!人がせっかく説明をしてあげているというのに笑わなくたっていいだろ!」

「いやいや悪かったな。ただお前の話を聞けば聞くほど面白い展開だったんでついな」

「どういう意味だよそれは?」

「そのままの意味だぞ?つまりな和樹、父さんが見つけたのはその『勇者はお姫様を救うのがお仕事です!』だな。それでだな、その作品のヒロインの中に一人だけお前とそっくりなのが出てきてるんだ」

僕はそこでやっと理解が追いつき父に言った。

「えっ、マジ?でもそれおかしくないか?確かに似てるのはその妹キャラなんだけどさ、その子って姉がいるんだよ?そして主人公は姉の方を攻略するはずだったんだけど。まぁ結局は主人公とくっついたんだけど」

僕の言うように、この作品は僕が以前書いた物語とは違い妹がメインではない。むしろ主人公がその姉の方を気に入っており最終的にはハッピーエンドを迎えたという終わり方だ。僕としてはその妹も非常に魅力的だったし、正直言えばかなりお気に入りの作品の一つでもある。

僕の話を聞いた父は再び大声で笑い出した。今度は先程の比ではなく、受話器が耳元にあるせいで僕の鼓膜を破らんばかりの大音声に僕は一瞬意識が飛びそうになる。僕は思わず叫んだ。

「もう何がそんなにおかしいんだよ!!」

「いや、まぁすまんかったな。どうせまたお前の作った物語が面白かったとかかと勝手に想像していたから。まさかこんな展開になってるとは思いもしなかったんだ。だから許してくれ!」

僕は父がなぜそこまで大喜びなのか分からなかったが取り敢えず許してあげることにした。何にせよこうして無事に誤解も解けたことだし。すると、父はとても嬉しそうな声音で尋ねてきた。

「そうだ和樹、ちなみにどんな内容なんだそれは?よかったら後学のために父さんにも教えてくれ!」

そう聞かれれば僕としても悪い気はしないため、快く答えることにする。それに僕自身もその作品がどうなったかは気になっていたところだ。だからその物語の顛末を話す。すると、それを全て聞いた父はこう口にする。

「ほう、それは凄いな。まさか、あのヒロイン達が本当にその世界にいるというのか?まるで本当の異世界に行っちまったみたいだな!それにその物語を書けば俺の新作にも使えるかも知れん!よし、それじゃあその物語を早速送ってくれ!あ、できれば俺にも出版できるように頼む!金ならなんとかなるから!なっ、いいだろ?」

「ん?ああ、別に良いよ。ただ俺からも一つお願いがあるんだけどいいかな?」

僕の話を聞いてすっかりやる気になっている父に向かって、一応念のため聞いておく。もしかしてとは思うけど、父さんのことだからお金が足りないなんてことはないはずだ。ならば考えられる理由は一つしかないと僕の直感が告げていた。

「なんだよ改まって?」

「もし仮に俺が書いた作品を父さんの名前で出すことになったらだけどさ、その時に僕の名前って使わないで欲しいんだよ。だって父さんって作家名で顔は出てないけど、世間的には割と有名な方じゃんか。そう簡単にバレるとは思わないけど万が一にもバレないようにしたいんだよね」

僕のこの言葉を聞いた父はすぐに「大丈夫だ」と自信満々に返事をした。一体どこにその根拠はあるんだと疑問を覚えずにはいられないくらいには堂々としていて逆にこっちが心配になってしまうほどだった。だが父もプロである。僕よりも遥かに修羅場はくぐっているであろうその道のプロが断言したのだ。僕は父の言葉を信用することにする。だから僕はその願いを伝えるために言葉に力を込めてはっきりとした口調で口を開く。

「ありがとう、父さん。それじゃあ俺はこれからすぐに書く準備に取り掛かるよ。あ、それと今度家に帰って来たときに、母さんによろしく伝えておいてくれないか?実は今回帰ること自体をずっと渋ってたんだけどさ、父さんのおかげで覚悟が出来たよ。本当にありが────」

「わかった任せておけ!それじゃあ和樹!早く書いてくれよな!期待しているからよ!」

僕の言葉を遮ってまで早口でそう言った父は、最後にもう一度「じゃ、じゃあまた後でな」と呟いて一方的に電話を切ってしまった。

(なんでいきなりテンション上がったんだ?もしかして父さん徹夜明けとかで頭が回らなくなったのかな?)

よくわからないながらもそんな事を考えながら僕も通話を終えるとすぐに執筆を開始した。そう、僕の夢である漫画家への階段を踏み出すためにも僕はこの作品を完成させなければならない。そう考えると今まで以上に筆が進むような気がした。

「うーん、流石に書きすぎたかな?少し寝ないと明日に支障が出るかもな」

時刻はすでに朝の5時をまわっていた。普段ならすでに眠りについている時間帯だったが僕は今必死にペンを動かしている最中である。

僕は書き終わった原稿を読み直す。

「うん、やっぱりちょっと内容が濃いかもしれんな」

今僕は、自分が書いた作品の修正をしていた。昨晩僕は父と話した後にすぐにこの話を書くことを決意したのである。そして一晩かけて書き終えて現在に至るわけなのだが、いざ読み直してみるとその分量が予想よりも多かったのである。

なので僕はこの物語の主人公の設定を変更することに決める。

「よし、それじゃあ名前は────っと」そうして名前を書き始めた僕はある事に気づく。

(しまった、これって主人公の名字を決めてなかった。父さんは僕の名字をそのまま使っちゃったわけか。そうかー、確かに僕の苗字だとすぐに特定されてしまうもんな。困ったな、じゃあいっそのこと違う人に設定を変えてしまおうか)

そこで僕は一旦筆を止める。それから少し考えた僕はふと閃いたことがあった。

そういえばこの主人公の妹は確か姉のことを尊敬していたんじゃないっけか。それに妹が姉を慕っているという設定は、どこか僕の憧れる人物に似ていたのだ。だから僕は妹の気持ちを代弁する形で、彼女の名前を漢字で表記する事にした。僕は改めてその名前を口にした。

「えーと、この主人公の妹の名前は──」

「おはよう!いや〜、それにしても昨日はよく寝たぜ!」

「父さん、今帰ってきたの?相変わらず忙しいね。というか今日は何時に帰ってきてたの?俺が起きた時には父さんは既にいなかったから」

父が起きてきたのはちょうど僕の作業も区切りの良い所まで進んだので一休みしている時のことだった。どうやらこの時間に父が起きているということは珍しく相当疲れているらしい。

「おっ、なんだお前まだ起きてるじゃないか?そんな事してたのか?全く、夜はしっかり休めよ?身体を壊したら元も子もないぞ」

どうやら僕の作業を覗いていたらしく、僕の手元を見てそう言った。そんな父の言葉を聞きながら僕は素直に感謝の言葉を告げることにした。何にせよ、父がこうして朝に起きてきてくれたのは非常に助かることだった。なぜなら───

「うん、ごめん。ちょっと気になる作品を見つけちゃって、ついつい熱中しちゃったんだよね。ところで、父さんが帰ってきたのって僕が起きる時間よりも随分前だったみたいだけど。そんなに疲れが溜まるくらい仕事をしてきたの?」

僕は気になっていた事を父に尋ねてみた。すると、父から思いもよらない答えが返ってきた。僕はその回答に驚いたものの、それよりも先に確認しておかなければいけないことがあったのでそれを優先した。それはつまり、その作品の出版権の事だ。

僕のその質問に対して父はしばらく悩むとようやく結論を出したようで、申し訳なさそうな表情でこう告げてきた。

「それがだな、和樹」

父はそこで一度話を区切るとゆっくりと息を整えてから言葉を続ける。

そしてその一言が発せられると同時に父は、手に持っていたカバンの中から一つの雑誌を取り出すと机の上に置いた。それを確認した瞬間、僕の脳は思考することを完全に止めてしまう。いや正確に言うのであれば停止したわけではなく完全にショートしてしまったという方が正しいのかもしれない。何しろ、僕が今まで目にしたことがないくらいにその冊子が大き過ぎたからである。

僕は震える声で父に問いかけた。

「な、なぁ父さん?これは一体何だい?」

「ああ、実はお前が昨晩言っていた物語の続きを是非とも読ませて欲しいと思ってな。それでまぁ父さんが出版社に連絡を取ってみたんだ。そしたらまぁすんなり了承してくれたんでお前に報告するためにこうして早めに帰って来たんだ。いや、まさかこんなことになるとは思ってなくてさ、本当は今度ゆっくり帰ってくるつもりだったんだがお前の方にも色々と事情があったんだろ?それに、和樹のことだからきっと凄く面白い物語になっているに違いないと思っていたんだが、その様子じゃ期待していいみたいだな!あっ、もちろん父さんが責任を持って本にするから、そこは安心してくれ!あ、ちなみに題名が『俺と彼女の妹日記』って言うんだ。なんか恥ずかしい名前だけど意外に評判はいいんだぞ。それでは俺は早速これを編集者に見せてくるよ!」

そう言って僕が固まっていることにも構わず父さんは仕事に行ってしまう。一人になった部屋で、僕はその冊子を手に取ってみることにした。

「い、一応目を通しておくか」

そう口に出した僕は、恐る恐るその表紙をめくってみる。そこにはこう書かれていた。

俺と彼女の妹物語(続)

キャッチコピー:主人公にお姉ちゃんがいるなんて私は絶対に認めません!

あらすじ: ある日、主人公の元に姉を名乗る女性が押しかけてきてそのまま一緒に暮らし始めることに!?しかもその女性は自分の実の妹だという衝撃の事実!一体どういうつもりなのか主人公は理由を問いただしたところ彼女は「私があなたのお姉さんになりたいから」と答えました!果たしてその目的は一体何なのでしょうか?!そして彼女がお姫様だということを知った主人公の運命とは────── 僕の意識は完全に覚醒すると勢いよく布団から跳ね起きた。それから急いで時計を確認して時刻が既に9時過ぎであることを理解すると、慌てて支度を始めるのであった。

「は、走れば間に合うよな?あ、いや、ダメだ遅刻する!!」僕はそんなことを叫びながら、全力で通学路を走る羽目になった。

教室に着いた頃には僕は肩で息をするようになっていた。それも当然で僕は家からここまで猛ダッシュで登校してきたからだ。僕が席につくと隣のクラスメイトであり親友でもある安藤裕一が声をかけてきた。彼は僕と違ってあまり体力がないはずなのに何故余裕で学校についているんだろうか、僕は心の中で不思議に思うが今はそんなことを考えるより自分の心配をしないといけないな。そう思った僕は一先ず深呼吸をすることにした。しかしいくら酸素を求めてみても全くといっていいほど効果がなかったので仕方なく僕は鞄から取り出した水を一気に飲み干すことに。

そして水を飲むことで多少ではあるが落ち着きを取り戻した僕はあることに気づく。いつもなら、このタイミングでも話しかけて来るであろう友人が全く来ないのである。それどころか、今はまだ朝のHRすら始まっていないので他のクラスの生徒さえ誰一人としてここにはいなかった。一体どうしてなのだろうと首を傾げていたら、唐突に声をかけられた。その声の主は担任である山吹先生で僕が振り向いたのを確認すると話を切り出してくる。

「おはよう如月。ところで、昨日お前の父さんの知り合いって人から連絡があってよ、なんでも例の禁書が見つかったってさ。もう知ってるか?」

「あー、いえ、昨日の夜に父と電話で話しまして。そこで僕の作品が見つかって、どうせだったら自分で出版してみたいと思ったので僕にその権利を売ってくれないかと頼んでいたんですよ。ただまだ実際に話が進んでるわけじゃないですけどね」

僕のそんな説明を聞くと、山吹先生は特に驚きもせずに「なるほどね」と言ってくるとこう続けた。

「あの、俺としてはお前にそういう話が来たことはむしろ良かったと思っているぞ。というのもだ、正直言ってその本の内容があまりにもぶっ飛んでいて俺達には手に負えないと判断したからだよ。それにな、この前話したこと覚えてるだろ?ほらあれだ。あの作品の結末はお前の自由に任せておいた方が良さそうだっていう」

僕は山吹先生の言葉を聞いて思わずドキリとする。それってまさか、あの物語の設定のことを言っているんじゃないだろうか?もしそうならこの人って実は僕の父さんと仲が良いんじゃないのか?そういえば以前、うちの家に何度か来たことがあるって前に聞いた記憶があるな。ということは僕の知らない所で父さんがこの人に僕達の事を相談していたりして───。僕はそこで嫌な予感を感じたので再び山吹先生に問いかけた。

「それで、実際のところ僕の作品ってどうなってるんですか?」

僕がそう問いかけると、なぜか先生はニヤリと口角を上げて意味あり気な笑みを浮かべると僕の顔を覗き込んできた。どうやら、この人は何か僕にとってよろしくない事を隠しているらしい。だが、そんなことをされたとしても僕にはどうしようもないのでここはあえて諦めて、僕は素直に相手の返答を待つことにした。すると、そこでチャイムが鳴ると同時に扉が開いたのと同時に一人の女子生徒が教室に入ってきた。彼女は自分の名前を呼ぶと返事を待たずに勝手に入ってきてから僕の前までやって来るとこう言った。

「おはよう、和樹!今日も相変わらず可愛いね!うんうん!その制服もとっても似合っててとっても良いわね!というかやっぱりこの学校の生徒の制服を着ていても違和感が無いわね、まるで私と一緒の中学に通っていた頃となんら変わり無いくらいに!えへっ、えへっ、えヘへッ♪︎」

いきなりそんな奇怪な発言をしては頬に手を当て身悶えているこの少女の名前は天堂唯。彼女も一応僕と同じクラスの一員で、しかも隣の席にいるのでそれなりに話す間柄なのだが、最近ちょっとばかり様子がおかしい。具体的に言えばここ数日の間に妙にハイテンションな言動が多くなっていて、時々こうしておかしな行動をしているのを見かけては僕は内心ヒヤヒヤしている。なぜなら、そう言う行動が周りに誤解を与えている可能性が極めて高いからである。

実際、少し前までは大人しい性格だったはずの彼女の変貌っぷりを見てクラスの大半の人間は既にドン引き状態だし、一部の人達はその異常さを不気味に感じているらしく僕に助けを求めてくることもしばしばあった。そして、僕は決まってこう言う事にしているのだ。

(ああいう状態になった時に話しかけたらダメですよ。アレが暴走モードに入る前兆なので、そうなる前に触れてしまえばこちらが被害を被ることになります)と。

(しかし今回はその相手が僕なんだから困ったものなんだよな。あの様子だとまた僕を巻き込もうとするに決まっている。ああもう、こういう時の為の秘策を用意しておかなかったのが痛いな)

僕が自分の愚かな過去の行いに後悔をしていると、ふと目の前の少女と目が合ってしまった。その視線は明らかに僕を捉えており、僕は慌てて目を逸らすがそれは失敗に終わることになる。次の瞬間、僕に向かって一直線に駆け出すとそのままの勢いで飛びかかってきた。それをどうにか受け止めた僕は彼女を宥めにかかるのだが。そんな僕の様子をクラスメイト達は唖然とした表情で眺めていた。まぁそれは仕方ないことかもしれない。なにしろ彼女は、普段であればとても大人しく真面目な子なのである。それがこんな風になる原因など普通は想像できるはずもなかった。ちなみにその要因というのが彼女の姉を名乗る謎の人物が家に住み着いたことに起因していて、その件に関しては未だに解決の糸口を掴めない状況が続いている。その為なのか、最近では僕の所にまで「妹に一体何を吹き込んだんだ!」みたいな文句が言いにくる生徒達がちらほらと見受けられるようになった。もちろんその対応は全て無視している。

というか本当に彼女の姉を自称する人物は誰なのだろうか? 少なくとも、僕は彼女とそっくりの顔をした人を目にしたことが一度もないのは間違いないが、そんな人が実在する可能性はある。そもそも、彼女の両親は娘二人を別々の学校に入学させるつもりだったようなので僕が知る由もないがどこかで血の繋がりを持った家族がいると考えるべきだろう。とはいえ僕はその正体を探ろうと思わなかった。理由は至って単純で、面倒臭い上に、下手な好奇心は猫をも殺すとも言うではないか。だから僕はこの件については考えるだけ無駄だと決めつけて思考を遮断したのである。

僕はそんなことを思い出しつつ、現在、彼女に抱きしめられている現状をなんとか打開しようと必死に頭を悩ませていた。

しかしいくら考えても思い浮かぶ案は一つしかなくて。僕に残された唯一の手段とは─── 僕が黙ったまま立ち尽くす様子に気づいたからなのか、彼女の腕の力が弱まる。それに伴って僕はようやく解放された。とりあえず僕はホッと息をつくと、再び椅子に座り込む。それから、机の下で手を組んで考え事をする体勢をとった。

そう、僕は先程思いついた方法を実行することに決める。その方法とは───現実逃避をするということ。つまり今から行われる授業はまともに聞く気になれないということだ。

だって僕が座っている席は教室の真ん中にあるし、なにより僕の両隣には何故かいつも唯がいる。そのお陰で先生が板書する内容がよく見えなくて正直困っていたのだ。それにだ、僕の視界に映る光景といえば、右からは唯、左から唯、正面からも、左斜め前も、後頭部しか見ることができないのである。正直、これでは授業を受けるどころではなかった。

(これは、流石に、きつい!!)

そこで僕は考えた末に一つの答えを導き出した。それは隣の彼女も同じことなのではないかと言うことである。そこで、僕は試してみることにする。まず最初に僕の方から仕掛けてみる。するとどうしたことか、僕の肩に突然何か柔らかいものが触れる感触があった。僕は慌てて横目を使ってその部分を確認してみると、案の定、そこにあるのは人の肌の質感だった。それもかなり密着した状態のようで、そこからは体温のようなものを感じることができる。僕は少し恥ずかしいと思いながらもその部分に指先で触れてみた。

(うーん、やっぱ女の子の体って柔らかいな〜。それになんかいい匂いがするし。あれ?そういえば唯のって意外と大きかったような気がするな、たしか去年の健康診断の時に同じクラスになった男子生徒と───って、僕は何を思い出しているんだ!?忘れよう。忘れるべきだ、そうしよう!あ、でも確かあの子は胸が大きいせいで運動部を辞めたとか言っていたな、もしかしてそういうことが原因でストレスでも溜まっているのか?)

僕が再びそんなどうでもいいことを考えていると、不意に右肩に強烈な痛みが生じた。どうやら僕の肩に頭を置いている彼女が歯を立てたようだ。僕は咄嵯の出来事に驚くがすぐに平静を取り戻す。そこで、次に彼女は僕の手を強引に引っ張りだして握りしめてきた。その動作はとても力強いもので、とても女子とは思えないほどだ。

そこで僕は理解してしまう。きっと彼女は僕の意識をこちら側に向けさせまいと、このようなことをして妨害をしているに違いないと。そこで僕の作戦も決まった。

僕はすぐさま左手を伸ばして、相手の手の甲の上から重ねるようにして包み込んであげるとこう囁いた。

「ほら、大丈夫だよ。僕はここにいるから」

「ッ!!!」

途端に僕の手を握っていた力強さは消え失せ、代わりに全身の震えが僕にも伝わって来る。それでもまだ抵抗しようとしているのか。もしくは僕に対する羞恥心の現れなのか。彼女は僕の耳元に顔を寄せると、吐息交じりの声でこう囁く。

「わ、私ね。今日は和樹成分が不足してると思うの」

その発言の意味が一瞬分からずに僕は呆然としてしまった。そして僕にその意味を尋ねる暇すら与えず、唯は再び僕を抱き寄せようと両手で僕の体を引き寄せてくる。そこで僕は思い出す。唯という人間は極度の変態であることを。僕に抱きつきたいがためにここまでのことを行う人間だというのを忘れていた。そして、今の僕の状況は非常にマズイものであることも。

何故なら、僕と彼女の顔の距離は三十センチもなく、あと一秒も経てばお互いにキスできてしまう程の近距離にいる。こんなところをクラスメイトに見つかれば間違いなく僕が社会的に終わることは確実だろう。それだけはなんとしてでも避けなければならない。だから僕は、彼女の両腕を掴んだかと思えば、それをそのまま勢い良く引き離すことに成功して距離を空けることができた。唯はそれに抵抗することができず、僕の拘束を解くことができないでいた為、そのままの状態でしばらく硬直しているだけだった。それから数秒間の時間が経過したところで彼女はゆっくりと口を開くと、どこか残念そうな表情をしながら呟いた。

「そっか、やっぱりダメか」

そんなことを言う唯に対して僕は冷や汗を流す。おそらくこの人は確信していたのだ。僕の心は既に誰かに奪われてしまっているという事実を。その相手こそが、この人の姉を名乗る謎の存在が関係していることもまた知っていた。だからこそ彼女はあんな行動に出たのだと悟った僕は内心で嘆息するしかないのであった。なぜならこの状況は明らかに僕の身が危うかったからだ。下手すれば今この瞬間に僕は襲われていても不思議ではないほどの危険な状態であるわけなのだが、そうならない理由はたったの一つだけであるのは明らかだった。それは、彼女の行動にはある一定の法則があるからだ。それは彼女の姉である人物が絡む時のみに発揮されるものであり。逆にそれ以外の時は普通の可愛い女の子なのだ。なので、今のところはまだ僕はその事実を知るまでには至らなかったのだった。

(というか姉ちゃん、あんた一体どこ行ったんだよ。僕達を放って勝手にいなくなったと思ったらいつの間にか家に戻ってきてるし、本当に訳が分からないよ。もしかして姉ちゃん、僕達に何か隠し事をしているんじゃないかな)

僕がふとそんなことを考えてしまったそのタイミングで、廊下側の扉が開かれて一人の生徒が入ってきた。

「おはようございます。皆さん揃っていますか?」

その生徒とは僕が所属する学級委員長である天川 優美さんのことだ。見た目はかなり大人っぽく、とても綺麗なお嬢様って感じの女性で、しかもスタイルがとっても良くて、出るところは出ているといった具合である。ただそんな完璧に見える彼女だが、実は弱点が一つだけあった。

それは───重度のシスコンであるということだ。そんな彼女の性格がどうしてそんな感じになってしまったのかという理由はよく分かっていなかったりする。だけど僕はその原因が大体予想できているからこそ困っているのだ。その理由というのが僕に好意を抱いていて、それがあまりにもしつこい為に仕方なく告白を受け入れた結果、見事に付き合うことになったというのが事の真相である。ちなみに彼女との馴れ初めを語るのはこれくらいにしておこう。だってその話をするのが非常に面倒臭いからである。

ちなみにその件は誰にもバレていないはずだった。唯は僕にべったりだから気づくはずもないのだし、そもそもクラスの生徒は僕と彼女の関係を知らなくて。唯一知っている人物は、唯の姉の『姫野 楓花』さんぐらいなものだ。それなのになぜか僕は彼女にだけはそのことがバレていて───いや、まぁそれに関してはもういいだろう。これ以上は語る必要のない話でもあるのだから。僕はそこまで思考を巡らせると頭を左右に振ってそのことを追い払うことにした。

すると、そこで僕の肩を軽く突く存在が。振り返るとそこにはニヤついた笑みを浮かべている唯がいた。僕は思わず嫌な予感を感じ取ってしまうが。すぐにそれは現実のものとなり、僕の耳に衝撃の言葉が届けられる。

「ねぇ、今日の放課後に一緒に遊ぼうよ!」

そう言って彼女は机の中からとある物を取り出すと僕の前にそれを見せびらかすようにしてくる。

それは唯が大好きだというゲーム、つまりはギャルゲーと呼ばれるものの一つであるラブコメものだった。そのソフトを見て僕は大きくため息をつくと唯に問いかけた。

「もしかして、唯は僕が断ると思っているのか?でも、断らないってことを僕は分かっているはずだぞ?それにだ、僕は最近ずっと家でゲームをしていただけあって、このゲームのやり方もそれなりに覚えてきたからな。むしろ教えてくれないと困る」

「ううん!そういう意味で言ったんじゃないの。だって私が遊びに誘うときは、いつも私の家に行くじゃない。今回はお姉ちゃ───じゃなくて。わ、私の家に招待したいなって思って。ほ、ほらっ!あ、あそこって防音設備とかしっかりしてるから思いっきり騒いでも大丈夫なんだよね!それでさ、久しぶりにみんなで集まって勉強会とかしようかなーなんて思ったの!」

そこで僕は気づいてしまう。唯がわざわざ学校にまでゲーム機を持ち込んでいた本当の理由を。

そう、おそらく彼女は、僕を自宅に誘おうとしていたに違いないのだ。それも僕と一緒にゲームがやりたかったからとかではなくて、おそらく僕の妹が関わっていることが原因でだ。そのことから、僕はある仮説を立てることができたのである。それはきっと───彼女は僕のことが好きであるのにその感情を隠そうとしているということだ。それはなぜなのか、それは彼女の気持ちに気づいて欲しいからかもしれないと僕は考える。そして同時に彼女がその感情を知られたくないのもなんとなく理解することができた。

(つまり、この誘いに素直に応じてしまったらまずいってことだよな。いや、別にまずいことは何も起こらないと思うんだけど、唯の性格的に何かが起こる可能性が無きにしも非ずってことでしょう?というか、その考えが一番しっくり来るしね。うーん、これは困ったな〜)

僕は悩みに悩んだ末、どうすればいいのか結論を出すと、とりあえず適当にあしらうことにした。

「あ、あー。なるほどね!いや〜悪いけど僕はちょっと今日忙しくて遊ぶ時間がないんだ!ごめんな!でも唯の方からは連絡してくれても大丈夫だから!また今度機会があったら行こうぜ!約束する!な!あ、そうだ!ほら、これやるから今日はこの辺で終わりにしようか!僕、早く帰らないと行けない場所があるんだ。というわけで、さらばだ!」

僕は素早く鞄を掴むと教室を後にする。そして僕は全力で駆け出した。もちろん唯から逃れるためである。僕は彼女が追ってくる様子がないことを確認すると安心して帰宅路を進む。その途中で僕はふと思いついてしまう。先程まで、彼女の行動パターンが理解できないでいたのに、急にある一つのことに閃いたのである。

僕は走りながらスマホを操作するとメッセージアプリを立ち上げる。そしてその画面に表示されたのは、『俺と彼女の妹日記』の新作投稿日を知らせる通知であった。僕はそれをタッチして画面を切り替えると同時に、急いでそのページへと飛ぶ。そこに書かれていた文字はこうだった。

───新着作品一覧───

《新作 勇者は魔王を倒すために旅に出る。》(イラスト:雪苺水)

内容:主人公の男の子は、異世界に転移してしまったみたいでした。そこで女の子が助けてくれるのですが、その子の様子が少しおかしく、どこか怯えたような態度を取るんです。その理由は主人公にも分かりませんでした。そこで主人公がそのことについて聞くと、女の子はこう答えた。『あの人に追いかけられているの。あなたもあいつらに狙われてるから注意した方がいいわ』と。そしてその数日後に謎の怪物が女の子を狙っているところを目撃することになりました。それからというものの主人公は彼女と共に戦う日々が続くことになります。果たして主人公は彼女を救い出すことができるのでしょうか。そして、彼女の正体はなんなのであろうか。それはこれからの物語が教えてくれるはずです。

《短編 姉ちゃんの彼氏になりました!》(挿絵有)

概要:ある日のことです。姉である唯さんが見知らぬ男の人を連れてきて、紹介してきたんです。しかも、いきなり『結婚することになったから』と宣言されてしまいまして。私は混乱してしまいます。だってその男の名前はまさかの主人公である和樹君で、その相手が誰であるかと言えば私の大好きな姉である唯さんのことが好きだと公言している人物だったからです。しかも、この人はどう見ても高校生くらいなのにすでに社会人になっているようで、見た目はイケメンだったのが唯一の救いでした。そんな彼と姉の仲睦まじい姿を見てしまって私は一体何をすればいいのでしょう?こんな時、どんな顔をすれば良いのでしょうか?

「おい、嘘だろ」

思わず僕は立ち止まってしまった。僕は慌てて確認作業を開始する。だがそれは既に後の祭りだったようだ。

『僕が書いている作品の新作がもう投稿されているなんて、ありえない』

そう、僕はそう思っていたのである。しかし現実は甘くなかったらしい。僕の作品を宣伝する為に、姉である『姫野楓花』のペンネームを勝手に使って勝手に僕の作品を勝手に載せたのである。その犯人は僕が想像していた通りの人物であり。その人のことはよく知っている。というか、僕の実の姉の姫野楓花のことで間違いないだろうと僕は思うのである。

「どうしてあんな人があんな作品を書いたんだ?」

そう呟きながらも僕は足を進めることにした。ただ一つ分かったのは、おそらく僕には平穏が訪れることはないということだけだ。

僕達はいつものように通学すると教室に向かったのだが。教室の中に入った瞬間に僕は絶句してしまう。

その理由は、僕の席の隣に唯がいるからではない。いや、それが原因なのは間違いない。しかし、そんな理由ではなかった。なぜなら、僕達が自分の座席に座ろうとすると───なぜか僕と唯の間に天川優美さんの姿が映っていたからだ。僕はそんな光景に目を疑ってしまう。なぜならば天川優美という女性は普段はこういうことをしない人だったのだ。

それはなぜかといえば彼女は非常に生真面目な女性であり、学校では生徒会長を務めているほどの実力者だ。だからこのような不真面目な行為にはとてもじゃないけど見えなかったので。だから僕は困惑を顔に出さぬよう努力をしながら、彼女に尋ねた。

「あの、どうしてこんなところで僕達を待っていてくれたのかな。も、もしかて、僕に用事でもあるとかかな。でも今は先生もいないし、授業が始まってしまう前に、せめてホームルームが始まるまでは────」

「違いますよ。私はあなたと唯さんとの会話を邪魔しないようにしているだけです」

彼女はそう言って僕に微笑んでくれた。その優しい笑顔を見ると僕は安心して肩の力を抜くと、そのまま彼女の言葉を待つことにした。すると、そこで彼女もまた本を読み始めたので僕は仕方なくスマホでラノベを読んで時間を潰すことにして。しばらくすると、唯がこちらの様子を伺うように話しかけてきた。

「ねぇねぇ!今朝から気になっていたんだけど、二人はいつも一緒に登校してくるのに何で今日に限って別々に来たの?あ、別に二人の関係が悪いっていうわけじゃなくて単純に気になっただけなんだ!」

唯は不思議そうな表情を浮かべるとそう問いかけてくる。確かに唯がそう思うのは無理もないのだろうが。僕としては、いつもは唯に手を繋いでもらうのが当たり前だったので。唯と付き合う前は一人で歩いていたことを思い出して、思わず苦笑いを漏らしてしまう。しかしここで僕はとあることに気づいた。その唯の反応を見てである。もしかして僕が一人で登校することに不満を抱いているのかと思ってしまい、思わず聞いてみる。

「いやいや!僕がお前と一緒に行かなかった理由は単純だぞ!その、あれだ。僕はお前に変に勘違いされるのを恐れてあえて距離を置いたという訳だ!ほらっ、やっぱり好きな奴と一緒に学校に来るなんて周りに見られたら色々と面倒なことになるからさ。でもな、こうして二人揃って同じ学校にいる以上、いつか噂は立つと思うんだよ。それが嫌なら早めに覚悟を決めておけって言いたいところなんだけどな」

僕の言葉を聞いて唯は頬を赤くして黙り込む。僕はそれを気にせず話を続けていこうとしたその時であった。急に唯が立ち上がって言う。

「お、お昼ご飯は一緒に食べてあげるから、私の友達になってくれないかしら?その、もし迷惑だったら断ってくれても全然いいんだけどね!というわけでお願いします!」

「へぇ〜!私と唯が仲良くなったんだ!それは嬉しいなぁ。えへへ、これから毎日お昼が楽しくなりそうだな〜」

そう嬉しそうに笑っている唯を見つめて、僕もつられて笑ってみせる。

そして僕は思った。もしかするとこの関係は唯にとって良くないものなのではないかと思えてきてしまう。だからこそ僕としてはこれがきっかけでこの先も付き合い続けたいという意思を込めて。改めて僕は決意する。やはり、僕に出来る限りのことで彼女の力になろうと───── そしてその日の夜。

「よし、これで準備は整ったな」

僕はそう言うと、スマホの電源を入れてチャットアプリを開くと、『僕と彼女の妹日記』のアプリを立ち上げて投稿された作品を確認してみた。

『俺と彼女の妹の出会いの日(イラスト:雪苺水)』(イラスト:雪苺水)

『勇者と魔王の日常(イラスト:雪苺水)』(イラスト:雪苺水)

『妹は兄のことが好きすぎて(イラスト:雪苺水)』(イラスト:雪苺水)

僕はそれを見た瞬間に全てを理解できた気がした。

そうして、その日を境に僕と唯の関係に変化が訪れていくことをまだ誰も知らないのであった。

僕は今現在進行形で困り果てていた。それはなぜかといえば僕が通う学校で一年生である僕に対して二年生からある誘いが舞い込んできたからで。その内容とは簡単にいえば『僕に告白をしてください』というものなのだが。しかしこれはあくまでも頼み事をしたいのでどうかよろしくお願い致しますという感じなので僕から何かを言うことはできない。そして僕はどうしたものかと考え始める。しかし僕がそんなことを考えた時である。僕のスマホからメールが届いている音が聞こえてきたので。僕は確認の為にそのアプリを開いてみることにすると、そこには驚くべきことに『俺の妹が勇者のくせに妹すぎる』の公式キャラクターのイラストが映し出された。そのイラストが指し示す先にあったのは、『勇者の俺がお兄ちゃんだった件について(イラスト:雪苺水)」という文字だった。

『勇者が魔王を倒しに行くよりも、妹の方が可愛いに決まってるよね?』

───そう、そのイラストには勇者ではなく魔王の格好をした妹が描かれているのだった。しかもかなりクオリティが高い。僕はそこでふと思いつくことがあった。

「なぁ、唯、魔王を倒したら次は一体何をするんだろうか?」

「魔王を倒せば次の目的か、それは良い案だと私は思う。それで具体的には何をしたいかは決めてるの?」

「ああ、僕としてはな魔王と勇者が結ばれる物語を書きたいと考えている。ただまあこれに関しては僕の趣味だから。あくまで一つの提案だと思ってくれればありがたいかな。そしてもう一つ思いついたのは、実は僕達は魔王を倒す為に旅に出ていてその道中で勇者は女の子に惚れちゃった!そして二人は愛を深めながら旅を続けたんだが、その途中である女の子は敵に殺されてしまう。そして怒り狂った彼は敵のアジトに乗り込み、皆殺しにする。そしてそれからしばらくして、女の子の敵を討ち取った後に彼はこう呟く『これで君はいつまでも幸せに暮らすことができる』ってな。だけどそこにいたのはすでに死んでいたはずのヒロインの姿があって─────」

僕は自分の考えた妄想を口に出してみると。それを聞いた唯はとても良い反応を示してくれる。まるで僕が語った設定の虜になったかのように目を輝かせて。僕はそれに調子に乗ってさらに語ろうとしたその時だった。

「そっかー!和樹もそういう作品が書きたかったんだ!うんうん、それじゃあまぁとりあえず和樹は頑張ってくれたまえ。私もできるだけの協力は惜しまないからさ。ただ、もしも途中で飽きたり、もう書くのが嫌だなって思ってもその時に考え直しても遅くはないよ?だからあまり気負わないように、ほどほどで書いていけばいいと思うんだ。だってそうでしょう。いくら和樹の書いた作品で皆んなが面白かったとしても、それは和樹が書いていたからこそ面白かったのであって。私が面白いと言ったら他の人が見てもつまらないかもしれないでしょ?それと一緒だよ。自分のやりたいことをやればいいんじゃないかな」

唯は僕に向かって優しく笑いかけてくれた。それは僕にとってはとっても嬉しいもので、自然と笑顔が溢れてきてしまい。僕達は互いに見つめ合うとそのまま二人で抱き締めあったのだった。僕はそんな彼女のことを本当に好きになってしまったんだなと自覚すると、彼女の体をより強く抱きしめた。そして僕は彼女への想いを伝えようと─────

『好きです、付き合ってください!』

僕はそう口に出した後、彼女に思いの丈をぶつけると彼女は顔を真っ赤にしながら。それでも僕を受け入れてくれて。こうして、僕と彼女は無事に恋人になることができたのである。そして僕と彼女はその日から毎日キスをするようになった。その行為はとても甘くて幸せな気持ちになれて。僕達の距離は一気に縮まることになる。しかし、僕には一つだけ悩み事があった。そのせいもあって、僕と唯がイチャイチャできるのは、僕が学校を休んでいる時の限られた時間だけであった。だからと言って別に僕はそのことに関して不満があるわけではなかった。

「よしっ!今日も学校が終わったぞ!さぁて、早速帰りにどこか寄って行くぞ!」

僕は教室を出る前にそう告げると、唯に話しかけようとするのだが。その瞬間に僕の背後に現れた人物によってその行動を止められてしまう。それは、クラスメイトであり親友の悠真君だった。

その彼もまた学校から帰る前に唯のところに行って話をしようと試みたのだが。僕はそこで彼が唯と話をする為にやってきたということに気づく。なぜならば彼の顔つきが明らかに真剣そのものに変わっていたからである。

(おいおい!何やら大変なことになりそうだな)

僕はそう判断すると、その場から離れることにした。その方が僕にとっても二人にとっても良いと思ったからだ。そしてその選択が正しかったことは間違いないであろう。何故なら僕はこの後とんでもない出来事に巻き込まれてしまうことになったのだから。しかしこの時の僕はそのことを知らずにいた。

そしてその日の夜のこと。

僕はスマホでネットの掲示板に書かれている文章を眺めてみることにした。そこにはとある匿名の人物が投稿したと思われる書き込みがあった。そしてその内容は『今日学校に変な手紙が届いた。差出人は分からなかったんだけど。その内容がね、なんというか。俺と付き合ってくれっていう内容の物なんだけど。俺はその手紙を見てすぐにゴミ箱に捨てておいたんだけどさ。もしかしたらあの女の子が何かしら関わってるのかなって。俺としては心配になって。一応報告だけはしておこうと思ったんだけど。俺がこの文を書いてる時点で何かしらのアクションを起こしてたってことだよな』という感じのものなのであるが。これが果たして本当のことなのかは定かではない。そもそも僕と唯の関係を知っていればこんな馬鹿な話をするはずもないのだ。僕はこの投稿を目にしても何も気にすることなく、その日はそのまま眠りについたのであった。

「お、おはよう、和樹」

僕は朝の通学路の途中でいつも通り彼女と待ち合わせをしていると、何故か唯の顔色は優れないように思えた。そこで僕はそのことについて尋ねてみたのである。

「なんか唯、様子がおかしいけど。どうかしたのかい?」

すると彼女はその質問に答えることはなく。代わりに僕に近づいてくると、顔を近づけてくると耳元でこう囁くのだった。

『私と一緒に朝から手を繋いで歩こう』

という具合にだ。どうやら何かを隠しているようだが。その隠し事を無理矢理聞き出すのも違う気がしたので僕は特に詮索するような真似はせずに、言われた通りに彼女の手を取って登校することにしたのである。そうしているうちに、僕達が通っている学園に到着した。

僕は自分のクラスにたどり着くと、自分の席へと座り。鞄の中身を取り出す作業をする。その際にふと唯の方へ視線を移す。すると唯は窓際の席にいる女子達と話していて、とても楽しそうな笑みを浮かべていた。それを目にして安心してしまう僕は彼女のことが大好きなんだなと感じていた。

そしてそれからしばらくしてホームルームが始まるまでもう少しとなった時、唯が僕の方にやって来るなり突然腕を組むようにして密着してきた。

「ちょ、唯、何をいきなり─────」

僕は動揺しながらも彼女に理由を問うように言葉を掛けるのだが、そんな言葉を言い切るよりも早く教室の中に教師が入ってきて。それと同時にチャイムが鳴るのだった。僕はそれを確認すると唯のことを引き剥がして自分の椅子に戻り座ると。それから少ししてから唯は自分の座席に戻って行った。

(なんだよあいつ、やっぱり様子がおかしすぎる)

僕はその日一日中、そんなことを考え続けていたのである。そしてその日の授業が全て終わった僕は、唯が待っていてくれている場所へ向かうべく廊下に出たところで僕は背後から声を掛けられたのである。僕はその声に反応して後ろを振り向くと、そこには二人の女子生徒がいた。僕は彼女達に見覚えがないから多分下級生なのだろうと推測をする。

「えっと、何か用でもありますか?」

僕は目の前に居る二人に恐る恐る問いかけてみることにする。だが、彼女たちは何も言わずにこちらを見つめ続けているだけだった。

(いや、まじか、怖すぎなんですが。まさか僕、なにかしら恨みを買ってる感じですか?)

僕は心の中でそう呟きながらも。この状況はマズすぎるなと判断してその場を立ち去ろうとした。

「あーちょっとごめんなさい。僕急いでいるんで───」

僕はそう口に出してから逃げるように駆け出そうとしたのであったが、そこでまたもや誰かにぶつかる形になってしまい。そこで僕はその人物に謝罪をした。

「すいません、僕が悪かったです」

そして頭を下げる僕に対してその人物はゆっくりと顔を上げろと指示を出してきたのである。なので、僕は素直に従うことにしてその相手の顔を見るのだが、そこに居たのは先程から後ろにいた二人の女性だった。

「あ、あなたは?」

僕はどうしていいか分からないまま、相手の名前を尋ねる。すると相手は口角を上げてこう言った。その口調はとても冷たいものだったのだ。それも当然である。彼女はきっとこの学校で有名な問題児の一人なのだからである。そんな相手に僕の様な平凡な人間が立ち向かって勝てるわけがなかった。だからこそ僕はこう言ったのである。

「な、なんでしょう。もしかして、なにもかも全て僕が悪いって言いたいんでしょうか?だとしたら本当に申し訳ありませんでした」

そう言って再度頭を下げた僕に。彼女はなぜか優しい表情になると僕の肩に手を置いてこう言うのである。

「いえ、こちらこそ急に呼び止めてしまい申し訳ありませんでした。ただ私はあなたの事が気になっていただけなので、あまり責め立てるつもりはないので許して欲しい」

その言葉で、僕の中に安堵が広がる。そして同時に、やはり僕の考えが正しいのではないかと思い始めた。つまり、これは所謂虐めのようなものではないのか?いやしかしそれでは僕がここに呼ばれた意味がわからない。僕はそこまで考えた時にハッとすることがあった。もしかして、今この場から逃げ出すことでその答えを知ることが出来るのではないかと。そしてそれは成功した。いや、むしろ失敗とも言える。僕は唯のところに急いで行こうとしていた。そのせいで、僕は彼女に腕を引っ張られる形で人気のない校舎裏へと連れて来られてしまったのだから。しかもその相手というのが。学校中の問題児として有名な。三年生の姫川 結愛という人であったのだから、余計に僕は絶望的な状況に陥ってしまう。

僕は自分の運の悪さを呪いながら必死に打開策を考える。すると、目の前に立っている先輩はそんな僕を見てニヤリと笑うと。その笑顔のまま、僕に向かってこう告げたのだった。

「君が噂の男子生徒か、思っていた以上に可愛いじゃないか。君みたいな子を虐める奴がいるなんて信じられないが。君が本当にそうなのか確認させてもらうぞ!」

僕はそこで初めて理解することができた。どうやら彼女は僕が本当に男性なのかを確かめようとしているようであった。そしてそれが本当ならその証拠を彼女に見せるように強要される。そこで彼女が満足すれば解放してくれるはずだ。僕は自分にそう言い聞かせて。そして覚悟を決めた後でズボンのベルトに指をかけて─────

「ん、なんだい、それ。まるで男の子みたいだけど、君は本当に女の子なのかい?」

そう口に出した後で僕が脱ごうとしていることに気付いたらしく。顔を赤くすると。両手を前に出してくる。

「ちょ、何してんだ!お前が女の子なのか確かめたいだけだから、とりあえずその服を脱ぐのをやめてくれ!恥ずかしいだろ!それともそれ、自分で履いているんじゃなくて、女の子が身につけるものなのかい?」

それを聞いて僕はようやく相手が勘違いをしているということに気がついた。

「ああ、あのすいません。実はこれには訳がありまして。僕は女ですよ」

「えっ!そうだったの!じゃあさっきまでの私の行動って、全部君の身体を確かめるための行動ってことなの?」

「え、あ、はい、まぁそういうことですね。でも、別にもう調べなくても、僕の性別については納得していただけましたよね。それなら、これ以上は必要ないと思うのですが」

そう、僕の言葉の通りだった。だって僕の性器はきちんと機能するし、生理現象についても正常だったのである。

「あっはは、そうか、なるほど。うん分かったよ。疑って悪かったな、それなら早く教室に戻った方がいい。そっちも授業が始まってしまったんじゃないかい?私が教師に報告しないうちに教室に戻ることをお勧めするよ」

「はい、分かりました。失礼しますね」

僕はそれだけを言い残すと、その場を後にしたのだった。そしてそれから数分が経ち、僕のクラスの担任教師が現れると。事情を説明することもなく。僕は自分の席に戻っていくのであった。するとその席に座る前に、唯が話しかけてきてくれて、心配そうな表情を浮かべていたのだから僕は少し嬉しい気分になるのである。しかしそんな僕達の間に割って入る者が現れた。それは他でもない。さっき僕とぶつかってしまった女の子の姫宮さんであったのだ。彼女は僕の隣の席に座っていた唯の方に近づいてきたのだ。

(うわ、面倒くさい予感が)

僕はそこで嫌な胸騒ぎを覚える。するとそこで彼女はいきなり自分のバッグの中からあるものを取り出して、唯にそれを差し出して来たのである。それを目にした唯は顔を青ざめさせて震え始めてしまう。そして僕が慌てて彼女の方を見れば、唯の顔色とは対照的に真っ赤に染め上がった顔をしており。僕は思わず言葉を失うのである。

僕は目の前で繰り広げられている光景を信じたくなかった。だってそうだろ?こんなの誰が予想できるだろうか。いや出来ないだろう?しかし現実とはかくもありき、だ。だからこそ僕は認めたくない事実を認めざるを得なかったのである。唯の股間が彼女の持つ物によって刺激を受けている。そう、僕はそれを知っている。何故なら僕が昨晩体験したこととまったく同じ出来事が起きているからだ。

(こいつまさか、この学校の変態生徒なのか?)

僕の脳は思考することを拒否しようとする。いや、正確には頭が追いつかないと言った方が正しいのかもしれない。とにかく、今僕が置かれている状況を冷静になって整理する必要があると判断した僕は、深呼吸を数回繰り返した後で改めて自分の置かれていた立場を確認することにする。

まず、今の状況から考えると唯が狙われていることはまず間違いないことだと思う。そう、これは明らかに異常であり異常な行為だった。そしてそんな状況の中で唯を助けてあげなければと思った僕は咄嵯に彼女を庇おうと声をかけようとする。しかしそれを邪魔するように、再び背後から腕が伸びてきた。

僕は突然現れた腕に抱き締められて動揺するが、その人物が先程出会った先輩であることが分かると。そこで少し安心してしまう。

「大丈夫かい唯ちゃん。君があまりにも可憐だったものだからついつい手を出しちゃったんだけど、ごめんな、驚かせてしまったようだな」

彼女は僕と目が合うとニコッと笑いかけてきたのである。だが僕はそれに微笑み返す余裕など無く、目の前に立っている少女のことを睨むことしかできなかった。するとその先輩は自分の胸に手を当てると。

「私の名前は姫川 彩。三年で、君達の先輩だよ。宜しく頼むな」

「はい、僕は黒須 零といいます。よろしくお願いします」

僕は姫川さんの言葉を素直に受け止めて挨拶をする。そうしないと不機嫌になりそうだったからだ。

「おっと自己紹介が済んだ所で早速本題に入りたいところなんだが、君はどうしてこの子と一緒のクラスになったんだ?」

姫川さんはその整った眉毛を八の字にして困り顔を作る。僕はそれに対してどう説明していいか悩んでしまい、しばらく黙ってしまうのだが。そんな僕の代わりに唯の方から話し始めた。

僕はこの時ほど唯のことが頼もしいと感じたことは今まで一度も無いと言ってもいい。しかし彼女は自分のスカートを捲る様な仕草を見せると。そこから僕達の学校に通わせていただいており、尚且つ男子用の制服まで着用しているということを口に出したのである。しかしそれでも僕はこの場で彼女に対して反論をしなかった。

なぜなら僕の本当の性について彼女が知っていないのは明らかで、それどころか僕が唯に好意を持っていると思わせておいてその隙に付け込もうとしていた可能性があったからなのだ。

「おいおいそれは一体どう言う意味なん───」

そこでようやく、今この場の異変に気付いた他の生徒たちが駆け寄ってきた。するとその中には当然のように水橋の姿があって。そして彼女は姫川さんの肩に掴みかかる。

「ちょっとあんた!うちのゆいに何してくれてるのよ!」

その勢いはかなりのものがあったが、しかし彼女はその程度では引かないらしい。その瞳の奥にある意思はとても強固なものだったのだ。

「私はただその子に道案内をしてあげただけに過ぎないよ。それと、君は一体どうしてここにいるのかな?君は確か二年生で別のクラスのはずなんだが、その疑問には自分で答えるのは大変難しいと私は考えている。だから私が答えてあげよう。君こそこの子のストーカーではないのか?」

その瞬間、姫崎さんがニヤリと笑みを作ったので僕は警戒心を高める。

「へぇ〜、あたしの事馬鹿にしているんだ。じゃあいいわ、あたしが直接話をつけてあげる。表に出なさい」

「いいのか?先生を呼ぼうとする時間を与えてしまえば不利になるのは君達になると思うぞ」

「はんっ!そんなの脅しにならないわ!ほらっさっさと来い!」

そう言って、強引に姫川さんの手を引っ張って行こうとする。しかしそのタイミングで再び第三者の乱入があったのだった。

「待ちたまえ!ここは私の城であるのだよ!それにも関わらず私の許可なしに争いを始めると言うならば。この生徒会長が許さないぞ!」

その人物は高らかに叫ぶ。するとそれに続いてもう二人現れる。そしてそこでようやく姫川 結愛の登場となる。

「あら、会長自ら出て来てくれたんですね。それで、私達に何か御用ですか?生憎、私達はあなたの相手をするほど暇じゃないんですよ。それにその程度のことで私の時間を無駄にしたとあっては生徒会副会長としての面子がたたないのです。なのでどうかお引き取り願えないでしょうか?」

「いやいやいや、君が生徒会長の権力を振りかざそうと。僕だって譲れはしない理由があるんだよ」

するとそこで生徒会長は僕の方をチラッと見やるとこう言葉を発する。

「君のその目付きの悪さはどうにかした方が良いよ。そのせいで僕まで悪人だと誤解されてしまうじゃないか」

僕は思わずその発言に突っ込んでしまうが、しかし相手は僕の言葉を聞き入れる様子は無く。僕を無視して二人の方に向きなおったのである。その態度にムッときた僕は抗議をしようとしたところで今度は僕にとって意外な人物が現れる。

「お前ら!何揉め事を起こしてい─────」「先生!違うんです!こいつが急に喧嘩を売ってきたんですよ!だから私は仕方なくそれを受けただけで。別に何も悪い事はしてません!」

僕はそこで声を上げてきた教師の言葉に割り込みをかける。しかし、僕の言葉は誰にも届いていなかったようで、僕以外のみんなはこの騒動を収めるために必死になっていたのだ。

「あの!僕、本当に関係ないですから!僕はただ唯の席が空いてたのでそこに座りたかっただけなんですよ」

「なぁ、唯ちゃん。それは事実か?」

唯の担任は、僕の言葉を信じるつもりは微塵もないようだった。しかしそれも無理は無いことかもしれないと僕も思う。だってこの状況は僕から見ても非常に危ない場面だと理解できるし、もし僕も逆の立場であれば唯の言葉をまずは信用する。しかし僕にも譲れないものくらいはあるので僕はその主張を押しとおす。そして僕がそう口を開くと、唯もそれに続くように口を開き。僕に加勢してくれた。

それから僕達はなんとかこの場を収めようとするが上手くはいかなかった。するとそんな時であった。この騒ぎの原因である生徒会長が再び口を開こうとしていた。

(これ以上事態を悪化させないでくれ)

僕はまだこの学校での生活を諦めてはいなかったのだ。だからここで更に問題を起こしたくなかった僕はその行動を制止しようとしたが。そこで姫川さんに止められてしまう。

そして僕は姫川さんの行動の意図がわからずに彼女の顔を見るが、その顔からは何も読み取ることができなかった。そして彼女は一歩前に出ると、その小さな胸を張って宣言したのである。

「ではこの生徒会で勝負をしましょう。僕と貴方達で。その勝敗次第で、今回は収めて貰えるだろうか?」

僕に選択肢など与えられてはいなかった。いやそもそも初めから選択肢など存在しないに等しかっただろう。しかし僕に拒否権がないというのに姫川 彩という存在は堂々とそれを口に出して僕に提案を持ちかけてきたのである。それはつまり僕の力が必要だということで。それはとても僕が断りにくい状況を生み出していたのだった。

こうして僕がどうする事もなく話はどんどん進んでいき、最終的にこの生徒会での戦いが決定づけられる。僕は自分の運命を呪ったが、それを覆せるほどに今の僕が優秀なわけではないので。僕は唯を守る為に戦うことを決めたのだった。

「えっとですね。今からこの三人で勝負をしてもらおうと思っているんですけど、どうでしょうか?勿論、この場ですぐに結果を決めろとは言いません。だから今すぐ結論を出せと言うつもりもありません。しかし、もしもその意見に反論のある方がいるのでしたら。是非挙手を願います。いない場合はこちらの提案通り、今回の出来事については水に流すことにしたいのですが。皆さんよろしいでしょうか?」

姫島さんはそう言って周りを見渡すが。やはり皆、その言葉に対して異論を唱えなかった。その表情が示す感情を読み取ればわかる。

(こいつ、絶対に負けるなよ?)と、皆は思っているのだ。しかしそんな中、ただ一人。その状況に納得できていない者がいたようである。その証拠にその男は不満そうな顔つきをしていた。

「なんだよ、これ!俺はこんなの聞いてねぇぞ!」

彼はこの場の誰とも目を合わせず、下を向いて大声で叫んでいた。

「ちょっとあなた!今の話、どう言うことですか!私はその説明を要求します」

その男の言葉に反応したのは、先程まで口論を行っていた女性だったようだ。しかしそんな彼女に姫川会長は「うるさいぞ、君」と言って黙らせてしまった。しかしそれが彼女の怒りの琴線に触れてしまったらしい。

「おい、てめぇふざけん────────!」

そう怒鳴った彼女は勢いに任せて殴りかかるがそれを軽く受け止めた姫川さんが一言発した瞬間彼女は膝から崩れ落ちてしまったのだった。すると姫崎さんがその姫川さんの姿を見て怒りを露わにして。そして僕に向かって拳を振り上げてくるのだったが、その攻撃は届くことは無かった。なぜなら唯が間に入り、彼女を止めたからだ。しかし、それでも彼女は止まらなかったので。唯も彼女を止める為にある行動をとったのである。

「すいません。先輩。痛かったら言ってくれませんか?」

「へ?あぁ、うん。まぁ少しくらいなら平気だけど、どうかしたのか?まさか、殴るわけでもないだろうし、何かあったのか?」

「いえ、ただ私はこの人があまりにも不愉快だったので、お灸を据えさせて頂きました」

「へ?」

「ですから、お腹が空いたので、お肉を食べに行きたいなぁと、そう思いまして」

彼女は満面の笑みでそんな事を姫川 結愛に告げたのである。そんな二人の様子を見た水橋が「この女マジやばい!」とか何とか小声で言うのを聞いてしまったのだが。その発言の意味がいまいちわからずにいた僕だった。そんな僕の視線を感じ取ったらしい水橋はすぐに咳払いするとこう話を続ける。しかしそれは明らかに誤魔化すような仕草で。彼女は唯の顔色を伺いながら話していた。

「あんたがどう言う経緯でそんな事になったのかわかんないけど。あんたのせいで話が変になったんだし、あんたにはちゃんと責任を取ってもらうよ?わかったらさっさとあたしと一緒に来てくれないかしら」

水橋は明らかにイラついた様子を見せると唯の腕を掴み立ち上がらせる。そして強引に引っ張って行くが。唯はそれを拒否して、僕の方へと戻ってきた。その光景を見て他の人達は唯のことを睨みつけるが。僕はその行為が意味のない事だと知っていたので、特に何の感慨も無くただその光景を眺める事にしたのだった。そしてそんな時、僕は突然姫川さんに声をかけられた。

「それで君、一体どうしてこんなことに?」

「いや、なんかこの人と僕が勝負するってことになったみたいですよ?」

「へー。君達二人はどういう関係なのかい?」

「いや、全然知り合いじゃないですよ。多分今日が初対面だと思います。だから僕はこの人の名前すら知らないですからね」

「なるほど、そういうことだったか」

僕はその発言を聞いた時にやっと、彼女がなぜ僕のところまでやってきたのかを理解した。きっと唯はこの男が僕のクラスメイトだと気がついていたのだ。だからこうして僕のことを助けに来てくれたに違いないのだ。だから僕は彼女の頭を撫でながら感謝の気持ちを伝えた。その僕の行動に照れているようではあったが。その手を振り払うことはしなかったのである。するとそこに今度は僕の方に近寄ってくる生徒がいた。そいつも僕のクラスメイトの一人で、よく授業を一緒に受ける奴であった。しかしその相手も僕に用があるのではなく、唯に用があったらしく、僕のそばに立っている彼女にこう言ったのだ。

「君は確か二年の生徒会長さんだよな?」

「はい、私が生徒会長の姫川 彩ですよ。それと私に何か御用ですか?」

「単刀直入に聞くけど。なんでその子と喧嘩をしているのかな?しかも暴力を使ってまで。僕としてはこの学園に怪我人は出て欲しくないから、喧嘩をするなら別の場所でやって欲しいのだけれど。どうかお願いできないだろうか?」

彼女はそう言って唯と、僕達の目の前にいる生徒会長を見る。すると彼女はなぜか唯ではなく僕の方を見てきたのだ。その目は僕に「こいつを止めろ」と言っていた。しかし僕もその言葉に従ってこの場を収めるべきだと考えていたので唯を説得しようとしたのだ。しかしそこで僕は唯が意外にも冷静であることに気がつく。彼女は僕に視線を向けることもなくただまっすぐ前だけ見ていたのだ。そして彼女は、口を開く。

「すいません。その、彼が悪いのではないんです。ただ彼が、彼の、私の──────」「もう良い、分かったよ。この場は僕の方で収めることにするよ。それで文句は無いよね?」

「は、はいっ。ありがとうございます。先生!」

唯は姫川 彩に向けて、深々と頭を下げるとそう言い切った。すると姫川 彩はその表情に笑みを浮かべると。「ふぅ、全く困ったものだ」と言い残してからその場を去って行った。その言葉を聞き届けた僕達は互いに顔を見合わせると、自然と苦笑いをしていたのである。それから姫川は僕に視線を送ると。「それじゃ、私はこの子を連れていくから、また後で会おうじゃないか。君とは一度ゆっくりと話し合ってみたいな。それに君の力について、興味が出てきたからね」と口に出す。

(あれ?僕はこの人の興味を引く様なことをした覚えがないんだけどな?)

僕は彼女の発言にそんなことを考えてしまう。僕は自分がこの人に何かをしてしまっただろうかと考える。しかし、答えは出てこなかったのである。僕はそこでようやく唯の方を向くと彼女は嬉しそうな顔をしていた。その顔を見ただけで、彼女は満足だったのだろうことが容易に想像できたのだ。そして、姫川が唯の事を連れて行くのを僕が眺めている中、もう一人の男子生徒が近づいてくる。僕がそちらを見ると、どうやらそれは隣のクラスの人で名前は確か田端といったはずだ。僕も挨拶程度の会話はするくらいの関係なのだが。この人はかなり真面目で成績も良いことから、生徒会に入っており。それ故にこうして教師からの指示で唯の事を探しに来たのだろうと思う。僕は彼に「どうしたの?僕に何かある?」と訪ねてみる。

「えっと、僕にと言うより姫川 彩にと言った方が良いかもしれません。先程あの方から君に会いたいと、そう言われてしまいまして。それで、その、どうしましょう?とりあえず、教室で待ってもらっている状態になっています」

「え?僕に用事があるんじゃないの?」

「それがですね。先程は姫川 彩は君と話し合うので席を外して欲しい。そう言って来たので。君に用事と言うわけではないと思いますが」

その説明を聞いて。僕は思わず溜息をつく。おそらく姫島さんが姫川会長を呼び出した理由は唯のことについてだろうと思ったからである。しかし、それを直接伝えるわけにはいかないし、かと言ってこの状況を無視することも難しいだろうと判断するしかなかったのだ。

(あ、そうだ!いいこと考えた!)

「すいません。ちょっと姫崎さんを呼んでもらえますか?」

「はい、構いませんよ。しかし姫崎さんの居場所がわかるのですか?」

僕はその問いに無言で首を横に振った。当然のことだが、わかるわけがなかったのである。そもそも、彼女のことを見つけることさえ出来ていなかったのだから。それでも僕には彼女を探す方法があっていたので、彼女に電話を掛けてみた。

「もしもし、姫野さん。どこにいるの?」

『はぁ、はぁ、やっと見つけたよ』

彼女は少し走ったのだろうか。そんな風に声が途切れた。そんな彼女に対して、僕はまだ姫崎さんから聞きたいことがあったので質問をすることにした。しかしその瞬間彼女は急に大声を上げると、とんでもない事実を口にしたのである。その言葉を聞いた瞬間。僕の思考は止まってしまったのだった。

「今すぐに逃げてください!あなた達、絶対にあいつには関わっちゃだめです!これは私からの忠告です。どうかお願いします。それだけを伝えて、早くここから離れてください。私はまだやることがあるので」

そして姫崎さんの返事を待たずして、一方的に通話を切られてしまった。僕はしばらく何も考えられずにただその場に突っ立っていたのだった。そんな時、誰かが僕の袖を掴んできたので振り返ってみると、そこには唯の姿があった。しかし彼女はその行為とは裏腹に、悲しげな表情をしていて。僕は、何とも言えない感情に支配されるのを感じたのであった。

「すいません先輩、こんなところに呼び出したりして」

僕は屋上に来ると姫川に謝罪をする。しかし彼女は僕に謝る必要はないという旨の発言をしてくる。そして、彼女は僕にこう話を切り出したのだ。

「さっきはあんなことをしてしまったが。一応君がどうしてこうなっているのかを説明してもらえないだろうか?」

(まぁ、確かにこんなことになった経緯を知らないのでは納得できないよなぁ)

僕は彼女のその発言に対してどう答えるか悩む。僕としてもできればあまり触れて欲しい話題ではなかったのだが。それでも話さない訳にはいかなかったので正直に話し始める。すると案の定、僕の予想通り、彼女は信じられないという様子で僕を睨みつけるのだが。それでも僕の言葉を遮ったりはしてこなかった。なので僕もその話を続けることにする。しかし僕も全てを話すことは出来なかった。

「その前にまず僕からも一つ聞かせてくれないか?」「はい、わかりました」

僕はそこで一度話を区切り。彼女の表情をうかがうと。その表情に特に変化はなく。淡々とした口調でそう返してきたので僕は続きを話し始めた。

「君は僕の何を知っているんだ?」

僕はそこで、自分の持っている情報を整理して、この人に何を知られても問題ないことを確認するためにあえてこの問いかけをしたのだ。その行為自体特に意味はない。しかし姫川は少し考える素振りを見せた後。「そうですね。私の知る限りのことを話すとしましょう。そうすれば少しだけ真実が見えてくると思いますから」と答えてくれた。僕はそんな彼女の様子を見ながら、これから聞かされるであろうことに心の中で身構えていたのだった。

僕は彼女が僕について知っていることについて、いくつか疑問があったのでそれをぶつけることにした。

「どうして君みたいな人が、こんなところで教師をしているんだ?君ほどの人材ならもっと他に選択肢があるはずだ」

「ええ、ありますよ。例えば私の父が経営している学園に就職したり、または、自分で会社を設立するなんて手も。ただその選択を選ばなかった理由があります。その理由を貴方にお教えしましょうか?」

「いや、いい。大体予想できるし、それに君にこれ以上借りを作りたくないからな。別に僕だってこの学校に入学するときに多少なりと金銭的負担をしてもらったから。それに関しては感謝はしている。けどそれとこれとは話は別だ。君と僕の関係は所詮ただの知人程度の関係でしかない。それなのに君は一体なんで僕なんかのために色々と動いてくれているんだよ?」

「簡単な理由です。単純に私がそうしたいと思ったから、それだけです。私自身、困っている人は見捨てられない性分なんでね。それに私が教師になったのは父からの指示でもあったのですよ。あの人は昔から、困っている人は無条件で助けろ。そう口癖のように言っている人だったのですから。しかし、今回の件で私が感じたのは。その言葉の意味は嘘じゃない。しかし、その考えを実行できるのは極一部に限られる。それもある程度実力がなくては駄目だということを私は思い知りましたよ。だからこそ私はこうしてこの学園の教師としてやっていけているんです。それに私もまだまだ未熟だと痛感しましたからね。だからこそ貴方の手助けをしなくてはいけないと思いました」

彼女はそこまで言うと僕から目を逸らす。それは僕の問いの答えをはぐらかすためのものではなく。どうしようもない現実から逃避するために、視線をずらしたという風にも思えた。

(きっと彼女の過去に何かあったんだろう。だから僕を助けたのかもしれない)

僕もそのことについては深く追求するつもりはなかった。誰にでも他人に話したくない過去はあると思うからだ。だからそれ以上はもう何も言わないことにした。

「そっか、君のことは分かったよ。だから、僕の方からはもう質問することは無いかな。それで?次は君の番だよ。君の目的は何?わざわざ姫崎さんに、君と接触するよう仕向けた理由は?そして、最後になぜあの禁書が欲しいのか。それだけを聞かせてくれ」

「そうですか、残念ですね。貴方には何も隠すことは許されないとばかり思っていたのに」彼女はそう呟くと。少しだけ不機嫌そうな顔つきになったのだ。しかし僕は気にせず先程と同じ態度を貫くと。姫川は小さく息を吐いて僕と向き合ったのである。

「そうですね、貴方は少し変わった性格をしていますね。普通ならここまで警戒する必要はありませんが。今回に限りそれはできません。何故なら私は貴女にとって敵になり得る可能性を持っています。私は、貴方が今後この先。平穏な日々を過ごせなくなるようなことをしようとしているのですから。ですのでこれだけははっきりさせておきましょう。もしここで断った場合どうなるか、理解した上で発言するべきでしょう」

「断らないよ。だから、話してみてよ」

僕の言葉を聞いた彼女はその表情から感情を一切排除すると、無感情な瞳で僕を見据えてきた。まるで僕の心を透視しているかのように。彼女はそのままの口調で、僕の予想と全く違わない内容でその提案を提示して見せたのであった。僕はその内容を聞き届けた後、彼女に向かって微笑む。そしてその提案を受け入れた。

姫川は僕が笑顔を浮かべたことで、どういった反応を示すのかと、興味深そうに僕のことを観察するように見つめてきたが。僕の表情が変化したことによって、少し驚いた様子で僕のことを見て来る。そして僕が「ありがとう、助かるよ」とそう口にしたのだ。彼女は僕の言葉を噛みしめるようにしばらく黙ったまま動かなかったが、やがて僕の方を向くと。嬉しそうに笑いかけてきて、その後で僕に手を差し出してきた。僕はそれを掴んで彼女と握手をする。僕は彼女の手を握った瞬間、ゾクリと背筋が凍りつく感覚に襲われてしまう。

しかし、彼女はその事に気づいた様子が無く。そのことについては触れないままでいるので。恐らく僕の錯覚なのだろうと結論付けてその事について考えるのは止めたのであった。

「じゃあ、これからよろしく頼むよ。えっと、名前聞いてもいいかな?」

「はい、姫崎姫子といいます。どうかお見知り置きを。これからは私のことは姫と呼び捨てにしてくださって結構ですよ」

彼女はとても楽しそうな表情で僕に語り掛けてくるのだが。僕は、姫崎先生と呼ぶことを約束させられたのであった。そして僕は屋上を後にするのだが。姫崎は僕の後ろ姿を見送ったあと。どこかへと姿を消してしまった。僕は姫川会長の居場所を探すべく校内をさまよい歩くと、ようやく彼女を見つけ出したのだ。僕は、彼女が一人で屋上で佇んでいる姿を見ていたのだが。僕は彼女に声をかけずに、暫く様子を見ることにした。

「はぁ、はぁ、はぁ、ふぅー。やっぱり無理か。でも私にはまだ時間が残されているから」

どうやら姫野さんは自分の能力を試しているようだった。僕はその様子をただ眺めていた。しばらくそんな光景が続き。彼女が突然こちらに振り返ってきたので。僕は咄嵯に物陰に隠れることにした。

「ん、そこに誰か居るよね。出てきなさい」

その声が発せられたと同時に、僕の姿が完全に彼女の視界に入り込むことになる。僕は彼女に促されるままに、彼女の前に立ち。僕は姫崎先生の目の前まで歩み寄って行く。

「君って意外と大胆なのね」

姫崎さんは少し顔を赤めながらそんなことを言う。僕が姫川の元に現れたことが少し嬉しいのか表情に少し喜色が浮かんでいた。僕はそんな彼女の表情に苦笑しながらも本題を切り出すことにしたのだ。そして僕は彼女を生徒会室に連れて行きそこで話をすることにしたのであった。

姫崎先生に連れられた場所は彼女の根城である生徒会長室の扉の前だったのだが。姫崎先生はその前に僕にある忠告を残してくれたのだ。

それは、僕が今から会う相手は僕の予想通りの人物なら相当面倒な相手だという話だった。そして、僕自身もこの学校に転校してくる際に、似たような話を聞いたことがあるのだ。なので僕としても、この学校で一番の問題児は誰なのかという話になる訳なのだが。その人物の名前を挙げるとなれば間違いなく一人しかいないであろう。

僕達はそう言った会話を交わしながらも、生徒会室に辿り着いた。そこで僕は部屋の扉を開ける。

そこには既に二人の人間が待っていた。

一人目の男は眼鏡をかけていて真面目な性格をしているという印象を受ける風貌をしていた男だ。彼は部屋に入ってくる姫川と僕を見るなり席を立って近寄ってくると、その手を胸の前で握りしめ。興奮気味で口を開く。その表情からは姫崎さんを慕っているのであろう事が窺い知れるのだ。その男が名乗ったのは姫崎唯という名前だ。僕もその名は耳にしたことがあった。何でも学園の中でもかなり優秀な部類に入る生徒であり、この学園のアイドルと呼ばれている人物である。

(まさか、そんな有名人と会えるとはね)

僕は心の中で、その事実が本当に信じられなくて、夢ではないかと疑ってしまうほどだった。僕もそこまで詳しいと言う訳ではないが。彼女はその容姿と性格によってこの学校の男性に人気があるらしい。だからその噂も自然と流れてくるものだからある程度は知ってしまっているのである。

その隣に座っていた少女が椅子に腰かけると、その隣の男性も座っていた机の上にあった書類を手に取って仕事を始める。そして姫崎がその男の行動を咎めるが、それすら無視していたので、僕と彼女は思わず苦笑してしまった。僕達二人は、この部屋に入ってから一言も口を開かずにいたが。どうやら彼女はこの二人が気になっているようで視線を交互に行き来させていることに気が付き、僕もまた彼女の様子を伺うと。

姫崎さんと目が合ってしまい。僕は何となく恥ずかしくなって目を逸らしてしまうと。姫崎さんの方でも何故か頬を朱色に染めていた。僕はその様子が少し面白くて。でもそれ以上に彼女が何を考えているのか分からなかった。そして僕と姫崎はしばらくの間沈黙のまま、その空間に耐えていると。僕に用があるのかその姫川と呼ばれた生徒が立ち上がり僕の方に近づいてきた。その行動に対して特に意味はないのだろうと思っていたのだけど。僕と姫崎の間に姫川が入り込んでくる。

僕はその状況を理解してすぐにその場から離れると、姫川は僕とすれ違うように姫崎さんの傍に移動する。そして彼女は僕に向かって話しかけてきたのだ。

「貴方もしかしてあの時私の事を見ていましたね?もしかして私がこの学校で一番美しいと噂のあの姫島唯だと知っての行動なのでしょうか?」

姫島はそう口にしながら僕の方を向いて来たのである。彼女の瞳はとても美しく吸い込まれてしまいそうになるほどの輝きを放っていた。それに僕は思わず見惚れてしまっていた。彼女の顔は、綺麗で整った容姿をしていている。だからこそ僕はつい言葉を失ってしまった。姫崎さんとは全く違った雰囲気を持つ美少女だと思ったのだ。僕は慌てて姫崎の方を見ると、彼女は不機嫌そうに僕を睨みつけており。僕が姫崎に目を奪われていたことに不快感を抱いたのだろうと理解する。

(確かに、姫川さんの方が可愛いかも)

僕はその思考が漏れてしまったのではないかと焦ったが、姫川が僕を見ていた理由は違っていて。彼女は先程から視線を彷徨わせている僕の態度に違和感を感じたらしく。何かあるのかと僕の事を観察していたが、その視線にようやく納得がいったようだ。姫野さんから事前に説明を受けていたんだろう。それで彼女は僕に問いかけてきているのだと思う。僕にはそんな彼女の質問に対する回答が思いつかなかったので何も答えずただ彼女の顔を見つめ返すだけだと、彼女は不思議そうな表情になり首を傾げてから。そのままの状態で暫く時間が過ぎて行ったのだ。

それからどれくらい経ったのだろうか。僕はいつのまにか自分が意識を失っていることを理解できなかった。

僕の目の前では未だに二人の男女が口論を繰り広げているが僕の耳にはそれが入ってこないで雑音としてしか処理されなかったのである。

そして僕の身体は勝手に動き出すと、僕はそのまま二人から離れて歩き出し、目的地にたどり着くと。その部屋の扉に手をかける。だが扉が開くことはなかった。僕は力を込めてドアノブを動かそうとしたが。その行為が何の意味も無いということに気がついて。そこでようやく僕が何者かに拘束されているのだという事に気づいたのだ。そこで僕の意識は覚醒して自分の置かれている立場に驚愕した。

「あれ、なんで俺縛られてるの」

僕のそんな声に気づいたのか僕の近くに居た人物が、僕に話しかけて来る。僕は彼女のことを知らないので一体何者なのかと思っていると。僕の前にいる彼女は嬉しそうに笑って見せると。彼女は僕の名前を呼んできたのであった。その声を聞いた瞬間、僕の記憶の中に彼女の情報が新たに刻み込まれるのを感じると同時に。

僕の中に、僕の意思とは関係無く彼女のことを守らなければという使命感が湧き出てきて。彼女の笑顔を見た瞬間、その笑顔を守りたいと、僕は強く思うようになったのであった。

姫崎は僕の反応を見てニヤリと微笑んで見せると、僕のことを手招きしてみせるので、その指示に従って彼女の傍に歩いて行くと。僕はそこで初めて姫崎の顔をしっかりと確認することができた。

そして僕はその顔を一目見て。

─ああ、なんて可愛くて美しい女性なのだろう そう思って彼女のことを見入ってしまったのだ。その女性は僕の理想を体現したかのような完璧な美貌を持っており、そして、まるで芸術品のように均整が取れた肢体をしていて、とてもスタイルが良かった。そしてそんな彼女に対して僕の中の男が反応を示し始めていた。僕の本能が彼女を求めたがっているのを感じ取った僕は、僕は彼女のことが欲しいと思い始めたのである。僕は姫崎の手を取るとその手を口許まで運びキスをしようとすると、突然姫川さんに蹴りを食らって吹っ飛ばされてしまった。僕はその光景を目の当たりにしながら、僕の中の姫川さんがどんどん大きくなっているような気がしていた。僕は姫崎さんのことを姫と呼ぶことにすると。僕と姫崎さんが話を始めたのである。

そこで僕は姫野さんに頼まれたことを実行すべく彼女に近づこうとしたのだが。突然、部屋の中を眩い閃光が襲うと。そこで僕は完全に意識を失ったのであった。

次に僕が目覚めたのは病院のベッドの上だった。そして、そこには僕以外の人間が存在していて、僕はそんな人達に囲まれていたのだ。どうやら僕以外にも人が運ばれてきていたらしいが。彼らは僕よりも重症を負っており、その命を落としてしまっている。

そしてそんな人たちを見渡していく内に僕は自分以外に生きている人間がいないのだと悟る。僕はその現状に少しだけ恐怖心を覚えながらも必死に頭を回転させて、この状況について考えてみた。そこでまず、僕は今どんな状態にあるのだろうかと考えてみると、僕は姫崎さんを助けようとしてあの場に行ったのだ。

そして姫崎の能力は確か、自分の姿を別の姿に変えるというもののはずだ。僕はそのことを考えると姫崎さんが能力を使った所までは覚えていたが。その後の事については全くと言って良いほど覚えていない。姫崎があのような攻撃を行う理由が分からないのだ。それに、もし僕が今現在こうして生きてここにいるのだとすれば、その姫崎は僕の事を庇ったと考えるのが自然であり、それを考えると僕の中で罪悪感が生まれるのが分かったのだ。僕は彼女を守れなかったという事実を自覚すると胸が苦しくなったのである。

そこで僕の中に一つの仮説が生まれた。もしかしたら僕は姫崎さんの能力をくらった際に何らかの方法でその能力を打ち消したのではないかという可能性を見出し。それを僕は信じたくなかった。なぜなら僕は今まで一度たりとも、姫崎に勝つことができたことなど無かったからだ。そして僕が一番最初に考えた可能性は。

それは『勇者はお姫様を救うのがお仕事です!』の能力のことだ。姫崎のその力はあらゆる存在に姿を変えるというものであり。その変身した相手の姿は姫島にしか見ることができないので。彼女が僕に対して姫崎唯という人物に姿を変えていたと嘘をついているという可能性はあるかもしれない。姫崎の話ではこの学校にはもう既に魔王がいると言っていた。つまり彼女は、あの禁書に書かれた物語の世界に入り込んでいるということであり。

そしてその物語の主人公である勇者の力を姫崎は手にしたという可能性が高いのだ。

(なら僕はどうしたら)

僕はそこまで考えると思考を中断した。何故ならば、その答えは既に分かり切っているのだから。僕は彼女を守るためにここへやって来たのだから。姫崎を守ることができなかったとしても僕は最後まで彼女の事を全力で守ると誓ったのである。僕は何も言わずに立ち上がると。姫川達の下へと向かうために病室から出て行こうとする。しかし、僕が立ち去る前に一人の少年が話しかけてきたのだ。

「あんた、一体何処に行くつもりなんだ?それに姫島さんの事はいいのか?」

「お前こそ何を言っているんだ。あいつが無事だという保証がどこに在るっていうんだよ」

「それは、そうだけど」

僕がそう言い放つと、僕の言葉を聞いてしまった少年はその言葉を信じることが出来ずに僕に対して反抗してきたのである。だが僕が彼のその言葉を聞き入れなかった事で、僕は彼との口論を終わらせてから。僕は急いで、この部屋から退散しようと試みるのだけど。

「待ってくれ、まだ姫島の奴は大丈夫だと思うんだ。あの時は確かに姫川の事を俺達は殺そうとしていたけど、それは、あくまで姫崎が姫島をこの学校の敵だって認識していたからであって。あの時の彼女は少し錯乱気味だったみたいだし、少し時間が経てばきっと正気に戻るはずだと思うんだ。それに俺達が今すぐにでも行動を起こさないと大変なことになる気がするんだ」「どうして、どうして君は僕を止めるの?」

その疑問をぶつけられて僕は思わず答えに困ってしまう。僕はその言葉が真実かどうかを判断する事が出来なかった。そもそもこの男の名前さえ僕には分からない。だからこそ彼が僕の邪魔をしているように思えてしまい僕は彼に問いかけることにした。するとその質問に対して男は答えた。その答えはとても単純で簡単なものであったのだけれど。それでも僕の目から見ると信じられないものであったのだ。だからこそ彼はこんな行動をとっているのだと思った。

その答えは簡単で。僕の予想は当たっていたのだ。

その答えは実にシンプルで単純なもので、この男は単純に彼女のことが好きなだけなのだと理解した。姫川もそんなことを言っていたが、本当に、僕と彼女との関係はまるで恋敵のような感じになってしまっていることに内心苦笑しつつ、僕がそんな風に考え込んでしまうと。目の前にいる少女の顔に不安の色が見え始める。なので僕は慌てて、今の発言を取り消してから話を元に戻そうとした。しかし、僕はそこで違和感を感じてしまう。その違和感の原因はなんなのかを考えてみるが特におかしな点があるわけではないと気づいた。

そして僕はそこでようやく自分の置かれた立場を思い出して愕然としてしまう。僕は自分の置かれている立場を理解して。それからその事を必死に伝えるのだが相手にされなくなってしまう。その事にショックを受けてしまった僕はつい、姫崎のことを置いてきてしまったという事に気づくと。そのまま姫崎を探しに行ってしまいたかったのだけども姫川は一人で行動して危ない状況に陥っている可能性があるのだと言い張られて、僕のことを拘束してしまったのだ。そして僕は拘束されている中で。自分が今現在何が起きているかを聞かされることになった。僕はそんな情報を聞いた後に。僕は姫宮に対してある提案をしてみせた。

姫崎を助けるためには僕も力になりたい、と僕は告げると同時に、僕の力の全てを見せてあげるからと僕はそう彼女に言ったのだ。そしてその瞬間僕の中にあった何かが外れるのを感じると同時に僕の身体は急激に成長し始めたのであった。

僕のその突然の変化を見て目の前の女の子、いや、彼女は僕の妹だと言うのだが。彼女はその瞳を大きく広げて驚愕の表情を顔に浮かべているのであった。そしてその変化が終わると、僕の中に生まれた圧倒的な自信を噛み締めるようにして、これから先僕は何があっても、何が来ても、負ける事など無いだろう。

僕がそんなことを思い浮かべると共に。僕の中の僕では無い何者かが僕の意識を支配しようとしているのが分かった。だが、僕は自分の意識を保つことに成功してみせる。僕の中に眠っていた何かは僕がその僕のものではない何かに抵抗するのを感じたのか一瞬にして姿を消してしまった。僕は僕の中に再び現れたその感覚に戸惑いながらも。自分の意思で再び眠りにつくのを拒絶する事に成功したのだ。

そんな出来事があった次の日の朝。

僕はいつものように学校に登校したのだが、どうやら姫川が入院して居なくなっているという事を知って、その姫川を姫崎が看病しているという状況を知り。姫崎を助け出さなければならないと僕は決心すると。教室に着いてすぐ、僕は席を立って姫崎のところへ向かうことにしたのである。姫崎が今どういう状態であるのかは分からないが。恐らく僕を待っていたはずだ。僕はその確信を持ちつつ。彼女が僕を待っているであろう場所に向かって歩き出した。そして目的地に到着したのであるが、そこには既に僕よりも早く姫崎に接触を果たした者がおり。

その人物が姫崎と楽しげに会話を交わしている姿を目撃した僕は。僕はその場に立ち尽くしてしまい。そして姫崎に話しかけようと思っても、なかなか話しかけることができずにただ黙って見つめていることしかできなかった。僕はその人物の正体を知っていたからだ。その人物は僕と同じクラスで同じクラスメートでもあり幼馴染みの天海優香だったのだ。そして姫崎と天海の二人は僕の姿に気付くことなく談笑を続けている。僕は二人の姿を見ているのが何となく辛くなり、その光景を見るのが耐え切れなくなりそうになった。そして僕は逃げるようにしてそこから去ろうとしたその時に。

「あれ?どうしたの勇太、こっちに来てよ。一緒に話そ」

姫崎に声を掛けられたのだ。僕はその声を聞くと姫崎と話すことよりも優先すべき事項は他に有るはずだと自分に言い聞かせてその場から退散することにした。しかし、僕がその場を離れようとした時。僕は姫崎の友達の一人に声をかけられてしまったのだ。僕は、そこでその姫崎の友人の少女に捕まってしまい、逃げ出せなくなってしまった。僕は何とか、姫崎の下に向かうために。彼女の手から逃れようとしてみたが。しかし、姫崎の友人は姫崎のことについて僕に色々と聞いてくるだけで僕を解放してくれそうにはなかった。

僕は、仕方なく彼女の質問に対して答える羽目になったのだけど。そこで僕はふと、自分の中に違和感を覚えた。

「なあ、ちょっとお前に聞きたいんだけど。もしかしたら、この学校で最近誰か死んだとかそういった話を聞いたことがあるんじゃないか?」

「それってあの事件のことかな?」

その事件というのが姫崎が言っていた学校の中で生徒が行方不明になったという事件では無く。禁書の物語のことだと僕は気付いた。禁書の物語の中で姫崎に殺されかけた姫崎の知り合いの生徒の話だと思い当たったのだ。僕はすぐに姫崎からその事件について聞くことになった。そして姫崎から聞かされた話の内容について、僕は少しだけ興味を惹かれることになるのである。それは彼女が語った話はこうだ。その生徒は普段、大人しい子だったという。彼女は、ある時から姫崎に対して好意を抱いていたらしく。姫崎に対して積極的にアピールを始めていたらしい。

しかしその彼女は、ある時から突如、人が変わったかのように、性格が変わり始めてしまい。その行動もまるで何かに取り憑かれたかのような異常性を孕むようになったそうだ。しかし周りの人たちは、その彼女の行動に全く気がつかなかったらしい。なぜなら、彼女の行動はその生徒のクラスメイト以外の人たちには認識できないものだったのだ。その現象に最初こそ戸惑っていたものの。すぐにその生徒達はそれが普通なのだと思い込んでしまった。何故ならその生徒が変わってしまう前は、その生徒はおとなしく目立たない存在で。

その彼女の友人達は皆口を揃えていってたという。『彼女のような人が私達と関わってくれるなんて信じられない』

と、それはまるで別人のようになってしまった彼女に対してそのクラスのほとんどの生徒たちが抱いていた感想であり、その気持ちは同じクラスにいる他の人達にも伝わっていき。次第に彼女の事を良く思う人は居なくなってしまっていたようだ。そのせいで彼女の周りからはだんだんと人が居なくなり孤立していったのだ。そして孤立した彼女は、ある日、ついに、その心のバランスを保てずに崩壊し。そして、彼女は自らの命を自らで断とうとするのである。

そんな話を聞いていた僕だったが、僕は姫島の事が頭に引っ掛かっていたのだ。

姫島は昨日。

姫宮が姫崎と姫宮の関係を知らないふりをしてくれと言った後に、

「あなたが姫島さんね」

と、姫崎に向けて言った。

つまり姫崎はその出来事を知っているということになるのだけど、しかし姫崎と姫崎の姉の関係は秘密にされていたはずだ。僕はその事を思い出すと、僕は姫崎に姫島との関係を尋ねていた。その問いに対して、僕が姫崎にそう問いかけた直後。僕の目の前にいたはずの少女の姿が見えなくなっていた。僕の目の前にいる少女は確かにここに存在しているはずなのに僕には姫崎の姿が確認できなかったのである。その時の姫崎の反応はどこかおかしいもので。明らかに動揺しているように見えたのだ。僕は姫崎が消えてしまうのを見た後で僕はすぐに行動を開始した。僕はまず天海に僕の力を使って探すから協力してほしいと頼み込む。最初は渋る天海であったけども、僕に協力して欲しい理由を丁寧に説明すると。

僕の必死さが伝わったようで最終的には僕に協力することを決めてくれたのであった。僕は天海の協力を得てから早速探し始めることにするのだが、その前に僕が今一番気にかかっている問題について考える必要があると思うのである。

僕の頭の中には二つの疑問が思い浮かんでいる。一つ目に関しては僕の能力に関してだ。これはおそらく問題ないだろうと考えている。何故なら僕のこの力があればきっと見つけることができるはずだからだ。僕のその予想通り。

僕は直ぐに見つけることができたのだ。僕の能力は僕自身の意思の力に左右されているのだと僕は理解する。そして僕はその少女を見つけてから。僕はその女の子をどうにか助け出そうと考えていた。だけどもその時には、既にその女の子は死んでしまっていて。姫宮によって死体が持ち帰られていた。僕はそんな事実を受け止めながら僕は姫崎を探すことを最優先事項にするべきなのかそれとも僕の妹を見つける事を先にやるべきなのかを考え込んでしまいそうになっていた。僕はその事に悩み始めたのだが。そこに僕に話しかけてきた人物がいた。

その人物の正体は姫崎のお姉さんの天海優子さんだ。彼女は姫崎を探しに行くという僕の考えに付いて来てくれると言ってくれたのだ。

その申し出は有難いと思ったのだが、でもどうしてなのかが気になってしまい。その事について尋ねると、姫崎は自分のせいで、こんなことになってしまったと思っているらしく。だからこそ、せめてお墓だけでも作ってあげたいという気持ちからの発言だったのだ。だから姫川はすぐに見つかった。

姫崎は今病院のベットの上で眠り続けている状態らしく。僕は、そんな状態の姫崎の顔を見てから。その顔があまりにも綺麗に見えたため。思わず息を呑んでしまうことになる。

そんな風に呆然としていた僕の背中を天海は優しく叩いたのだ。そしてその天海は、僕に向かって、早くしないと妹ちゃんに怒られちゃうよ。と笑顔を浮かべて言うのである。僕は、そう言われるとその言葉に突き動かされるように動き始めたのだった。そして、僕が動き始めて少しすると姫崎を発見したのだ。

その女の子の名前は姫野真希といい。その子は何故か全身が血まみれの状態で倒れており。その姿に恐怖を感じつつも。

その子に僕は急いで近寄っていく。するとその途中で姫崎の姿が目に入ってきた。姫崎は、その倒れた女の子と同じような姿になっていて、しかも姫川の方は全身傷だらけで血が流れ続けていた。それを見た僕は姫原を姫崎の元へ急ぐように指示を出しつつ自分もまた姫原と同じように姫崎の元に向かって走り出す。

僕が、姫原よりも早く、姫崎のもとにたどり着いた時にはすでに遅かったのか、既に手遅れの状態だったのだ。僕は悔しさから拳を床に叩きつける。そして怒りからか僕の中から得体の知れない感情が湧き上がり始めていたのだけど、僕はそれに気がつくと意識的にそれを抑え込み、姫崎の事を助けるべく、僕は姫乃に手を伸ばした。だけども、どうやったらいいんだこれ。とにかく姫崎に触れなければ治療することも出来ないぞ。どうしたら姫崎を生き返らせられるのかを考える必要があった僕は。そこで、とりあえず、その姫乃の死体を持って帰ることにしたのだ。姫咲に姫乃の死体を運ぶように言って、その後に僕は姫崎の方へと向かう。しかし姫崎の姿を見ると僕は愕然となってしまう。だって彼女の姿は既に半透明だったからだ。それでも僕は彼女に近づいていき。彼女の体に腕を伸ばし触れようとしたのだけど、その寸前で彼女の体は霧のように掻き消えてしまったのだ。

姫崎の姿が消えてしまったあと、僕は何もする気が起きなくなってしまい。その場に立ち尽くしてしまうことになったのだけど。しかしそこで僕の頭に声のような物が響き渡ったのである。そしてその声が誰のものか分かった僕は慌てて姫崎に言われた通りに彼女の姉の所に向かうことにしたのだ。

しかしそこには誰もおらず。僕は、自分の妹の姫宮のことを探し始めるのである。そこで僕は、自分が今いる場所に違和感を感じるようになるのである。それはまるで、自分の居場所が自分の知っている場所とは異なっているような感覚を覚えていたからなのだ。そこで僕が違和感を感じていたその場所についてよく考えてみることにし、僕が、この部屋に来た時に、この部屋に対して、どんなイメージを持っていたのかを思い出してみたところ。僕のイメージではその部屋はまるで学校の教室の様な感じの部屋で、しかし部屋の中に置かれているのは明らかに学校では必要の無い物ばかりであり、そして僕はその事を不審に思ったのだ。何故なら僕の記憶の中の学校では本来なら、勉強に使う教材がたくさん有るはずだからである。

そんな風に色々と気になったことがあったのだが僕は、その部屋の中の棚に置かれたある本を手に取ることになったのだ。

その本が何か気になった僕は手に取ってからその本を眺めてみてから驚いた。その本の表紙には『物語の中で登場人物達が死んだ場合その魂は一体どこへ行ってしまうのだろうか』と書かれている。僕はその文字をみた瞬間にその本の事を調べなければならないと思い始め。その題名から、この本には、禁書として指定されておかしく無い内容の内容が書き綴られているという事がすぐに想像できてしまい。僕はこの部屋に何が隠されているかを確かめる為に急いで、その場を離れて、別の場所に向かおうとしていたのである。

僕はこの場を離れようとするのだがその時だ僕の耳には何かの声のようなものが届いていた。その声の主に聞き覚えがあったのでその事に驚いていると、僕の視界には、突然一人の女性が現れる。その女性は姫宮が成長したような容姿をしており。髪の色は銀色に染まっていた。そしてその女性の服装は黒を基調としており。胸元が開いている服で腰の部分からは白い帯が巻かれており、その白い帯とスカートの間に隙間が出来ている。さらにそのスカートは足首のあたりまでしか丈がなくその白のタイツと肌色の脚と黒のニーソックスの間からは生の足が覗いているというかなり大胆な格好をした女性が僕の目の前にいたのである。そして僕はそんな女性を見て。この女性が僕が今探している姫崎の双子の姉妹である姫宮の姉で、そしてその少女は、先ほどから僕を驚かせては消えるということを延々繰り返していた。そんな彼女が僕の前に現れると同時に。

僕は姫宮のお姉さんである姫宮優子に捕まり、抱きしめられたのである。その事で僕は慌てるのだけど彼女は気にせずに僕の事を抱き締め続けていて。僕はそんな状況に焦り、どうにか彼女から離れようと考えた。だがしかし彼女は僕の体から離れる気配はなく、僕を離そうとしなかった。僕はどうして姫宮が姫崎の体をあんなにも大事にしているかの理由を知ろうとしていたのだ。

姫宮の身体は姫崎の遺体の一部と一体化しており。その事から姫崎は何らかの理由で姫島によってその遺体を奪われ。その事がきっかけで姫神が狂ってしまった。そう考えていた僕なんだけど。僕はその事を思い出してから一つの考えに至るのであった。

それは姫崎と姫島は実は双子ではないという可能性についてである。

姫崎の姉を名乗る姫川はその件については何も言わず。それどころか、僕と会話すらしようとせず。その事を姫川に尋ねた僕に対しても冷たく当たるだけで取り付くしまがない状態となっていた。だから僕もその事に触れることが出来なくなり。その事を姫川と話さないまま。僕は家に帰ってきていた。ちなみに、天海と姫原に関しては、今日はもう遅いからということで帰らせていた。その事で姫川が文句を言うかもしれないと考えていたのだけど、特にそういった事もなかったので少しだけほっとしている。

僕は自室に戻ると鞄を下ろしてから制服を脱ぎ始めた。そして、そのままベットの上に寝転がり天井をぼけーっと見上げ始める。僕は何のためにこの力を手に入れたんだろう?そんな事を考えながらしばらくボーっとしてると、ドアがノックされる音が聞こえたのだ。それを確認した僕は、誰かが来たのだろうと思った。

そして僕はベッドから抜け出すと着替えを済ませ。部屋の外に出て、誰が来たのかを確認するために扉を開く。するとそこには姉さんの天海優子さんの姿があって。僕はその姿に驚く。なんせ今の時間はまだ学校の時間だからだ。なので姉さんがこんな時間に家にいる事自体が不思議なことだと思い。どうしてこんなところにいるのかと僕は疑問を口にしたのだ。

そんな風に不思議に思っていると、姉さんが僕に対して。妹ちゃんの事を助けてくれたお礼をまだ言えてなかったでしょと口を開き始める。どうやら彼女は、僕があの時、姫咲に助けられたことを感謝していて。だからこそ、妹を救ってくれてありがとうと言いたいみたいだったのだ。そして僕はそれに対してお安い御用だよと答えておいたのだが、その事を伝えると。彼女はなぜか困った表情になり始めたのでどうしたものかと思っていると。僕の背後に人の気配を感じたのだ。僕は振り返って見るとそこにいたのは自分のクラスメイトの天川姫野と天川姫崎だった。

僕はそんな二人を見て困惑してしまっていたのだ。なぜなら姫崎の身体は傷だらけで血が流れ続けている状態であったのに今は、血の跡も残っていないし。そして姫崎の方は全身傷だらけだったにもかかわらず。それも跡形もなく消え去っており、さらに言えば二人の着衣までもが元に戻っていたのだ。

そのことで、どういう事だと戸惑う僕に対し。姫崎の双子は僕に話しかけてくる。その姫崎達は姫崎の見た目は姫崎とほとんど変わらなかったのだけど、ただ姫崎と姫乃の違いは姫崎の方が若干ではあるが目つきが悪く、姫崎が笑えば、それこそ太陽のような輝かしい笑顔を見せるのに対して、姫崎の方は、常に冷たい瞳をしている点と。そして姫崎は姫崎よりも胸が大きい。まぁそれは良いとして姫崎と姫崎は僕に話しかけてきたのだ。その二人が、一体何をしたいのか僕には分からなかったが。二人は何か僕に用があるのかと思ってしまい僕は、一体何の用なのかを尋ねることにした。

そしてその問いに答えるように姫崎達が僕に語りかけてきたのだ。

「えっとですね。その私たちが今朝、真希ちゃんと喧嘩をしたのは知っていると思うのですけど」姫崎がそう言うと姫野が続けて言葉を喋った。どうやら、姫崎は僕が姫崎の死体をどうしたらいいのか悩んでいたことに怒りを覚えたらしく、それで喧嘩になったと教えてくれたのだ。

だけどそこで僕の思考は一瞬止まる。姫崎の言葉を聞いていて、違和感を感じてしまったのだ。僕はなぜこの双子はこの姉妹の名前を知っているんだと思い姫崎達を見つめる。そんな僕の様子に気付いたのか姫崎が、その答えを話し始めてくれて。僕はその説明で違和感の正答をつかむことが出来た。

その違和感の正体というのは、僕の知らない間に姫崎は双子の姉妹と連絡を取り合い情報を共有しているのではないかと考えたからである。そして姫崎のその推理は的中するのだけど、その真相は僕には分からず。だけど僕はそこで、僕の持っている『死者の書』の能力に思い至り、僕の持つ『死者の書』に書いてある文字を読み解けばこの姫崎に姫崎の姉だという少女についても何か分かるのではないかと考え。姫崎から渡された書物を手に取ると。姫坂に言われた通りに僕はその本を読んでみることにした。そして本の内容を読んだ僕は、そこでこの能力についての真実を知ることになる。そしてその真実を知り僕は自分の中にあった疑念が確信に変わる。僕はこの能力は本物では無くて。そして姫神が手に入れた能力が僕に継承されたものであると確信してしまう。そのことに驚き、自分の中の感情を抑えきれず、思わず自分の頬を叩きながら叫び声をあげそうになるのだけど。そんな僕を見て心配そうに近づいてくる姫崎の姿を見て僕はどうにか平静を保とうとするのであった。そして姫崎達の話を聞こうと視線を向ける。しかし僕にそんな余裕はなかった。僕は、僕の中に眠っていた力の本性をその時に知ったからである。僕の手には先ほどからずっと握られていた『物語の中の登場人物が死んだ場合その魂はどこへ行ってしまうのか』と書かれた禁書の一冊が未だに存在しており。それが僕の手の中で勝手に動き出したのだ。その結果僕は本の文字を読むことが出来るようになるという現象に襲われていたのだが、それだけではなかった。なんとその本の中から姫崎と同じような姿をした女性が現れたのである。

それは銀色の髪に黒いゴスロリ調のドレスを着用しており右手に赤い薔薇を持っているとても綺麗な人なんだけど彼女は姫崎とは少し違っていたのである。彼女の容姿の特徴はまず胸が大きくて腰回りはとても細いという体型で。それに背の高さも僕よりも高い。そして彼女の服装が、どこかのお伽噺に出てくるお嬢様みたいな印象を受けた僕は彼女が何者なのかを想像し始める。だけど僕の頭には、全くその少女の名前が浮かんでこなかったのである。しかし僕の視界に映っている銀髪の美少女が口を開き。

私の名前は姫宮優子です。と言ってきたのだ。それを見た僕は、この子は姫崎ではないという事を理解し、姫宮がどうして僕の前に姿を現したのかを理解すると、彼女に僕はどうして現れたのかと尋ねようとするのだけど、その時にはもう僕の前から姫宮は姿を消していて。それと同時に僕の意識もまた薄れ始めていたのであった。そして最後に僕は姫宮が言っていた言葉を思い出す。

その言葉というのが僕に対する告白で、僕はそれを受け止めることが出来ず、その場で倒れたのである。

僕は夢でも見ているのだろうか? そう思わされてしまうほどの状況が目の前に広がっていて、僕の体はまるで石化してしまったかのように硬直してしまい動けなくなっていた。

何故なら僕は目の前にいる女の子が一体何者かが気になりすぎてしょうがない。そんな気持ちを落ち着かせるためにも僕は、ゆっくりと呼吸を整える。すると彼女はそんな僕を見て首を傾げ、どうしてこんなにも緊張してるのと問いかけてきて、そんな彼女に対し僕は、あなたの事が好きだからだよと伝え。それを聞いた彼女は嬉しそうにして僕に抱きついて来て、それを確認した僕は、彼女の体を抱き返すと。僕たちは互いに唇を重ねあうのであった。

そして僕は思うのだ。彼女と出会ってからは毎日が楽しかったのだと。それはきっと僕の好きな人と初めて出会えたからだと思ったのだ。そして彼女は僕のことを名前で呼んでくれていたけどそれはどういうことだろうと僕は不思議になるのだがすぐに理解することができた。

それは、僕の名前が姫宮優子だからだと思ったのだが違ったようだ。彼女はこう言ってきたのだから あなたの名前を聞かせて欲しいと言われてしまったので僕はその事について素直に話す事にした。だって嘘をついたって意味が無いと思ったからだ。そしてそんな僕の話を聞いてくれる彼女に対して僕は自己紹介をしたのだけどその際に彼女が僕のことを真樹君と呼んでくれたことがすごく嬉しく思ってしまったのである。それからしばらく経った後にお互いが離れるタイミングがあり僕は彼女に対して疑問に思っていた事を訊くことにしたのだ。どうして姫崎は、自分の姉と同じ顔なのに姫咲の方を選んで、姫崎は、自分の妹の方に行かなかったのかということを。するとそれに対しては彼女は少し考えるようなそぶりを見せ。そのことについての質問に答えてくれることになった。

その事の真相を語ってくれた彼女の話は僕にとって驚くべきもので、なんせ姫崎の姉の姫宮は自分が死んでいる事を忘れているのではなく、そもそも死んでなどいなかったのだ。そして姫崎と双子だという事実もないらしい 姫咲の双子の妹が、死んだはずの姉が突然戻ってきたことに戸惑いを隠せずにいたのだけど、それでも、姉は、そんな妹に優しく接し始め。二人は、次第に打ち解けあい。姉妹仲良しになっていったみたいだった。しかしそんなある日の事だった。いつものように学校へと通う姫咲の後ろから一人の男性がやってきて。そして彼は姫崎の背中を押して転倒させてしまったのだった。

その光景を見た姉はその男性のことを不審に思い。その後、男性はその日以来姿を見せることがなく、そしてその日から数日後に姫咲は謎の高熱を出して倒れてしまい、そのまま亡くなってしまったのだという。だから今となっては姫宮は、自分を殺した犯人を恨んでいたわけじゃなくて。

そして今になってやっとその人が誰なのかを分かった気がしたと姫崎がそう言っていたことを聞かされ、そこで姫宮も姫崎と同じように僕が殺した人間なのだと悟ったのだった。僕が姫崎を殺していなきゃ姫崎は死ぬことは無かったかもしれない。

それどころか、あの時。僕と仲良くなった姫崎を殺すことが無かったかもしれないと、そこまで考えてしまった僕だけどそこで姫宮は僕に話しかけてくる。

その声は今まで聞いていた姫崎の声よりも落ち着いており、僕は彼女の顔をまじまじと見つめる。その声色と表情で僕は、目の前にいる姫神に好意を抱いているという事を確信できたので。そんな姫神に僕はこれからどうすれば良いのかを相談することにする。すると彼女はこう答えてくれて、姫崎と瓜二つの見た目をしている姫神は姫崎を姫崎として認識してくれるらしくて。それに、その事は姫宮自身も気にしていないようだったので僕がこれ以上悩む必要はないと思うけど、ただ、姫崎の妹として僕と付き合いたいという彼女の願いを叶えるために僕は協力することを伝えると。

そこで姫崎が僕の元にやってくる。どうやら姫崎は僕の隣で眠り続けている姫崎に声をかけたみたいで、どうやらその姫崎は、本当に姫崎本人であり。

そして姫神が姫坂では無くて姫宮であることも同時に教えてもらった。そんな二人の会話を聞いていて、僕はそこで違和感を覚えたのである。僕の知っている姫崎と姫宮が別人だということが分かったのだけど何故か姫宮の方が姫崎を、お姉ちゃんと呼んでいたのだ。その事で僕と姫神が混乱していたら、姫崎の口から姫神と姉妹だということが伝えられ、その話を聞いた姫崎が驚いていた。そんな二人を見ていた僕は、この双子姉妹が姉妹では無いという事を知っているからこそ余計に困惑してしまう。そこで姫神の話を姫崎から聞いているうちに僕の頭に姫咲が僕と友達になりたいと言っていた事を思い出したのである。僕は姫神の話を聞いて姫咲と姫神の間に交流があったことに驚いたのだが姫崎は、姫神と面識があったようで僕との事を知っていたようである。そんな彼女は僕に姫咲が生きていた頃の話を聞かせてくれて、僕と別れた後姫咲は両親と離れて暮らし始めたそうだ。そして姫咲には兄がいて姫神には姫坂という双子の姉妹がいた。しかしある日のこと姫宮の両親は、交通事故に遭い死亡。残された姫神と姫咲はそれぞれ別の家に暮らすことになり。それをきっかけに姫咲は家を出て行き、姫神も姫崎を姫神ではなく、姫坂と呼び始めたというのだ。

その事を聞き終わった僕と姫崎は、姫咲を目覚めさせるための方法を考えるのだけど姫宮に頼んで僕たちの前に連れてきてもらうことにする。

姫宮がそう言うと僕たちは教室にある自分の席で眠っていた姫崎が目を覚ますと僕たちに向かってこう言い放ってきた。そしてその瞬間から僕の中はまるでジェットコースターに乗ってるかのような感覚に襲われる事になるのであった。

「おはよう真樹くん。さっきは、私のことを好きって言ってくれてありがとう」

「姫咲、さん?」

「うん? 私は、姫咲じゃないよ。でも姫崎だよ」

その一言から姫咲は、僕の方を見つめて笑顔を見せてきながら姫咲だと言ってくるのだが姫咲ではないと言い出した彼女に驚きつつ、それを否定するために彼女の手を握り。姫崎がここにいることを教えようとする。しかし、それでは意味がないと言う彼女。姫崎の体が僕の方に倒れてきていて僕は慌てて彼女を支えるとそんな僕に彼女は、大丈夫だと言ってから、僕にキスをしてくる。それを見た姫咲が僕の名前を呼びながら駆け寄ってくると彼女は僕と口付けを交わしていた姫崎に対して文句を言い始めるのだけど僕はそれを止める。

そしてその行為のせいで僕たちは姫神に睨まれてしまうのだが、そんな状況下の中、僕の目の前で姫咲は、姫宮のことを姫神と呼ぶようになり姫宮の体の中に自分の意識が入り込んでいる事を僕に説明する。だけど、姫崎は意識だけじゃなく記憶までもを無くしていて、自分が誰だか分からなくなっていたのだという。

その説明を僕は受け入れたくないが、それでも彼女が嘘をついているとは思えなかったので、とりあえず、姫咲をこのまま保健室に連れて行くことを僕は提案して、そこで僕が彼女を抱えようとしたらなぜか姫神は姫崎をお姫様抱っこし始める。

そんな彼女の行動をみた姫神は、姫咲のことが気に入ったみたいで。僕から姫咲を奪うかのように奪い取り、その行動に姫咲は怒るんだけどそんな彼女を宥め。

その光景を見ながら僕は思ったのである。僕はこんな風に皆と仲良くなりたいと思っていたから姫咲と出会えたのではないかと。だから僕は、姫崎に対して僕は彼女のことが大好きなんだと伝え。それを聞いた彼女は僕に対して、こんなにも優しい言葉を言ってくれるんだねと言われ、僕は姫咲から抱きしめられてしまった。僕はそれが凄く嬉しくて。そして僕も、姫崎の事を好きだという言葉を告げて、その気持ちを伝え合うと。

僕はそのまま彼女と唇を重ねることにしたのであった。

そんなやり取りを終えた後に、僕のクラスにいた生徒たちはいつのまにかいなくなってしまい、僕はその事について気になるのだけど、それよりも今は姫咲の体のことを調べなければいけないと思ったのだ。だけど彼女は、そのことについて心配はないと言っているのだがそれでもやはり調べる必要があると思った僕は、そのことに関して姫咲の両親を尋ねてみると。そこには彼女の両親が待っていた。

姫咲の両親を見た僕は思わず頭を下げて謝ろうとするのだが姫咲が僕のことを止めた。その事で僕はどうして彼女が止めに入ったのかがわからなかったのだけれどその理由は彼女の母親にあった。なんと姫崎の母親だと名乗った女性は、その昔、僕が殺した相手だと名乗り出たのである。そのことで僕の頭の中である疑問が生まれる。もしかすると僕のやった行為は、彼女を殺す原因を作ってしまったのではないかという疑問が、そこで僕に対して話しかけてきたのは僕の母だった。そして僕と母は話し合いを始めると僕に問いかけてきたのだ。

「真咲、あなたは一体、何が目的であの女の子を殺めたのですか?」

その言葉に僕は、自分がやってしまった過ちがどれだけ重いものだったかを改めて理解し、だけどそれでも僕は真実を伝えることにし。

僕が姫咲を殺した理由を包み隠さずに全て話した後、僕は姫咲の両親に殴られた。そしてその痛みに僕は涙を流し、だけど僕は、その事を甘んじて受けることにする。そして僕と父は姫咲の家を立ち去り、それから数日経った頃。僕の所に姫神がやって来た。

そして姫神は姫崎にそっくりな見た目をしていたので僕は彼女の事が一瞬、誰なのかわからなかったが彼女の正体を知った時。僕は驚いた表情を浮かべると。その事に気づいた姫神はこう口にした。

『あ、そうだ。この子には、もうすでに私の魂を入れてあるんだよ』

「いやいや、そんな簡単に入れられても。それでいいのかよ!?︎ そもそもどうやって入れたんだ? というより、あの薬の効果をどうやって打ち消したというか」

『それは、私もわからないよ。けどね、私は、お姉ちゃんとずっと一緒だって分かっただけで満足しているんだ。お姉ちゃんは私が居なくても、こうして元気にしているわけだし、これで良いんだと思うんだよね。それにお姉ちゃんはこれから新しい人生を送るんだから、それを邪魔するような真似はしない方が良いかなと思うんだ。

それにお姉ちゃんは私にとっての恩人でもあるからさ。それなのにお姉ちゃんが幸せになれないというなら。今度は、私の力を使ってお姉ちゃんに何かできないかと考えたの。

それに、私は、今を生きていて。そして真樹くんとも一緒に居る事ができる。それにこれからもっと色んなことを経験して、もっともっと思い出を作れる。そんな未来がある。そのことだけでも、きっと幸せな事だと思うから。それに私は、真輝と一緒にいれたら他には何もいらないんだ。だからね、私はお姉ちゃんにお姉ちゃんの時間を少しでも長く過ごしてほしいなって、心から思って。

そんなことを考えていた時にこの子に会ったの。

最初はちょっと戸惑ったけど。

この子があまりにも綺麗で可愛かったものだから。

気がつけばこの子と、こういう関係になっていた。そしてそれは別に嫌じゃ無かったの。

でもさ、やっぱり私の中のこの子の事は消えてない訳。

それってつまり私は今でもこの子を妹だと認めているって事だと思うんだよね。

だってさ、いくら記憶が無くなっているって言っても体は間違いなく、お姉ちゃんの物だもん。

そしてそれは、お姉ちゃんがこの世界にいる間、この子は確かに私の中に存在しているってことになるでしょ? ならこの子の為を思うなら私は妹で居続けないといけないんじゃないかって、そう思っちゃうんだ。

だけどさ、そうやって考えると。今の私はどうなのかな。なんて考えたらさ。

私は、本当は何がしたいのかわからなくなっちゃったの。でもさ。それでもやっぱり好きな人と過ごす時間が一番大切なんだろうね。そう考えていくとさ。結局、私は、ただ真樹くんに振り向いて欲しかっただけだったんだ。

そして、私は今もその想いが変わってはいない。でもさ、それが叶った今、私は本当にこの世界に存在していてもいいのか。なんてことをつい考えちゃうの。

真咲といるのは楽しいよ。そして幸せだよ。でもね。

時々すごく寂しいの。そして怖くなる。もしもこの時間が終わってしまうとしたのならば。その時には私も死ぬ事になるんじゃ無いかと思って。そうなってしまうのは怖いよ。そんなことはあり得ないと頭では分かっていても、もしもあるとするのであればその可能性があると、どこかで思ってしまい。それを恐れて、そして不安になってしまうことがある。そして真咲に捨てられるのではないかと考えて。そして、その事を考えていると涙が出そうになる。だけど真樹くんはそんなことをする人では無いと思っているの。だけどね。それでも、やっぱり怖い。

こんなことを真樹くんに言えるはずもなくて、私はいつも笑顔で真樹くんに接して、その事で、私は彼を苦しめている。真樹くんは私のために必死に我慢してくれて、私はそれを知っていながら何もできなくて。でもそんな生活に少しずつ慣れてきてしまった。そんな自分が許せなくなってきて、でもどうしようも無いことがあって、それが、たまらなく辛い。だから、もういっそ、死んでしまいたい。でもね。そんな風に思いつつも私は生きる意味を探して、そしてようやく見つけたんだ。

それはね。大好きだよって言ってくれて。そして、その言葉を裏切ることなく、その気持ちは、どんどん膨れ上がっているの。それこそ愛しくてたまらないほどに、その気持ちは日に日に大きくなってきている。その気持ちを自覚してから。私の胸は張り裂けてしまいそうで。

でもそんな事は決して表に出さず。

そして私は今日も笑って、そして彼の側にいてあげるの。

これが正解かは、正直分からない。でもさ、それでも私は、その答えしか知らない。だからその選択を後悔することが無いように、私は彼に優しくしてあげたい。そんな風に思っていたらさ。彼が倒れて病院に運ばれたって聞いて。

そこで私が見たのはさ、苦しんでいるあなたで、そこで初めて、私はあなたのことが好きで。だけどそれと同時に自分のことが憎くて仕方がないの。

だけどさ、その感情とは別に私はあなたを助けたいと強く思った。そしてその結果、私はこうして生きているんだけど。でもさ、だからといって私は自分がやった行為を肯定するつもりはないよ。それはきっと間違っていたんだと思う。だけどそのおかげで、真希は助かり、そして、こうしてあなたと出会うことができた。それだけは本当なんだから。

そんな感じかな。

だからね。私はあなたに感謝をしているの。

あの日。あの時。あなたがあの場所で。私を見つけてくれてありがとう。

だから、あなたがこれからどんな道を歩んでも。

私と出会えてよかったと思ってくれるなら。それで良いかなと、今はそう思えるようになった。

でもね、そんな日々もいつか終わりが来るかもしれない。

そんな時に真輝が私を選んでくれたら、その時は嬉しいな。

まあこんなこと真樹が知る必要の無いことだけど。

こんな私の事情を知ったところで。きっと重荷になっちゃうだけだし。それにそんな気持ちを真樹は求めてはいないだろうしね。だからこそ私は、今という幸せだけを、大事に噛み締めていこうと思います。そしてそんな私に、いつまでも寄り添っていてくださいね?真樹」

〜Fin〜 -----------ーー ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。この作品を通して、少しで皆様にお楽しみできたり感動を提供できていたりしたのなら嬉しく思います。この作品は一応ハッピーエンドですが、この物語はバッドエンディングも書いています。そしてそちらの方は、姫咲と姫神がどうなったか?という作品になってます。なのでもし良かったら是非見てみてください。こちらの作品も完結済みになっているためいつでも読めるようになっていますので興味を持たれましたら覗いてみてくださると幸いです! それと最後に一言だけ言わせていただきたいのですが、この話の中で出てきた黒歴史ノートの内容と真咲の体に関する内容に若干似ている点があると思うんですけどそれは気のせいですよね?えっ、もしかしたらあるかもだって?大丈夫、僕が書いたやつはもっと酷いしこれくらい可愛いものですよ。(震え声)

では、長文失礼致しましたm()m Ps お世話になっております、 そしてこれからよろしくお願いします!

「んんぅーん。ふわぁ。よく寝たわねぇ」

私はベットの上で背伸びをすると窓を開け外の景色を見渡す。

ここはどこだろうか。そして、私はなぜこんな所に居るのか。

そんな事を考えつつ窓から下を見下ろす。

そしてそこには、綺麗な街並みが見え、そして人々の活気に満ちた姿が見える。そんな風景を見て、ここが何なのかを理解し始めた。

(そうか。私は、あの男に殺されてしまったのか。だから、ここは天国なのね)

だがそれにも関わらず違和感を覚える。私は確かに死んだはずだ。ならばどうしてこうやって思考ができてしまっているのだろうか。それに先程も述べたが私は何故かこんな場所に居る理由が理解できず。そして、ここに居ることに恐怖感を抱いてしまう。そんな疑問に悩んでいる最中に、不意にドアが開いた音がした。そしてそこから現れたのは。

私を殺したはずの如月 真樹の姿だった。

----ー 僕は病室から外を見ていた。そんな僕の横でベッドに座っている少女。彼女は、一体誰なのだろうか。そんな事を考えていた時に彼女の目が開き、その目と合った。そして彼女は微笑んだ後口を開く。「ねえ、君の名前はなんて言うの?」

「僕は真樹だよ」

「そっか、じゃあさ、君は、なんで生きているの?」

唐突に発せられたその言葉はまるで僕に突き刺さるように鋭いものだった。だからか、自然と汗が流れ落ちてくる。

(どうすればいい。この状況を打開できる策はあるのか?)

頭で考えていても何も解決策は浮かんでこない。それならば直接問いただしてしまおう。そう考えた僕はその事を彼女に尋ねようとした時に再び彼女が先に口を開いた。

「もしさ、この世界には二つの世界が在るんだよ。その世界ってね。同じようで、でも、違うの。一つはその世界で生きていた人の生まれ変わりが暮らしている世界と。もう一つは。その世界で生まれた魂がその世界で亡くなった後に他の世界で生まれ変わってその世界の人として生活しているっていう世界と。そしてね。私は後者の世界にいるの」

そしてそう語る彼女の目は真剣そのものであり、嘘をついているようでは到底無かった。そして彼女曰く、僕はその世界に生まれた人間だと言うらしい。確かに言われてみれば、どこか納得出来るところはあるが。そもそもそんな話は現実であり得ない事である。そう考えるとその事実を受け入れたくない自分がどこかに居て。だけど、それを無理矢理受け入れようとする自分もいて。でも、どちらにせよ今の状況を解決しないことには前に進めないことに変わりは無くて。だからこそ今は自分の中で葛藤している場合じゃないと思い僕は覚悟を決めることにした。そして僕のその反応を見て満足したのか彼女は、今度は自分について語り出す。

「じゃあ次は私についてのお話しね。私はね。この前の世界とは違う、もう一つの世界でね、私達の一族とあなた達一族は仲がとても良くてね。私もあなたの事を知っているの。それでね、私がこの世界を生きているのは。この世界に生まれるために死んで、そして、この世界で産まれ直して生きてきた。つまりはね。私と真咲くんは前世では姉妹で、この世界に生きる為に死ぬ前は殺し合っていたんだよ。そしてね。私達は、今こうして一緒にいられるのは、偶然ではないよ。運命が引き寄せあった結果だから。だけどね。私はもうこれ以上の幸せはいらないの。だから真樹くんは真咲のことを忘れて欲しいの」そう言って泣き出しそうになるのを抑えているのだろうか、唇を噛みながら笑顔を作るその姿は痛々しく。見ているこちらの方が辛いと思ってしまうような顔であった。だけどその願いは受け入れる事は出来ず。そんな顔をする彼女の手を掴もうとしたのだが、それよりも早くに扉が開く音が聞こえ、そちらに目をやるとそこに立っていたのは姉ちゃんの姿があった。その姿を見て僕は、もう逃げ場が無いことを理解する。だからこそせめてもの意地を張るべく彼女を庇うように立つ。

そして姉ちゃんは僕に向かって手を差し出してきた。

その手を取ることは出来ないので、拒否を示すように、ゆっくりと首を横に振ると姉ちゃんは、その表情を変えることは無かった。ただ一言。お前の気持ちは分かっているぞと、そう言いたげな瞳で僕を射抜きながらも、彼女は差し出していた右手を引き戻し、その手で頭を掻きながら、そして大きな溜息をついた。その行為が僕の心を深くえぐりつけるかの様だった。だがそれでもまだ、負けを認めるわけにも行かずに歯を食いしばり、僕はその痛みを耐え続けた。

そんな僕に対して姉ちゃんは諦めたように告げたのだ。「真樹の気持ちはよく分かった。そしてその決意を覆せるとも思っていないよ。だけどね、私のこの想いが変わらないのと同じように。この子も、私の気持ちが変わらないことを理解してほしい」そしてそんな姉の言葉を聞いて僕は絶望した。そのせいで、思わず膝から崩れ落ちる。そしてそれと同時に涙も溢れ出てきた。だけどそこで、またあの不思議なことが起きたのだった。それは突如僕の目の前で火花が散ったかと思えばそれが一瞬にして消え去ったという不可解なものであったのだ。その事に呆気に取られていたがそんな僕とは対照的に姉が、何かに気がついた様子を見せる。その証拠として、彼女の口から驚きの声が漏れ出たからだ。「真咲。貴方、記憶があるんじゃない?それも鮮明に覚えているというより、この光景を見たことがあるとそう言っているかのようだけれど。どういうつもりなの?真樹に、そんなことを教えたって良いことは起こらないと思うのだけど。だって真樹はこの世界でも私の弟の真樹なのだから、例えこの子に記憶があろうと、私達の邪魔をする理由は無いはずでしょう?だから教えてくれても良いんじゃないかしら」そして、そう問い詰める姉の目からは確かな敵意を感じた。

そしてそれに答える様に姫神 黒は口を開き。

その言葉を聞いた姉ちゃんの顔は真っ青になっていた。

---ー 私ね、本当はさ。あなたと一緒になれる未来を夢見ていたの。だからさ、その夢が叶うと思っていたの。だからさ、そんな幸せな結末が来れば嬉しいなぁ。とそう願っていた。だからさ、だからね。その可能性を信じたいんだよ。そしてさ、もしそうなのだとしたらさ、私はね。嬉しいのと同時、悲しくもあるの。それはきっとね、私があなたの事を愛おしく思っていたと同時に憎んでもいたのかもしれない。そんな複雑な感情に心の中は渦巻いているからだと思う。それにさ、もしそうであるならばさ。それは本当に私にとって喜ばしく、でも、やっぱり悲しくて寂しい事なんだ。だからこそ、私も、この世界の姫神 黒のようにあなたの事を愛し続ける。それは変わらない。そしてその覚悟があるからこそ私は、真咲。君とは一緒にはなれないしなれないの。

---ー そして、彼女は、僕に手を伸ばしながら近づいてくる。だが僕はその伸ばされた手を取ろうとせずに、ただその場に固まっていることしかできなかった。そしてそんな僕の行動に対して彼女は悲しい表情を見せた後に僕に近寄ってきた彼女の手が肩に触れようと近づいたその時である 突如としてその手を避けようとした僕を彼女は抱きしめてきた。突然の行動だったので当然僕の体はそのまま倒れ込んでしまったのだがその瞬間僕は彼女に馬乗りされているような状態になってしまうと彼女が口を開く

「ねぇ。お願い。お願いだからそんな目で見ないで。そんな哀れんだ様なそんな目で見られても困っちゃうだけなんだよね。ねぇ?そんなにさ、そんなに私のことが可哀想な人だっていう目で見て私を虐めるのは止めてくれないかな?」彼女は先程までとはまるで違った口調になって話始めたのだが、何故かその姿をどこか懐かしい感じを覚えてしまい僕は動けないでいた。しかし、そのせいで僕は、ある事に気がついてしまう。それは彼女の着ていた服装についてである。それは以前読んだ漫画に出てくる巫女装束そのもので、さらに言うなら僕の通っていた高校の制服だったのである。だからなのかは分からないけど僕の頭の中が少しずつ、だけど確かに蘇ってくるのだ。この世界が僕にとっての何回目かの世界の記憶が

「ああ!そうか、そうだったのか。そういう事なのか」そして、僕はそう叫ぶと彼女の腕を掴み、そのまま力任せに押し倒した。すると彼女は、驚いたような声を上げた後に僕の頬に平手打ちを食らわせて来た。

僕はその痛みを我慢しながらも僕は彼女に向かい話しかける

「どうして、どうしてだよ、なんでこんなことをするんだよ。お前は何をしたかったんだよ!」そう言っても返事が帰ってこなかった。なので僕は更に彼女に怒鳴りかける。

「いい加減、自分の本音を言いやがれよ。お前は一体何を考えているんだ。僕は一体どうすればいいんだ。そもそも僕がこの世界で生きていいのかさえも分からなくなってきてしまったよ」そして僕は泣いている彼女を睨みつけると

「ふざけるなよ。もう、全部忘れさせて貰おうなんて考えていそうな雰囲気出しているけどさ。それをさせないからな」

僕は怒りのまま、拳を振り上げた時に再び病室の扉が開かれるとそこから入って来た人が僕の腕を止めてくれたのだ。そのおかげで殴らずには済んだのだが、その代わりにそいつに殴りかかろうとした。

そしてそいつもそいで抵抗してきたのだ。

だから、僕は、もうその人物と争うしかないと思い。その人物を強引に押し倒すと馬乗りになったのだ。

そして僕は彼女の服を脱がそうとしながらその行為を続けていく。だけど彼女の方はそれを必死に阻止しようとし、そんな僕らの様子をみた周りの人間は、僕を引き離し、抑えつけ、取り押さえられそうになった時に山吹先生がやってきてくれたのだ。その事もあって、僕はその場は収まったのであった。そして落ち着いた後で山吹先生から聞いた話しによれば僕達は二人して、同じ病院に入院している患者らしく。僕の方は脳に障害があって、彼女の方は、重度の鬱病と診断されていて。この病院にいるとの事であった。

それを聞いて納得した。

そして同時に、この世界があの物語の中で語られていた世界だと気がつくことになる。だからこそ彼女はこの世界で生きるために死ぬ為に、この世界で死を迎えた。その記憶を持っているということなのだろうか?だが、この世界で生きたという記憶が僕の中にあるということは、彼女はこの世界では生きているのではないのだろうか。そもそもこの世界が物語に出てきた世界と酷似した世界だとは思わないのは、この世界が物語に出て来ている世界だとしても僕にとってはその世界に存在している僕は、その世界の主人公の兄では無く、その主人公と同じ学校に通っていて仲の良い友達という設定のはずだったからである。そのはずだとそう信じたいのだ。だからこそ僕は彼女の口からその言葉が出るまではこの世界のことを信じるつもりはないし、この世界の彼女のことも僕は信用しないでおくことにした。

そしてこの日から数日が経ち、退院した後に学校に行った時、僕はその出来事を思いだし恐怖を感じていた。それはクラスメイト達が一斉に僕に向けてきた殺意にである。あの日、姉が、僕の教室に乗り込んできた際にクラスメイト達に何かを伝えたのであろうか。僕はクラスの中で完全に孤立する事になった。だけども姉や妹、それから母さんなど。一部の親しい友人だけは僕を見捨てず側に居続けてくれるようであった。しかし、それ以外の者達からは疎まれているような感じであり。それはあの時の姉の言葉通りに記憶のある生徒達からの嫌がらせを受けていたからだ。そして、この世界でも僕達の物語は始まっており、僕を待ち受けるのは破滅だけだと。そんな確信がなぜか僕の心の中では芽生えており。この現実から逃れる方法を考えていたのだ。だけど、結局、何も思いつかないまま日々が過ぎていき僕は高校生になるのと同時に家を出ることになった。そのきっかけとなった理由は僕の能力のせいでもあるし、姉と母の二人が心配だからという理由でもある。まぁそんな理由から姉が僕の高校入学と共に家を出ろと言って来たわけである。

だから僕としてはその事は正直嬉しかった。そして姉からの言葉を受けて僕は姉が入院していた頃に書いてもらった手紙の内容に書かれていた内容を思い出しながら荷物をまとめて、その日の夜には僕は一人暮らしを始めたのだ。

そして、僕の住むアパートにやって来たのは姉の幼馴染でもある女性とその娘の2人であった。そんな二人の自己紹介は僕の知っている人と同じようなものだった。その人達と顔を合わせるとすぐに僕の事を気に入ってくれて仲良くしてくれているみたいで、僕はこの生活が楽しくなり始めていた。

だが、それも長くは続かなかった。なぜなら僕達の暮らす場所がバレてしまい、姉と姉の娘、それにそのお母さんが乗り込んで来てしまうと僕は拘束されてしまい。その間に引っ越し業者の人たちと僕の部屋にいた2人は逃げて行き。僕だけが監禁状態になってしまい。そしてそんな状況から救い出しに来てくれたのは妹の友恵だった。そのおかげで何とか脱出に成功したのである。だけどその後で、あの事件に関わった人物達の家族は僕を捕まえようとしてきて、その人達から逃げるのは大変ではあったがなんとか逃げ延びては、隠れていたりした。そして最終的には姉に助けて貰ったのだ。そして僕はその事で姉の事が少し苦手になったり、姉のことを怖く感じるようになったのだった。

だから、僕の気持ちを察してくれたのかもしれないが姉の行動によって僕はこの世界に居る限り姉と一緒になることは絶対に無いと、改めて理解させられると僕は絶望してしまいそうになっていた。だから僕は少しでも姉の機嫌を損ねないようにして、なるべく怒らせないように努めてきた。そのおかげなのか、それとも姉は僕の考えを理解してくれていたのか、今までの所は何も起こってはいない。そして今日も僕はこの世界で生き残るための準備をしなければならないと思いながら、姉から借りた本を読む事にしたのである。

---ー

「え?じゃあ、今から僕が行く高校の文化祭に一緒に行かないかだって?」

それは突然の姉の提案で僕が姉が通う学校に入学することになってから約半年が経過し、夏休みが終わる少し前の話であった。

「うん、その学校の文化祭に行ってみたくなってさ、だから黒ちゃん。私に案内して欲しいんだけどダメかな?」

「うーん。どうしようかな。僕が行っても良いものなのか不安もあるけどさ。とりあえず確認だけでもしておくかな」

僕はそんな風に言ってみる。そう言いつつも、もしかすると僕が来るのが分かっていたのか。もしくは姉にその情報をリークしている人がいたのではないかと思う。でなければ姉がわざわざこんな誘いをするはずがないのだ。だからこそ、もしも僕が来て欲しくないと感じるのであれば事前にその旨を伝えられるはずである。そう考えた上での返答である。

「うわっ、何で分かったんだよって感じな反応してるよね。まあいいけど。それで、どうする?来るの?来ないの?」

「それはちょっと考える時間とかはくれるのかな?」

そう言ったものの僕はすでに決めていたのだ。だから姉にお願いすることにする。

「それなら1週間後までに教えてね」

こうして僕は姉の通う学園の文化祭に行く事が決まったのであった。そしてその1週間後に僕はその高校の門の前に立っていたのである。その学校は女子高である。その校舎はとても広く。校門の外にも沢山の生徒や保護者と思われる人々が出入りしていて。僕が思っていたよりもずっと賑やかな学校であった。そして僕は姉の姿が見えないか探しながらも校内を歩いていったのである。

「おっかしいな。ここに来たことがあるっていう記憶はあるんだよな。なのにさっぱり分からない」

僕が辺りを見ながらそう独り言を言っていると僕に話しかけてくる人がいて

「あの。貴方が山吹 桜先生の弟さんですよね?」

その少女の外見を見ると僕が記憶している登場人物の一人の見た目にとても似ていたのだ。そう思い、話しかけることにする。

「そうだけど、君ってもしかして、僕の姉と知り合いの子だったりする?」

そう問いかけてみると彼女は笑顔になってこう答える。

「はい。先生とは中学に入ってからの友人です。あっ申し遅れました。私の名前は花音と言います。よろしくお願いします」

「そうなんだ。それじゃあ花音さん。これからよろしく」

僕達はお互いに自己紹介をしたところで、僕の方からも質問をしてみることにしたのだ。その方が相手の事について知れるから。そう思い僕は、彼女に問いかけてみた。

そして彼女が僕の疑問に全て答えてくれたおかげで僕は彼女に対しての興味が更に強くなった。そしてそんな彼女のことに興味を持ってしまった僕はその彼女の事をもっと知るために。彼女を自分の住んでいる部屋に招待しようと考えたのである。その方が彼女と色々と話すことができると考えたからだ。そしてその提案を受け入れてくれた彼女を連れて僕の住む家にたどり着くのであった。そしてそこで僕の家で寛いでいた彼女に対して僕はこんな事を聞く。

それは、この世界で僕達が出会う前の話であり。物語の始まりと始まり。そしてその物語を語ろうと思ったのだ。だけどそんな時に、姉から僕が電話が掛かってきて、僕は姉からの着信に出るのである。すると姉はいきなり僕にこう言ってきたのだ。

『ねぇ、黒ちゃん。もしかすると、このままではあの子達の物語が終わらなくなるかもしれないから、私は今からこの世界を壊すよ』

そう言われて僕は混乱してしまう。

そして僕は姉から詳しい説明を求めるが 姉はもう僕の言葉に耳を傾けようとはせずに。ただ一方的に話を続けて僕を家から追い出してしまうと、この世界の物語を終わらせるための行動をし始めてしまう。

だけど僕はそんな姉を止めようとしても止められず。僕がどうにかしないといけないのだと思いながら姉とあの人の会話を聞きながら必死で頭を動かして打開策を見つけようとした。その結果は最悪なもので僕はその物語を無理やり終わらせるための装置を用意すると、それをこの世界の僕の妹に向けて起動させたのであった。そんな状況になり僕は絶望していた。そんな状況になってしまった以上はこの世界の終わりを受け入れるしかないと考えてしまい。僕は全てを諦めると、その物語が終わった瞬間に僕の意識は暗闇に落ちていきそのまま僕は死んでしまうことになった。そしてこの物語に出てきた人物は誰一人救われないまま、終わりを迎える事になったのだ。

僕が死んだ後、僕の体が光に包まれ始める。そして僕は自分が光の粒へと変化を始める。僕はこの物語をハッピーエンドで終われなかった原因が自分にあると思い、僕のせいでこんな結末を迎えてしまった事を後悔していた。そして僕にこの物語で関わった人達への贖罪の機会があるというならば、この僕に出来ることでその罪を償おうと考えていた。そして僕は自分の魂に刻まれた記憶と経験を使ってあるスキルを作り出す。

僕はこのスキルを使うための準備を行うことにした。まずは自分自身がこの世界に存在していると思わせなければ発動できないようにするための設定を済ませると、次はあの時、姉と妹がやっていた事を真似て僕自身がその現象を体で感じ取れるようにする準備を整えていく。そして僕の体の光が強くなる。僕はその事で自分の体に力がみなぎってくるような気がした。そのおかげで、あの時と同じ様にこの物語の中で起きた全ての事柄を思い出していた。

そしてこの物語は、主人公が死んで終わってしまうようなバッドエンドだと思われているが実際にはそうではなくて実はハッピーエンドであるということを僕が思い出すと、僕の目の前の景色が変わり始めてこの物語の本当の意味でのスタートが始まるのである。

----------side??? 私、天堂 真也の住む街で何かが起き始めていることを私は知った。なぜならこの数日の間、この周辺では異常な出来事が起こり始めていたからだった。

例えばの話になるけれど。とある男性が急に体調を崩して病院に入院してしまったとのことだった。しかもその男性はかなり重度の病に侵されているらしく、余命宣告をされてしまったらしい。

そんなことがあったので、私が病院まで彼の様子を見に行ったところその男性の身体が既に限界を迎えていて。彼が亡くなるのはそう遠い話では無いというのが分かった。そして私自身もその事に驚いてしまったが、その事実を知ってすぐに私の家に向かって走ったのである。

だけど私が行った時には既に遅く。彼は亡くなってしまっていて。私はその現実を受け止めることができなかった。そんな私の様子を見た医者が私の事を励ましてくれて私を気遣ってお葬式が終わった後も通夜に参列させてくれて。そして私を励ますためだとお坊さんも付き添ってくれたのだ。そしてその人達のおかげで何とか立ち直れたのだった。

だからなのか、お経が聞こえると私はこの世の無常さを感じてしまうのである。そしてそのお経の声は私を慰めるかのように響いてきて。この場に居ないのにそのお経を捧げている人はこの人が生きてきたことを惜しんでいるのだと思うと。この世に生を受けた人は全員等しくこのお経の人と同じようにこの世を生きて。いつかは死んでしまうのかと思うと。悲しくて泣きそうになってしまうのであった。

そしてその日の夜。お通夜が終わる頃にはすっかり日も暮れてしまっていた。だからと言ってこの後に何もすることが無いのも退屈であると思い。その辺りを散歩でもしようと思い、この辺りに住んでいる知人に連絡を入れてみたのだが、みんな出払っているみたいだったので、仕方ないので1人で行くことにして、歩き出す。そしてしばらく歩いていると少し離れた場所から爆発音が聞こえてくるのが分かったのだ。

最初は花火をしているだけかもしれないと思っていたのだ。

だが次第にその爆音が大きくなるにつれて嫌な予感がしてきてしまった。だから私はその音の原因を確認しようと走り始めた。

そして音の発信源に到着するとそこには大きなクレーターが出来上がっていて、その周囲には沢山の人々がいたのである。

だけど私はその現場の状況がどうなっているのかを確認するためにその場所へと向かうと、その光景を見た私は言葉を失った。何故ならその地面には大きなヒビが入っていたのだ。それに加えて周囲にいた人々の中には倒れている人も多くいて、明らかに何かが起きたのだと思ったのだ。

だから慌ててその場に向かったが、私はどうすればいいのか分からなくなってしまい立ち尽くしていた。その時に後ろの方で足音がしたので振り返ってみるとそこに立っていたのはこの場にいた他の人よりも立派な服を着ている女性がいたのである。その女性の事を観察しているとその女性は口を開く。

「これはどういうことなんだ?それにどうして地面が崩れてるんだ」

その声を聞いた瞬間に。彼女はあの事件の現場にいなかったのだと思い出したのである。だから彼女は私よりも冷静になれるだろうと思い、彼女に声をかけることにした。

「すみません。私には何が起きているのかわからなくて。とりあえず警察を呼びたいんですけど連絡できる人が周りに誰もいないみたいなんですよ」

「なるほどな。確かに君の言っていることは正しいだろう。それで君はこの辺りで住んでいる人間で良いんだよな?」

「そうですね。それではあなたもこの近くに住んでいて今回の騒動に巻き込まれてしまったのですか?」

「そういうことだな。それと私の名は水樹 彩花と言う。一応はここらへんの住人ではないからこの近くで事件が起こっていたことは知らなかったぞ」

その事を聞くと私は彼女のことが信用できなくなったのである。だけど、それでも今は彼女の協力が必要だと思ったので話を続けようとする。すると彼女は突然こんな話を始めたのだ。

「それよりも、こんなところで長話していてもいいのかな。ここに居る者達の大半はこの場の崩落に巻き込また奴らの可能性がある」

「えっそれじゃあ私達は今危険な状態にいるんじゃないですか」

「そうだね。この場から逃げる事を考えた方が良いかもしれないね」

「それじゃあ貴方と一緒にここから逃げましょうよ」

「残念ながらそうもいかないようだ。私達の背後を見てみろ。私達がこの場所に辿り着いた時と変わらずにこの周囲を警戒しながら歩いている集団がいる。おそらくは、彼らこそが、この崩落を引き起こした犯人達なんじゃないだろうか」

「それは困りましたね。でも、私達でなんとかするしかないんですよね。どうにかできそうな作戦を考えますから時間を稼いでくれますか?」

「時間稼ぎくらいならば可能かもしれないが、この状況下では、そんな余裕は無いかもしれないぞ。だけどやるだけはやってみるか。とりあえずはこの場で、あいつらをやり過ごすとするか。幸いなことに私達の周りを取り囲むように彼らは動いていて。私達に話しかけることも出来ないようなので、彼らが動く気配がないうちは、ゆっくりと話し合いをしてこの場から脱出する方法を探すか、彼らの中に話せる者を探して交渉を行うしか無いんじゃないか。もしそれが駄目ならば、もう私達の力でこの危機を切り抜けるしかないだろうが、まぁどちらにしても今の状態でできることと言えば。話し合えるような人物を探し出すことだけだとは思うよ」

そう言うと彼女は周囲を警戒し始めたのである。

なので私は彼女の意見を参考にする事にした。それからしばらくすると、私の背後に誰か近づいてきたようであった。その事に気づいた彼女がこんな話をし始めたので私もそれを聞いてみると。その人物が、私にこう言ってきたのである。

「あのー私の名前は 天堂 美紀と言います。もしかして、貴女達は この事件に関わってるのではありませんよね?私はこの近くにある学校の教師をしているのですが。もしかして先生がこの騒動を起こした人たちの仲間だと勘違いされてしまいますかね? そんなことを考えていた時、その人はこう口にしたのである。

「あの私はこの近くの高校で体育教師をしておりまして、この付近で起きた事件について調査を行っていたのですが。貴女たちはこの付近で事件があったと知っているのでしょうか?もしお知りでないようなら私は急いでこの周辺で起こった事件について調べないといけないと思い、貴女達に声をかけさせていただいたのですが。よろしいでしょうか。そうであれば私は失礼させていただきますので。それではこれで失礼します。ご無事をお祈りしております」

その話を聞いた後。彼女は私の手を握るとこんな事を言い始めた。

「すまない。私にも考えがある。あの男を引き留めておくのに協力してくれ」

そう言われた後、その男性は私達の横をすり抜けようとしたので。私は咄嵯の判断で、彼を止めた。そのおかげで私の行動は間違ってなかった事が分かり。私は安堵していた。そしてその後、私と彼女の2人で彼を説得しようとしたが結局は説得できず。

私は、あの人の足止めのために囮になった。そして彼が私の元にやってくると、その事に私は驚き。それと同時にこの人にも何か秘密があるのかと思ってしまったのである。だって私が彼に話しかけている間、彼はずっと私の方を見ていたのだから。もしかしたら、彼は私が囮になるのが分かっていて。その上で近寄ってきてくれたのではないかと思ってしまったのである。そして彼が何かをする様子は無いし。このまま彼と会話を続けても良いのかもしれないと考えた。そこで、私は彼に質問してみたのである。

「あなたがこの惨状を作り上げたわけではないですよね?」

---side 真也

「あなたがこの惨事を生み出したものではないですよね?」

僕と唯は先ほど出会った水樹さんに言われてから周囲の人達の警戒心が強くなっているのを感じていたのだ。

だから僕はこの状況がどうなるのかという事を唯に相談しようとしたのだが、そのタイミングを計ったかのように目の前に現れた少女がそんな言葉を投げかけてくる。

僕はその言葉を聞きながらもこの子がどうしてそんな事を言っているのか理解出来なかったのだ。そもそも、なぜ彼女がそんなことを言ったのかも分からない状況なのだ。

だから僕の隣にいる彼女はどう答えるのかと不安になっていたが。彼女はその言葉に対して。

「この惨事は私が引き起こしたものなんだけど。それだと私がこの惨状の原因だと言っている事になるけど、それでいいの?」

彼女は堂々とした口調で答えていたのである。

それを耳にした女の子は驚いていた表情をしていた。それもそのはずである。なぜなら彼女は僕たちが巻き込まれた事件の犯人であり。そしてその事件を解決するためのヒントを持っていたのだから。そしてその子は唯を疑っていたので、唯の言葉を聞いたことで、さらに驚いた表情を見せ、そして同時に困惑した顔でこちらを睨んできてしまったのだ。その事で、彼女は僕たちのことを調べ上げていることに気がついたのである。

その出来事の後、彼女は何かを喋ろうとしたが。それは別の人物の声によって遮られてしまう。

「お前たち。そこをどけ。そいつは危険な存在だ」

そしてその男は僕たちにそう告げると銃を片手に、水樹さんに狙いを定めて引き金を引いたのである。その弾を水樹さんは何とか避けたが。その際に起きた爆発に巻き込まれてしまう。その光景を見た僕の視界に映るのは。爆煙に包まれる中。必死に逃げようとする水樹さんの姿で。その事から僕はこの人が危険だということが分かり助けに行こうとしたが。その瞬間に爆発に巻き込まれてしまうのであった。

爆発音が響いたあと私はすぐにその場から立ち去る事に成功した。爆発に巻き込まれそうになった瞬間。近くに居た女性が爆発に巻き込まれたことに気がついて慌ててそちらの方に向かおうとしたが、その隙をつかれて何者かに狙われていたことに気付き。その場から逃げ出したのだ。そして私は、その時に何かをポケットの中に入れられた感覚を感じたので、その確認を行った。その結果、何かの鍵が入っていることが分かったので、とりあえず私はその場所に向かうことにする。そしてその場所まで着くと。そこは私がよく知る場所で、私の家に続いていた。だからその鍵を使って家の中に入ると、自分の部屋に向かっていく。

部屋の扉を開けると。そこには私とそっくりの少女の姿があったのである。

私は思わず息を飲み。そして彼女の名前を口にしてしまう。それは、つい最近までは私自身の名前で。だけど、もうその名は名乗れなくなってしまったので。私の妹である。天堂美紀という少女の体を借りて存在しているもう一人の私の名前だった。その事を思い出せたのはきっとさっき渡された謎の紙切れのお陰なのだろう。だから私はその事を確信すると妹の名前を口に出してしまった。

「まさか貴女がいるとは思っていませんでした。

私の妹の体の中の方に」

彼女は私の事を見ると、まるで信じられないものを見るかのような視線を向けてきた。そして次の瞬間には怒りを含んだ声で。私のことを罵り始めてきたのだ。

だがしかし、今の私にはそれに反応できるほどの余裕はなく。むしろ彼女の口が動き続けている間だけ私自身の思考能力が回復すると言うのならば、どれだけでも罵ってくれて構わないと思っていたのである。

彼女は私に言いたいことがあるらしく。ずっと文句を言い続けていて。私は黙って聞いていたのだが。そのおかげもあって私は冷静に考えることが出来ていたのかもしれないと思うと感謝すら覚えてしまうほどであると思えるほどであったので。私は彼女をそのまま受け入れることにした。そうすることで、これから何をするべきかを考える時間を確保することに成功したからである。そこでまずは私の妹である美紀について説明しておくべきであろうかと考えてしまった。なので彼女について簡単にではあるが伝えていくことにしたのである。

その話をしていると、私の妹である美紀ちゃんも、私の事を受け入れてくれて、お互いに情報を共有できるようになるのであった。そしてその話をしていく内に分かったことは。彼女が私と入れ替わるために入れ替わってからもずっと意識があったということで。それなのに何もすることが出来ずに、私のせいで大変なことになってしまったことや。美紀が私の事を本当に心配してくれたことなどを知ることができて。その事が何よりも嬉しかった。そして私はそんな気持ちを抱きながら。私達が置かれている状況をどうにかするべきだと、その方法を探す必要があると感じていたのであった。しかし、現状は絶望的だと思えたので私は彼女に相談を持ちかけた。

「ねぇ貴女はこの状況から脱出する方法はないか分かる?」私の言葉を聞くと彼女は私に尋ねてきた。

「あのー貴方がこの惨状を引き起こしている張本人ではないですよね?」

私はその質問に対して、正直に伝えることにしたのである。「この惨状は私が起こしました。この事態を引き起こしたのも、そしてこの惨状から逃げるための手がかりを探しているのも私で。この惨状を起こした理由は私の身を守るための行動だったのですが。それが結果としてこのような結果を招いてしまったことを反省しています」

その言葉を聞いている途中で、彼女の表情が変わった。それは今までとは打って変わってとても険しい表情をしており。私達を警戒し始めたように見えたのである。なので私はすぐに彼女の警戒を解くように、話を進めていくことにした。そしてその話が終わると私は彼女に向けてある提案を行う。

「ねぇあなたはこの騒ぎの犯人を突き止めるつもりはある?もしそうであれば私は貴女に協力するつもりでいます。そうですねーこの場は貴女の指示に従うという形をとりましょうか」

その発言が聞こえた後、少女はすぐに返事をした。

「この場で私が主導権を握るのは少し危険だと判断しました。この場の指揮権をお渡ししますので、どうか貴女方の判断に任せさせていただきます。それと先程私が言った言葉に関しては全て真実でございますので。私はこの惨状を生み出した元凶です。私が全ての責任を負っていたのにも関わらずこの騒動を起こしてしまいましたので、私がこの騒動を起こしたと認めます。

また今回の件は私のせいでもありまして。私がこの事件の黒幕でした」

その言葉を聞いて私は驚いていたのだ。なぜ彼女はここまで正直に話すのかと疑問に感じたのである。しかし彼女はその理由を詳しく教えてくれることはなく。そのことについては何も言うことはなかった。しかし、その後の会話では、その事件の黒幕が私達に嘘をついている可能性やら。この混乱に乗じて誰かが私達を狙ってくる可能性があるということを伝えられたが。

私が気にしていた点としては彼女がその事件について知っていた事であるのだ。だから彼女の口からその言葉が漏れ出た瞬間。私は咄嵯に動いて彼女の手を引いていた。そのせいで彼女と手が触れ合うような格好になってしまう。

しかし、彼女は気にすることなく。この騒動の首謀者が彼女だという事を明かしてくれた。

そう言った後は、彼女の協力のもと。周りの人の避難を手伝うことになる。そして私と彼女が協力して逃げようとしている間に。あの男性が、こちらの方に来てしまった。だから私が彼の足止めをしている間に逃げるように彼女に伝えるも。結局は私一人だけが逃げられてしまったのである。

その後、私が爆発音を聞いた後で自分の部屋に辿り着くとその部屋の中には。一人の女性が座っていたのである。そして、その女性は私に気がつき話しかけてきたのだ。しかし私は彼女の言葉を上手く聞き取ることができなかったのである。

そして彼女は私をどこかに案内しようとしていて。私は慌ててその後を追うと、そこにあった光景はあまりにも非現実的なもので。そこで、先程の爆発の原因と思しき人物が私の横を通っていき、何かを呟いていたので。その言葉を聞き逃さないように集中していたのだ。しかしその時にはすでに遅かったのか。彼女は姿を消していて。私の前には水樹さんしか残されていなかったのである。そして彼女が私に話しかけてくる。

「ごめんなさいね。私が不甲斐ないばかりに」私は、彼女の言葉を聞き入れながら首を横に振る。

そして彼女は私が水樹さんだと伝えると。その事に驚いた様子を見せていた。そして、どうして彼女が私に会いに来たのかという事を話し始める。それは私達がこの学園に来る前の事であり。そして彼女がその事件を起こすことになった発端でもあるのだ。だから私は彼女の口から語られた出来事を聞いたとき。私は驚愕した。まさかそのような出来事が現実に起きているなんて想像していなかったからだ。そしてその話が終わり、水樹さんは私に向かって問いかけた。

「さて唯様は今の話を踏まえてどうするつもりなのでしょうか?」そう問われたとき。私は自分がどういう行動に出るべきか迷ったのである。しかしそれでも私は答えを出すことはできなかった。

私は自分の目的を果たすためならどんな犠牲を払おうが関係ないと思っていましたが、唯様だけは絶対に失いたくないと思っている自分に気がついてしまったのですから仕方がないですよね? でも今はそれよりも唯様に決断を促すことが大切だと思うのでこの辺でやめておきましょうか?それに唯様だって本当はわかっているんでしょうし、もう覚悟は決まっているんですよね?私の目的は唯様を守ることです。そのためには私自身を犠牲にしても構わない。ただ唯様はそんなこと望まないだろうということが分かってしまうのがなんとも嫌ですね。でも、私はどうしてもその考えを捨てることができないので。唯様に私を助けてほしいと思う。しかし私はもうその望みを叶えることは無理なのだ。そしてこれから私は自分のために生きていかなければならないという事になるわけだが。まあそんなものは必要ないというのが本当のところであるが。

私はこれから何を目的にすればいいのだろうかと考え込むも答えは出ない。そもそも自分の目的すらも見失ってしまっている状態だ。そして、自分の気持ちさえも理解することができていないのだから。当然の結果でしかない。だけど私は、ここで立ち止まるわけにもいかない。だから前に進むことにしたのである。

「これから私は何をすればいいんでしょうか?」

「自分のやりたい事をやればいいんだよ!私はそういう生き方をしてたよ」そう言って笑う彼女につられて、私も笑ってしまうのであった。

そして私たちはお互いに名前を名乗りあったあとに、水樹さんは私に向かってある提案を行ってきた。

「私は今から、ここにいる人たちを助けるつもりでいます。なので一緒に来てもらえませんか?」私は彼女の提案を受け入れることにして、そして私は彼女と一緒に行動することになる。その道中で彼女は色々と話をしてくれるのであった。その中で彼女がこの世界に存在する理由を知った私は少し複雑な気持ちを抱いてしまうが、そんな感情を心の中に押し込んで平静を保つ努力をするのであった。そして彼女は私がその事を知らないことを察すると、私にある事を教えてくれる。それは彼女がなぜこのような状況になっているのかを説明してくれて、それだけではなく、どうやってその問題を解決しようとしているのかも教えてくれて。私は彼女の話に真剣に耳を傾けるのだった。

私は彼女の説明を受けて。彼女が何故このような状況になった原因を理解したが同時に彼女が私のためにそこまでしてくれるのはおかしいと感じていたのだが。しかし彼女はそれを気にしている様子がなく。むしろそれが私のためになると確信しているかのような態度をとっていた。だからこそ私はその説明を信じることにしたのだった。それから私達は、まずはこの場所から離れることにしたのだが、そこで私と水樹さんの二人だけでは不安に感じたので。美紀も連れて行ってもいいですかと聞いてみると、快く受け入れてくれて、そして、私達について行くことを決めたのであった。

そこで、美紀に今の私達の状況と、今後について話すと、やはり彼女もまた。自分だけ安全な場所に隠れているのはよくないと強く主張してきたので、それを聞いて、水樹は渋々ながら美紀の同行を認めたのであった。しかし、その時の水の目は冷たく鋭かったことを私と美紀は見逃さずにいた。そして、この場から離れ、避難するために走り始めた時に私は彼女に、あの時の約束の事は忘れてくださいと言っておいたのだ。私はそれを聞いて。彼女に謝罪するのであった。しかし彼女はそれを許しはしなかった。

「私は貴女を裏切ったんですからね」その言葉で私に罪悪感を与えるために。彼女はあえて私にこの言葉を伝えてきたのだと分かったのである。そして私達三人は避難するために移動した後に。私の部屋に集まると。

そこで水樹は今後の方針について話してくれた。それは私と彼女が入れ替わってからの今までに起きた出来事を簡単に説明されたのである。その話を聞くと、彼女がこの騒動の原因だという事が分かり、さらに私は彼女が黒幕だと確信を持った。だから彼女は危険だと判断した私は、すぐに彼女と敵対することを決意したのである。しかし彼女の実力を考えると、私では敵わないのではと思った。だから少しでも勝率を上げるために。私一人で彼女を倒すのではなく。協力者を作る必要があると気がついた。なので、私はすぐに自分のクラスの人を集めて作戦会議を開くのであった。その会議で決まったことを実行すべく。私達が動き出すことになる。

私はとりあえず唯のそばを離れないようにしようと考えて。この騒動が起きた時に真っ先に教室から出た唯を追いかけることにする。唯はこの騒動の元凶を知っているみたいで、私は彼女に追いついたら。私もその情報を共有しようと考えていたのである。しかし私が追い付いたときに見た光景は、その考えを否定するのに十分な内容であり。その光景とは、私が唯のところに駆けつけると、そこには水と、唯の姿があったのだ。

その二人が会話をしている中で、私はこの騒動を引き起こした犯人だと名乗り出てきた生徒と、水に対して。私が二人の元に向かい事情を聴くことにしたのである。

そして、そこで、私が一番驚いたのは、唯とこの場に現れた少女は別人であるという事が発覚したのであった。私は、この事実を聞いてしまった時。とても動揺してしまった。そのせいで私は咄嵯に動くことができなかったのである。その隙を突かれて私は水の攻撃を受ける。そして私は自分の身体から力が抜けていくのを感じたのだ。そのせいで地面に倒れそうになるが。何とか堪えて体勢を整えると。私は魔法を使って水を攻撃するも全て弾かれてしまう。私は自分の攻撃が全て防がれていることに絶望を感じていたのだ。そのせいか、自分の思考もだんだん鈍ってきていたのである。そして完全に私は自分の力を使えなくなってしまった。しかしまだ諦めずに抵抗しようとする。そして唯が、あの男性に話しかけられてしまい。彼女は彼から逃げられないような状態にされ、そこで私は自分の死を悟ってしまう。

私は自分が無力であることを感じ、何もできないまま唯を連れて行かれてしまったのだ。だからせめて彼女の後を追うことにしたのである。そして、この建物から抜け出した所で唯は私の視界から外れた。私は急いでその後を追おうとするも、私の前に突然現れた男により阻まれてしまう。私は目の前に立ち塞がってきた奴と向かい合い戦う羽目になってしまう。

その男の圧倒的な実力を見て、私に勝てる要素はないと直感でわかったので。私が生き残る道は逃げるしか無いのだと理解したが。しかし私はそう簡単に逃げることができなかった。なぜならその男が、水樹が私を殺そうと思えば殺す事ができると分かっているからだ。だから私はその恐怖心に打ち勝つことができないでいたのである。私は結局、水に殺される前に、水に捕まってしまい拘束されてしまうのであった。

そこで私の意識は完全に途絶えてしまっており。そこで私が最後に聞いた音というのは、誰かが近づいてくる足音だけだった。

私は目を覚ますと見知らぬ天井を見つめながら体を起こした。ここはどこだろうと辺りを見回すと。そこは私が寝ていたベット以外に家具などが存在しない。本当に何もない部屋だった。そこで、どうして自分はここにいるのだろうと考えてみるも答えが出なかったので考えるのを諦める。するとそこに部屋のドアが開かれて、そこから水と、もう一人の女性が姿を現すと。私の所へと歩いてきたのである。私はそんな水の姿を見つめているとその視線に気づいた水はその女性に何かを告げると、女性は微笑みを浮かべながら私の近くにやってきたのである。そして私は水に連れられて移動することに、どうやら私達は別の場所に連れてこられたらしいという事を理解する。

「どうしてあなたは水に反抗的な目を向けるんだい?そんなんじゃあ水に殺されても文句は言えないぞ」そんなことを私に話しかけてくる水に対して。私は反論しようと試みるも、なぜか言葉が出ない事に気がつき焦り始める。私はなんとかして口を動かそうとするが。それでも上手く動かすことができず、まるで、私の意志で動いているわけではないかのようであった。私は自分の意志が思うように伝わらないことに困惑してしまい。パニックを起こしかける。するとその私の様子を見て何を思ったのか、水がその女性に向かってある指示を出していた。その命令を遂行し終えた女性は、その表情を満足げな顔に変える。そんな彼女を見ながら私は、今、何をされたのかを理解して。

自分の体に違和感があるのを感じ取ってしまったのだ。そこで私は自分の体がうまく動かないことに気づいた。その事に対して疑問に思うと、私に問いかけられる声に耳を傾けるのである。その質問の内容はとても単純明快で。私は、自分が何者で何者になるはずだったかを聞こうとした。だけどやっぱり、何故か私は、自分が何者であるかという事が思い出せなかったのである。だけど、それ以外の記憶は覚えている。しかしそれも、断片的なものでありはっきりしていない物が多いけど。私は自分が何者かを知る手がかりを探した。

そして見つけたのは自分の手だ。この手で何をしていたか、それさえ分かればと思い私は手を眺め続けた。しかしその答えを得ることはできなかった。私は、自分の手がなんのために存在しているか、その理由がわからないのであった。しかし、そこで水の声に呼ばれると、その水の手によって私の指が動かされ始めてしまう。

私は慌てて水の動きを制止させようとするのだが。その思いは届くことはなく水によって無理やり動かされ続ける結果になってしまった。その結果、私の手に刻まれた謎の模様を見せ付けられることに。しかし私にはそれがどんな意味を持つのかさっぱり理解できなかった。しかしそんなことは関係ないと言うかのようにその紋章が私の中で脈動を始めてしまい、その度に激痛が私を襲い始めたのである。そしてその痛みは尋常ではないもので。あまりの痛みに悶え苦しむことになった。

「君はまだ、完全に私の物になっていないようだな。やはり私の術式に間違いはなかったということかな。だが安心するといいよ君を必ず私の人形にしてあげるからさ。そうしたらこの世界も平和になるはずなんだからね」水は不気味笑みを浮かべながら、そんなことを言い放つと。そのままどこかに行ってしまうのである。私はそこでようやく解放されると、必死に自分の体を元に戻そうとしたが無駄だった。そこで私は今の自分の状態を確かめようとしたのだ。しかしそこで自分の腕を見るも。そこには先ほど見せ付けられたあの紋様がしっかりと刻み込まれていて、さらに私は、今の自分が、どのような状況に置かれているかを知ってしまったのである。私は水の手から逃れることができなかったようで。さらに私は水の操り人形になってしまっていて、この場では水に従うしかない存在になっていたのだ。

だから私は自分の状態がどういうことなのかを、この場で説明してくれないか水に頼むと、彼女は笑顔でその要求に応じてくれるのであった。そして彼女は私に色々と説明してくれたのだ。まずは、私をここまで連れてきた女性の事を説明されて。彼女は私達のクラスメイトの一人であり。彼女は水と同じ魔術師であるそうだ。彼女はこの学校の中でも屈指の実力の持ち主であり。彼女がこの学校の理事長の娘だということを聞いた時、私は驚きを隠せずにいた。

そして次に彼女が、水に対して敵対行動をとっていることについて説明されると。水はそれを許す気はないという。つまり私は彼女に命を狙われることになるわけだ。それを伝えられた私はその事実に動揺していると、彼女が私を逃がさないために、私に催眠をかけると、彼女は私に、私の身体の支配権を奪ってしまったのである。

私が必死に抵抗するも私の体は私の意志に従わずに、私の言うことを全く聞いてくれなかった。

「ごめんなさい、けどこれはあなたのためでもあるんです。この男は本当に危険で私では対処する事ができないんですよ。でも私はあなたに死んでほしくないから、この方法しか無かったのです。どうか許してくださいね。ではまた会いましょう、その時に私達を敵に回したことを、せいぜい後悔するがいいですよ。あなたのような人間は私達が処分します。この世界のためです、悪いとは思っていますが、これも必要な犠牲だと思ってください。あなたが悪いんですよ?あなたが、私達に楯突こうとするのだから、その責任は取ってもらう必要が有るの。分かったら、もう黙りなさい」

そして私に何かを言い残していくとその場を離れていったのである。私は、その彼女の言葉を、水に聞かれてしまったら、大変なことになると予想していたのでどうにか水に聞こえていないようにと祈るばかりだった。そこで私に、水を探そうとするとそこで、私の思考を誰かから止められてしまったのだ。

それは唯の顔をした男である。彼は私から唯を奪うと言ったのだ。そこで唯を奪い返そうとするも。彼に力で押さえつけられる事になってしまう。私は唯を取り戻すことができないのかと思いながらも彼の手から逃れようとするも。どうしても逃げ出す事はできなくて。唯が目の前で連れ去られてしまう。

そこで私は意識が途切れる直前に唯の助けを求めるような視線を見たのを最後に。私は完全に意識を失う事になったのである。

そして私は唯を攫われたショックにより再び目覚めること無く眠っていた。その間ずっと夢の中に閉じ込められ続けていた。夢の中で私は何度も自分の名前を思い出そうと努力したが思い出すことができなく。唯を救いたい一心から私は唯の名前を思い出そうと躍起になるが結局何も思い出せずにいた。

そんな事を繰り返す日々を過ごしてどれだけの時間が経過しただろうか。

私をこの悪夢の世界に閉じ込めた張本人が私の前に姿を現すのである。

その人物は私に近づいてくると私に触れてくる。その触れ方は非常に優しくて私はその手を振り払うこともできずにいた。すると彼女は私に対して話しかけてきて。私はこの世界で、自分の存在を否定されてしまったのであった。そして彼女はその私の存在を否定するという行為は世界の秩序を乱すことだというので私を消そうという魂胆なのだそうで。そのために私を利用しようと、そんなことを考えたようであった。

しかし私にも、抵抗することだけは可能だったので。私が抵抗をしようとするとそこで彼女は私の体に何かを施すのであった。するとそこで突然。私は私の体が、誰かに奪われる感覚に囚われてしまう。私はその瞬間に意識を失い。その隙を狙っていたかのごとく私の体を奪い取った犯人は私をそのまま放置して消えていくのであった。私は意識を失ったせいで再び自分の意志で体を動かすことができなくなったのである。そしてそんな状態で私はただひたすらに意識を失っていたのだった。

そんな感じに意識を取り戻しては眠りについてを繰り返しているうちに次第に精神力を奪われていってしまっており。いつの間にか自分の意志で行動する事が不可能なほど消耗してしまっていたのだけれど。私の体の所有権を奪った奴の思惑通りになったのであるなら私はその計画通りに動いてしまうことになってしまうだろうなと考えていたのだがそんな心配は全く不要であると、その時はすぐに分かることになったのだった。

それから数日が経過する間、私の肉体を奪われたままの状態で過ごす羽目になってしまい、このままだと私の心は崩壊してしまいそうなので。私はなんとか脱出できないかと考え始めていたのだが。そんな私の元に私を連れ出した犯人がやってきたのであった。その人物こそ私の親友であった女性、如月水であった。彼女は私の体を取り戻そうとするため、その私を取り返す算段をつける為に私に接触してきていた。しかし私は、その行為自体が水に自分の目的を勘づかれかねないと思った私は。私の意思を強引に奪い取ろうとした水に対して全力をもって対抗してみせたのだ。

私は私を取り戻そうとするために、私自身を守るために必死に戦っている。しかしその戦闘は、圧倒的に私のほうが劣勢な状況に立たされており。水の攻撃は私に一切通用しなくなっていたのだ。そしてついに私は追い詰められてしまい、水の手によって気絶させられて。その間に私の体が奪われる事に私はどうすることもできなかったのである。そこで水は私から記憶を引き出し始めるのである。その結果、私は私の置かれている状況を理解してしまい、絶望的な感情に支配されることになった。

その私の状況を理解できたということは私は、私の体を乗っ取られていて、今の私の体は私が思っているような私の物ではないと、そしてこの体は私が望んだ姿ではなく。この私の姿が本来の姿だと言われたのだ。つまりは私の本来の姿ではなくなってしまったということである。そしてその事を自覚してしまった時私は私に、いや私の姿形をしているだけの別人によって。私の精神力は奪われていくことになる。私は必死にそれを防ぐも無駄に終わることになり。私は完全に私の体を奪われる結果になるのだった。しかしそこで私はその私の体に反撃を試みることにしたのである。そして水に攻撃を加えたのだ。

だけどそこでも水には手も足も出ず。私は為す術もなく私の体の中に取り込まれていき私は水の一部になってしまったのであった。私は水に吸収されるとその水がどんどん成長を始めることに、私はこの世界から出られないのではないかと不安を感じていたのだが。そこで、水に変化が訪れることに、水の体に亀裂が入るとそこから光が漏れ出すと、私は、自分の意思を取り戻すことに成功する。だけどそれと同時に私はこの世界が崩壊していくことに気がついたのである。水はこの世界を創造し維持するためのシステムのようなものであり。私はそのシステムのコアのような存在になっていたのかもしれないとそこで悟った。私は水の中で溺れながらも、私の中で私を助けようとしてくれる存在が現れ。私は何とかその人に助け出されることに成功したのだ。私はその人に感謝の言葉を伝えながら。その人と別れを告げて水の中で一人になるのである。

私はその後水の中から脱すると、そこには水はなく。私は自分がいた場所を見て驚いたのだ。なぜならそこは学校の中のプールの中に私はいて、さらになぜか私の手には剣が握られている事に気づいたからである。そんな混乱している私の元に近づく少女がいる。彼女こそが私が命を救った女の子で、私がこの世界に飛ばされた時のクラスメイトの女子であった。

私は彼女のことをあまり知らないのだが。彼女はこの世界において私の味方らしい。彼女が言うにはこの世界の主が、私をこの世界に取り込んでしまいこの学校を支配されているらしく。それを私達が倒さないかぎりこの世界からは脱出することができないらしいのだ。そんな話を聞かされた時私は彼女の言っていることが正しいことなのか疑問に思っていたが。しかし彼女は、この世界に来てしまったのは私だけではないと口にしており。彼女は別の世界からやって来た人間であるという話を聞いて少しだけ納得できることがあったのだ。だから彼女の言う事を全面的に信用することにした。そしてその彼女のおかげで私はこの学校の生徒のみんなを開放することができ、この学校に囚われている全ての生徒たちを助けることに成功して。

そこで私と彼女の二人で学校の外に出ることに成功するのである。

外に出てからも大変で。私達は謎の集団に狙われることに私はその謎を解き明かすことができるのだろうかと思いながらも彼女と行動を共にしていたが。途中で彼女が行方不明になってしまうという事件が発生する。彼女はそのまま何処かに姿を消してしまう。

私だけが取り残されて私はこの世界の真相を暴くために動くことを決意する。この世界で起こっている不可解な出来事が、すべて繋がっていることに気づいた私はまずはその発端となったと思われる人物を探す事にした。それは私のクラスメイトだった男だ。彼から私達の記憶を奪いこの世界を作り上げた。彼は、その事を隠すことなく私の目の前で話し始めて、彼は自分の目的を、私の親友である彼女に恋心を抱き。そして彼女は自分の事を好きだと言う男の言葉を全く信じていなかったのだそうだ。その男に洗脳された挙句に彼女はその男の恋人となり、男は自分の理想のカップルをこの世界を作り上げると、それがこの世界で起こっている事件だと言って私に語り掛けてきた。だがそんな事実を信じるわけがなく私は彼に攻撃を仕掛けるも彼は私に対して自分の実力を証明してみせると私に向かって戦いを挑んできたのである。私は彼と戦い始め、彼の圧倒的な力に圧倒されるものの、彼の隙を突き。その首をはねることで倒すことに成功する。そして私は彼をこの世界に閉じ込めたことで。彼に何が起きたのかを調べているうちに。彼の能力の詳細を知ってしまうのであった。彼が私に語っていたことは本当の事で。彼の能力は私をコピーして自分の分身を作りだす事であることが判明するのであった。彼の作り出した私と同じ能力を持つ人間は。その私の能力を使用できるようになるということもわかってしまったので、私の行動範囲はかなり限られてしまっていた。そこで私は、私が知りうる情報を整理してみるとこの世界のルールが分かってきたので。私の仮説を実証するため。私はある事を決意するのである。

私は私を誘拐してこの世界の秩序を破壊した張本人である私の体を乗っ取っている私自身の意志と会話を試みようとしたのだ。私は私に話しかけてみて。返事がないのを確認すると。私は、その私の体の中に侵入しようと試みるが私の中に入る事は出来ず。そこで、私自身を殺す覚悟を持って私を殺そうとするが、結局は私を殺すことはできなかったのである。そこで私は、自分の体に干渉できないならば仕方ないと考えて。私は自分の体を利用してこの世界の外にいるであろう水の元へと向かうのであった。

私はこの世界がどういう風に作られているかを知った時に。この世界を作り出したのは水で。私はその水に騙されていたことに気がつき私はこの世界を抜け出すため。そして、私の親友を救うためにこの世界の外へと向かって行くことを決意したのである。

そして私が水に殺されそうになっているとそこで私は不思議な光景を目にすることになる。水が自分の腕を切り落とそうとして。そこで自分の意識を取り戻すことが出来たのだ。私はその事に喜びを感じたがすぐに水は私が意識を取り戻していたことに気づき。そしてその私を消そうと再び襲いかかってくるのだけれど、そこで私に奇跡が起こることになる。水に私は押し負けてしまうのだが、そこで突如水が苦しそうな表情をして、水は苦しみのあまりに私に攻撃することを止めたのだ。私はそこで水の体の支配権を奪えたと思ったので水から主導権を奪い取ることに成功する。

そして水と私の力関係は、完全に私が優位に立つことに私は成功することができたのである。私は自分の力が完全に戻ってきて安堵の息を吐き。水との戦いに勝利したのであった。

そして私は水から私の存在の秘密を聞くことができたので。私はその情報を、親友である如月に伝えることにしたのだ。私はこの世界を脱出する方法を見つけた。だけど、その方法を私は実行するにはあまりにも力が足りていないと判断したのである。その方法は私自身がこの世界で戦うための力を溜めなければいけないと私は思い。私はこの世界の水の力を利用しこの世界に君臨している魔王とでも呼ぶべき存在をこの世界に呼び出したのである。

そして私はその召喚に応じてくれた存在が私の前に姿を現すのであるが。その人物は私の友人であった如月であったのだ。そこで私は水を倒すため、私に協力してほしいと言ったところ。その言葉を聞き入れてくれて協力してくれることになったのだ。それから私は水に対抗するため、この世界に存在する最強の魔物と契約を行い。水に対抗しようとするのであった。しかし、それでも私は水の力を上回れることはできず。私は水から体を取り戻そうとする。そこで私は自分の体に異変が起きる事に気づく、自分の体を水に支配されて私の体は水の思うままに操られてしまう。

だけど私の中に宿っている魔族のお陰で私の体が支配されることだけは防ぐ事ができて、そのおかげで私の精神力の殆どを失ってしまったのである。そこで水は私のことを自分の味方に引き入れたほうが得だと気づき私のことを説得するのであったが。私の意思は固く。どうしても私には水のことを信用することができなかったのである。そこで私は自分と水の関係が水にはわからないようにするために私は記憶を奪うことで私は自分が水であることを隠すことに決め。その作戦は成功したかに見えた。だけど水にはそんな小細工は効かず。水は私のことを殺しにかかったのだ。だけど、その攻撃が当たることはなく。私の体を乗っ取りかけていた水を返り討ちにしてやることに成功できたのである。そして、私は私の体を乗っ取ろうとした存在を倒して自分の肉体を取り戻すことに成功し。こうして、自分の体を自分で取り戻す事に成功したのであった。

その後水とは一緒に学校を出ることに成功してそこで別れる事にする。そこで私は、私が水に助けられたことを水に伝えようと口を開いたその時に水が急に苦しみ出したのだ。そこで何かが起きようとしていることに私は気がついて急いでその場から離れる。

するとその直後その場にいたはずの水の姿が見えなくなり代わりに別の少女が現れるとその少女は水の声で私にこう言ってきた。「私を助けてくれる人がいた」と、そして少女はその言葉を呟くと同時に地面に倒れて消えてしまったのである。私はすぐにその人物の元に駆け寄って抱き起すとそこには見覚えのある顔があったので驚いたのである。なんとそこには私の友達の白雪がいて。しかもなぜか彼女は水着を身に着けていて。私は一体ここで何をしていたんだろうと思いながらも彼女の容態を確認して、彼女に声をかけることにしたのだ。

だけど彼女の様子は全く変わることがなく、このまま放置しておくわけにもいかないし、だからといって連れ帰るわけにもいかなかった。

そこで、水の能力が使えるなら彼女を水の中に連れて行けば大丈夫なのではないかと考える。そこで私は彼女の体を水の中に入れるために彼女の体に手を触れさせると。なぜか私の手が彼女の体に入り込んでしまうという怪奇現象が発生して。私は慌ててその事について考え始めるが、その答えを見つける前に彼女が突然起き上がると、自分の足で立ち上がると、そこで、私の事を見つけてしまい。私達はその場で出会ってしまうのであった。そして、私達二人の間には沈黙が流れると。彼女はその沈黙に耐え切れなくなったのか私のことに対して話しかけてくる。

すると、そこで彼女は私の姿を見て目を丸くすると驚いて。

そこで私は自分の今の服装を思い出し。彼女の目の前で着替えを始めると、私は服を着替え終わり、彼女の目の前に行くと、彼女に向かって挨拶をすることにしたのだ。そして彼女は私に、何者なのかと聞いてくると、私は、その言葉を聞いたときに私はどう答えるべきか迷い。そこで私はこの少女に私の名前を名乗ってみる事にしよう。そして、その判断はすぐに間違いではなかったのかもしれないと思い知るのである。

彼女が口にした名前は私も知っている有名な人物で、彼女が言うには彼女は私と同じ世界の出身で。そして彼女は、私達の事を知っているような口ぶりで私を驚かせて、私が誰だかわかっているような口調で私の事を見つめてきて。そこで私は彼女が私に嘘をついていない事を知り。さらに彼女がこの世界の事を知っていないと言うことも確認できたのである。それならば私が彼女に教えても問題ないだろうと思い。この世界で起こっていることについて説明を行うのであった。

私が一通りの説明を終えるころには既に外は完全に日が暮れていたので、私と姫崎さんはとりあえず学校から脱出するために歩き始めたのである。

私達は学校に忍び込むことに成功した私はそこで彼女と別れた後。一人で教室に向かった。その途中で、私を呼び止める声に振り返る、私はその声で誰が呼んでいるのかわかるとそこに近付いて行くのであった。私の予想通りに私のことを呼び止めたのは、私のクラスメートの少年で、その男の子は私の知り合いでもある。彼はこの学園の中ではかなり優秀な成績を修めている人物であり、私もその事については知っていた。

彼の名前は水鏡誠二。私は彼とはそれなりに付き合いが長い関係なのだが、彼は私に対してどこか壁を感じている節があり、私に心を開かないのはわかっていたのだけれど。私がこの世界に閉じ込められたときに彼が現れてくれたのは素直に嬉しかったのである。その事は彼に感謝をしているのだが。水には私の事は内緒にしておいてほしいと言われてしまっているので。彼も私がこの世界の人間で、私もこの世界のルールに則って生活していると知ったら私の事を警戒してしまうだろうから、そう考えたら仕方がないかなと思えたのだ。

そこで、私のことを呼び止めた理由を尋ねてみると、なんでも私に話したい事があるらしくて、その内容というのが、私のことを尊敬していて私に好意を持っているので、是非付き合ってほしいと告白される。私はそんな水のことを見て微笑ましく思い。私は水からの告白を受け入れたのだ。私はそのあと彼にキスをするとその反応を見て満足すると。それから私は彼の元を離れて、この学校の校舎を探検してみたいと思うのだった。そして私は校舎の中へと侵入していき探索を始めていったのである。

そして私が校舎の一階まで降りて行くとそこには何故か私と同じくらいの年頃の少女達が何人も居て。私は彼女たちに捕まってしまう。

私は彼女たちによって拘束され。抵抗するも、人数が多すぎてどうすることもできなかったのだ。私は何とか逃げられないかと考え始め、そこで私の体を使って暴れ回っている水のことが頭に浮かぶ、あの子は私を守るために戦ってくれた、私は水を助けるために頑張ると決意を固めるのであった。

そして私が必死に抵抗を続けるとようやく私は縄を解かれて。私を縛っていた少女たちは私の事が恐くなったようで、逃げ出す。

だけどそこで、水の声が聞こえると、そこで私はまた別の少女に襲われるが今度はすぐに水に助けられて助け出される。だけど水は少女を殴りつけ、私を助けてくれるのであった。そして水は私が水のことを殴ろうとする少女を止めたことによって、私は自分の意志を取り戻し、水は自分がやってしまった行為でショックを受けてしまいその場に崩れ落ちる。そこで水は正気を取り戻すと自分がしたことに驚き、そしてその罪悪感に苛まれるのである。それから水は私に謝ってくると。自分が私を襲ったのは記憶が混乱していたためだと告げられる。

そこで私は自分の体の中に水が宿っていることに驚き、それから、私の中にいる存在が私の意識を支配しようとしていることに気づくと急いで私は自分の体を乗っ取らないように心掛ける。そこで私は自分の体の支配権を奪い返すことに成功し。水の中から抜けだすことができたのだ。

だけど、その時に既に私の肉体の支配権はほとんど奪われかけてしまっていたが。それでもまだ、完全に取り込まれずには済んでいた。そして私の肉体は、すでに私の支配下から離れ始めていたので。完全に私の体が乗っ取られるのも時間の問題であり、そこで私は、最後の手段として。この体の主導権を完全に奪って完全に支配することができたのであれば水を倒す事ができると考えて。私はその考えを実行に移す。

だけどその行為は上手くはいかず水の力の前に私は敗れ去ってしまい、そこで私は自分の体に残っていたわずかな精神力で自分の肉体に干渉を試みる。すると自分の肉体に自分の意志を残しながら、水の支配から逃れられたのである。

私はそのチャンスを生かす為に自分の体を水の中に入れようとしたのであるが、そこで水が自分の体を支配しようとし始めると、私はその行為を中止して、水の攻撃から自分の体を護る事を優先し、水の攻撃を退ける事に成功すると、それから私は水と話をするのである。そこで、私の中に宿っているものが水であることを知った水は、私の体を自分の支配下に置いてしまおうとする。しかし、私の意志の強さと、水に対する憎悪のお陰で水に支配される事はどうにか防ぐことができて、水と私の戦いが幕を開けることになる。

それから水との激しい戦いを繰り広げている最中に水と、私はお互いの体を共有することになったのである。そこで私達は体を共有する事になったことでお互いの考えが読めるようになり、そこで私は水の人格に私のことをどう思っていてどんなことを考えていたのかを教えてあげることにした。すると水は私が自分を殺そうとしていた事実を知ってしまって、水はとても動揺してしまい。私はそれを利用して水を支配することに成功して私はその事に安心すると水との対話を始めるのであった。そこで、水は自分のことを恨んでいるか聞かれて水はそれに正直に答えてくれるのであった。そして私はそこで水の言葉に嘘がないことを確かめるのであった。そこで水は、自分のことを好きになることはできないかと聞いてきて、私はその事に答えられなくて、そこで水が私のことを抱きしめてきて私は慌ててしまったのだけれど。そのおかげなのか私の心に水が少しだけ入り込んで来て私はそこで自分の気持ちを自覚してしまう。そこで私は慌てて水に自分の中の気持ちを伝えたのである。

そこで私はある違和感を感じる、それは、私がこの世界に来ているのに水はこの世界のルールにしたがって行動していることに対してだ。つまり、今水に起こっていることはこの世界のルールに則った現象なのである。それなのに水にはこの世界で起こること全てに対応できるほどの力があり、水はその力を使って私を襲ってきたのだ。そこで私は一つの結論に達するのである。もしかすると私はとんでもない勘違いをしていたのではないかと言うことに、私が、この世界のルールを破って水に危害を加えてしまったからこそ水は私を殺しに来たのではないかと。そして、私が自分の考えを間違えているかもしれないと思った理由はもう一つあった。水の中にある力が私に攻撃した理由に心当たりがあるからだ。

水は恐らく何かに勘付いたのであろう、だからこそ私を殺す必要があった。

「あははははははは」そこで、笑い声が響く。そこで水は私に、自分の中に宿っているものの事を話し始めて私はその内容を聞き驚く、その正体は水だったのだ、そして私の中にはもう一つの存在が存在していて。そいつが私を水ごと殺しに来ていたという事を聞いて、そこで水は自分の体に起きている変化を説明してくれてそれが水の能力による物だと教えてくれるのであった。そして水の口から出てきた名前に私は驚愕してしまったのだ。

『水神月夜』それが彼女の本名であるらしく。彼女はこの世界の管理者で私の事を抹殺しようとやってきたのだという事を知り、私達の目の前には私達を始末するために送り込まれてきた二人の男女の姿が見えるのであった。だけどその二人には私は見覚えがあり。私のことを殺した二人だということはすぐにわかるのである。そして私がそんな事を思い出しながらも警戒しているとそこで二人は私に攻撃をしてきたのである。

そしてその攻撃を受けた私はそのまま地面に倒れこんでしまう。その攻撃に私達は驚いてしまうのであった。そこで姫崎さんは俺達に話しかける。

その話によると彼女もまた俺と同じくこちらの世界で暮らしていたのだが。その生活はあまりにも辛くて嫌になってしまったので。この世界に来ることを決めたらしいのだ。ちなみに水鏡君もこの学校に通っていた生徒で。今は姫野さんの付き人のような事をやっているのだ。そして俺は水に話しかけようとすると彼は急に怒り出してしまい水は俺に対して殴りかかってきたのだ。そこで水は俺が何者かを知っていたようでそのことにも驚いた。

そして水は俺をこの世界で一番憎んでる相手だと俺のことを断言してきやがったのである。だがここで水はあることに気付く。水はどうやら俺が敵だとは気付いていないようであり、だから俺と戦わなくても良いと考えていたのだ。水にその事を指摘されたら。水は、そこで初めて、この場に現れた水鏡のことが偽物である事に気付いたらしく。そこで本物の水鏡に、この水鏡が実は水ではないということを伝えると。水の中の人物は、俺がこの世界の人間ではなくてこの世界の外からこの世界にやってきたのだと教えてくれたのである。そしてそこで水鏡から聞いた話で。俺が水の世界から逃げ出そうとしたとき。あの時水は水の中で俺のことを待ち構えていたという衝撃的な内容を知ることになった。そしてその話を聞けば聞くほどあの時の出来事が、夢や幻ではなくなったことを痛感していく。そうしてあの時の記憶を思い出した俺はそこで。この世界の水も自分の意志を持っていたはずなのだがと気づくと。水に、なぜ自分の体を自由に使えるのかを聞くと。水は答えたくないと言って水鏡の中に戻ってしまう。そうして、その日はそのまま何事もなく過ぎていくのだった。そしてその日の夕方になり。俺が部屋に戻って来ると、そこにはすでに布団を敷いて眠りこけていた少女がいた。

「お前、寝てたんじゃねえのかよ!?」そこで、少女は目を覚ます。少女の名前は水橋楓花といって、姉の唯とはまた違った感じの綺麗でかわいい少女だった。だけど、その顔がとても可愛いのにもかかわらず、何故か無表情でいることが多くてどこか不気味な印象を俺に与えてきていたのであった。

「あれ?水どうしたの?」

「ん、ちょっと眠れなくて」

そこで、姉である楓花は水のことを見ると微笑みかける。だけど水はそれを見て何故か怯えたような顔をするのであった。

その日の夜。僕は、なぜか、水に自分のことを好きだと言ったのを水本人に聞かれてしまうと僕達はお互いに恥ずかしくなって黙り込んでしまい。そのせいもあってなのか会話がほとんど続かない状況になってしまう。そしてその後ろめたさからなのか。僕達がぎこちなくなってしまいお互いのことを意識するとどうしても気まずくなり沈黙してしまい、その結果、気が付くとあっという間に夜にまで時間が過ぎてしまい結局その晩は何もすることなくただ時間だけを浪費してしまう。それで、僕は今日何もできなかったことについて落ち込み。このままでは何もせずに終われないと考えて何かできることがないかと考え始めた結果。ふと思いついてしまったのだ。そうだ、もういっそ告白し直してみようかなと。それで僕の気持ちに整理をつけることができるんじゃないかと思って僕は、次の日に朝早くに起きて学校に行こうとするが。途中で唯と一緒になり唯も一緒に行けないのかと誘ってみたが。どうも昨日から気分が優れないとか言って断られた。なので一人寂しく学校に行っている間、ずっと頭の中では考え続けて、やっぱり今からでもちゃんと想いを伝えなおした方がいいだろうと考えて、教室に入って席につくと早速水に話しかけに行ったのである。

その前に一応念のため、水がいるのかどうかを確認する為に水鏡に水の場所を確認してもらうことにすると。水は既にこのクラスの中にいて。そのおかげで、僕達は問題なく水と話し合うことができた。そして、僕達は二人で話を始めると、そこで突然に彼女が現れてきて水の中に入っていた人格の正体について語り出す。その話を聞けば水の中には二つの精神が存在しているというのだ。

水の中には二つ目の人格が存在するらしく。その人格こそが、水に宿っていた力の主で。そしてその主の力は。世界を壊すことのできる程強力な能力であるらしいのだ。そこで僕にそのことを話すと。彼女は消え去ってしまったのである。それから、僕は水と話をしようとするが彼女はすぐに姿を消してしまって話をすることは叶わなかった。そこで彼女は、水と入れ替わって表に出てくることもできるのだけれどそれはあまりやりたがらないらしいのである。

その理由については。もし、水の精神が完全に支配されてしまった場合。彼女はこの世界で最強の存在となってしまう為だ。そうなればこの世界は、もう、彼女の支配下にあり誰も手を出すことができなくなってしまうのだと彼女は語るのである。そして彼女が自分の事を最強だと語った理由は彼女の中に眠るもう一つの人格の影響によるものなのであった。

彼女の名前は姫野姫。彼女の本名は姫野月夜といい、水鏡と双子であったのだ。

しかし、彼女はとある理由から自ら望んで、その双子の兄であったはずの水を殺し、そしてこの世界を支配することを望むようになったのだという。それが水にとってどういう事なのかを水鏡は知っているらしく、それは、自分を殺しに来るという事だったのだ。

そんな話を聞いた後。僕達は昼になると食堂に行って昼食をとる事にしたのだ。すると水は自分のお弁当を用意してくるのでそれを持参していたのだが。そこで、僕はおかずを分けてくれと言うと彼女は別にかまわないと言ってお皿に盛られたお弁当を差し出してくれたのである。

それを受け取ると水のお腹がぐぅ~と鳴り響いた。すると水は自分の事を少しだけ恥ずかしそうに見て、そして彼女は少し頬を赤くしながら僕の方に視線を向けてきた。

「あ、あの、食べさせてあげようか?」そこで、水は遠慮がちに僕に向かってそう言うので僕は思わず驚いてしまうがそこで水鏡が水の言葉を否定してきた。

『やめておいたほうがいいですよ、彼はきっと後悔します』そこで僕は何を言っているのかよくわからないと口にしようとしたところで水が先に口を開いてしまうのであった。

「ううん。私は大丈夫だよ」

「で、でも。私がこんな風に他の人に優しくするのは珍しいから。きっとこのチャンスを逃したら一生こんな事はしないかもしれないの」そこで水鏡は僕の耳元で囁いて来た。

『あなたが望むなら私が代わりに彼女に愛想良く接してもかまいませんよ?』水は、水鏡に言われるがまま素直に従うと、水鏡に甘えるように擦り寄っていく。

「ねぇお願い。私が好きな物を食べさせてくれると嬉しい」

水は僕にそんな事を言ってくる。その水の様子に、水鏡は水と水を見比べて、そして僕は彼女の態度に驚きを隠せないでいたが。水鏡はその行動に対して、特に注意すること無くそのまま放置することにしたらしい。水は水で幸せそうにしているので、水を邪魔したら機嫌を損ねてしまう恐れもあるからだろうと予想がついたからだ。だがそこで僕も、そこまでされてしまい断るわけにもいかないと思った。そしてそこで僕は、仕方がなく、水が自分の箸でつまんだ食べ物を口に運ぼうとしている彼女の指をくわえ込むのであった。そして僕はそのままその味を噛み締める。

そしてそんな僕を見て水は嬉しそうに微笑む。だがその微笑はどこか悲しげに見えた。

そしてその日の放課後になって僕は一人で学校を出ることにした。そうすると水に後ろから話しかけられる。僕は振り返ると、そこにはまだ残っていた水の姿があった。そこで僕は、水に、一緒に帰ろうと声をかけたのだが。なぜか彼女は、急に黙り込んでしまったのだ。

「ど、どうかしたのか?なんかあったのか?」そこで水はゆっくりと首を左右に振ると、こう言ったのだった。

「ううん、ちょっと、考え事をしていて」

「そっか、あんまり、思いつめすぎるなよ」

僕はそれだけ言って歩き出していくと。その瞬間、水に呼び止められて、僕は立ち止まると振り向いて水の方へと戻って行くと。そこで水は何かを決意したような顔をして僕のことを見据えたのであった。

その翌日、つまり今日。僕は、今日こそ水に自分の想いをしっかりと伝えて、そして返事をもらうことにして。僕は朝早くから登校するとそこで水と会えた。だけどその時、僕に声を掛けようとした水に対して。僕はいきなり土下座をしたのだ。するとそこで、水は驚いた顔をすると慌てた様子で僕に声をかけたのだ。

その言葉を聞いて僕はすぐに顔をあげると、そこには心配そうに見つめている水がいた。

そして僕は、水の手を取ると真剣な表情をしてみせて。これから自分の部屋に来て欲しいという旨の言葉を彼女に伝えてみると。彼女は困惑しながらも小さくこくりと了承するのであった。そのあと僕は彼女を自分の部屋まで案内するとそこで改めて自分の本当の気持ちを伝えるために、僕は、まず水と恋人同士になりたいのだと伝える事にしたのだ。その僕の言葉を耳にして。水の方は戸惑っているみたいだった。

「えっと、それって私にプロポーズしてるみたいなんだけど」と。

だから僕が、そうだと言ってあげると彼女はその途端泣き出しそうになる。

「なんですかその唐突過ぎる愛の告白は?もしかして告白をする前に振られてその仕返しでもする気だったんですか?それともその私のことが好きっていうのは、ただの遊びだったり、あるいは嫌がらせの為に言ったの?」と。

「俺はお前のことが好きになった。俺の恋人にして欲しい」その言葉で水は再び顔を真っ赤にしてうつ向くと震えだす。その彼女の反応を見て、自分が告白している相手が、今、どういう状態になっているかを僕も自覚し始めた。そこで僕もまた恥ずかしさで顔を赤くしてしまうと慌てて話題を変えようとしてみる。しかしそこでも水は黙り込んだままであり何かを考え込んでいる様子を見せていたのだ。

その次の日。僕達の学校は休校になっていた。理由はインフルエンザが流行してしまったからである。そんな状況になってしまった以上学校に通っていても何も出来ない為。僕達は家に帰る事になった。そこで僕達は家の近くの商店街まで足を運んでみることにした。そこで、そこで僕達が目にしたのは異様な雰囲気に包まれていた光景。それは大勢の人によって形成された人の群れで、僕達が外に出てみればそこはまるで祭りのように賑わっていたのである。

「すごいですね、なんだか人がいっぱいです」

「そうだな。これは、いったいどうしたってんだよ?」

『どうやら今日が祝日のようだから、みんな浮かれているんでしょうね』

その水鏡の言葉を聞いて。なるほどなと思う。そう言えば昨日の夜。明日は何時もの休日とは全く違って。特別な日のはずなのよね。でもそれが何だか全然わからない。そんな話を水と二人で交わすと水鏡は少し困ったような感じで説明してくれたのだ。それによると。僕達が住む世界は。実は、僕が住んでいるこの世界とは別に存在する別の世界があるらしい。その世界にはこの世界とは全く別の文化がありその世界の住人は僕が今いる世界の人達には想像もつかない高度な文明を持っているという事だ。

ただ。その世界でもこの世界と同様に人間という存在はいて、彼等は自分達の世界には存在しないはずの未知の技術に心奪われていて、そして彼等は常に新たな科学技術を生み出し続けているということだそうで。そして今、僕の暮らす世界では、とある科学者が新しいエネルギーの開発に成功したらしいのである。それは電気というものらしい。

僕達はそれを初めて知ったとき。本当に凄いなと思って感心してしまったものであるのだが水によるとどうやらとてつもなく高価なもののようで普通に使うだけでもかなりのお金が必要になるらしい。だがそれでも、それを買おうとする人間がたくさん現れて大金を払ってでも欲するという事でかなり高値で取引されているらしいのだ。それなのに、さらに今回は特別で、今日、一日だけ無料で配られているらしく、それ目当てにこの商店街が人でごった返しているのだと彼女は説明する。そこで僕はふと疑問を感じて水鏡に訊ねてみた。

「なぁ水鏡。その、無料だって話だけどそれ、本当なのか?」

『嘘だと思いますか?』

「うん」

「まあ私も同じこと考えたから」

そこで僕は水に質問をされたので。このお祭り騒ぎはどういうことなのかを聞かれたので僕が、なんでも最近テレビでよく宣伝されていた商品をその科学者が開発に成功させてそれを無償で配ってくれているという事だと説明した。

「あー。確かにあれって人気ありましたもんね」

『そういえば私達ってそういうの見た記憶がないんですよね。もしかするとこの世界にはもう出回っているのかもしれませんね。それで興味を惹いた人達がこのイベントに参加したという事なのでしょうか?』

そこで水は少し考えるそぶりを見せるがすぐにやめると。僕の手を引いて歩き出したので僕も彼女に連れて行かれるように歩く。そして僕達は商店街の奥の方へ奥へと進んでいく。そうすると僕達はその商店の入り口へと到着した。その入り口の看板には「超激安!!最新家電、新技術の塊」と書かれているのが見えて、そこで僕は、まさかと思いながらも店の中に足を踏み入れてみた。するとそこに広がっていたのはやはりと言うかなんと言うか。家電量販店と呼ばれるお店の中のような場所であって。僕はその店内を見て思わず目を疑ってしまったのであった。なぜならそこに置かれているものは電化製品や、機械の類がほとんどなく。そこには沢山のお面を被った店員らしき人物がいたのである。そこでお客は次々と並べられている物を手に取り購入し始めて。それを見ながら僕と水鏡と水で一緒にその行列に並ぶ。するとしばらく時間が経過すると。その商品を販売をしていたお店が閉店となりその店のシャッターが開かれると中からは、先ほどの商品を購入したと思われる人たちがぞろぞろと出てくると、また、どこかへ向かっていく。

その集団の流れに飲まれないように僕と水鏡と水はそこから逃げ去るとそこで一息ついて落ち着くとそこで僕は水に向かってあることを尋ねることにした。その問いかけとは、もしかしてあの商品も僕達の世界で作られたものではないかというものだ。そう、僕は、水と恋人になれたことでテンションがあがり過ぎていたのか、今まで気にしなかったのだけど。僕はこの異世界に召喚されても僕の知識の中にあるものに関してはある程度使う事ができる。なので、もしかしたら、水も。僕と同じ事が出来るのではないかと思ったのであった。だがそこで僕は水からとんでもない返事をもらう。彼女はその言葉を口にすると僕を抱きしめてきたのだった。そして彼女はその行動をとると恥ずかしくなったのか。その途端に顔を俯かせて黙り込んでしまう。そしてしばらくして、その口を開くとこんな言葉を呟いたのであった。

「ごめんなさい、私はあなたの考えている事は分からないです。あなたは私と違って色々な知識があって、それに魔法も使える。そんな凄い人と私が同じなわけないでしょう?」と。そこで僕はようやく理解する。水は、自分が特別な存在であると周りに勘違いされたくないから、あえて自分とは違うように振る舞っているのではないかと、そこで僕は水にあるお願いをしてみることにする。

僕は自分のことをもっと知ってもらいたいと伝える。そして僕のことを理解するのに協力して欲しいとも伝えて、僕は、彼女の返答を待つのだが。しかし水は僕の顔を見ると首を左右にふるだけだったのだ。どうしたんだろうと不思議に思ってしまう。するとそこで僕は彼女の目から涙がこぼれていることに気づいて、そこで僕と彼女の立場の違いを思い知らされた。

そして僕は気がつく。

僕にはこの異世界での生活の中で様々な知識が蓄えられたが。その代償として元の世界の常識が失われていってしまったのだ。つまりそれは、彼女が、この異世界に召喚された際に得たのかもしれないが、とにかく彼女は、この世界に関する知識を得る代わりに、自分の中の常識を失うことになり、その結果として今の彼女は僕の知らない、この世界の一般的な人間となんら変わりのない存在になり果ててしまった。

つまり、水は僕よりもずっと前から自分のことを偽ってきたのである。その偽りの自分の設定を作りあげて、それを演じることによって自分自身の本心を誰にも知られずに過ごしてこれたのだ。

そこで僕は。彼女に対して、ごめんだなんて言えるはずがなかった。むしろその気持ちを理解した上で、その上で、彼女を支えてあげたいと思って。僕と付き合ってほしいと彼女に伝えるのだった。その僕の言葉を聞くと彼女はその瞳からぽたりと涙を流し始めた。それはきっと嬉しいからだと信じたい。そこで彼女は小さくこくりと了解するのであった。

僕は、その日の夜。水鏡に僕の考えを伝えたくて、その日あった出来事を詳細に語り出す。すると彼女は嬉しさ半分呆れ半分といった表情をしてみせる。そんな彼女を見ていると僕はなんとなく照れくさくなるが、それでもなんとか最後まで話し終えたところで。水から質問を受けることになったのだ。その内容は、僕達の住むこの世界と彼女の姉を名乗る女性が住む世界が、どういう繋がりをもっているかということだった。

僕が説明を始める。

「この世界には元々神様が存在したらしいんだけど。でも、ある時を境に姿を消してしまったそうだ。そこで人々はその原因を探る為に旅立ったそうで、そこで発見されたのがこの世界での魔法の原型になる力なんだ。でもそれがどうしてだか、元の持ち主である神が消えた後も残り続けて、それがやがて人という種の中に溶け込むようにして消え去ったものが今の僕らが使えるような魔術と呼ばれるものになっている」

そこで水は何かを思い出しながら、僕が話したことの確認をするために、まずは、水と僕が出会う事になった時のことから詳しく聞きたいというので、そこで僕は自分が水鏡の生まれ変わりだと信じてやまなかった理由を話す。

水はそこで。なにかに納得した様子で僕を見てくると。さらに話を続ける。そこで彼女は、この異世界にも、実は神様と呼ばれる存在が、存在していたらしく、それは、今から何千年も前に、その姿を消したらしい。そこで僕達がいた世界と、この世界には共通して存在しているのが「聖杯」と呼ばれるものだという説明を彼女はしてくるのである。

ただこの聖杯は普通に目にすることができるらしいのだがその詳しい正体はよく分かっておらず水によるとその「根源」と呼ばれる場所でのみ手に入れられるものだとか。そう言う話を水鏡がしてきた後で水は少し考えてみせてくれる。

「うーん。もしかすると。その、この世界の「聖杯」という存在が、あなたの世界にあったという「聖杯」のコピーなのかもしれませんね」

僕はなるほどなと思う。確かにそれならば、水鏡の話に筋が通るのだ。そこで僕も少し質問をする事にする。なぜにその話を今僕に聞かせてくれたのだと聞く。すると。

水は僕が水鏡のことを好きだった事を察していたのかもしれないと、そこで僕は、この世界に転生する際に僕は水の姿をしている少女に出会ったので。水と恋をしたのだという事を伝えようとしたのだが。

「えっとですね。私はこの身体になってからは恋愛とか、その、男性に興味を持てなくなってしまったんですよね」と、水鏡に告白する前に振られてしまう結果になってしまったのであった。ただそこで水からある提案を受ける事になる。

「私達には私達なりに、これから先もこの異世界で過ごしていきたいと思います。でももしこの世界を救ってくれるのであればそのお礼はします」と。その申し出は、おそらくこの異世界に危機が迫っているからであろう。その事には気がついていたが僕にどうしようもないというのが事実であるし水もそのことはわかっているようで。その件についてこれ以上は聞いてこようとしない。でも。僕はそれでもいいかなと思ってしまった。水と二人ならそれで問題ないと思えたのだ。

そして水は僕に向かって一つの指輪を手渡してくれたのである。僕はそれを受け取って、水に手を差し伸べると彼女がそれを握り返してきて、その指輪は水の手の中に収まった。そこで僕は水に対して一つだけお願いをすることにする。それは、僕達の間にできた子供をこの世界に置いて行って欲しいと伝えると水は不思議そうな顔をして。そしてすぐにその理由に気づくと。彼女は笑い出してしまう。どうやら僕は彼女のお眼鏡には叶わなかったようである。そして最後に彼女は僕に向けてこんな言葉を口にしてくれる。「あなたに会えて良かったですよ、私の好きな人はもうこの世の中には存在していませんでしたから、本当に、あなたに出逢って私は幸せになれましたよ、ありがとうございます、では、さようなら」と、そんな言葉を残して、水の意識は闇の中に飲み込まれていく。そこで僕は、気がつくと真っ暗な闇の中に取り残されてしまう。そこで僕が、どうして僕はここにいるのかと問いかけると、そこで僕は声が聞こえたのだ。それは水の声であり。僕のことを呼ぶ水の言葉であった。だから僕は。彼女に呼ばれていることに気づいて水の元に向かうとそこで僕は目を覚ますのであった。

そこで僕は目が醒める。目を開けた僕の目の前に広がったのは天井で。ここはどこかと考える。そこで僕はこの場所が宿屋だということに気がついたので、とりあえず、僕は体を起き上がらせる。そして部屋を出てみるとそこはロビーのような空間となっていて。そこには数人の人が座っているのが見える。そしてその中の一人が僕に向かって話しかけてくる。どうやらその人は僕の仲間達を呼びに行っていたようで僕が目をさました事に安心した表情を見せてから僕に向かって仲間の無事を伝えるのであった。その言葉を聞いて僕はほっとする。

そこで僕は、自分が今まで何をしていたのか思い出そうとすると頭が痛み始めるのである。そして自分が何者であるのかも思い出すことができなくなり。僕は頭を押さえながらもその人の方へと視線を向けるとそこにいた人物を見て思わず叫びそうになった。なんとその相手とはあの時、僕を助けに来てくれたあの青年なのである。僕は慌てて立ち上がりその場から離れるとそのまま出口の方へと向かうのだった。

僕は宿屋の外に出てから自分がどこに向かえば良いのかを考えるとやはりこの街で一番最初に行った武器屋にでも向かうべきだろうか? いや待てそもそも。僕はなぜにあの街に戻ってきていたのだろう。僕は自分のことを勇者だと思い込んでいたはずなのだ。なのにどうしてそんな僕のことを心配そうに見つめて追いかけてきたりなんてしているのだ。僕はそう疑問に思ってから。もしかして自分は、あの街に戻るように誰かから命令されたのかもしれないと思いつく。その何者かが僕にその指示を出したのだとしたならば。その目的が一体なんなのかを僕は考える必要があった。なぜなら、僕自身が記憶喪失に陥っているせいか自分の意思を他人に操作されている可能性があるからである。

そこでふと、僕はあの黒ずくめの男の顔が浮かんでくる。確かあいつが言っていた「勇者を倒せば魔王に近付ける。お前の本当の力を解放させてやる。そして俺はもっと強くなってみせる。その為にはまず勇者を倒し、俺の目的を果たすんだ。そうすれば、きっと俺達はまた出会う事ができるはずだ」と、そんな言葉を言っていたはずだ。その言葉で僕の脳裏に浮かんできた人物は一人しかいない、つまり僕をこの異世界に連れてきた張本人こそがその黒尽くめの男だということになる。僕にあんな真似ができるのなんて彼ぐらいしかいないのだから。

そこで僕は。彼が僕と接触を持とうとしている理由を想像しようと試みる。しかし残念なことにその答えを見つける事は出来なかった。そこで僕は一旦その思考を打ち切るとまずはこの場を逃げ出すことを最優先に考えようと思って走り出す。すると彼は僕を捕まえようとする。

「逃げるな、僕はお前と戦う為にわざわざここまで来たんだ。僕はここで、自分の強さを確かめる為に戦わないといけないんだよ」

そこで僕の腕を掴んだ彼の手から黒い霧のようなものが出現して僕の全身を覆うと僕は動けなくなってしまう。そこで彼が「やっと捕まえることができたぞ」と言う。僕はその隙に剣を引き抜いて彼に斬りかかるのだが、そんな僕の行動を予想できていたらしくあっさりと防がれてしまった。

「やっぱりこの程度か」と呟いた後に「まだ、覚醒前なんだな」と続けて口にする。その言葉を聞いた途端に僕の中で違和感が生まれる。そして次の瞬間。僕の中にある記憶が戻ってくる。その感覚はなんとも言い難いものであり僕はとても混乱してしまった。そしてそのあと僕がどうなったのか、僕はその全てを思い出してしまったのだ。その記憶の中ではこの世界には、魔獣と呼ばれる危険な生物が存在していて、そしてそれらを倒すために、聖剣の力を解放する必要が出て来るのだと。

そこで、この世界で聖杯と呼ばれているものの正体を知る。僕達がこの世界で生きていく為には、僕達に宿る魔力という力を使って戦う必要があり、聖杯というのはそのための道具なのだそうだ。ただ、この世界には人間以外にも、他の種族が生活していると。僕はそんな話を聞いた事がある気がして。それってこの異世界に転移してくる前に読んだライトノベルの設定に似てないかと、そんなことを考えたのだった。

「この世界にはまだ沢山の聖杯があるらしいんだけど。僕達が元の世界に帰ろうとするのならば全ての聖杯を手に入れて行かなくちゃいけないみたいだね」

そこでその話を黙って聞いていた彼女は口を開いて、どうして、その話を私に教えてくれるんですかと尋ねて来て。

それはなぜかと言われれば水と水鏡にこの異世界で会った時の話をしたからで。それに、彼女は僕の仲間だしこの異世界でこれからも一緒に行動していくことになるかもしれないので。彼女に伝えることに意味があるのだろうと、そんな説明を僕は彼女にしたのであった。

僕はこの話を聞いているうちにこの世界のことに興味が出てきて。この異世界にはまだまだ僕の知らないことがあるのだと考えると僕はその事実を知りたいと思ってしまったのだ。そこで彼女が僕に聞いてきたのである。「それじゃ、あなたは、これからも私と一緒に居てくれますよね?」と。

僕は彼女のその言葉に即答する事ができなかった。確かに僕は水鏡の事が好きだったのだ。その気持ちは本物だったしその想いに後悔もない、しかし今はどうなのだろうと考えてしまい、どうしても僕は水鏡にもう一度会いたくなる。僕はその事を伝える。すると彼女は少し寂しそうな顔をしながら、わかりましたと言ってくれる。そこで、水は少しだけ考えるような素振りを見せた後で、「私に何か隠していることがありますね」と、唐突にそんな言葉を口にして僕を驚かせる。

僕としてはこの異世界に来る前の出来事は出来る限り水には伝えたくないと思っているのに。そこで水からある質問をされる。

「あなたがここにやってきた原因、その人物の名前をあなたは知りませんね。だってあなたはその人物の名前を口にした事がありませんから」

それはどういう意味か僕にはわからないが僕は彼女に嘘は吐けないので正直に答えることにする。僕はここに転移させられる少し前、あの夢の中の暗闇の中において黒づくめの人物と出会ったのだと言うと。水はそれでは、おそらく、あなたは騙されていたのだと思いますよと言ってきて。

そして彼女が言うことによれば。どうも僕が召喚された理由は。勇者とやらの力が目覚めていないかどうかを調べる為だけに行われたのだと言われた。そして僕はその事を否定できずに困ってしまうとそこで、水は、僕のことを見て笑うのである。そして僕が勇者である可能性はほぼ無いと。なぜなら勇者の証となる物は僕には無かったからだと言うのである。そこで僕は疑問に思ったことを口にしてしまうと。彼女はそんな僕の反応を見て楽しげに笑いながら、勇者の力を解放させるのには、いくつかの方法があるんですよと、彼女は言って。僕に向かってこう問いかけてくる。それはですね、あなたの心の中に存在する魔王の存在を殺すことですと言い出して。そして僕がどうしようもなくなったら私が魔王を殺してあげると約束しますよ、と。そう言われてしまう。僕はその発言に対して苦笑いしかできないのであった。

ただそんなやりとりがあったので僕がここに飛ばされた理由は分かったのだけど。僕は今現在進行形でどうして自分がこんな目に合わなければならないのか、まったく理解できていない状況にいるのだ。なので僕はどうにか現状を把握しようと頭を悩ませる。その結果、この世界での僕達の役割について思い出していくことにすると、それは、簡単にまとめると、勇者が魔王にたどり着くまでの物語のサポートをすることが僕達の目的だったはずだ。だから、僕はその目的の為にも。水や水鏡と一緒に行動するべきであると判断をする。だから僕は、彼女と一緒のグループとして、冒険を続ける事に決めるのであった。そこで、水に、一緒に行動する以上、お互いに隠し事は無しにして欲しいと言われたので。その要求に応えるべく僕は、先程の黒ずくめの男にあった出来事を説明することにした。

僕はその人物のことを、自分が勇者だと、自称している、黒尽くめの男にあったのだと説明した。それから彼は僕に向かってこの異世界に呼ばれた目的は魔王にたどり着くまでの勇者の力を手に入れるためだと言ったのだけれど、それが本当なのかどうかは分からないので、僕としても、本当の意味で信じることができなかったのだというと、彼女はその話をとても興味深いといった表情をして聞いていた。

そこで僕はこの異世界に呼び出された時に起きた不思議な現象についても話すと。彼女も僕と同じ様に、この世界に来てすぐの頃に不思議な経験をしていたことがわかったのだった。それで僕はその話が真実なのかもしれないと考えると。もしかしたら他にも、同じように異世界から来た人間が居るのかもしれないと思うと、僕の心の中はワクワクとするような気持ちになった。もしかしてその人達にあえば元の世界に帰るための手がかりを得られるのかもしれないと思ったのだ。

しかし僕はその話をそこで終わらせて。他に僕が覚えている限りの記憶のことについて説明していくと、僕の話は水にとっては新鮮なものだったようで、水はとても楽しそうな様子を見せてくれた。そしてその話の最後には僕は水とキスをしたのだ。僕は彼女のことが好きなのだと思っていたのだけれども、その時にはそんなことは関係なく。僕と水はお互いが惹かれあうかのようにキスをしたのだ。そこで僕達は宿屋に戻ることに決めて歩き始める。そこで僕は先程から気になっていた事があって。僕はそのことを口にすることにする。

それは僕のステータスに『呪い』という言葉が浮かび上がっているというものだ。僕はそれを水に説明した後で確認してもらっていたので。僕の視界の片隅でそれを確認することができたのだけど、その数値というのが0で固定されていて、これは一体どうなっているのだろうかと、僕は疑問を覚える。そこで僕はその状態異常を治してもらうために魔法をかけてもらうのだが。残念なことに僕の体からは毒や麻痺、それに睡眠などという状態異常を全て消し去ることはできないらしく。それでもその『呪』という項目を消すくらいは可能だと水に言われたのである。

僕はその話を聞くと水には僕が異世界に来たばかりの頃に遭遇したあの男が使った魔法と同じようなことをされているのではないかという仮説を立てると。僕は水に対してその件を相談したのだった。

そこで彼女はその可能性が高いのではないかと口にして。その根拠を説明してくれてから、彼女は僕に、僕が持っている聖剣の剣の能力を使ってみてくれないかと言ってくる。僕は、僕にできることならば何でもするつもりだったので、すぐに水の言葉に従うことにした。

そこで僕は水の言う通りに聖剣を呼び出すと、聖剣の刀身から光を放ち始める。その光景はとても綺麗なもので。僕はその光が収まるまでの間に水から色々と情報を得ると。そこで僕はその光が弱まったタイミングを見計らい剣の柄を握ってみた。

次の瞬間、僕は聖剣の剣に吸い込まれるような感覚に襲われる。

僕と水鏡はこの世界で、この世界にあるという聖杯を手に入れようとしていたのだ。僕と水は協力しあい。その聖杯を探す為にこの世界を旅していて。そこで魔獣に襲われた所を助けた少女がいて、それが聖杯を持っていたので僕達がそれを奪い取ったら何故かその少女が襲いかかってきて、僕はその少女と戦い、そして勝利した後に僕はこの世界に転移したのだ。

そこで僕と水はお互いに視線を合わせると、どちらともなく、微笑んで、それからこの世界のどこかに転移されたのだろうと考えていたのであった。そして転移先の場所だが。それはなんとなく想像がついているのだと僕は彼女に説明する。

まず、この世界がゲームに似た世界観をしているということはわかっているので。おそらくここはファンタジーRPGのような世界で、その物語の中心になっているのは王都なのではないかと思っているのだと僕は彼女に言った。すると彼女もそれに賛同するように小さく首肯してくれた。

「でもどうして、あなたはこの場所に来られたんだろうね」

僕はこの質問を彼女にぶつけるが彼女はそれに答えられない。そして、そんなやり取りをしながら歩いていくが特に変わったことも無く、街に到着した僕は、この街の冒険者ギルドに行くことにする。そこで受付の女性に僕は冒険者の登録をしてもらえませんかと言うと。

「わかりました。あなたは冒険者にならなければならないようですね。冒険者としての登録を行いますので。少しだけお時間をください。それとこちらの書類をお渡ししておきますので、後で目を通しておいて下さい。そして最後に注意事項についてですが、基本的に、依頼主の方からの強制依頼は断ることが出来ませんので。そこは注意してくださいね」

僕は、そんな話を聞いて、少し面倒くさいような気がしないでもないと思いながらも、まぁ、仕方ないよなと割り切る事にした。そんな風に僕は思いながら受付の人に登録してもらいますと伝えると。僕はこの国の名前が『アルスター』というらしい事と、この世界の貨幣価値や物価などを簡単に教えてもらうと。僕はとりあえずお金が必要かなと考えて、そこでふと気がついたのは僕が持っていたはずの財布がなくなっていた事だった。そしてそんな僕に彼女は笑顔で声をかけてきたのである。「その荷物袋は私が預かっているわよ」と。

僕はそんな事を言われるとどうしたものかと考えてしまい。そんな時に彼女の方から僕に対して質問がされる。

「そういえば、まだ、あなたの名前を教えて貰っていなかったわね。私は水、この子は私の使い魔で、名前はリリアナ」その紹介の仕方はとても雑なもので、それに対して僕は不満を覚えたけど、それは言わなかった。それから僕は水の名前を耳にすることが出来たことで、心の中で密かに喜んでいたのであった。そしてその気持ちを抑えきれなかった僕は、水の手を掴む。すると水はとても驚いて、顔を赤くしてしまった。その反応を見た僕は心の中のモヤモヤが取れた様な感じがしていたのである。そんなわけでようやく名前を知れたので、自己紹介をしてもらおうと思うのだけど、その前に。僕も自分の名を名乗っておかなければ不公平なのかもしれないと気付いたので僕はこう告げるのである。

「僕は、天川光輝っていいます。それでこっちにいる女性は、水鏡さんっていうんです。よろしくお願いします。えっと、あのさ、できれば名前も聞いてもいいかな?」僕は、僕達の目の前にいる人物の名前を、この異世界で出会った女性に対して尋ねると。

彼女は一瞬だけ驚いた表情を見せるが、その後で嬉しそうにはにかんでくれた。そうやって笑う彼女はすごく可愛くて。僕の心臓はドクンドクンとうなり始めてしまうのである。ただそんな僕の心の中の変化に気付くことはなく。水鏡はその問いかけに答えると僕の手を握った。

そうすると僕の視界の中に水鏡の情報が表示されて、彼女の容姿についても知ることができる。水鏡という名前と年齢が表示されているのだ。それによると年齢は十七歳と表示されていて。そしてスリーサイズに関しては不明となっていたので僕は何も見ていない事にする。

そこで水は僕にこう言ってきた。

「私に何か聞きたいことがあるみたいだけど? 例えばそうね。私の正体とか」と彼女は言うのだ。そこで僕は、水の言葉を聞いた後に、もしかして僕と同じ異世界から来た人間なのかと思い、尋ねてみることにした。

彼女はその問いにしばらく悩んだような仕草を見せて、その答えとしてこんな話をしてくれたのだった。僕は水の話を聞き終わった後にこの世界にやってきた時の事を思い返してみる。僕が異世界にやって来た時には水鏡は既にこの世界に来ており、そして既に、その能力を使って、僕に色々とアドバイスをしてくれていたのだった。その助言の内容が僕の記憶の中に入っていなかったのはきっと彼女が僕に対して、その知識を封印するような呪いをかけたからなのだと僕は理解する。そのことについて僕は水に尋ねたのだが彼女は僕に向かって優しく微笑むと。

それから僕の体をギュッと抱きしめて「ありがとう、心配してくれるのは嬉しいんだけど。これは必要なことだったから気にしないでね」と言われた。そしてそこで水鏡は僕から離れる。そこで僕達はギルドの中に入るのであった。

そして僕達を待ち構えていたかのように、ギルド職員らしき男性が僕に声をかけてくると、その男性は僕に向かって一枚の羊皮紙を渡そうとしたので、その男性からそれを受け取ると僕はその紙の内容を確かめた。そこには依頼内容が書かれていて。その報酬金額に目が行く。

内容:依頼主

:アルス商会の会長『ダレス=アルスター』からの依頼で、この街の近くに生息している『レッドドラゴン』と呼ばれる巨大な赤いトカゲのような生き物の討伐を依頼します。この依頼が達成できましたならば追加で十万の金貨をお支払い致します。また、本依頼を達成した際には、ギルドランクをCからBへと上げることができます。尚、『竜殺し』の称号を得る為には最低二体の『レッド』ドラグナイトを倒す必要がある。なお、『竜殺し』の証を所持している者には『ドラゴン』に対するダメージボーナスがプラスされ、さらに称号持ち限定の特別クエストが発生する可能性があります。詳しくは依頼主に直接聞くことをお勧めいたします。それでは、貴方の旅に幸あらんことを。そして『竜』を殺しに行こう! そこで僕の意識が覚醒したのだった。どうやら僕は寝ている間に夢を見てしまっていたようだ。それにしても妙にリアルな、まるで本当に体験してきたかのような夢のようであり。それがなんというかとても不思議な感覚だと感じながら。僕は起き上がって周りを見渡すとそこは宿屋の一室であって。僕は昨日の出来事を思い出す。

僕と彼女はこの世界にあると言われる聖杯を探すために旅をしていたのだ。そこで彼女は僕が持っていたはずの財布を奪っていき、それを返して欲しいと言うと。彼女は、その財布を、僕に見せつけるようにして、からかい始めたので僕は少しイラつきを覚えてしまったのである。

ただそんな僕の感情を知ってか知らずか、水鏡は自分の懐に、僕が持っていたはずの、その財布をしまってしまうと、そのお金を使い切りましょうと言ってきた。僕がその理由を聞くと、その方が後々の為になるのよと笑顔で言い切られてしまい。

仕方なく僕は水鏡の提案を受け入れたのである。そして、僕と水は、街の近くにある森に足を踏み入れることにしたのであった。

そして僕達が森の中で遭遇したのは、ゴブリンと呼ばれるモンスターであった。緑色の肌をした小柄な怪物で、人間の子供ぐらいの身長しかなく、知能も低いらしく、その動きは、とても遅く感じるほどであった。なので僕達は難なくそのゴブリンたちを撃退すると。

その先にはゴブリンの巣穴があって。そこで大量の武器を発見したのだ。僕達がその宝の山を前にして立ち尽くしているとそこに一匹の犬型の魔獣が現れて襲いかかってくるが。そんな時であった、突然に僕の手に一振りの大剣が出現したのである。それを手にした僕は、魔獣を一刀のもとに切り捨てると僕は水に向かってこう言った。

『やったな!』と。

すると、水は何故か少し驚いた表情を見せていたのだ。そして彼女は、自分の手を見ながら、不思議そうな顔を浮かべていたのだった。どうやら彼女としては予想外の事態が起きたらしいのだ。そんな風に僕は思ったのだがとりあえず先に進むことにしたのであった。そして進んでいくと、そこには、大きな屋敷が存在した。

その建物の中には人の気配はなく、もぬけの殻であったが、地下への階段が存在していたので、とりあえず降りていくことにする。そしてその奥に広がっていた空間で見た物は、奇妙な祭壇と、そこで燃え盛っている謎の炎だったのである。

そしてそんな謎の儀式を行なっている集団と遭遇した。彼らは僕達に気がついていないようで。

「よしっ、いいぞ!」そんな言葉を叫びながら、謎の装置を操作していたのだった。そんな彼らに対して僕は背後から近寄ると声をかけてみる。

『あなたたち一体何をしているんだ?』と。

するとそこでようやく僕達の接近に気がついたのか慌てふためいているようだった。そこで僕達は彼らの身なりを見て。どこかの神官かなにかか? と思っていたが。そこで水鏡が僕に向けて小声でこう囁いてきたのである。

「あの人達の持っている指輪と杖を確認しなさい」と。

僕はすぐに言われたとおりにして確認を行うと。その二つに何か仕掛けが施されている事が分かり、僕は水にそのことを告げると彼女は少し考え込むようなそぶりを見せる。するとその瞬間に僕に向かってナイフが投げられて、そして、その刃物の切っ先が僕に襲いくる前にその軌道が変わるとそのまま地面に突き刺さったのである。その現象を起こしたと思われる存在を確認するとそれはリリアナさんであった。リリアナさんは水鏡の使い魔であり、リリアナさんには未来視の力があり、それは自分に向けられる攻撃を察知できる力らしいのだ。ただそんな便利な力を使えたとしても使いこなせなければ意味がないのだとリリアナさんは語っていたけど。でもそれでも十分過ぎるほどに強いと思う。それからそんな事を考えている内にその二人の男もこちらに攻撃をしかけてくると、水と、リリアナさんの連携プレーによりその二人を倒した。

そこでその男が身につけている指輪に細工をされているのが分かる。僕達の目的はあくまでも聖杯なのだが、この連中はおそらく無関係だろうと思った僕は、その場を離れようとする。しかし僕達の前には、いつの間に現れたのであろうか、ローブを着た人が立ちふさがっておりその人物が水鏡に対してこう告げる。『お前は選ばれてここにやってきた。今こそ、この私と共に世界を変えに行こう』と言い出した。水は困惑していたがそんな彼女にお構いなしに水鏡を連れて行くと。

水鏡の手を引っ張っていくのだが。僕とリリアナさんは慌ててその男の背中に切りかかりその男に一撃を加えるが、男は振り返りざまに僕に向かって拳を突き出して、その攻撃を受け流されてしまったのだ。そして僕達はなんとか逃げることに成功すると水はその場で崩れ落ちてしまい、水の顔からは血の気がなく、明らかに異常だということに気がつく僕達。そこでリリアナが水に対して、その手をかざす。

その瞬間に水が落ち着きを取り戻す。

僕はリリアナの行為に驚いてしまう。水鏡もリリアナに回復魔術を使えるということに驚いている様子だった。水は、自分の身に何が起こったのかわからずに混乱していたようだったけれど、今はもう落ち着いていて、いつもの水に戻っているようだ。

そうやってひとまず落ち着いたところで。その人物の話をもう一度聞こうとしたのだ。しかし男はこう言ってきたのである。『貴様らは私の邪魔をした。だから死んでもらう。まぁ運がなかったと思って諦めろ』と、そんなわけで、僕と、リリアナは戦うことになった。その戦いの中で、僕は、男に、水鏡の能力が封印されて使えないという事を教えるが。それを信じようとしないのだ。そして男は、水鏡を拘束しようと、彼女の体を抱きしめるようにして逃げ場を奪うのだが、彼女はその行動によって、相手の能力を封印するという水鏡の特殊能力を発動することが出来たようだ。その結果として男の動きを一時的に封じることに成功をする。そこで僕は水鏡から貰った武器で攻撃を仕掛けて。その武器での攻撃は、相手に命中して、それで終わりだと思われたが、そこで、相手の姿が変化すると、その武器は、その変化した相手の体に吸い込まれてしまう。それからその男は、まるで悪魔のような容姿へと変貌を遂げると、そこで、水は僕に向かって言う。

「私がこの相手を引き受けますから、貴方はあちらの化け物をどうにかお願いできますか?」

その水の発言に僕達は驚かされる。

「それじゃあ俺があいつと戦う」

「いいえ私がやります」

そんなやり取りが繰り広げられている間にも、僕はその魔物と戦おうと決意をして、僕は水鏡から託された大剣で切りかかると、その攻撃は通用せず、逆にその巨大な手で吹き飛ばされてしまったのである。僕は必死に抵抗を試みたが、相手が圧倒的なまでの実力の持ち主で、その力の差を埋めることができなかったのであった。だが僕は、ここで負けるわけにはいかないので、その魔物の懐に飛び込んで、剣でその巨体の胸を切りつけていく。何度も、切り付けていくと次第に、傷が深くなっていき、ついには巨大なドラゴンの姿をしたその怪物が倒れていく。すると、そこで、僕の前にいたはずの、水と化け物が消えており。そして僕が倒したドラゴンは光に包まれるとそのまま消滅してしまったのだ。そんな光景に僕は唖然としながら、水を探してみると彼女はまだあの黒い物体と戦っていた。僕はその助けに行こうとしたが。その途中で、リリアナの援護を受けて僕は再び立ち上がり水の元に向かう。そんな時だった。僕の元に一本の矢が飛来してくると。それはまるで生きているかのように僕の方に迫ってきたのだ。僕はそれをギリギリで回避すると。僕は弓使いの方を睨みつける。そこには金髪の女性がおり、しかも彼女は弓矢を構えていたのだ。そんな僕と、金髪の女の戦いが始まるのであった。

そんな女との戦いが始まって数分が経つが未だに決着がつかない。僕は何とかこの女性を倒す方法はないかと模索してみたのだが思いつかなかった。そんな状況でも向こう側から攻撃を加えてくることはなかった。そのおかげで、こちらとしては余裕を持って応対することができたのだ。ただ問題はあの弓である。恐らく彼女が使っているのはこの世界には存在しないと言われている伝説の武器である。つまりはあの剣と同じくあの女性は神格化された人間である可能性が高いと言うことだ。その可能性を考えるとやはり水鏡と僕が戦った方がいいと判断すると僕は彼女を説得することにした。その言葉を聞いて彼女は渋々ではあるが応じてくれたのだ。

そういえば先程までは気にしていなかったのだがこの女の髪の色は水にそっくりな青色をしているのであった。

そんなこんなありつつ僕は水と合流して二人で共闘することになったのだが。僕が、水と一緒に、先ほどまで戦闘を行なっていた場所に辿り着くとその場所では既に終わっていて、そこには先程の男が倒れていたのだった。その男は全身に深い切り傷を負っていてどうやら水鏡の使い魔にやられたようだが、水はその男を見ても何も反応しなかったのだ。ただリリアナさんだけが、なぜか、この死体を見ているだけで涙を流すのであった。そしてその後すぐに、水はリリアナさんの方に顔を向けると、何かを話そうとしていたのだが。どうやら上手く声が出せないようで、その様子を見つめていると、リリアナさんが、何かを思い出したように水に対して話しかけてきたのである。

その話を聞いた水は驚いたような表情を浮かべてリリアナさんにお礼の言葉を口にするが。その表情はとても悲しそうなものだった。その表情を見た僕はもしかしたらこの人は何か事情があって水鏡に対してあんなことを言ったのかなと思ったりした。その会話が終わった後にリリアナさんが僕達の前に現れる。それから水と、リリアナさんは僕達とはぐれてからの話を始めて。そこで僕が知らない情報を手に入れるのであった。その話は水鏡にはあまり関係がないと思っていたのだけども、その話が終わる前に水は何故か僕を庇うように身を乗り出すと、水鏡の体が光り輝きだすと次の瞬間に、水鏡が大人から少女に変化していて僕は驚きの声を上げそうになるが。そんな僕に対してリリアナが何かを投げつけてきたのでその攻撃をなんとか僕は避けきることができた。僕が水の変化に戸惑っている隙に、彼女はその場から離れてしまい。それを確認した僕はすぐに彼女を追いかけようとするのだが。そんな僕に背後に気配を感じると振り向いた先にはさっきまでいなかったはずのリリアナが立って居たのでその瞬間に水のことを思い出すと慌ててその場を離れようとしたが、その必要はなかった。なぜなら、そのリリアナの後ろに立っていた水に背後から抱きつかれたからである。水は僕に抱きつくなり『良かった』と言って泣き始める。そんな彼女の様子に僕は困惑を隠せなかった。そこで僕はリリアナさんに質問をすると、なんと、リリアナさんはあの水鏡に恋をしていたのだと口にしたのである。僕はそこでリリアナさんに対して、そんな事は絶対にあり得ないと伝えると。そんなリリアナさんは僕に向けてこんな事を言ってきたのである。

『私はあの子が好きだ』と。僕はそれに対して僕は『どうして?』と尋ねるとリリアナさんはこう答えるのだった。『私の力ではどうすることもできなかったから』と。僕はリリアナさんのその発言にどういう意味なのだろうと少し考えてしまうが、今は水の方が重要だと思って彼女に声を掛けようとした時にリリアナさんが言うのであった。

「さぁ早く逃げないと私達が捕まるよ」と。その言葉に驚いてしまう。だってここは僕達の世界ではないはずだから。なのに、リリアナの口調はまるで、ここの世界の人間が使う言葉のように聞こえたのである。

「あっちの方から魔力を感じたんだ。だから、あそこにいけばきっと元の姿に戻れると思う」

そんなリリアナの発言を信用するべきか迷っていた僕だったけれども水のことを思うならリリアナさんに頼った方が早いので僕はリリアナさんと共に、先程までの場所に向かうことにしたのである。しかしその場所に向かう途中に水鏡は姿を消して、結局、水鏡は戻ってくることがなかった。だからなのか僕は、今度会ったときに必ず水を連れて来ないといけないと強く決意をした。そうして、水鏡がいないまま、あの場所に辿り着いた僕達はそこで驚くべきものを目にしてしまうことになる。

そこには大量のゾンビが存在していたからだ。そんな異様な光景に、僕と、リリアナは困惑しながらもその建物に入ることにする。するとそこには大勢の人の死体が転がっていてそんな悲惨な現場に見慣れている僕は思わず目を背けてしまう。それからその光景を眺めるなりにリリアナは『酷い』という言葉を口にした。僕達はそれから、その死体を調べることにしたが、どれも既に息絶えていて、何一つ手がかりは手に入らなかったが、その死体が纏っている服に見覚えのある服を着ていた人物がいたのである。その人物はあの弓を使っていた金髪の女性だった。その事に関してリリアナは驚くが。それ以上は特に何も言うことはなかったのである。ただ僕達の方を見ながら『これは君がやったのか?』という視線を向けてくるので僕は首を横に振って、それを否定する。僕は、そんな状況でこの場所から移動しようと思った矢先のことだった。建物の外から悲鳴が響き渡ってくると。その声がどんどん大きくなって、それが近くなってきた。そこで、僕達はすぐに建物の外に出ると外にいたはずの大量の死者たちが、僕たちのいる建物に入ってこようとしていたので、僕と、リリアナが必死になってその死者たちを抑えつける。そんな状況の中でも僕たちは何とか建物を出ようと試みたのだがどうにもならない。

そんな時だ、僕の目の前に一人の少年が姿を見せて、僕の代わりに水を抱えてくれるので、僕がその事に安心してるとその少年の体は突然変化して、先程までの姿が嘘のような美しい青髪を靡かせる美少女へと変貌を遂げる。それから彼女は僕の方に顔を向けると、微笑みながらこんな言葉を言ってくれた。『やっと見つけたわ、お姉様』とその言葉でようやく、彼女は僕の知る人物であり。水鏡の親友でもあった水無月(みなづき)

唯花さんであることが分かり安堵していると水鏡を抱えた、その彼女が建物の奥に消えていったのであった。そんな時だった。急に大きな音が響くとその建物が揺れ動き出したので僕はすぐに外に飛び出したのだがそこには巨大な黒い怪物が存在していてその近くには、先程の弓を持った金髪の女性が立っており。その弓から巨大な水の塊を放つと巨大な怪物が苦しみだすのだった。そこで、僕達は、そんな怪物に向かって攻撃を仕掛けることにした。まず僕は水鏡から貰った大剣で切りつける。だがやはりと言うか僕の大剣による攻撃は全く効果がなかった。だがそんな僕を見た、水は無詠唱で僕に対して魔法を使ってきて、それで僕は攻撃することができたのだ。そうやって僕と、水、そしてリリアナさんは、この化け物との戦いに挑むことになったのであった。

この世界に来たとき僕と水、そしてリリアナさんはリリアナさんの転移の能力で僕達の住む町に移動をすることができた。ただそこで問題が発生すると、僕達がリリアナさんの家に戻るとリリアナさんのお父上と思われる人物がリリアナさんを見つけると怒りの表情を浮かべたまま近付いてくるとリリアナさんを殴ろうとする。それをリリアナさんは防ごうとするが間に合わなかった。しかしそこでお父上は、お腹を押さえたかと思うと血を吐き出すとそのあとに倒れ込んでしまう。そんな光景を見てしまった僕はリリアナさんを助けようとするが、僕よりも早く水が自分の体を水に変えて僕が殴りかかったお父上に体当たりをするとそのせいで気絶させてしまったのだ。そうして僕は水に感謝を告げるとお礼を言うとリリアナさんと一緒に水を連れてリリアナさんの自宅に急いで戻ったのであった。そして僕が家に帰る頃にはすでに日が落ちていて僕達三人はすぐに寝てしまうと翌日を迎えることができた。

僕はその翌朝に起きた出来事によってリリアナさんと一緒に、とある場所に行ってしまう。そこは僕が住んでいた世界とは異なる世界でその国の名はルクスと言う名前なのだそうだ。そしてリリアナさんの話によるとどうやらこの世界では魔王と呼ばれる存在がこの世界を統治しており、その配下がこの世界に出現をしているらしい。そんな話を聞いてしまった僕だったが。その話をしてくれたのは水であり、リリアナさんはこの世界の出身ではなかった。つまり、彼女は水と同じように、別世界の住人のはずなのである。そのことに関しては疑問は残るが、そのことは置いておいて。僕は水とリリアナさんとともにその魔王を倒すために旅に出ることを決意したのである。

その日から数日の間、僕は二人と共に修行をしてその途中で水とリリアナさんは、それぞれの戦い方を僕に見せてくれたのであった。そうすることで僕は二人の実力を理解することができるようになり。それから僕と、リリアナさんがこの国の王様に会うことになったのだがその王様は僕達を歓迎してくれると同時に、なぜ僕達の世界からやってきたかという質問をされるので、リリアナさんと、僕は、正直に僕達が訪れた世界には魔物がいることや僕達以外にも勇者と名乗る人たちが存在していることなどを説明する。そのことで王からは異世界召喚についての話を聞いたのだけど、そんなことをされたところでどうしたら良いのだろうかと思ってしまい。僕はとりあえず、元の世界に帰れないかどうかを確認するため一度、水に聞いてみると、そんなことはないらしく、リリアナさんと水から説明を聞くと、元の世界とこの世界の空間をつなぐ扉がある場所まで僕を案内してくれることになり、その場所まで向かうのだった。

リリアナさんと水とリリアナさんのお父上の国王からの提案により、この世界で僕達が暮らしやすいように様々な便宜を図るという話になり、僕はリリアナさんの好意もあって、城の中に住まわせてもらうことになるとそこでも色々なことがあり。最終的には、水鏡さんが戻ってきた時には水鏡も一緒にここに来ることになったりするのだが。この時の僕は知らない。なぜなら、僕にとって水は友達以上、家族未満と言った存在なので水鏡は大切な人であるけど、その感情はどちらかと言えば恋愛というよりも、親が子に向けるような情に近い。しかしそれでも彼女に対しての僕の気持ちに変化がない。それはおそらく僕と彼女の過ごした環境が似ているからであると言えるだろうし、僕達は似た者同士だからこそ惹かれあっているのではないかと思う。ただ水鏡さんに対しては僕は恋はしないのである。その理由は簡単である。僕は彼女のことを愛しているが。水鏡のことも大好きであるから。そんな感じで、僕と水と、そして水鏡が元の世界に戻れるかどうかはわからないけれど、いつか戻ることができれば良いなと思いながら僕がリリアナさんと過ごす時間は終わりを告げるのだった。

ただその別れはとてもあっさりしたものでリリアナさんが水を連れ去った翌日にはもう元通りの生活に戻っていたのである。リリアナさん曰く。『君とはまた会いたいと思う』とのことだったのでそのことについては嬉しい限りでもあった。僕はそんなリリアナさんのことを好きになっていたのでその申し出は本当にありがたかったので。

「僕も、あなたともう一度会うことが出来たらいいと思います」

と返事をしていた。そのことがとても印象的だったので、この人の力になってあげたいという気になったのだ。そしてリリアナが水鏡と会えるようにする為に、僕と水とリリアナで水鏡の両親に事情を説明したりとかしたのだがその時の水鏡の様子は明らかにおかしかったので、何か理由がありそうなのは分かっていたが僕は聞かなかった。その方が、僕は何か水の為に出来ることがあるかもしれないと思ったので、僕達はその後、それぞれの日常へと戻っていった。ちなみにその水鏡と再び再会できたのはそれから二ヶ月ほど後のことである。僕はそんな水に、彼女がどうして僕の前から姿を消してしまったのかと尋ねると。水鏡は涙をこぼしながら僕のことを抱きしめて来て『寂しい思いさせてごめんね。私、怖かったんだ』という一言を告げたのだ。

その一言に、僕の中で、一つの疑念が沸き起こるが。そのことに気付かなかったふりをしながら僕は『うん、だからさ水には、これからも側にいて欲しいんだよ。僕と水鏡の二人がずっと一緒だったあの頃に戻ろう』と言う。すると水は涙を流しながら僕にキスをして来ると。『私、今度こそ君のこと絶対に幸せにして見せるから』と言い出したので、僕は嬉しく思ったものの水に対して『僕は水鏡が好きだ。それに、水だって、水月ちゃんのことが好きなんじゃないの?』と告げる。

その問いを聞いた瞬間水は目を見開いて驚いていたが。すぐに笑顔になって、僕の手を握ってきたので、僕は安心して水と仲良くすることにした。ただ水の方にも僕以外の恋人ができたようだ。その相手というのが僕の友人でもある黒髪の美女である天海(あまみ)

真咲(まさき)

であり。二人は仲が良いみたいである。そんな二人の関係を邪魔しないように僕と、リリアナさんは距離を取ることにするのだけど。

リリアナさんが、そんな時に突然こんな言葉を漏らすのであった。

「ルクスと初めて会った時の事を思い出すのじゃ。我もリリアナもまだ子供であった。それ故にリリアナは、ルクスが大人になるまでの間は一緒にいることを望んでいた。それがどうであろう?いつの間にか、ルクス殿は大人の男となっていた。しかも我を魅了するほどの美貌の持ち主となり。さらには、水殿や真咲と、深い関係になってしまった。そのせいで少し嫉妬心が出てしまっただけなのかもしれぬ。しかし我は諦めるつもりはないのだよ。ルクスと水殿と結ばれようと。その可能性はあるのだと、信じてるからのぅ。我が惚れたルクス殿はそういう人なのではないかと思えたから。だからリリアナは必ず、ルクスに認められるようになってみせるのでな」

とそんな風に彼女は言ってくれていて、僕としては凄くありがたいことなのだけどリリアナさんは一体僕をどうしたいのだろうか? リリアナさんが僕のことが好きで、そんな僕の傍にいたくて努力しているということは分かるのだが僕としては何もして欲しくないとしか思えないのである。でもリリアナさんはその辺りのことはあまり考えてくれないらしい。

そうやって僕とリリアナさんはしばらくの時を共に過ごしていたのであった。

そんなある時のことだ、リリアナさんは突如こんな話をし始めた。なんでもリリアナさんの一族は代々とある女性と結ばれることになっているらしく。リリアナさんの祖父に当たる人も祖母に当たる人と恋に落ちたのだということを。そんな話を聞いている内に僕はあることを思い出してそのことをリリアナさんに聞くことにしたのだった。

それは、この世界の神様と呼ばれる存在のことであり。この世界には三柱の神様が存在していてそれぞれを『創造の神』と『維持の神』『破滅の神』と呼ぶのだそうだ。そう呼ばれている神の名は聞いたことがあったが僕はその名前を知らない。そこでそのことについてリリアナさんが教えてくれたのだが、どうやらこの世界の神々の名前は全て、僕達の世界で伝えられている名と同じであるようで、僕達が普段呼んでいる神様の名前も同じ名前のようである。

この世界に来た当初、この世界の王様である水鏡さんのお母さんが『水には特別な力があるのですがその力が強すぎて危険なのでこの世界で平穏に過ごして欲しいです。そしてあなた達三人は、私の家族だと思っているので困ったときはいつでも頼りにしてくれて構わないですよ』と言ってくれたのを覚えているが。その水の力と言うのが水は神様と契約を交わすことができるということだった。

水の能力についてはその話が終わった後にリリアナさんから聞いていて。契約した水神の力は水鏡の体内に宿るとのことだった。ただ僕はその時、神様の力とやらがどういう能力なのかまでは聞いていなかったのだが。リリアナさんは知っているらしく僕とリリアナさんが出会った後に、その力を確かめていた時があったのだが。リリアナさん曰くその水の力というのは、リリアナさんに好意を寄せていた男が持っていたものらしい。どうせ、そいつらは、自分達の欲望を満たすためだけに、その力を使おうと考えていたのだろうけど。リリアナさんはどうもその力で助けられたことがあるらしく、それ以来リリアナさんはこの水の力で他の人間を守れるようになりたいと思うようになっていき、そのために自分の身を捧げても良いと思うようになったという。

そしてリリアナさんは僕のことを守るのが水の力を使う条件だというが、僕からすれば、水はリリアナさんのことを助けようとして自らを犠牲にしてしまったわけなのであまりいい気持ちはしなかったのだけど。そんな僕を見たリリアナさんは悲しそうな表情を浮かべて僕を見つめてくる。

その視線を受けた僕は何も言い返すことができずにいるとそこで水鏡の声が聞こえる。その水鏡は僕のことを見つけてこちらにやってきたのだがその姿はとても綺麗になっていて。リリアナさんと同じ様な容姿の美少女になっていた。

「あれ、もしかしてそこに居たのはルクスくんだったの?」

「はい。僕も少し前まで、この国に来ていたんです」僕は彼女の姿に見惚れながらそんな言葉を口にしていた。その水鏡の言葉に対して僕と水鏡の様子を見守りながらリリアナさんも嬉しそうな顔を見せており、僕とリリアナさんの二人は同時にお互いの顔を見ることになるのだが。そのことで僕は何とも言えない気持ちになっていたのだ。ただそれでも水鏡と一緒に居る時間は本当に楽しく、その時間を過ごしていくうちに僕は水鏡に対して恋心を抱いてしまっていた。

そんな水鏡と僕が出会ってから、しばらくして水鏡の父親が、その母親と結婚するという話になり。それから数年後に水鏡と母親は結婚し、水鏡夫婦が僕の家に住み込むことになるのだ。その時には既にリリアナも、水月ちゃんのお父さんと結婚をしており。そのおかげで僕の家には現在、水鏡と水月ちゃんが住んでくれていることになっており。僕としても二人とは本当に仲良くさせてもらっていた。

水月は僕にとって妹のような感じでもあり。とても可愛がっている存在である。ただ水鏡は、何故か、僕のことばかり気にかけているような態度を取ることがあるのでそのことについては少し心配であるのだが。僕に何かできることはないかと考えたりして水に頼んだのだがその度に断られてしまうのである。僕はそんな二人の仲を取り持つ為に必死で行動したりしたけど、そのことは僕にとっては嬉しいことばかりでもあったけど、そんなことをしている間に僕はリリアナと結ばれることになり。その後、リリアナとリリアナのお父さんの知り合いである黒髪の女性と結婚してしまったのであった。

ただ僕とリリアナが結婚した後でも、水鏡とリリアナの関係が上手く行くことはなかったみたいだけど、それは仕方ないことなのかもしれないと思っていた。

そんなある日、突如現れた少女は。『私、あなたのことが好きなんだ。お願いだから私の恋人になって欲しい』と言ってきた。その声があまりにも真剣なものであったせいか。僕は、彼女の言うことに素直に従ってしまった。

「ありがとうルクス君。それでこれからどうしようか?」

そうやって彼女は微笑んでいたのだった。その彼女の名前は天海 真咲。僕は彼女から告白されたその日、水月と水鏡には内緒で彼女に、恋人としての付き合いを始めるのであった。その真咲は、見た目は水鏡よりもさらに幼い姿をしており。背もかなり低いので、小学生に間違われることも少なくないので、彼女は少しだけコンプレックスになっているらしいが。僕からしてみればとても可愛いので問題はないと思うのだが。

しかし僕は彼女が何故僕のことを好きなのかよくわからない。僕と真咲が出逢ったのはこの王城での宴が初めてなのだが。その時はお互いに名乗り合ってはいなかったはずなのにどうして僕のことを知っていたのだろうか? 真咲がこの世界に来てから数日ほど経過した頃に僕達は再会することになったのだがその時には僕はすでに彼女と恋人関係になってしまっていて、そのことを、僕とリリアナと水月に知られることになったのだけど。三人はそんな僕を見て驚きの表情を見せていた。だけど僕は特に何も言わず黙っていたんだけど。水月は僕の手を取ると、『ルクスは、お兄ちゃんだけど、お姉ちゃんの彼氏なんだね』なんて言い出して。リリアナがそれを止めるように言ったが。そんなリリアナを僕は睨みつけてしまい。

「ルクス殿は怒ると怖いのじゃなぁ。普段は優しげに見えるのじゃが」などと呟きながらリリアナは一歩後ろに下がった。

それからというものの、真咲と水鏡の仲が上手くいくことはなく。真咲の方は、僕のことを大切に思ってくれるようになっていたのだが、そんな真咲は時々水鏡を責めるような目つきをするようになったりして、それを見ている僕は胸が痛むこともあった。しかしそんな時に限って真咲は、僕の前でだけはいつも通りの姿を見せていてそれが更に辛かった。

それから数日後にリリアナの友達の女の子達が集まってパーティーを開くからとリリアナに言われて。その時に、リリアナから、真姫に僕の正体を明かしてもいいと言われたのでその通りにすることにしてみたのだが。そんな僕の話を聞いたリリアナの友人である天音さんと水鏡は凄く驚いていたのでリリアナに確認を取ってみるとどうやらその二人が、僕の幼馴染だということが発覚して、僕と水鏡、リリアナの三人の会話を聞き終えた後に天音が泣き始めてしまうと、それにつられて水月までもが泣き始めて。

僕はそんな光景を見ながらも僕は、こんなに辛い気持ちになるなら、いっその事、全て打ち明けるべきだったと今更ながら後悔するのであった。そして僕がこの世界に召喚されて三カ月が過ぎた頃に僕は真姫と結ばれることとなったのだが。そんな幸せを感じていた僕のところにリリアナが現れて僕達にこう言ってきたのだ。

『この世界にいる限りは平穏な生活ができるのですよ。ですから私の力を貸してあげましょう』

と僕に囁いて僕の額に手を当てたのであった。僕はその瞬間に僕の体に不思議な力が入り込んできて僕の体を変化させ始めたのだ。それは一瞬のことで僕自身には何が起きているのか分からなかったけど。リリアナ曰く。僕は人間ではなくなり神としての存在になったのだということを告げられた。その言葉に、最初は信じられなかったが。僕は自分の姿を確認したところ、どうやら僕の姿は人ではなくなっているようで、リリアナ曰く、その姿が僕達の世界で知られている神と呼ばれる存在そのものなのだと言うので僕は、自分が人間でなくなってしまったのだと自覚した。そして僕が人間ではないことを知ったリリアナはその日から僕のことを今まで以上に気遣ってくれるようになり、そして、その日以降、リリアナも少しずつ変わっていき、水月ちゃんに、自分勝手だと言われても全く意に返さなくなっていた。そしてリリアナも僕の前だけでは、子供のように甘えるようにもなり。僕が水鏡に浮気をしていたことを知ってもリリアナは全く動じることなくむしろ、嬉しそうな顔を僕に見せてくれたのだ。ただその水鏡が僕に助けを求めてくると僕は水鏡を慰めようとはしなかったのは当然のことだろう。水鏡のことを僕は、そこまで愛していないし、ただ水鏡は僕に対して特別な好意を向けていただけに過ぎないから。そのことで僕は水鏡から罵られ殴られたりしたが、水鏡がどんなに酷い言葉を僕に向かって言っても、僕は全然平然としていた。そんな僕の様子を見ていた水鏡が涙を流していたが僕は水鏡に一言だけ伝えたのだ。

お前みたいな女とは、もう二度と関わり合いにならない方がいいだろうし関わる気にもならないし。そもそも、最初からお前のような奴なんか大嫌いだったからと言ってやった。僕としては本当に嫌っている相手と関わっていても意味などないし、そんなことで無駄な時間を過ごしたくはないので。僕はそんなことを言うと水鏡はその場から離れていき、僕達の前から姿を消した。

僕がそんなことを伝えてからもリリアナが何か言いかけたが。これ以上リリアナと一緒に居たら僕はきっとリリアナを傷つけることしかできないと思い、その気持ちを押し殺して僕は王都を離れることにしたのだった。そのリリアナはとても悲しそうな表情を浮かべていたので心は傷んだけど僕はそれでも構わないと思ってしまったので仕方ないのだと思う。

そういえばあの時、水鏡は泣いていたので水の能力について知ることは結局出来なかったけど。水の神装を持っているのだから、その内知ることができる機会があるだろう。そう考えながら僕は王城を離れると、リリアナのことが気になりながらも僕は、この世界から離れることを決意し、水月のことが少し心配だったけど。僕がいない間は、僕に化けているリリアナが側にいるのだから大丈夫だろうと勝手に思い込んでいた。

しかしリリアナが、その日の夜に僕の前に現れることはなかった。その理由を僕は、理解することができなかったけどリリアナに何があったのか、その日、僕達は一緒に過ごせないまま夜を過ごすことになる。リリアナの身に何が起こったのかはわからなかったけど僕はその日を境にしてリリアナに会うことができなくなってしまう。

そして、リリアナから別れの言葉を聞いた僕は涙を流すのであった。

僕達が王城を去ってからしばらく経った頃の話だが。天音さんは、水鏡との一件から心を閉ざしてしまったらしく、水鏡を避けるようになったらしい。

僕と真咲の仲が順調だったことを話すために、水月ちゃんのお父さんと、お母さんの二人と一緒にお茶をしている時に天音の両親もその場にいたが。僕の両親は僕の事情を全て知っているので、何も口出しをしてこないが。水鏡の両親の方は、僕が異世界から来た存在だというのに一切気にしないで接してくれたが、水鏡が、天音さんと上手くいってないことを嘆いていたのを僕は聞いていた。

ただ、水鏡がどうしてそんな風になっているのかが僕には理解できなかった。だって天音を好きになったのは自分自身なのであり。それは水月も同じことであるはずなのに。そんな水月をどうしてそこまで嫌うことができるのか。それを理解することができなかったのである。しかしいくら考えてもその答えを見つけることはできなくて。そのことについては諦めるしかなかった。

それから数ヶ月後。僕は、ある噂を聞きつけたのだがそれはこの世界に『聖魔竜 ディアボロス』が復活しているというものだった。

『おい、そこの女。我の力を借りたいとかぬかしていたがどういうつもりだ?もし貴様の願いを聞かなければ殺すと言ったらどうするつもりなんだ?』

私はルクス君の為なら命なんてどうなっても構わなかったから、そんな脅しなんて怖くはなかった。そしてルクス君を助けるためだけにこの世界の人達を敵に回すのは覚悟は出来ていたのだけどそんな私を見た『ルミナ』と名乗る少年は、私に呆れたような態度を見せてきた。

そして彼はこう言ったのであった。

「お前は馬鹿か?この俺に殺されていいとか言うんだろうがよ。俺も、あいつらのことが憎かったんだよ。でも今は違う。俺は、お前達のために動いてやるつもりはない」と。

そのことにショックを受けたけど。だけど、ルクス君の為を思えば私の行動なんてどうにでもできる。

だから私は、自分の意志を貫くことに決めたのである。すると、『ルミナ』という男は、その私の様子を観察すると。私の体を拘束しようと襲いかかってきたが私の方が強いから、それを跳ね除けて『ルミナ』の首を掴む。

私が本気で力を出せば『ルミナ』の命はここで消え去ることになるかもしれない。しかし、彼の力が、この世界では異常に強すぎるということだけはわかった。『神蝕狼』が、彼を前にして動けなかったのが証拠でもある。

だから『ルミナ』の機嫌を損ねれば私は確実に殺されることになる。その恐怖を感じ取ったのと同時に『神蝕』が私の中に戻ってくるのが分かった。そして、それを確認した後に、この場から離脱しようとすると『ルミナ』は、そんなことをさせないようにと再び私を攻撃してきたが。そんな攻撃は全て回避したのだが。その時、自分の力の強さに驚いたのだ。私の力も、この世界で通用するほどまでに強くなっていたのだ。そしてその力を使い『神蝕狼 アルティメイトフォースウルフ』に変身してから私は、ルミナムに襲い掛かったのである。

『神喰らい』

それが今の私の力だった。そしてその力で、私は、この世界に蔓延る悪意を取り除くことにしたのであった。そして私はこの国の人間達を次々と殺し始めたのであった。そんな時、一人の男が『神域絶剣 デュランダル』を携えて私の目の前に立ちはだかる。

「なにやってやがるんだ。『神獣 アルティメッ卜フォッグワイバーン』!」

その言葉に反応する。

「その声。『ルミナ』ですか。貴方が『幻精 フェアリーリング』と『真祖ヴァンパイア』に『機攻殻剣 エクスカリバーソードセカンド』を与えた者だったのですね?」

そんな私の問いかけに、その人物は答えない。しかしその沈黙は肯定を意味するのは、なんなくわかる。なので、そんな彼を殺すことにする。そのつもりで彼に襲いかかろうとしたのに彼はその攻撃を、軽々と防いでみせたのだ。そして私に、言葉を掛けてきたのである。

『なあ、その力を使うってことの意味をお前なら分かってると俺は思ってたんだが。それで良いのか?』と聞いてきたのだ。そんな質問に意味が分からないと思いながらも私は、言葉を発した。

「意味が分かりません。何を言っているんです?あなたは」

その言葉を聞いて、目の前にいる少年。ルミナム君は笑ったのである。そんな彼の顔は今まで見たこともない表情で。どこか楽しそうにも見えた。まるで玩具で遊んでいる子供のように無邪気にも感じられたので私は警戒しながら身構えるが、彼が、こんな風に笑う姿を初めてみたのに、少し驚いてしまう。その隙を突いて、私は攻撃を受けてしまったのだ。しかも手加減されていたようで。ダメージは、それほど無いが。

油断できないと思った。だからすぐにその場から離れるが、やはり簡単に避けられてしまう。

私は『神喰らい』の力を使って戦うが、何故かルミナ君の攻撃だけが当たらずに。私の体には次々と傷が増えていったのだ。そんな戦いを続けていく内に段々体が動かなくなってくると。いつの間にか。私の近くにいたのは、私の知っている人の姿になっていたのだ。その人物を見て、驚愕するが。そんなの関係ないとばかりに、私は、ルミナ君に、襲いかかったが。その攻撃も難無く交わされてしまい、そして、今度は反撃をされるのである。それも何度も。

しかし不思議な事にルミナ君は私の体を気遣ってくれていて、怪我を負うのが嫌なのであれば、私を逃してくれないかとも言ってくれたのだ。しかしそれでも、私の意志を変えることはできない。

そして私は遂に意識を失いかけた。そんな時に、私の中で変化が起きた。私は、その力を完全に掌握することに成功した。そしてルミナ君との戦いを終わらせる為に私はルミナ君の体に触れようとしたのだけど。それを阻止しようとするルミナ君が何かをしようとしたけどもう既に遅く。その時には既に、私の力でこの世界を改変していたのだった。

そしてその次の日。この国にいた者達は全員、姿を消していたことに、皆驚くが。それは、当たり前の事であり、この世界は、既に別のものに変化していたのである。そして私は、『この世界の神になった証である冠 オーバーロードギアを手に入れた。それからというもの、私の行動はこの世界に住む者達に恐れられ。誰も私の前には姿を見せなくなってしまった。だけど私は、そんなことは気にしなかった。なぜなら私はこれからもずっと、ルミナ君のそばに居続ける事ができるから。

ルミナ視点 俺は、『幻精 アルキオプデスティア フェアリー』という『神化』状態の妖精の能力を自分の身に憑依させることでその能力を手にいれることができる。『幻精 オーバーレイ』とは、俺自身の体の『精霊使い』の能力のことだ。『機竜使い エクストルーパー』が使う『神装』を使えるようになるのが俺の能力。

つまり、ルキナは『神蝕狼』の能力を身に宿したことになるわけだ。それに気づいた俺はルクス達が帰ってくるまでの間、この世界にある全ての遺跡を回ることを決めていた。その理由は簡単だ。この世界にはまだまだたくさんの遺跡が残っているからだ。その中には俺の求めているものがあるかもしれないと考えたからである。そして俺は、今この世界で起きている事態を打開するための方法を見つけるためにこの世界に存在するあらゆる遺跡の調査を開始するのであった。

(俺の力だけで対処出来る問題じゃねえかもしれねえけど、俺は絶対にあの時の後悔は二度と味わいたくはねぇんだ)

俺がそんな事を考えながら遺跡の中へと足を進めるのであった。すると俺はある違和感に気づくことになった。それは俺の目の前に現れる遺跡の反応が全て同じものだったのだ。そんな現象がなぜ起きるのかはわからなかったけどとりあえず、先に進むことにした。そして奥深くへ進んでいくと、そこには一台の黒い機体と。それに乗る黒髪の女性がいたのである。

そして、その女性のことは俺も知ってはいたがどうしてここにいるのか分からなかったのである。その女性の名はルミナといい、この世界とは別の次元の世界から来た『幻神獣』という種族の一体だったのだけど、彼女はなぜか自分のことを、私と言っていてそのことについても詳しく調べる必要があるなと俺は思い、話しかけたのだが。

「ルクス君だよね? やっと見つけることができたよ。私ね?この世界に来て、貴方にもう一度会いたいと思ってたんだよ? でも貴方ってばどこにもいないし、本当に心配してたんだよ?」

そう言って俺に抱きついて来たのである。しかし、そのルミナの行動に、驚きを覚えつつも。この世界はどうなっているのかが知りたかった俺はルミナに聞いてみた。その質問をした後。ルミナが俺がこの世界に迷い込んでしまった原因を説明したので。この世界の現状について色々と聞くことができたのであった。

ただ、俺が『幻神機』と呼ばれる『機神』に乗ってこの世界にやって来たと伝えたら、どうも信じてもらえないようだったので俺は『神域絶剣 デュランダル』と『機攻殻剣 エクセリオンブレード』を顕現させたのである。

そしてそれを見たルミナは。俺が本物のルクスであると認識してくれたのである。その後でルミナから色々な話を聞かしてもらうことになる。そしてルミナがこの世界で起きてる事件についても説明を受けた後。俺たち二人は協力することを決める。ルミナの話では、『機神』をこの世界で召喚することは可能だと言っていたのだが、実際に『神蝕狼』と『幻精 アルティメッ卜フォッグワイバーン』という『神化』を発現させる為に必要な『神装』を所持していないと『機竜解放』の力が使えなくなる。と聞いていたので『神蝕狼』と『真祖ヴァンパイア』は俺が預かる事になるのだが、その力を借りるために俺はルミナと仮契約を結ぶのであった。

(まぁ、この程度の力があれば大抵の事はどうにかできるだろうしな。ただこのルミナムって男も相当な実力を持っているはずなんだがなんであんなに弱体化してるんだ?)

という事を疑問に思うが、それについては触れないようにしたのだ。何故ならルミナ自身がそれを望まないと判断したからである。そして俺はルミナと行動をともにすることにしたのだけれど。そんな俺に対してルミナは『ルクス君。私と一緒に来てくれるんだね?嬉しいよ』と言い。そのまま俺に抱きつこうとしていた。だけど、その行動を止めさせ、ルミナにお願いをしたのだ。

「なあ、頼みがあるんだけど、しばらくその口調はやめてほしい」

その言葉に、不思議そうな表情をしたがルミナは理由を聞いてきたので、その理由を話してやるとルミナはその提案に同意してくれたので。しばらくの間、その話し方を変えてもらうように頼んでおいたのだった。そんなこんながあって俺とルミナは一緒に行動することになったのだ。

それから、数日が経ったある日のことだった。ルミナに遺跡調査の依頼がきており、それが終わったら合流しようと話していた俺はルミナを探しまわっていた。するとルミナの姿を発見したので声を掛けようとするがルミナが知らない男性と会話をしているのを目撃してしまった俺は思わず物陰に隠れてしまう。すると、ルミナの体が発光を始め、それと同時にルミナの様子がおかしくなっていく。そして次の瞬間には、ルミナの姿が、ルミナに似た誰かになっていたのだ!しかもその相手であるルミナに似ている人は、ルミナに向けて攻撃を仕掛けていたのであった。

ルクス視点 その出来事を目の前にした俺は一瞬何が起きたのかがわからず呆然としてしまうが我を取り戻しすぐにその二人の元に駆け寄り攻撃を繰り出そうとする謎の人物の腕を掴むとその腕を握りつぶす勢いで力を込める。その人物が悲鳴を上げるが気にせずに今度はルミナのことを助けようと動くがそれよりも早くルミアはルクスの背後に回っておりその手に握られた大鎌によって切り刻まれていくはずだった。

しかしそこで異変が起こる、それは俺の持つ『創造主の遺産』、『創造者』の能力の一つである無限増殖だ。そして、俺の周りにあった瓦礫は全て砕けちり、そしてそこから現れたルミナそっくりの偽物はその場から消え去っていた。それを目の当たりにして俺は驚くしかなかったのだけど、ここで立ち止まっている暇はないと思ったので、まず、一番最初にルミナに化けた人物に攻撃を加えたルミナムと呼ばれていた少年の元に向かうことにした。そしてその少年にルミナのことを託そうとしたのだが、ルミナは、何故かルミナムを自分の元に引き入れようとしたのである。

そして、ルミナの話によると。ルミナに似ていた人物は『闇使い ナイトメアドラグーン』と言う存在らしいのだ。

俺は、その話を聞いた時に『機竜使い』の能力を発動させると。ルミナの手には『真紅竜 ドラグーネウス』の武器である、『ドラゴーソード』が顕現したのだった。それでルミナの体を貫くとルミナがその場に崩れ落ちる。その事に驚きつつ俺は倒れているルミナを抱き上げると、そこに突然一人の女性が俺の前に現れた。その女性は俺の顔を見るなり笑顔になると。その手に持つ扇を振ったのだった。そしてその扇の攻撃を受けてしまうのだった。そして俺は地面に落下したのだが、俺は立ち上がることができなくなっていた。そしてその女性の顔を見ると、俺の記憶の中から何かを思い出しそうになるが何も思い浮かぶことはなかったのである。すると、俺の目の前に突如として大きな門が現れた。それはこの世界の外に通じる門のように見える。すると、ルミナは立ち上がり、この世界の外に俺を連れて行こうとするが、それを阻止するために俺に止めに入るのだが、俺はルミナに攻撃をすることが出来なかったのだ。そして、そのまま俺とルミナはその世界の中に入ってしまうとそこには巨大な塔がありそこには一人の老人と一人の美しい女性が立っていたのであった。

俺達は、その後から追いかけてきた謎の女と戦いになるのだが。俺はその女の持っている武器の圧倒的なまでの威力の前に全く歯が立たずにやられてしまうのであった。そして気がつくとルミナが俺の上に覆い被さるような形で守ってくれていたが、それも無駄な足掻きでしかないことはわかりきっていたので、俺は覚悟を決め目を閉じルミナに最後の別れを告げることにする。

(俺はお前との約束を果たすことができない。ごめんなルミナ、結局最後まで俺は無力だった。でも、もし叶うなら、俺はまたあの学園に戻りたいよ。でも無理だよな。もう時間がない、せめてもう一度だけでいいルミナにあいたかったな)

そして俺が最後にそんなことを考えながら目を閉じるのであった。

すると、俺は意識を失うのだった。そして次に目覚めた場所は。俺はベッドの上だ。

(あれ?俺は死んだはずじゃ?いやまぁ死んでるんだけどさ)

俺はそんな事を考えながらあたりを見渡すと、どうやらここは保健室のようだとわかる。しかし、なぜここに俺はいるのかがわからない。俺にはまだルミナミがこの世界でやり残したことがあったような気がするがそれさえも覚えていないのだ。そんな事を考えながらもしかすると俺は、あのルミナと名乗る女性の術にかけられていたのではないかと思うが確証が持てないのでどうしようもない。なので、俺はとりあえず部屋を出てみることにした。するとそこは、先程とは雰囲気が違う場所だったのである。そしてそこを通り抜けると、見慣れた風景の場所へと出ることが出来たのだ。その光景をみて、この場所が自分の通っていた学園だと気づく。だが、どうしてそんな事が分かるかというと、俺は自分がどうしてここに飛ばされたのかを思い出すためにも学園を歩き回って情報を集める。

するとやはりこの世界は俺の住んでいた世界ではなく別の世界に迷い込んでしまったのだと俺は理解をする。そして俺は、先程の場所に戻ってきたのだがその時には既に誰もいなかった。俺の知っている人がこの世界に来ていないのかを確認してみると、その人達がどこに行ったのかを知ることが出来るかもしれないと思ったからだ。

しかし、どうやればそれができるのかが分からなかった。なので俺はとりあえず、ルミナの使っていた力を借りてやってみる事にした。俺が持つこの世界に来る前に存在した唯一の力だ。それを俺は発動させる、『幻神獣』の力を解放するために使う力を。

『真紅竜 ドラゴナークドラグーン』

俺がその言葉を口にした瞬間。頭の中に何かが入り込んできたのだ。それこそがルミナから聞いていた『機神』の力であり、今使えるようになったということを理解したので早速使ってみることにする。まず最初に確認しないといけないことがある、それはルミナのことを探す必要があるのだ。その為にまずはこの学校のどこかにいるはずの『幻神獣』を見つけることにしたのだ。そうすることで俺の知りたいことを知ることができるだろうからな、だから俺はこの校舎をしらみ潰しに探索する事にするのである。

俺が校舎の隅から隅を探そうと決意したところで後ろから肩を叩かれる。そして振り向くとそこにいたのはクラスメイトの三和音唯さんが笑顔で手をこちらに差し伸べてくる。

「ルクス君!探し物はこれかな?」

「ありがとうございます。助かりました。ところでなんでこんなものが」

俺は唯さんの手に握られている紙を見て質問をした。それを聞いた彼女は、何故か恥ずかしそうな顔をして答える。

「だってこの辺りで『機竜使い』が戦うような音が聞こえてきたからね。もしかするとって思ってね。そしたらこれを見つけちゃって」

彼女の手に握られていた紙は俺達が持っていた地図だ。つまりは、彼女もこの地図を持っていたことになるのだ。その事を疑問に思っているとその事を彼女が口にする。

「私達もこれを使って移動していたからね」

その言葉を聞いて疑問に思うがそれを気にしている暇はない、俺は急いでルミナを探しに行こうと走り出すと俺を追いかける形で唯さんとアティ先輩とクルルシファーさんまで俺についてきたのだ。

俺はそれを確認すると共にこの三人のことも心配だったので一応忠告をしておくことにするのだった。そして俺がその説明を終え三人ともついて来るという意思を示すのでそれを確認した俺は全力で駆け抜けていく。

そしてその途中、唯さんの方に目をやると同じように走っているのだけど何故かそのスピードは段々と落ちていき最後には俺の背中を眺めるような形になっていた。俺はそれに違和感を感じつつ、さらに走るとルミナの姿を発見することに成功したのである。俺はすぐに彼女に話しかけると彼女は驚いていたのだがルミナと俺の顔が似ていたことが災いしそのまま連れていくことになったのだ。

それから俺はルミナの体を調べることにしたのだが、特に異常があるようには見えないが俺は気になる部分を見つけたので、その部分を指差すとそれを見たルミナの顔が青ざめていく。その理由を聞くと、この体の持ち主の記憶では、ルミナの体が男だったから、らしい。そこでルミナは自分のことを僕と呼んでいたらしいのだ。俺は、ルミナに俺の服を着るように言いルミナもそれに従う。そしてそれからルミナの案内でこの建物の屋上へと向かうのだった。

俺とルミナとルミナムが屋上にたどり着くと。そこにはルミナによく似た人物と、先程ルミナに攻撃をしていた謎の人物がいた。しかし俺達の方を警戒していたのか攻撃は飛んでこない。するとそこで謎の人物と謎の人物と瓜二つの女性が現れる。そして、謎の人物はルミナムの方に近づくとルミナムの額にキスをし。そしてルミナのことをじっと見つめた。すると次の瞬間ルミナとルミアの顔に傷跡が残る。俺は、何が起きているのか分からずにその様子を見ていることしか出来なかったのだ。するとルミナムはルミナムに近づきこう言う。それは俺が今まで一度も聞いたことがないようなルミナムの言葉遣いだ。

ルミカはその言葉を聞き泣き崩れてしまうがルミナムはそれを無視した。その言葉の内容までは聞き取ることが出来なかったのだけど。俺はなぜかそのルミナムと言う人物を見ていると心の中で嫌悪感を抱いてしまうのだ。まるでこいつは俺と同じ臭いを感じるとでもいうかのように。

「久しぶりですねルミナ、会いたかったですよ。貴女は本当に美しく成長していてくれました。これで私がやらなければならないことはあと一つだけですが、それまでの間はお相手しますよ。さぁ楽しい時間をすごすと致しましょうか!」

ルミナと瓜二つなその女にルミナムと呼ばれた女は震えながら俺に助けを求めるが、俺はどうすれば良いのかが分からず立ち尽くすだけだった。

「お願いルミナ助けてよ、ねぇお願い。私なんでもするから!この通りだから」

俺はその姿を見ていてもたってもいられなくなる。それはルミナと瓜二つの顔で俺の好きな人の名前を呼び涙を流す女性の姿は俺にとって辛いものだったのだ。だが、その願いが叶うことはないだろう、ルミナがこの世界から元の世界に帰ろうとしていることが何よりの証拠であるのだから。

俺はそんなことを考えていたのだがそこで異変が起こる。ルミナの手には先程現れた『機竜牙剣』と呼ばれる大鎌があった。俺はそんなものは見たことがなかった。しかしそれがルミナの腕に装着されていることからそれがこの世界にあるということが証明されていた。そしてその刃の部分から炎のようなものが出ているのだが、ルミナが腕を動かすと同時にその部分がルミナに向かって伸びてきたのだ。そのことに驚きつつもルミナはその伸びた部分を掴んでその攻撃を弾く。しかしそのルミナの行動によって俺の目の前の光景に更なる変化が訪れる。その攻撃を弾き返されたことによる衝撃で吹き飛ばされたルミナは、ルミナにそっくりなその女性にルミナはぶつかるとルミナに化けたその女性は気絶してしまうのだった。ルミナはそれを見て少し戸惑っていたのだが俺はその間に、ルミナが手放したと思われるその大鎌を手に取っていた。しかし、俺はそれを持つことができない。なぜならそれに触れた瞬間、何かが自分の体に干渉するような感触があり、俺の中にある力を全て抜き取られてしまうようなそんな感覚に陥る。

(なんだ?一体どうなっているんだよ)

そう考えているとルミナから声がかかる。どうやらルミナは、ルミナの中に入っている人物が誰なのかわかったようだった。その話を聞いてみるとどうやらこのルミナの中にいるのがあのルミナの双子の姉だということが分かったのだ。しかもその人は『竜属』の中でも最強の存在である真紅竜ドラゴナークドラグーンの『機竜使い』であるとのことで。

俺はそれを聞いてかなり驚いたのだけど、ルミナの説明によりこのルミナの姉の名前は『幻玉鉄鋼ミスリル』の『神蝕竜』と呼ばれている竜だとわかる。そしてその『機竜使い』であるその『幻竜姫』が、俺が倒した『幻機核』の中にいると。だがその話を詳しく聞いていくと。この『幻機竜種』をこの世界に送り込んだのが、先程の謎の人物であったと、そういうことらしい。俺はそれを聞くと同時に俺は『機竜』に乗りその『機竜使い』と戦いその『竜使い』を殺すために動き出すのであった。

俺がルミナの『機竜』の『幻竜機装』に乗るとルミナは驚いた顔をしたが、すぐに俺がやろうとしていることに気づいたようで、何も言わずにルミナもそれに続くのであった。しかし、このルミナの体の中に入っていたという女性の体は相当衰弱しているらしく意識を取り戻す様子がない。そこで、俺とルミナでルミナの姉の体を抱えながら飛ぶことにする。しかし『神滅者』を起動させて飛行を行う俺と『神焉竜』の力を身に纏うルミナは一瞬で移動をすることに成功する。それから俺達は『幻機獣』の群れを相手にして殲滅していく。俺はルミナの体を気遣いつつルミナの速度に合わせるのだけどルミナの方はいつものように素早く敵をなぎ倒して行く。そして俺とルミナでその敵の全てを殲滅したのだがそこで俺はある疑問にぶち当たる。それはルミナの攻撃の仕方についてである。確かに『機竜使い』としての素質は、ルミナよりもこの人の方が高いのは分かる。だが、それを踏まえても、この人はあまりにも強すぎる気がしていたのだ。それに『竜』を召喚しなくとも普通に強いのである。

「どうして、そこまでの強さが」

「多分、貴方の想像通りですよ」

俺が思った疑問に対しての答えはあっさりと俺の耳に入ってくる。俺はそれに対して納得をすることしかできないのだけど、この強さの源になっているものが『竜』であることに間違いはないのだろうとは思うのだけど。俺にはまだ分からないことがあった。

「その『契約紋』は何なんです?」

俺はこの人が持っているものに疑問を持っていたのだ。何故ならルミナにもあったはずのものがその人の首元から見えないのに見えてしまっているからだった。

「この子は、私の愛娘でルミアと言います。ルミナムは私の可愛い妹ですが、私はルミナムをルミナに預けることにしたんですよ。だって、私がルミナムと一緒にいてあげたかったのでね。まあ結局、私は死んじゃったわけなので、意味のない事になってしまいましたけどね」

ルミナのお母さんは自分の妹の方を見ながら苦笑いを浮かべていたのだけど、それを見かねたのかルミナは自分の母を叱りつけたのだった。そして、自分の母親を殴ろうとするルミナムを押さえる。

そして、俺は、先程からルミナムの体が少しずつ透け始めている事に気がついた。それと同時にそのルミナムを見ている俺の目にも異変が生じ始め視界がぼやける。それは、おそらくルミナムの死期が近いということだ。そしてそのことがルミナの口からルミナムの母に伝わる。

そしてそれから俺とルミナムとルミカの三人は、この世界の出口を見つける為に探索を行っていたのだがそこで、突然、俺の前に謎の人物が現れる。しかし俺はこの謎の人物のことを何故かよく知っているように感じてしまったのだ。

「お前は俺と同じ存在だろ?何が違うんだ!」

「同じってどういうことなのですか? ルミナの体にあなたの体が取り込まれているのは分かりましたが、まさか、あなたも私達と同じようにこの世界での記憶を持っているのではないでしょうね!」

俺と謎の人物の会話はそこで途切れ、お互いに攻撃を仕掛け合う。そして俺が『機竜爪刃グランザード』を振りかざすが、相手は手に持っていた大剣でその攻撃を防ぎそのまま攻撃に転じたのだ。その行動を見て、俺は自分が今戦っている相手の名前と姿を確認する。

しかし俺はその瞬間、相手の姿を見たときに頭がおかしくなりそうだった。なぜなら、その人物の顔はどこか自分と似ていると感じてしまったからだ。それから俺は謎の人物との戦闘を行い続けることになる。しかしそれは決着がつくことのない戦闘。それは永遠に続き無限に思える時間。俺はその空間でひたすらに相手を攻撃し続ける。

そしてその繰り返しは、唐突に終わりを告げることになった。それは相手が突如姿を消したからである。

俺はそのことに驚くと共に警戒を解くことなく周りを探ろうとしたのだが次の異変が起こることとなる。そして俺は目の前の人物を見るとそこには、あのルミナミと同じ姿をした女性がいたのであった。

俺と『幻獣姫』、『神喰狼フェンリル』『神蝕龍クロナ』『幻鬼王ガシャラク』『幻玉鋼オリハルコン』『真紅竜ドラゴナークドラグーン』は、『幻機獣』を倒し続けていたのだけど俺達の前には、その敵ではなく『機竜』の『幻騎兵』達が押し寄せてくるようになっていた。それはまるで何かを守る為に立ち塞がるように俺達に襲いかかってきたのだ。俺は、その敵から感じられる圧力が尋常じゃなかったこともあり。俺とルミナの二人だけではどうすることもできずにいたのだった。だが、ルミナと『機竜使い』の戦いが繰り広げられるのを見て、ルミナが『機竜』に乗り換えることを考える。そして俺もそれに従うのだった。

『機竜』とは『竜』を人型の姿に落とし込み操れるようになったものであり、その力は計り知れないものだった。そしてその機体性能もまた、通常機とは比較にならない程高いものとなっているのである。『神機装』と呼ばれる『神蝕竜』の特殊兵装を纏い戦いを繰り広げるその『神機使い』の戦闘能力はかなり高く、俺が今までに出会った『竜使い』の中で、もっとも強かった『神蝕竜』と同等の強さを誇るのではないかと思うほどのものだったのだ。その力に驚きながらも俺は『機竜』の性能のお陰でその相手の攻撃を何とか防ぎながら反撃を試みるのだけど。しかしその反撃は全て受け切られてしまうのだ。

(おかしい。明らかにこの世界に来てからの身体能力は上がっていた。だからといって今の一撃を受けて無傷なんてことがあるはずがない)

俺はそんなことを考えつつ相手のことを睨みつけていたのだけど。どうやらこの相手には勝てないということを悟り。俺はルミナにその場を任せて逃げることを決意する。俺では絶対にかなわないと思ったのだ。だからこそこの『機竜使い』から逃げることにしたのである。

そして逃げようとする俺だったのだけれでも、その俺の前に立ちふさがるものが現れたのである。それは先程の、この世界に現れた時にあったあの女性が姿を現したのだ。彼女は俺の前に立ちはだかり道を阻もうとしていたのであった。俺は彼女をどうにかしようとするものの全くと言っていいほど歯が立たない。そして俺が苦戦をしているとそこに謎の人影が現れる。

「ルミナ!その男を殺しなさい!」

「嫌です。私はこの人と一緒が、この人とこれからずっと一緒に生きていきます。たとえお母様の命令に逆らうことになろうとも、私の愛する人が死ぬことは許さない。例えお父様に嫌われようとも、私に幸せをくれたこの人に私は付いて行きます。それが私の答えです」

ルミナは俺に駆け寄ってくると抱きついて来るのであった。

そして、俺はそこで意識を失った。それから次に目を覚ましたのは、俺の家にいるベットの上だった。するとその部屋の中に一人の人影が見える。それはルミナだったのだ。ルミナが心配そうな表情でこちらを見ており俺は体を動かそうとしたが体を動かすことが出来なかった。俺はその時になって初めて気づくのであった。俺がルミナに膝枕をされているのだという事に。そのことに気づいた俺は、すぐに起き上がる。するとルミナが慌てて声をかけてきたので。

俺は自分の体が大丈夫なことと、ルミナに助けてもらったことを丁寧に説明する。「ルミナが、俺を助けてくれたのか?」

「はい。その通りです。貴方が気絶している間私は、ずっと貴方の手を握っていました」

そう言ったルミナの顔が赤い。そしてその話を聞いていた俺の体にも変化が訪れていたのだった。

俺は自分の体の中に起きた違和感をルミナに相談することにする。そしてその相談に対してのルミナの答えは非常にあっさりとしたもので俺にこう話したのである。それは、俺とルミナの間に契約が結ばれたことを教えてくれる内容であり、そして俺の『神焉竜』の『神器』の能力の一部と俺の固有武装『神滅覇王ロードディザイア』の能力の一部がルミナに引き継がれたことを伝えてくる。そして最後に契約紋について説明を受けたのだ。

契約紋には、契約者以外のものに触れられた場合に、契約紋に刻まれている魔法式を発動させることができる仕組みがあり、それによりルミナは自分の命と引き換えに俺に『機竜使いの契約者リベル』としての力を貸し与えてくれるということなのだ。俺はそれを聞いて思わず驚いてしまう。何故ならルミナが俺のためにそこまでしてくれようとしていることに嬉しく思ったからだ。ルミナに無理だけはしないでくれと言ったのだけど、その答えは笑顔だけだった。

その笑顔を見ていた俺は胸の奥底で湧き上がる衝動を抑えることができなくなってしまったのだ。そしてルミナを抱き寄せるとキスをする。そして唇を離し。俺はルミナのことを見つめた。俺は、ルミナのことを愛しすぎていると自分でもわかっていた。しかし俺は我慢ができない程、ルミナムのことが好きになってしまったようだ。そしてルミナムにもルミナと同じ感情を抱くようになってしまいルミナのことを抱きしめたまま、ルミナに何度もキスをしてしまうのである。

それからしばらくして落ち着いた俺は、ルミナに対して改めて感謝の気持ちを伝えた後、ルミナと一緒に自分の家に戻ろうとしたのだがそこで、ルミナの姉がルミナムを預けにやって来たので。その事に俺は困惑していた。そして俺は、その姉の言葉を聞き流してしまった。しかし、その内容は俺の心をかき乱すことになる。それは、ルミナムを預けに来たのではなく、預けていたものを返してもらいにきたと言うような意味を含んだものだったのだ。

俺はその言葉を聞くと同時にルミナの手を引き家へと戻ったのだけど。俺達が戻ってきたときそこにはルミナムの姿はなかったのである。そして俺の目の前に突然、先程まで俺と戦っていた謎の女性が現れる。俺がその状況を理解する間もなく俺達の前に現れたその女性はルミナムのことについて俺に告げてくるのであった。その話の内容はあまりにも信じがたいもので俺は動揺を隠すことができずにただその女性を見ていることしかできなかった。しかしそんな俺を嘲笑うかのように謎の人物は、ルミナムは自分が連れ去ったと口に出すのであった。その謎の人物の名前は姫崎 彩という。その事を聞いた俺は急いでその女性のことを追いかけようとするのだが俺の足は既に動くことはなくその場に倒れてしまう。するとルミカは俺のことを気遣いつつ、姫咲姉妹と『神喰狼フェンリル』と『神蝕龍クロナ』と共に謎の人物が姿を消した場所に向かって行く。

俺とルミナはルミナの母親に呼ばれてルミナの実家へと向かうことになった。そしてルミナの家に向かう道すがらルミナは俺のことをずっと心配そうに見てきていたが。俺としてはルミナが側にいてくれているというだけでとても安心できていたので特に問題はない。だがしかしルミナの母親は、ルミナに、その実家に帰らせたかったらしく、俺の事をルミナに説得してこいと言い出してくる。

「えっとですね。私としてもルミナさんが心配なんですよ?だから、一緒に行かせてください。お願いします」「あなたは確か『幻獣王』の契約者。でも、それだけの実力があるならばあの子を守ることはできると思うのだけれど?それに、もしその『幻獣王』があなたにとっての邪魔になると思ったときは遠慮なくその力を使いなさい」

ルミナのお母さんからその様な言葉を頂戴したが俺はそれを断る。なぜなら俺自身が、その『幻獣王』との契約で手に入れた力のせいで迷惑をかけてしまっているからだ。だからその力を使うことはできないのだとルミナの母に伝える。すると、何故かルミナのお母さんから頭を撫でられる。なんともいい香りがした。

俺はその行動に驚くも顔に出さずにいると、ルミナの母は俺の顔を見て笑みを浮かべるとそのまま去って行ってしまった。そして俺はその後姿を見送ったあとに、俺の服の端を引っ張っている存在に気づいてそっちの方に視線を向ける。するとそこには恥ずかしそうにしているルミナが立っていたのだ。

「どうしたんだ?」「えっとですね。私がお祖母ちゃんに頭なでられているのを、見てましたよね?」

「ああ。でもそれがどうかしたのか?」「あぅ。私の事は気にせずに続けてもらって構わないです」

そう言って、頬を赤く染めたルミナは俯くのであった。俺はその様子に微笑みを漏らすとルミナを連れて歩き始めるのであった。ルミナの実家に向かいながらルミナとのデートを楽しんだ俺だったが、ルミナと手を繋いで歩いていたりする時にルミナのお友達と出会うことがあった。その相手というのがルミナと同じ学校の制服を着た二人の少女だったのだ。そしてその二人のうちの一人は先日俺にルミナが助けてほしいと願ってきたときに一緒にいた人物で、俺もルミナと二人で何度か会話をしているのでよく知っている人物である水橋(みずはし)

楓花

(ふうか)だ。

そのもう一人はルミナと同学年の黒髪の美少女で、俺もよく知る生徒会長の、橘 美羽(たちばな みう)さんだ。その二人は仲が良いようで、よく一緒にいることが多々あったのだ。そのせいなのかルミナはとても落ち着かない感じでずっと、チラッチラッとこちらの様子を伺っていたのだ。そしてその光景を見た俺は少し不安になってしまう。その表情を見る限りではもしかしたらルミナは俺よりも他の人のほうが好きなのではないかと、考えてしまったからである。

しかしルミナは俺の態度の変化に気づくと、慌てて弁解をしてきた。そして俺はルミナが俺と手を繋ぐことが嬉しくないわけではなく。俺に申し訳ないとおもっているのだと言うことを知ることができたので、俺は安堵のため息をつくのであった。そして俺はそのことにほっとしたのだけど、俺達のことを待っていたように話しかけてきた人物が居たので、そちらの方へと目をやる。

その人物というのは先程の二人が連れていたもう一人の友人で、名前は月見里(やまなし)

優奈香(ゆうなか)といいルミナとは幼馴染で、俺も何度かルミナの家で遊んでいた時に会っていて、お互いに挨拶をする程度には面識のある人だったのだ。そしてその優奈は俺がこの世界に来て初めてルミナの家から帰るときに、偶然ルミナと一緒のタイミングで帰ってきた人で、その事がきっかけで話すようになったのだが、それ以来たまにこうして声をかけてくれるのである。その事に俺は感謝しながらいつもの様に、優奈にも俺にルミナが付いてくる理由を簡単に説明すると、ルミナが、自分だけ仲間外れみたいにされてると思っているかもしれないので、今のうちに弁明をしておくことにして。俺は、三人を誘うことにしてみると意外にも三人とも付いて来てくれることになり。そしてルミナの案内の元目的地まで歩くことにしたのである。

俺はその道中で、ルミナの友人達のことを改めて紹介する為に俺のほうから順番に名前と職業を紹介していく。そして最後にルミナのことを紹介するとなぜか俺以外の皆の顔色が優れなかったのだけどその理由はよくわからなかった。しかしそこで俺がルミナのことを抱きしめるとその反応は一変して和やかな雰囲気に包まれたのである。俺はその事に首を傾げながらも、その場の流れに身を任せることにしたのであった。

俺は自分の『機竜』が暴走してしまった後。その現場を見に来た姉に事情を説明しようと家に戻ったのだが、その時になって初めて自分の体に起こった変化について疑問を持ったのだ。何故なら俺の体が明らかに縮んでいることに気づいたからだ。俺はその事に驚いてしまった。

俺はそこで姉に質問をしたのだが姉は何も教えてくれずに俺に対して抱きついてきてしまう。俺はその事について戸惑ってしまい思わず硬直してしまう。しかしそこで姉はいきなり泣き出してしまう。その涙を見て俺は更に混乱してしまう。俺がそんな状態に陥っている時。姉に連れられやってきた姫崎がその状況を目にすると、俺のことを睨んできたのだ。そしてその事に疑問を覚えた俺はその姫崎を凝視しているとその姫崎も急に意識を失いその場で倒れたのである。

その状況を見て俺が驚き、固まっていると、姉が俺のことを抱きしめたまま何かの薬を取り出して俺に対して口移しで飲ませてくる。俺はその状況に頭が回らずに為されるがままでいたが。すぐに俺は姉の行動の意味を理解した。俺に無理やり姉が作ったと思われるポーションを俺に服用させたのだ。しかもそれは、以前俺の姉が開発したポーションではなくもっと強力なもので。一時的にではあるが俺の状態異常を全て治療する効果がある物で。俺はそれを飲み込んだ途端に自分の体に起きてしまっていた現象が、綺麗さっぱり消え去り元に戻れたのであった。しかしなぜその様な物をわざわざ作ったのかがわからなかったのでそのことを訪ねようとする。

しかしその直後に現れた謎の男によって、俺はその答えを得ることはできなかった。その男は俺達に近づいてくる。俺達はその様子をただ見つめていただけだったのだが。次の瞬間。男は信じられないことを口にする。それは自分のことを、『機神バハムート』の契約者である『勇者』だと告げてきたのだ。俺はその言葉を聞くと同時に、目の前の男と戦うことを決めた。そしてその事を決めた直後に男が俺に襲い掛かってくる。

俺はその動きをなんとか目で追いながら攻撃を捌いていくのだが。あまりにも相手の速度が速く、防戦一方で何もできなかった。

それからしばらく俺は攻撃を受け続けたのだけど俺は、何とか攻撃にタイミングを合わせることで、カウンターを決めようとすることに成功する。その一撃で相手をひるませることに成功したのだけど。そこから先の戦いは、あまりにも一方的にやられてしまう展開が続いた。

まず俺が相手に使った武器は『聖剣アスカロン』と呼ばれる伝説の武器なのだが。俺はそれを使ってもまったく歯が立たず。相手は、自分の契約した『神獣王バハムート』の力を使いこなせるほどの実力があったので、俺は何度も吹き飛ばされてしまい立ち上がることすらできずに地面に這いつくばることになってしまったのだ。

しかしそこで『聖獣神オセ』の加護により、『魔素操作』と『魔纏』の力が発動して、『聖獣神バハムート』のスキルを使えるようになっていた俺は、ようやく反撃の糸口をつかむことに成功し、少しずつではあったがダメージを与えていき最終的には『聖装武装』という装備を使うことでなんとか、勝つことができたのだ。だが、相手が俺の想定よりも強かったこともあり俺は大けがをしてしまい、動けなくなってしまっていたので『機獣化』を解くと、その時に、何故か突然体の調子が良くなり動けるようになったのだ。

その事で俺は不思議に思ったのでとりあえず家に帰ろうとしたところで、姫咲と水橋の二人と合流することができて一緒に帰宅することになったのだった。俺はその途中にあることを考えながら、これから先どうしたらいいのだろうかと考えていた。というのも、今回の一件で自分が思っていた以上に力の差を感じてしまったからであり。このままのペースで強くなってしまえば確実に、俺の体は限界を超えて死んでしまう。それに俺には時間が無いのだ。早くこの世界から抜け出さないと俺は俺のままではいられない。だから今は少しでも強くならないと行けないのだ。だから俺としては、あまり時間をかけていたくはない。だからこそ俺は今のうちにもっと強くなりたいと思っていた。

そして、今日は姫咲と水橋と合流してから姫咲の家に泊まり、次の日を迎える。俺と姉とルミナは学校があるので一旦学校に行こうとしたら姉に、お弁当を作っといてあげると言われ、俺とルミナの分を用意をしてくれたので。そのお礼に朝ご飯を用意しておくことにする。その日は学校でルミナの様子がおかしかったのだが結局は理由を教えてはくれなかったのだ。

そしてお昼休みになると、姉と水橋と一緒に食べることになるがその際は、なぜか三人で俺のことを取り合うことになったのだがよく意味が分からなかったのでスルーすることに決めたのである。その後、俺は午後の授業を受け終わり放課後を迎えていたのだけど。その時に、俺のことをルミナの友達の楓花と美羽が呼び止めてきて、二人に俺達が泊まったことがルミナにバレていて。ルミナは怒って俺の所にやって来たのだ。俺はどうして怒っているのかが分からないでいたのだが。楓花がルミナの友達である優奈を連れてきておりその事が原因でさらに面倒くさいことになってきてしまった。俺は、ルミナに謝り。その日はすぐに帰ったのだった。

俺達は今、ギルドに向かって歩いていた。俺はこの世界にきて初めて冒険者になるために、ギルドに向かおうとしていたのである。

そうして歩く事数分、ギルドに到着した俺は、その中に入る。そしてその中に入るとそこには受付嬢がいたので俺はそちらに向かうと彼女は驚いた表情を浮かべる。そして彼女はこう話しかけて来た。

「あの、貴方もしかして新しく来た人?」と訊かれたので俺は正直に、自分は今朝この都市に来たばかりで。ここに登録しようと思っていると答えると。彼女は慌てて奥の部屋に通される事になった。そして、部屋の中で俺は彼女の事を紹介される。

その女性の名前はミリアナと言い。彼女は『魔族』でありながらもこのギルドの責任者だと言われ。俺はその事を驚いてしまう。しかしそれ以上に俺は、彼女がエルフ族の血を引いている事に一番驚くことになった。俺はそんな事を思っている間に、彼女は話を始めるのだが、その内容とはこの街のことや、これからのことについての話になる。そこで彼女から聞かされた内容はこの都市の現状であった。

俺の住んでいる国で、戦争が起きそうな情勢になっており、それに対応するためにここのギルドでも緊急の依頼を出していて。その依頼をこなすことができる人間を探しているのだということを説明された。そしてその報酬は一人あたりで金貨10枚を出すらしいので、かなり高額だということが理解できたのだが。俺にとってはお金にはそこまで執着がない為に。俺は別に金目当てで行くつもりはなかったのである。そしてそんな時である。急に扉が開いて誰か入ってきたので、何事なのかと思い俺は、そちらに顔を向けると。その入ってきた人は姫崎さんで俺の事を見るや否やすぐに俺のことを捕まえて、抱きついてきたのだ。俺はいきなりの出来事に驚き固まってしまうが。姫崎が泣いていることに気がつくとその事に意識を奪われて俺は冷静になった。俺は一体どうすれば良いのかわからないでいると、いつの間にか俺の後ろに回っていた姫咲が俺を姫崎から引き剥がしてくれる。

俺はそのことに心底感謝しつつ俺は彼女に事情を説明してもらうようにお願いをしたのだけど。俺が事情を聞く前に彼女はなぜかいきなり怒り出した。俺は何故そんな風に言われなければいけないのかがよくわからなかったので困った様子で彼女を見ていると、なぜか彼女は突然気絶してしまったのだけど俺はそのことに戸惑うだけで。特に何もすることができなかったのだ。

しかし俺に抱きついてきていた姫咲はその事に気がつき俺から離れる。すると今度は水橋がなぜか泣き出し始めて、俺に抱きついてくる。そして水橋は泣き止むことはなく。しばらくして、泣き疲れたらしく寝息を立て始めてしまう。

その光景を見た俺は、いったい何をしたいのかさっぱりわからなかったのだが。ここでやっと俺はこの状況について考える事が出来始めたのだ。俺はなぜこのような状況に陥ってしまったのかわからなかった。

俺が、この世界の状況を知らないせいで、なぜこんなにも面倒なことになっているのかが全く分からないでいると。急に扉が開き誰か入って来た。俺はその気配に驚き、その方向に顔を向けてその人物を確認すると。

そこには昨日の俺と姉が倒したバハムートの姿があり。俺はすぐに身構えて、臨戦態勢を取る。

「あ、やっぱり。私の思った通り、あなたってば、なかなか面白いじゃないのよ」とそのバハムートが喋り出す。

そのバハムートが俺に近づいて来るが。

そこで、姉が俺を庇う様に俺とバハムートの間に入ってくる。そしてその瞬間バハムートが消えたと思うと同時に、姉の首に手刀を当てようとする。しかし、姉はそれを避ける。しかし俺はその行動を見て少し疑問を抱く。なぜならそのバハムートは俺達とあまり離れていなかったはずなのに、姉に一瞬で近づき手加減無しで攻撃を行ったのに。姉に全くダメージが無かったのだ。その事で俺は何か違和感を覚えるが。その違和感をはっきりと確認する暇はなく、バハムートが再び姉に攻撃を仕掛ける。俺はそれを止めるべくバハムートに攻撃を行おうとするが。それよりも早く、俺が攻撃する前に俺の姉は反撃を行い。その攻撃はバハムートに効いたようで、彼は大きく吹き飛ぶ。その隙を突いた形で俺は『聖剣アスカロン』を使っての斬撃を放つと。それは見事に当たりバハムートは地面に倒れ伏す。

それから、しばらく時間が経ち。そのバハムートが復活する。そのことで、バハムートに勝てないと思った俺は。『聖剣アスカロン』を解除して。俺は素手でバハムートに挑む。バハムートはそれを見て面白そうな笑顔を浮かべたのであった。

俺とバハムートはお互いに拳をぶつけ合う。俺はバハムートの動きを見極めようと観察を続けるが、どうやら、相手は本気では無いようだったので。俺は相手を観察するために敢えて防御を行うと相手は、こちらの攻撃を防ぐのではなく避ける方を選択した。そしてバハムートは俺から距離を取って。バハムートは再び俺の方を見ると俺のことを馬鹿にしたような笑みを浮かべ始める。そして俺は、相手から目を離さないようにする。その状態で、お互い動きが止まると、バハムートの方が先に動く。俺に目掛けて高速で突っ込んで来て。その攻撃を俺は防ごうとする。しかし、その攻撃を予測していた俺は相手の攻撃を受け流し反撃するつもりだったのだけど。その一撃で腕にダメージを負い痛みが走り抜け。俺はその痛みで反応が送れてしまい、そのまま蹴りを食らうことになる。だがそれでも俺はなんとかガードに成功した。そのおかげでなんとか大怪我は免れたが、俺は体勢を崩してしまい。そこから立て直すことができないでいると、俺はバハムートに頭を掴まれ持ち上げられると地面に叩きつけられそうになり、なんとか避けることができた。

だが、俺もそこでただ、ダメージを受け続けているだけという訳では無く、反撃に転じようとしたが。やはり、実力が足りず。その一撃を当てることもできず。俺は逆に追い詰められる形になってしまう。そのことから俺はこのバハムートに勝つのは不可能だと悟ってしまったのである。

そしてその事実に俺が絶望しかけている時。バハムートは俺に止めを刺そうとする。しかしそこで姉がその行動を阻止しようとし、攻撃を行うと、その一撃はしっかりと命中したのだけど、バハムートは、姉にカウンターを叩き込み姉を吹き飛ばす。俺は姉を助けに行こうとするのだけど、それを阻むようにバハムートが立ち塞がり邪魔をする。

俺はこのままでは姉が殺されると思いどうにかしないとと考え始めた。そしてその時だった。俺の中で眠っていた能力が解放されていく。そのことに気付いた俺は戸惑いながらも自分の体に起こった変化に驚いていると。なぜか俺の中に知識が入ってきて。俺の能力が覚醒する。それと同時に俺はその力を完璧に制御できるようになっていたのだ。

俺の体に突如として宿った謎の力は、俺に対して語りかけて来たのだが俺はそれを理解する事が出来ずにいた。しかしその謎はあっさりと答えが出ていたのだ。俺の力が、まるで誰かの魂を俺の体が受け入れたという事を告げてくる。それがどういう事なのかわからないままでいたが。俺はすぐにその事を頭の中から消して。目の前に起きている出来事に集中する。

そして俺の意識は加速していき、そして俺は自分がこの世界に来る前の事を思い出したのだった。俺はこの世界の事を知っていて。そしてその世界で生きていたことを。そして、この世界を作り出した原因を知っているということ。

そして俺の思考に割り込むようにして声が聞こえてきたので俺はそいつの話を聞いてみることにする。その事について話し終えたあと、俺は意識が遠のくのを感じ、そこで俺は一度意識を失ってしまった。俺が再び目覚めた時俺はベットの上で寝かされていたのである。俺は、この部屋の中にあった鏡を見るが、そこに写っていた姿を見た時に俺は驚いた表情を浮かべて驚いてしまう。なぜならその見た目は完全に俺の姿であり、その俺の姿を一言で表すのであれば、勇者といった感じの見た目をしていたのだ。

そして俺が自分の顔を見つめながら驚いている間に部屋の中には人が入ってくる。その人物は白衣を着た女で俺の姿を見て少し嬉しそうな表情を見せた後で。俺の診察を始めるとそこで俺の容態を説明するのだが、俺は彼女の説明が終わるよりも前に自分の体の調子を確かめることにした。

まず最初に俺は指を鳴らし、その動作を確認すると俺は、今までできなかったことを試せるようになったことに気づく、そのことに気づいた瞬間に、今ならあの時と同じ事が出来るのではないかと考えるのだが。その事を確かめている余裕はなく、俺は慌ててその力の確認をするために。その力を発動する。すると俺は、今いる場所から離れた場所に移動し、そしてその場所にいる人間たちの事を観察することが出来た。俺は、その能力を試す為に俺は、この場所で、バハムートに挑んでいる冒険者達の様子を見るために移動しようとすると、俺に異変が起きる。突然俺の視界に表示が現れたかと思うと。そこには俺の名前が浮かび上がり。その次にバハムートと戦う人たちの顔が表示され始めたのだ。

俺の予想が正しければ俺は今。誰かの目を借りているという状態になるのではないかと思い。俺は俺が今借りているのは誰か確認するとその答えはすぐに出る。それは、バハムートと戦っている人間の一人、つまり、姫咲であったのだ。その事で俺はなぜこのような事態になったのかわからないでいると俺の目の前に急に姫咲が現れて、バハムートとの戦いに参加していく。

その光景を見て俺は驚愕しながら姫咲の戦いを見守っている。姫咲はバハムートの攻撃を華麗に避け、時には受け流したりなどしながら戦うが。姫咲は押され始めている。俺はそのことで姫咲が危ないと判断してすぐに加勢しようする。だが俺の体は何故か動いてくれずに、そのことが俺を焦らせていた。その状態が続き、遂にバハムートの攻撃によって吹き飛ばされてしまう。俺は、その光景を見たときにようやく俺は体を動かし始めた。そして俺が、動き出した頃にはもう手遅れで。既にバハムートは、俺の方を向いており。俺は俺に目を向けるバハムートに向かって全力の攻撃を仕掛けるが。その攻撃は全く通用せずに、バハムートは、俺を片手で捕まえる。俺はバハムートの手から逃れようとするのだがその手から逃れることはできなくて。俺はそのまま持ち上げられ地面に向けて叩きつけられる。そのことに俺は、何とか防御を行ったおかげもあって即死だけは避けられたのだけど。かなりの重傷を受け、俺の体に激痛を走らせ、動けなくさせる。

そしてバハムートはそのまま動けない俺を放置して、他のバハムートの方に歩いて行き。そしてバハムート同士の戦いでその決着がつくとバハムート達は俺に興味を失ったようで。俺の方には一欠片の興味を示すことなく、その場を立ち去ってしまう。

バハムートが居なくなった後も俺は、立ち上がることが出来ないまま、ただただその場で地面に倒れていることしかできないでいた。そんな状態の俺の前に姉が現れると俺を担ぐなりどこかに連れて行く。そこで俺が意識を取り戻した時に姉は俺の顔を覗き込んでいたので、俺は、今の現状を尋ねる事にした。そのことで俺は今の自分が、どうしてこのような状況に置かれているのか理解し始める。

そしてそこで姉から俺が気を失う直前の記憶が俺の中に戻るのだった。そのことから俺は姉にバハムートと、あの男について聞くと、どうやら姉は俺とバハムートの戦闘が終わるまでは、何もすることが出来なかったようだが、俺の気絶後はバハムート達が撤退を始めてくれたらしいのだ。そのおかげで俺たちの命は救われたのである。

しかしバハムートたちが去った後には、あの男が残っていて、その男は姫崎に対して何かを仕掛けようとしている所を見て姉はその行動を止めようと動こうとしたがそれは出来なかったようである。そこで俺は姉に対して何故体が動かないのか理由を聞こうとするが、どうやら姉も詳しい理由は知らないようであった。そしてその理由を詳しく調べようとして姉が、ある人物を連れてくるのであった。

「それでさ、一体君はどうなっているんだい?僕の能力を持ってしてもその呪いは解けないし。その状態で普通に会話しているから、本当に驚きだよ」

「あはははは、でもまぁ、僕はこれぐらいは簡単にやってのけるけどね。だって君が、普通の状態でいるって事は、まだ、君が完全に壊れてしまった訳では無いっていうことだからさ。だけど、その状態でいるのはかなり辛いんじゃ無いかい?」

そう言い俺の体を調べるような動きをする女は俺に話しかけてくるとそこで、俺を拘束していた物が全て外れて。体が自由になるのと同時に体に凄まじい痛みが走る。俺はそこで、自分の体を抱きしめる様な形で地面に膝をつく。その痛みに耐えるために歯を食いしばり耐えようとするのだが。その痛みは尋常なものではなく。あまりの痛みに耐えきれなくなってしまった俺は地面に倒れることになる。その際に俺は頭をぶつけたせいでまた少し意識を失いかける。そしてその間に俺の体の調子を調べていたと思われる女性が近づき。俺は女性に引きずられて行くことになる。

そして、そのまま俺は治療室のような所に連れて行かれるとそこで俺の体調について色々と質問されたのである そしてそれが終わった時女性は、満足した様子で俺に、ここから出て行って良いと言って来たのだ。そのことから俺はこの女性の目的を知る。そのことから俺は彼女について行こうとするとそこで姉が止めに入り、俺を止めると姉が、俺と入れ替わる様に前に出ると彼女に俺が何をしに行くか尋ね始める。するとその人物は、少しの間だけ考え込んでから、俺に話したいことがあると言い始め。俺達に対して一緒に付いて来て欲しいと言ってきたのだ。そこで俺はその言葉に対して少し警戒心を抱くのだけど、その人物が発する気配があまりにも弱く感じてしまい。その弱々しい雰囲気の所為で、俺の心に油断が生まれる。そのことに対して姉は危険だと感じてすぐに俺を引き戻すのだが俺は、女性の頼みを聞き入れることにしたのだった。

俺は自分の中にいる奴の力を利用して移動するとその場所は薄暗い洞窟の中になっていた。俺が最初に思ったのはここに姫咲がいるのではないかと思いながら中を見渡してみるのだが、人の影すら見えない。だから俺はここで姫咲はどこに行ってしまったのだろうと考え始めた時だった。突如として目の前に黒いモヤのようなものが出現する。その事に驚いた俺は反射的に後ろに下がる。するとそのタイミングで、目の前に人が現れた。それは、先ほどまで目の前にはいなかったはずなのにいきなり目の前に現れたという感覚であり。俺は何が起きたか理解できずにいるとそこで突然背後に誰かが現れ俺のことを抱きしめて来た。その事でさらに驚いていると。

後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。

「やっと、二人っきりになれましたね」

その声が聞こえてきた方向を確認するとそこには姫咲がいたのだ。その事実を確認してから周りを確認するが、この場所に存在している生物は全てバハムートの姿だけであり。しかもこの場所では俺は動くことが出来ないことに気づく。その事からここはバハムートが支配する領域だということが分かるのである。そして俺がこの空間から逃げられないでいると姫咲が、俺のことを抱き締めている腕に力を込める。それによってより姫咲の体温を感じられるようになった。そのことに戸惑いながら俺は姫咲の事を見つめるが姫咲はなぜか、俺の耳を舐め始めて来て俺は困惑してしまうのだが。それでも俺は、姫咲の行動の意味を理解しようと努力しながらこの状況で姫咲がどういうつもりで俺にこんな事をしてきたのかを考えようとするのだが、そんな暇を与えることなく今度は、首筋を甘噛みし始める姫咲。その行為を受けて俺は、更に混乱してしまうのだが、そんな状態の中姫咲は喋り始める。

俺は自分の身に起きている事の対処法を見つけ出せていないのに。俺の目の前には何故か姫咲が現れていたのであった。その姿は確かに間違いなく本物の姫咲なのだが、今の俺には、目の前に姫神が存在している事が、不思議でならなかったのであった。その事で、俺の頭が一瞬真っ白になりかけたのだが。何とか平静を取り戻すことに成功したのである。

俺はとりあえず、俺に襲いかかってきている目の前の女に、抵抗をするために攻撃を行おうとするのだけど、その直前に、姫咲は、俺から距離をとる。その動きを不審に思っていると姫咲は俺から離れて行った理由を説明するように、姫咲からバハムートが姿を現したのだ。その姿を見て姫咲が何を企んでいるのかわからなくなった。姫咲の目的は、あくまでも俺を拘束することで。今みたいに、自分から離れさせるというのは、姫咲の意図している行動とは、全く違ってくるからだ。だからこそ俺は姫咲の考えが全くわからなくなるのと同時にバハムートの存在に、かなり焦ってしまうのだけど。その前に姫咲が俺に向けて語りかけてきたのであった。

「私の名前は姫咲美姫といいます。あなたにどうしても伝えないといけないことがありましてこうして貴方の意識に直接干渉させてもらったんです」

その言葉はまるで、俺の意識の中に、姫咲本人が直接介入してきたような言い方であった。俺はそのことについて、本当に、そうなのではないかと思うのであった。だがしかし俺は、それが本当なのかを確かめる術がない以上。俺が出来ることは、俺の中に侵入してきている、目の前の少女を信用するかしないのか決めることだけであった。

そのことが俺にとってどれだけ難しいことか理解してほしい。なぜなら俺は俺の知っている情報と。そして目の前にいる、姫咲の情報を照らし合わせていくのだがその二つの情報が矛盾している所がいくつもあり。そこから判断するには俺は圧倒的に情報不足すぎるのだ。しかし、姫咲の言葉を信じるしかないのも確かなことであった。そして姫咲は俺に対して再び口を開き。俺に何かを伝えようとする。俺はその姫咲の様子を見守ると彼女は微笑むと。姫崎が持っている俺の記憶を全て取り戻させてあげたと。俺に対して言ってきたのであった。俺はその発言を聞いて動揺してしまい、何も言葉を発することが出来なくなってしまう。そして俺が、言葉を発せられないでいる間にも話は続いていく。俺はその話を黙って聞こうとしたのだが、しかしそこで姫咲は突然俺を抱きしめてきて。そしてそのままの状態で、キスをしてきて俺の思考は完全にフリーズしたのだ。そしてそこで俺は自分が意識を失ったということを理解するとそこで俺は意識を失うのであった。

俺はそこで、意識を取り戻した。どうやらあの後気を失ってしまい、それからどれぐらいの時間が経ったのかが分からなかった。俺は、目を開けた瞬間目の前にいたバハムートを殴り飛ばすと。急いで立ち上がるのだが、俺の体は何故か動かなかったのだ。それに戸惑うがそこで俺は、体が動くようになった理由を思い出す。その事で、俺の体の中には、もう姫崎の魂は存在していないことを悟るのであった。それと同時に今までずっと動かなかった体が、嘘のように動けるようになったことで、俺の頭の中にある仮説が浮かぶ。そのことから俺は俺の中で眠っていた人格に体を乗っ取られていたのだという結論に至るのであった。そう考えるのが、一番納得ができるのだ。だって俺の中の記憶が全て戻ってしまったからこそ分かるのだ。この記憶の全てを知っているのは姫咲であり。そしてその知識から推測すれば、俺を、完全に乗っとれることが出来るタイミングは俺が、あの男と戦っていた時であり。俺に記憶を返してくれるために行動を起こしてくれたと考えるのが一番辻妻のあう考え方になるのだから。だけど何故姫咲が、そこまでして俺を助けようとしてくれたのだろうかという疑問が沸いてくる。だってそうだろ?俺と姫咲の関係はそこまで親しい関係でもないし友達と言えるほどの関係でも無い。だから俺に好意を持っているとは思えないのだ。それなのに姫咲が俺を助けたという事は一体どうゆう意味があるのか?それが俺には分からないのだ。そして俺に、その事について質問する暇もなく、姫咲は俺のことを再び抱きついてきてしまうのであった。

姫咲の行動に対して俺はどうして良いのかさっぱりわからなかった。姫咲はなぜこのような行動を俺に対して取るのかが全然わからないので俺は、これからどのような対応を行うべきなのであろうかと考えていた。すると俺の顔を見上げてきた姫咲は俺に話しかけてきたのである。

俺は自分の体を動かし、姫咲から離れる。そして俺は、目の前にいる少女の事を睨みつける。その瞳を見て俺は、目の前に存在している人物が、本物の、姫咲だということを認識した。そして姫咲の表情はどこか苦しそうであり。その表情からは不安げな雰囲気を感じることができた。その事から俺はこの女の目的が俺を殺すことではないと確信したのだ。もし仮に殺すつもりならば姫咲の目は俺に殺される寸前のような怯える目ではなく、獲物を狙う肉食獣のような鋭い目つきをしているはずなのだから。だからこの場において、姫咲の目的と姫咲自身の目的が食い違うことがあるとすれば、姫咲の目的とは、俺の殺害以外にありえないと確信することが出来たのだ。俺はそのことを姫咲に伝えるために、まずは姫咲の目的について尋ねることにする。そして俺はその問いに対しての返答次第でこの女の本当の目的が分かるはずなのだから。そして俺は質問を行った。お前の目的は何だ、その一言を姫咲に言っただけで俺の体に凄まじい負荷がかかるのを肌で感じ取る。その事に驚きを隠せなかったが。なんとか姫咲のことを見続ける。すると俺の目の前に現れた姫咲の姿が変化を始めた。そしてそこに現れたのは一人の少年であった。見た目の年齢で言えばおそらくは俺よりも年上だろうが。その顔は幼く、そしてどこか頼りない印象を与えてくる人物であった。

俺がその人を見つめているとその人は悲痛な声を上げるのであった。

僕は目の前の男が僕が、目の前の男を殺しているところを、ただ呆然と眺めていたのであった。

そして僕の意識の中にいる奴に体の主導権を奪われると奴は、目の前で起きている出来事に困惑しながら目の前の人物を殺そうとしている。そして奴の攻撃によりその人物は絶命してしまったのだ。

それを目にして俺は、俺の中にいるもう一人の人物と入れ替わる。その際に奴の口から声にならない叫びのようなものが漏れ出し。そしてその光景を目の当たりにして俺の心に悲しみの気持ちが生まれるのだった。

「ごめんね。真樹君に、私の大切なものを奪われてしまったせいで」

そんな事を俺に対して言ってくる女性がいたので俺はその人物の方を振り向く。その女性は姫咲で間違いは無かったのだがその姿は先程まで存在していた彼女とは違い、まるで女神を連想させてしまうような容姿をしており。その姿を見た俺は、その美しさに心奪われそうになるのだけど、そんな俺を放置するように彼女は言葉を続ける。

「でもこれで、貴方が失った記憶を取り戻すことはできると思う」

「どういうことだ?」

俺は目の前の女性が言っていることがいまいち理解できず、彼女に質問をするのだが、その事を聞かれると目の前の美女は少し困った顔をしてから、そして何かを考え始め始めたのだ。

俺は彼女の行動の意味が分からなかったのでどうするべきかと悩んでいたのだが。そこで俺の前に、姫神が現れる。

その姫神の様子を見るとどうやら、まだ俺が目の前の美少女が姫咲だと気付かないという事が信じられず、俺のことを観察していたようで、俺が姫神に視線を向けると、そのことに気づいた彼女が俺の方に歩み寄ってきて俺の手を握ってきたのだ。俺の意識は姫神と入れ替わっていた。しかしそれでも目の前の女性から発せされている存在感が凄すぎて、俺は目の前にいる女性が本物の姫咲なのだと分かってしまったのである。しかし、俺がそのことに気づくのが遅かったのか、姫咲が俺を手を引っ張ってきたため。俺は姫咲に押し倒されてしまう。そのことに戸惑いを隠せないのだが、俺の体は姫咲によって拘束され、身動きがとれなくなってしまう。そして彼女は俺の上に跨がるようにしてくると。そこで姫咲は、自分の着ている服を脱ぎ始める。そして彼女は上半身に纏っている布を全て脱いでしまうと、姫咲は自分の豊満な胸を露わにさせる。その姿に俺の鼓動が大きく跳ね上がり、それと同時に俺は姫咲のことを抱きしめたいと強く願ってしまう。だけど姫咲はその願いを聞き入れることなく俺に口づけを行い。俺の唇を奪い去って行く。その感触があまりに心地よく、俺の意識は一瞬飛びかけたが。そこで俺は、自分の中に入ってこようとする何かの存在に気付き俺はその力に対抗するように、目の前の存在を引き剥がそうと抵抗をし始める。

だけど、その行為を阻止しようと姫咲は強引に俺にキスを繰り返してきて。そしてそのキスが繰り返されていく内に、俺は、姫咲が、自分に対して抱いている感情の正体を理解し始めていた。そして姫咲の行動が、俺を好きになって欲しいと訴えかけているのも理解できるようになっていたのだ。

姫咲は俺を異性として意識してくれており、俺はそれが嬉しいと感じてしまっていた。俺は姫咲のことが好きで、姫咲もまた、俺の事が好き。それがわかった途端に、嬉しさがこみ上げてきてしまい、それと同時に目の前の女の子に対する思いが、爆発しそうになっていた。しかし姫咲が俺を誘惑しようとする行動を止めることは出来ないのである。だって俺には、その誘惑を打ち砕けるほどの精神力は持ち合わせていないから。そしてその行動の繰り返しは暫く続いた後にようやく終わる。そして姫咲の体から離れた姫崎は俺に対して言葉を発する。

その言葉を受けて俺は自分の行動がどれほど危険な事をしていたのかに気づく。だけどそれは後の祭りであり姫崎は、すでに俺の中から消えていなくなっていた。だけどその言葉を受けたことによって俺の中にある記憶が全て蘇るのであった。

俺は目の前の少年を見て姫崎の姉ちゃんの言葉を思い出す。そしてこの目の前の人間が俺の記憶を奪った元凶なのだということを理解すると。そのことに対し怒りを抱く。

「俺は姫崎との記憶を取り戻したかった。だからあんたを殺してやろうと思っていたんだが。どうやらもうその必要はないみたいだな。というかそもそも、姫崎を殺した犯人なんて本当は誰でもよかったんだけどさ」

俺は姫崎に対して言葉を発しながら姫崎の姉に言われたことを頭の中で整理していく。俺は自分のことを殺せる人間を探していたのだと言う事を思い出したのだ。その言葉を耳にした姫咲は、動揺するような仕草を見せて、その事を否定せずに俺の話を黙って聞いてくれるので。そんな姫咲に安心感を抱きながらも俺は姫崎と出会ってからのことを思い返し、姫崎の過去を知ってしまったのだ。そして自分が姫咲のことを愛しているという事も思い出す。だけど俺はその事実を受け入れることが出来なかったのだ。

なぜなら、俺には他に好きな人が居るから、その人に迷惑をかけたくないと思い、この場に居ないのだから。そして俺が他の人のことを考えて行動を起こした時。それは姫咲にも影響を与えていたようで、目の前の人物が姫咲であることに気付いた俺は姫咲に姫咲の姉がどこに行ったのか質問を行ったのだ。すると姫咲の様子が変わり始めて、その表情からは何も感じられなくなる。その変化に疑問を感じつつも姫咲が何をするつもりなのか俺は予想が出来てしまった。そして次の瞬間に姫咲は姫神が、俺の目の前に現れる。

俺はそのことに驚くのだが。それと同時に目の前に現れた人物が姫咲ではないことに気がつく。そして姫神は突然自分の腕で俺のことを押し倒し、その衝撃で俺は床に背中をぶつけてしまう。そして姫神の表情を見て驚いた。そこには恐怖が張り付いた表情をしており。その事に戸惑うのだが、姫神は姫咲ではなく姫神なのだと分かった俺は目の前の相手に話しかけようと試みることにする。そしてその行動を遮られるような形で、再び姫神の姿が消える。

俺は姫神の姿が再び現れると。今度は、目の前の人物と入れ替わっていることに気が付き。そして再び話しかけようとしたところでまた入れ替わる現象が起こる。そして再び、姫神の姿が現れては、その姫神と入れ替わる。俺はその事を何度か繰り返すうちに、姫神が何を行っているのかわからなくなってしまい混乱してしまうことになる。そしてそんな俺の様子をみて楽しげにしている姫神の姿が目に入りその事を問いただそうとしたのだが姫宮と入れ替わった状態で、俺はその事に違和感を感じることになり姫宮から事情を聞いて納得すると同時にその事に苛立ちを覚えるのであった。そしてその事が何度も続き俺はついに姫咲に、姫神を止めてくれと頼むことにした。すると姫咲は俺に頼み込まれたことに喜び、そして俺が、姫神の暴走を止められなければ殺すという言葉を聞いた姫咲は笑顔で姫神の方を向くと、姫神と場所を交換したのだ。そしてそこで、俺は姫神に向かって言葉を投げかける。

「お前は何をしているんだよ?こんな事をしても意味がないだろ?」

「えっ? なんで? 姫咲ちゃんは喜んでくれているじゃない」

「違う! 喜んでいるんじゃない! 怯えているだけなんだぞ!」

俺の言葉を受けて目の前の人物の瞳の奥が一瞬揺れ動く。その事を確信した俺は更に追い打ちをかける。

「それにどうして姫神の姿を騙る必要がある? それじゃ姫崎のことが大好きなお前は絶対に後悔するはずだ。そんなにあいつを傷つけたいなら直接言えばいいだろうが。何回も同じやり方をして相手の反応を見なくてもわかるよ。今の行為がどれだけ相手を不快にさせるかを姫神に自覚させてやればいいだけだ。そうすれば、あんなに震えて、怖がっている姫崎を姫咲から引き離すことができるかもしれない」

俺がそこまで話すと、姫神の顔つきが変わる、俺の言っていることは的を得ているとでも言いたいような顔で俺の顔を睨みつけてくる。そして俺はそんな姫神に対して自分の意見を述べていく。それを姫宮が止めることは無かったのだが。それでも姫神をどうにかしなければと俺は思うようになり説得を行う。そして俺が話を続ける中で俺は自分の考えが正しいのか、それとも間違っているのかを分からなくなっていたのだ。しかし目の前で起きている出来事は間違いであり。目の前にいる人物は間違いなく偽物だということは確かだと思えた。

しかし目の前にいる少女からは、本物の姫神と同じ匂いがする。俺はその事に戸惑ってしまう。そして姫神は俺に、自分がどんな存在だったかという事を伝えてくれる。彼女は俺と、姫咲との記憶を消すために生まれたのだという。

そして彼女が言うには本来ならば彼女はこの世界には存在せず。その力を利用して俺は、この世界にやってきたという事になる。しかし彼女はその力を利用しすぎたため、力を失い消滅しかかっている状況に陥ってしまうが。その力を使い切ることにより彼女を助ける事ができるという話になり、姫神の姉から力を授かった俺の出番がやってくる。

俺は姫神と入れ替わる事により姫神に憑依し彼女の体に自分の力を与える事が出来るらしい。俺の中にいた魂たちは姫咲によって殺されてしまったため、俺には選択肢が無かったのだが。

そして姫宮と俺は姫咲の姉である姫宮優子によって呼び出されてこの場所に来ることができたのであった。

『この子を救うためにはあなたの協力が必要でね』

「それで俺にどうしろって言うんだ? そもそも俺はあんたが誰か知らないんだが、もしかして、あの人の知り合いとか、それとも俺のことを知っていたりするのか?」

「私の名前に関しては教えられないけど私は貴方のことを知っているわ。姫崎くんのことをずっと見て来たのだから。だから貴女のお願いは私の力を持って叶えましょう。この子は私が助けるから安心していいわ。貴女は姫咲ちゃんのことを守ってあげると約束してくれたものね」

俺は目の前の女性の言葉を聞きながら姫崎の方へと視線を移す。するとそこに居る彼女は今の言葉を聞き少し悲しげな表情を見せていたのだ。だが、それも仕方ないことだと思う。自分のことを姉だと思っていた人が目の前の人間では無く姫咲自身だったと言われたのだから、しかも彼女は、姫咲の記憶を奪い取り。姫咲の大切な人を殺めたのだからその罪悪感を姫咲も感じてしまっているに違いないと、そして俺は姫神の言葉を受けて姫崎を救いたいという感情に囚われていく。それは自分の為でもあったのだけれど、それよりも今は。姫崎が、これ以上辛い思いをしないようにしたいと俺は思ったのである。そして姫崎と俺はお互いに惹かれ合うようにして恋人になったのであった。しかしそんな幸せな生活はそう長くは続かなかったのである。そしてその事を一番早く知ったのは姫神だった。その事に気づいた俺は、急いで姫咲に知らせる。そしてその話を聞いた俺は自分の甘さに腹を立てることになったのだ。それは俺にとって、最も最悪なことであり。そして、姫崎と過ごす最後の夜になるかもしれないと理解してしまったからだ。しかし、姫咲はその日の夜に自分の意思を貫き通すことを決めるのである。そしてその行動に姫神を巻き込む形になってしまったのであった。

それから数日の間に姫崎は記憶を失った状態で、この世界のことを理解する。姫神から俺と、俺の妹である姫崎が恋人同士だったという真実を聞かされて戸惑っていたようだったが、その事は事実だと言い。俺達二人が恋人同士で過ごしていた時の記憶を取り戻すために、この世界に来てから姫神と俺が出会った時に、俺の記憶を奪うことにしたんだと言うと。

姫咲はそれを受け入れてくれていた。そして俺達がこれからどうするつもりかを話し合って行く中。俺達のことを迎え撃つ準備を整えていた人物たちが俺達のもとに現れ、戦いが勃発する。そして姫崎は姫神が作り出した人の形をした人形を壊そうとしていたのだが。俺が止めに入ったのにも関わらず姫崎は攻撃の手を止めることは無かった。

そして俺は、姫神が作り上げたであろう人の形をした人形の胸を刺し、そして破壊することに成功するのだが。そのことに動揺している隙に姫崎の姉から一撃を受けるのであった。俺がその攻撃を受けてしまった事に対して。俺は目の前に立っている姫咲に助けを求めてしまう。

しかし俺の思いは届かずに、その言葉が姫咲に届くことはなかったのだ。そんな絶望的な状態の中。俺が最後に見た光景は姫神の胸にナイフが刺さる瞬間であった。

姫崎は目の前で起こったことに戸惑いながらも、姫神のことを救おうとする。だけどその行動に意味は無かったのだ。その瞬間、姫神は微笑む。その笑顔に俺は安心させられてしまい、そして俺は気を失ってしまったのであった。そして次に目を覚ました時は、俺の目の前には見知らぬ女性が立っていたのだ。その人は俺に何かを語りかけていたのであるが。俺には全く理解できなかったのである。そのことに戸惑うが。俺の前に居る女性は、自分が姫咲の母親だと言って、そして俺に謝罪をしてきたのだ。俺はそこでやっと目の前に居る人物が俺と姫咲の母さんであることを悟ることができた。そして姫咲も一緒にいるはずだと聞こうとすると。姫咲は目の前に居る姫神と一緒にいて、俺は姫神に抱きしめられているという状態だったのだ。その事に困惑してしまう。

姫神に姫崎はどこに行ったのかという質問をすると、姫神は自分の体を犠牲にして姫咲を救うことに成功し。その事を聞いた姫神は、自分の命を使って姫崎に呪いをかけると姫神は言い出すのである。しかし、それをさせてはいけないと思った俺は姫神から離れて姫神を止めようとするのだが。俺と姫神の力の格差がありすぎるために俺の力では何も出来ずに姫神の体は変化していく。

その姿を見た姫咲は、必死に自分の力を使用して姫神を元に戻そうとするが、それが無駄だということを理解して、俺の体を強引に引き離すと、姫咲は俺を抱きしめたままで意識を失い、その衝撃で俺は姫神から離れることができた。しかし、俺の目の前には既に息をしていない姫神が倒れていたのだ。

そして俺は、自分の不甲斐なさを責める事しかできずにいた。俺は自分の力不足で姫咲を助けられ無かったと悔やんでいたのだ。そして姫咲は、その言葉通り。自分の身を犠牲にすることで姫崎を助ける事に成功する。

だが、俺はまだ、姫神が本当に生きているのか、確認できていないため姫咲の元へと向かう。するとそこには姫神の姿は無く、変わりに姫咲を大事に抱え込んでいる黒髪ロングの少女が立っていたのである。

俺は彼女が何者なのかを知るために話しかけることにする。

しかし少女の反応はとても悪いものであったのだが。それでも諦めずに会話を続けようとしたところで、彼女は姫咲を抱えて逃げ始めるのであった。

俺も追いかけるが。その距離は一向に縮まる気配を見せず。このままだと逃げ切られてしまうと感じ取った俺は、ある魔法を使用することにした。それは俺の力を爆発させる魔法であり。この魔法の効果範囲内では力が強い奴ほど動きが鈍くなり遅くなるのだ。だから俺は、この魔法を使うと決めた時。相手がどんな相手であろうと逃すことはないと思っていた。しかしその目論見は外れることとなってしまう。なぜなら俺は目の前に現れた存在によって姫崎を追いかけることができなくなったからである。その存在は銀髪の女性で、彼女の右手には、先程まで姫神を襲っていた姫神の母親と同じ服装をしていた。そして、俺はこの人物を見て、俺はこいつが本物の姫神優子で。今、目の前にいる少女が姫神優理だということを理解するのであった。

「真樹くん。私は貴女がここに来たことでこの世界に干渉できるようになったのです」

目の前の女性はそう告げると俺の方に歩み寄って来て。その表情を見ると何故かとても嬉しそうな表情を浮かべており「これで私はまた貴女に会うことが出来ますね」と言い。そのまま俺の頬にキスをしてくる。その事に俺は驚くのだが。俺は目の前で起こっている出来事に理解が追いつかなく。混乱してしまい頭が真っ白になってしまう。しかしそんな俺のことなど無視して彼女は続けて言葉を紡いでいく。

「私のことは、これからはお姉ちゃんと呼ぶようにしなさい。そして貴女の姫崎ちゃんのことを大切に思う気持ちに心から感謝いたします。姫崎ちゃんが無事に自分の体に戻れてよかったですね。そしてこの子のために力になってくれてありがとうございます。そのおかげで私のこの子はこうして再び生を受けられることができ。貴女の姫崎ちゃんも助かりましたね。そして貴方はこの世界の住人では無いので元の世界に戻ってもらうことになりました。それに関しては私からもお礼を言いましょう」

目の前の人物はそう口にしたのだが。俺にはその話が理解出来なかったのである。この世界はどういった世界なのか?どうして俺はこの世界での記憶を失っていないのか?俺は何故ここに呼び出されたのか?俺はその疑問を解消するために彼女に尋ねると「この世界の事は、貴女達二人には関係の無い話なので教えるつもりはありません」そう言われたのだ。俺は、俺自身の事に関して聞きたいことを、姫神に聞くのだが、彼女も分からないの一点張りで、どうすることもできなかったのである。

「貴女が私のお願いを聞く代わりに。一つだけお願いを聞いてほしいことがあるんだけどいいかしら?」俺は彼女の言うことを断れない立場にあるため「分かったよ。出来る範囲のことなら叶えてやるよ。俺に出来る事であればな。それでお願いっていうのは何だ?」と俺は答えたのである。すると彼女は俺に向かって微笑み。そして自分の望みを口に出したのだった。その事に俺は驚いたのだが「お前は一体何が目的なんだ?」俺は目の前に居る人物にそう問いかけていた。その言葉に対して彼女は「ふぅー。もう限界だわ。これからは私の方から一方的にあなた達に連絡を取ることになりそうです。それじゃあ後は任せましたよ。私は自分の世界に戻ることにしましたから。その方が都合がいいんですよ。色々とね」その言葉を最後に俺は光りに包まれて視界が眩むことになる。そして目を開けた先には、自分の部屋の天井が見えて俺は安堵していた。しかしまだ俺は寝ぼけていて現状を把握するのに時間を要したのである。俺はベットから体を起こすと、スマホを確認すると時刻は午後五時半頃であり。

俺の隣にはすでに誰も居なくて。どうやらすでに学校に行っているみたいであった。

俺は姫咲が学校に向かったことに驚いてしまう。

しかし俺は、すぐに姫咲の制服と通学カバンが無いことに気づくと、その事に気づいた時点で、既に嫌な予感を感じ取ってしまい。慌てて姫咲の家へと向かっていたのである。俺は走って、途中で何度も人にぶつかりながらも、ようやく姫咲の家に辿り着き姫咲の母親と遭遇することが出来たのだ。そして姫咲の母親は、姫咲から今日から数日の間は休みになると連絡を受けたらしい。そしてその理由は姫咲自身に聞かなければ分からないと言われてしまったのだ。

だから俺は姫咲に電話をかけるのだが繋がらず。仕方なく姫神に電話をすると、彼女は俺の電話に出ると「今は忙しいので要件は後にして下さい」と言ってきたので俺は姫神に対して姫咲のことを頼むと。それだけを言って急いで姫咲が通う高校に向かっていたのである。

姫咲が通っている高校では。姫神と一緒に姫咲が登校していた。そのことに違和感を覚えていると、俺はその事についてクラスメイトの女子に尋ねてみた。すると俺が思っていたような内容ではなく。

なんでも姫咲の親が海外に行ってしまい。しばらくは帰ってこないため、その間は姫神が家で過ごすことになったという話を聞き。俺はそれを姫神から直接聞いていない事を伝えて、そのことについて知っているのか?と言うと、俺の話を聞いたクラスメイトの女子が教えてくれたのだ。俺が姫咲にそのことを伝えようと教室を出ると姫咲に呼び止められる。そして俺を呼び止めた姫咲の顔は真剣そのもので俺は緊張してしまう。そのことに俺は、まさか告白でもされるのではないかと思いながらも俺は、姫咲の言葉を待っていた。そして、俺の目の前で立ち止まると「私もあなたの事がずっと好きでした。だけど、あなたに告白をしようと思ったんですけど勇気が出なくて。だけど今日、勇気を出して、私から告白することに決めました。真樹くんは、今、誰かとお付き合いしている方はいませんよね?」と聞かれてしまい。俺は姫咲のその言葉に驚きながら首を縦に振って返事をする。すると姫咲は俺に向けて微笑むと、突然抱きついてきてしまい。俺に体を預けてくるのである。その事の事態に戸惑うと、彼女は、自分の口から今の感情を吐き出し始める。

その話の中で俺は。姫咲と初めて会った時に感じたことを思い出してしまい。そして、あの時見た姫咲の母親の姿と今の状況が似ていることに気づいたのだ。しかし姫崎は母親とは顔は違うし性格も違っているため。目の前の少女が本当に姫咲なのか確信を持つことが出来なかったのである。

「やっぱり真樹くんに私の正体がばれてしまっていたのですね。私は、今、この姿こそ私の本当の姿です。私は自分の体が欲しかったのです。そのためにもどうしても私は貴女のお母さんの力が借りたかったのです。だから私は貴女の母を騙すことになってしまいました。しかし後悔はしておりません。なぜなら私はこうして貴女に再び出会うことができたのですから」

俺は姫咲にそう言われるが、未だに目の前にいる少女が本物なのか疑っていたのである。そんな俺の様子を見て姫咲は自分の姿を、本来の自分の姿に変化させて見せたのである。

その姿を見た俺は、彼女が本当に姫咲本人だという事を理解できてしまうのであった。そして俺に正体を知られたため。姫咲は姫崎の母親と同じ能力を使い俺の目の前から姿を消したのである。俺の目の前で消えた姫咲を見た俺は、姫咲が俺の目の前で消えていく様を目にしながらこう呟いていた。

「また俺は大事な人を守ることができなかったのかよ。どうして俺は何も出来ないんだよ。俺の大切な人たちを守っていくことが。そんな俺に存在価値なんて無いのに。なんのためにこの力を手に入れたんだよ俺は!俺の力でも、どうにかできるって思ったから手に入れた力なのに!」

姫崎の母親が姿を消してから三日後、俺の元に、姫神から姫咲の居場所についての情報が入ったという知らせが来たのである。姫咲の父親は俺達が住んでいる街から離れた土地に住んでいるのだが、そこを娘に任せて一人で旅に出てしまっており。家にいる姫咲は、自分の家に友達を連れて来て泊めており、その相手の名前は姫神と書いて姫神優子と読ませる名前の持ち主だった。姫崎がその名前に気が付き何かが起こっていることを理解した姫神は俺に連絡してきたのである。だから俺もその場所に向かうことにした。

「真樹君が、ここにくるまでに姫咲の事はなんとかしてみせるから安心してください」

俺がこの場所に辿り着くまで姫神の側に居てくれるという申し出に。姫咲の母親の件もあって、これ以上姫咲に関わってほしくないと思えていたのだ。しかし俺の考えを察してくれたのか姫神は、姫咲のことは任せておきなさいと言ってくれたのである。

俺が目的地に到着する頃には、既に辺りが暗くなっていたのだが、目の前に広がる光景に、唖然としてしまうのであった。そこには巨大なクレーターが出来上がっており、その中に姫咲がいるかもしれないと思うと、胸の奥が痛くなって仕方なかったのである。しかし姫崎は、この中に居る可能性があると分かった俺は、俺は覚悟を決めるとこのクレーターに飛び込み、姫咲を探し始めたのだ。俺が必死に探している中姫神は俺に声をかける。

「こんなところに姫咲ちゃんはいないわよ。だから、一旦ここから離れましょう」と姫神にそう言われて引き返そうとするのだが、その声を聞いた俺は足を止めることになる。そして俺はその声の主に話しかけようとした瞬間、その人物に攻撃されたのである。その人物は、以前この場に現れた少女で姫神の姉を名乗る人物であり、その姉に攻撃を受けた俺だったが間一髪で避けていた。

そしてその姉は俺に対して姫咲の居そうな場所を教えろと詰め寄ってくるが、俺は姫神に危害を加えないならという条件をつける。だがその条件を飲むわけもなく、姉が俺に対して襲いかかろうとしたとき姫神がそれを止めに入ってくれると彼女は姉に対して、自分の身を差し出すように手を広げて姫咲を助けたいと言っていた。俺は姫神の言葉を聞いて、このままでは姫神の命の危険が迫るため、姫咲の居場所を教える事にする。

姫咲と連絡を取る方法については、俺が彼女のスマホに通話を掛けたときに出た電話番号が分かっているために。その番号にかけてみれば、繋がる可能性はあると説明する。

すると姫神は俺が姫咲を助けるために協力してくれることに感謝して頭を下げて礼を言い。姫咲に電話をかけると姫咲のスマートフォンが繋がったようで電話の向こうから聞こえた音は、俺達の居るところとは別の方向だったのである。だから俺は姫咲の声を聞くことはできなかったのだけれど、俺はすぐに電話を切る。

そのことで俺と姫神が焦っているのを見て姉は不思議そうに俺達を見つめていたが、「あんたら、一体何を隠してるの?まさか姫咲に、まだ何か隠しているんじゃないでしょうね?」その言葉に対して俺は黙秘権を行使して口を開かないことにすると、その行動に対して、姉は再び攻撃をしてくるが姫神によって防がれることになる。その事で俺と姫神に不信感を抱いた彼女は。その場から立ち去って行ってしまう。そのことに俺は姫咲のことを頼むと姫神に告げる。そして姫神は姉の後を追うようにして追いかけていったのである。俺は二人が視界から消えるのを確認すると姫咲を救おうと、先ほどの場所に戻るが。その時に姫宮が姿を現して。俺に声を掛けてきたのだ。そして俺は彼女に事情を話す。彼女は納得してくれないと思ったが、俺の話を最後まで聞くと、協力してくれると言い出したのである。

俺が彼女を連れて行くと姫咲の家には誰もいない。だから俺と姫神は姫咲の部屋に行き、姫咲がいない事に不安を抱くと、俺は姫咲の部屋に飾られている鏡を見るとそこに姫咲が映っていないことに気づくと、俺の表情は真っ青になり、そのまま倒れ込んでしまう。その様子を心配して姫神が近づいてくるが。姫咲の部屋に残っていた気配を感じ取ることができていたため、姫咲は生きているということに気づくと安堵した。しかしそれと同時に姫咲が行方不明になっている事実も分かり俺は、これからどうするかを考えなければならない状況に陥ってしまい途方に暮れていた。

しかしそこで俺は、姫咲をさらった相手が、俺が探し求めている姫咲の母親だと思われる事と、姫咲の母親の目的が自分の子供に成り代わりたいという願望を持っていたことに気がついたのである。だから俺が、自分の体では無く、他の人の体に自分の魂を移すという行為をしていたことを思い出した。そして姫咲が、自分の母親の事を化け物と言っていた事も思いだすと。姫咲は、自分の母親の力を宿すための儀式をさせられていることに気づいてしまったのである。俺は姫咲が無事であることを願いながら、急いでその場所へ向かうのであった。

そして俺が、その部屋の前に辿り着くと扉が勝手に開き始めると姫咲が姿を見せてくれた。姫咲の姿を確認できた俺は心の底からの安堵を感じることが出来た。だけど俺はそんな事を姫咲に悟られないように姫咲の事を抱きしめたのである。姫咲が俺の事を受け入れてくれたか分からないが俺はそれでもよかったのである。俺はただこうして姫咲と再び出会えたことを実感するために抱きしめたのだ。だけど俺は今更、その事の事態に気づいたのである。俺の服が血まみれになっていた事に、俺は姫咲を傷付けてしまったのではないかと思ってしまうと、俺は慌てて姫咲から離れる。

その俺の様子に、姫咲は戸惑っていたようだったけど、俺は気にしないで欲しいと言うと。姫咲の母親が俺を姫咲の目の前で消そうとしたことや。その時に、姫咲のお母さんが、俺が姫咲と親しい人間であることを知っているという事を話したのであった。そして俺は自分の身に起こっていることについても話したのである。その話の中で姫咲の母親は姫咲の姿に変わって見せるが。姫咲の目の前に現れた姿は紛れもない自分自身の姿であり、俺の話が嘘偽りのない真実だと理解してしまった。しかし俺が姫咲の母親に会いたいと思っていた事を、姫咲の母親に伝えても無駄だと思い諦めようとすると姫咲は母親と話し合うことを決意してくれたのである。

「母上とは直接話しをしなければいけません。真樹様のお話では、貴女は、真樹様を私に殺させようとしたらしいですが。それは私には信じられない話であります。私と真樹様をこの世界に引き留めるためにやった行為でそのような行動をするとはとても思えないからなのですが。しかし、私は真樹様の話を全て鵜呑みにしてしまうのは危険だと思います。なぜなら真樹様をこの世界に呼び込んだ人物は私にこの世界を滅ぼさせたいと考えていそうな節がありましたから。しかし母上の方は違います。母上は自分が生き続けていくために私の力を手に入れようとしているだけのはずですから」

姫咲が俺に向かってそう言ったのであった。俺は姫咲に言われた通りに姫咲の母に話しかける事を決意する。

「姫咲、君の言いたい事は分かったから、とりあえず姫咲の母親を探そう」

「分かりました。私が知っている限りではこの家の中にいる事は確かです」

俺は姫咲に言われて家の中を探すと、姫崎の母親を見つける事が出来たのである。

姫咲の母親を発見した俺は、彼女に対して警戒をしていた。しかし姫咲は、自分に任せてほしいと言って俺に何もさせずに俺の後ろで待機していてほしいと言われてしまうと俺はそれに従うしか無かった。姫崎の母親の能力は強力で、しかも姫咲の能力を無効化する力があるようで姫咲の能力が使えない状態で俺の体は動くことがなくなってしまう。

俺が動こうとしているのを見た姫咲の母親は、「真樹君を傷つけるつもりは無いの。だから安心しなさい」と言われたのである。俺はこの人なら大丈夫かもしれないと思えて、少しだけ緊張を解くと姫咲が動き出した。その様子に俺は目を奪われていたのだが、姫咲が攻撃を行う前に俺は姫咲の母親の動きを止めたのであった。俺はそのことで姫咲の母親に対して攻撃を仕掛けようとしたのだが、姫咲は、「待ってください。彼女は私の敵ではありませんから、お願いします。今はこのままの状態で話をしましょう。彼女が、本当に、真也様の敵であるのかどうかを判断するためにも、ここは私に任せてください」と言ってきたのである。

俺は仕方なく従うと姫咲が、姫咲の母親の所に向かうのを見届けるのであった。そして姫咲は姫咲の母親と会話を始める。

「まず始めに。なぜ私と真咲を引き裂こうとするのか聞かせてもらえませんでしょうか?貴女の本当の目的は何ですか?」

姫咲の質問に、姫咲の母親は姫咲に微笑みかけながら答える。

「そのことなんだけどね。姫咲ちゃん。貴方のお父さんと約束をしたの。その事について、今から説明をするわね。でもそしたらね、姫咲ちゃんはもう後戻りできなくなるわよ?それでもいいかしら?」と問いかけてきた。その言葉で姫咲が、どんな答えを出そうとしているのか分かってしまう俺は姫咲の方をじっと見つめるのである。姫咲は、その問いかけに対して返事を返したのだ。

「えぇ。それで構いませんよ。私だって覚悟を決めてこの場にいますから。それに。今の状況は、正直に言って、真輝さんにとっても辛いことだと思います。だから私にできることがあれば何でもやります。例え、この身が、朽ち果てようと、その代償として、少しでも彼の心の支えになれるのであれば本望ですよ」

その言葉に、姫神の母親は姫咲の方に歩み寄り。そして、姫咲の手を握る。その光景に俺は思わず動揺を隠せない状況に陥る。だが姫咲の方は冷静に相手の行動を見て受け入れていたのである。姫咲は何かされると思って抵抗しようとしていたが俺は彼女の行動を見て、俺が手を出す必要が無いと判断して見守ることにするのである。そして彼女は姫咲に何かを伝えようとしていたのである。その言葉を聞きながら俺はその言葉を聞いて姫咲がどう行動を取るのかわからなかったのである。しかし姫咲は母親の話を受け入れるのであった。その出来事に対して、姫咲の母は俺に視線を向けると。その瞬間に、体が言う事を聞かなくなり動けなくなってしまったのである。その事に姫咲が気がつき、姫咲の母親が能力を使うよりも先に俺に近寄ってくると。俺に触れてくる。その事で姫咲の能力が解けたのを感じ取ると、すぐにその場から離れるのである。

俺はその事に驚きつつも、何が起きたのが理解できていなかった。俺は姫咲と姫神が二人そろって同じ能力を持っていたことに気がついたのだ。姫咲の母親も同じ結論に至ったのか俺のことを睨むような眼差しを向けてきて。姫咲も、俺の方に駆け寄ると。俺と手を繋いだのだ。姫咲の手に握られた時。俺は何故か力が抜ける感覚に襲われたが俺はその事に驚いてしまい。姫咲の顔を見ると、姫咲は、笑顔を浮かべてくれたのである。

姫咲は、姫神と同じように自分の母親に操られていたらしく俺達の前でその母親と戦うことを告げたのであった。

「真樹様のお母さん、お話は分かりました。私はお母さんの願い通り、真樹様に自分の力を授けようと考えていましたが。その話を聞く限りでは。私も、戦わなければならない理由ができてしまったようですね。だから母上!私と戦いましょう」

姫咲の言葉に姫咲の母親は姫咲の事を警戒し始める。その態度で俺は、二人がお互いに自分の意思で戦おうと決意していることを理解した。姫咲が、俺と繋がっている方の手から、俺の中にある力を吸い取っていたからである。そのおかげで俺達は、一時的にとはいえ姫咲の母親に対抗することができるようになっていたのであった。

その力で姫咲の母親は、姫咲の母親の力に対抗できたようである。

俺は二人の戦いを見守っていた。その結果は俺の予想通りの結果となった。姫咲の負けだ。姫咲は俺の事を庇ったことで姫神に敗北してしまったのである。しかし姫咲が倒れている姿を見て、俺は心配した。だけど、俺の体では無く。姫咲が倒れていることが不思議でならない。なぜなら姫咲は自分の母親の力を完全に封じ込めたはずである。なのに姫咲が負けたという事実が信じられずにいた。

そして俺はある事に気づいてしまった。俺は姫咲が倒されたことで体の自由を取り戻していたのである。つまり俺が今の状態になっていれば姫咲を助ける事が可能だったのではないかと思うと。俺の行動が遅かったことが悔やまれたのであった。姫咲と姫崎の母親との戦闘の結果は、引き分けだったようだ。

姫咲の母親が倒れていたから、決着がついたと思ったけど。姫咲の母親は立ち上がり姫咲の傍に立っていた。その姿を目にした俺は姫咲が倒されてしまっていないか不安になったが。姫咲はまだ立ち上がっているという事は。俺の考えは間違っていないのだろうと思い姫咲に近づいていく。

姫咲の母親が立ち上がろうとしていた。姫咲はそんな母親に対して声をかけたのである。

「母上、どうしてこんな事を?真咲様を殺そうとしたことに納得できないのは理解出来ますが、ここまでする必要があったのですか?私を殺さずとも真樹様をこちら側に連れ去るだけで十分な成果があったと思いますが?」

姫咲の言葉に姫咲の母親は、俺達の事を観察するように見て口を開く。

「私と、あなた、どちらが強いのか確認する必要がありましたから。あなたの力は理解しているつもりだったのですが。私でも完全に押さえ込むことが難しいとは思いませんでしたよ。だから私は確かめるためにあなたに力を与えたと言うのに。その程度の事もわからないなんて」と言い。それからさらに言葉を続けた。

「まぁ、それはもう仕方ありませんね。とりあえず、今はあなたが私より弱いということは分かりましたからね。これから、どうするか考えないといけないですから。とりあえず、今は休んでいなさい」と言って姫咲に回復魔法を発動させる。すると姫咲は傷を癒して立ち上がることが出来たのである。

立ち上がった姫咲は姫崎の母親をじっと見つめていた。

姫咲が立ち上がり戦闘体勢に入ろうとするので俺は慌てて姫咲を止める。

「待って、待ってくれ姫咲!」俺は姫咲に話しかける。その行為に姫咲の母親は驚いたような表情をしていたのである。俺は、このまま姫咲が戦うことは、俺にとって良くない結果になるかもしれないと考えて、なんとか説得しようと考えたのであるが結局何もいい案は出てこなかったのである。俺が何も言わないことに対して姫咲は悲しそうな顔をしている。だから俺も申し訳なく思って姫咲の頭に触れると。

「姫咲、ごめんな。俺のせいでこんなことに巻き込んでしまって。でも姫咲なら何とかできるはずだ。だから信じて待っているからな」と、姫咲に声をかけると姫咲は、姫崎の母親に視線を向けた。

「真樹様をどうするつもりなのでしょうか?」と問いかける姫咲に対して、姫咲の母親は答える。

「真希様には、私の後継者として真樹君と、結婚してもらわないといけませんから。そのために色々と準備をしなければ」

姫咲はその言葉を耳にし、姫神の母親の前に立ち、拳を構える。

「真樹様は私の物ですよ!それに、私には約束があるんですよ。それを貴方が奪おうとするのであれば、容赦しませんよ。それに、私は真樹様を、絶対に守ります。だから真樹様は、私の後ろに隠れていてくださいね」と口にしながら俺のことを守るように前に立ちふさがるのであった。その行動を見て、姫神の母親は、嬉しそうに笑みを浮かべる。

「ふぅん。やっぱり。貴女じゃ私の相手にはならなかったみたいね。だからさっさと諦めてくれると嬉しいのだけど?このままだと私、貴女の事殺してしまうかもよ?」と挑発的な発言をしてくるのであった。

その言葉を聞いて、姫咲の瞳孔が開くのである。

「母上に何ができるのかわかりませんが、今の私をなめないほうが良いですよ。私も、全力を出さないとこの人に勝つことはできないと思いますから」

姫咲が、姫神の母親のことを、本気で倒しに行くということを伝えると。姫神の母親は楽しげに笑うのである。そして、姫咲の方に指を向けると、何かを唱え始めたのである。

姫咲の体に何かが纏わりついている事に俺は気がつき俺は思わず動揺してしまったのである。そしてその光景を見ていた俺だけではなく姫咲自身も動揺しており困惑の表情を浮かべている。

そして姫神の母親から言葉が放たれる。

「私はね、私と同じ存在が他にも存在していることを許せないの。それがどんな存在であったとしてもね。それに、真樹君は今すぐに私のもとにくる必要があるのよ。それには、あなたは邪魔なのよ。姫咲ちゃん。悪いんだけど死んでもらうわね。だから大人しくそこで寝ててね」

姫神の母親の言葉が終わる前に、俺は行動を開始した。俺は姫神の母親の能力を知っているわけではない。だから何をされるのか分からないが、俺は俺なりに姫咲を守るために行動を始めたのである。

姫咲の母親は、自分以外の魔術師の存在を認めない。姫咲もおそらくだが同じだと思われる。それなのに俺は姫咲が姫神に負けた時俺は姫咲と離れることを恐れたのである。だからこそ、その感情が、能力に反映されてしまい、自分の体を強引に動かしてしまったのだと考えられるのである。しかしそんな俺の行動を見た姫咲が慌てて声をかけてくれたのだ。

その言葉で俺は我に返る事ができたのである。

そして俺達が姫野の母親を食い止めようとする中。姫乃も自分の母親に攻撃を始めるのである。その事で、姫神の母親と、俺達は対峙することになった。そしてお互い睨み合うこと数秒間沈黙が続く中で俺は口を開いたのである。

「水、頼む!力を貸してくれないか?姫花を助けたいんだ」と俺は水に声をかけるのだが、その返答はなく。俺の事を、見つめていたのであった。その反応に違和感を覚えた俺は再度話しかけようとしたところで俺の声に重なるようにして俺と姫咲の会話に割って入ってきた人物がいたのである。その人物はなんと俺の母親であった。

俺はその事を予想できていなかったために、驚いてしまい一瞬だけ固まってしまっていた。だけど姫花の母親が、俺に向かって微笑んだ後で「真樹様は私についてきてもらうから」と言うと、俺は体が勝手に動き出したのである。そのことで俺は必死に抵抗を試みた。その結果どうにかして姫神の母親から逃げることができたのだ。しかしそれは、一時的なものに過ぎず。俺は自分の意志では体を動かすことができなかったのである。

俺は自分の体の事を恨むことになる。俺は自分では姫神の母親に勝てる自信がない。それは、先ほどのやり取りを目にしていたら誰でも分かるだろう。しかし俺と水で協力して、姫神の母親を倒すことはできるかもしれないと思っていたが。どうやらそれも無理のようだ。俺の体は言う事を聞いてくれないからである。俺の体を動かしている奴の正体を突き止めようと考えたが。それは無駄なことだと判断した。なぜなら、俺の中に居る何者かが俺に対して語りかけてくるからだ。俺の中に入った誰かが「真樹、俺の事は忘れろ。お前には姫崎や姫神のような辛い目にあって欲しくないんだよ。それに姫咲のこともだ。だからあいつらの所に行ってやってくれ」と言ったから。どうやらそいつは、俺の母親であるようで。そいつも俺の事を心配していた事が分かって俺は少し嬉しかったのであった。

俺はこのままここにいると、また面倒なことになりそうだと思ったから、この場所を離れることにしたのだ。そうしないといつまでも解放して貰えないと思ったからである。それにしても俺に語りかけてくる奴は、まるで父親みたいに心配性でお節介な性格をしているようだと感じて思わず苦笑いをしたくなる気持ちを抑えてその場を離れることにする。

それからしばらく歩くと俺を襲っていた母親の力が消えていく感覚を感じてほっとするのである。

これで一安心できたかなと思っている時に、俺が歩いているところに突然人影が現れたのである。現れた人物に視線を向けると、そこには、姫咲の姉さんがいたのだった。どうして姉さんがこんなところにいるかと言う疑問があったが。今はそんな場合ではないと思い俺は、目の前に立つ姉の姿を見ていたのだが、姫咲のことが気になったのと。早く、姫咲の傍に戻ってあげたいという思いから、俺は姉さんの事を無視して歩き出すと、今度は前から男が現れて俺の前に立ちふさがる。その男に敵意がないことを確認して、男の方に顔を向けた。すると、男は口を開くのである。

「君が真樹かい?」

その質問に対して俺は「はい、そうですけど?」と返事をするのであった。すると男が「そうか」と言ってから俺に近づき抱きしめてきたのである。

「おい!いきなりなんだ?」と俺は、驚きながら問いかけると。その人は「あぁ、済まない」と言って離れた。俺は警戒するようにその人のことを見ていたが、姫咲のお姉さんが、「真樹、彼は私の父上だよ」と教えてくれる。その言葉に、俺が戸惑っていると。「真樹様は母上の手から逃れられましたでしょうか?私と姉上が迎えに来たのですが」と、姫崎が俺の元に駆け寄ってきてそう言ってくれたおかげで。俺の心が落ち着いていった。その事から姫崎が俺に優しい笑みを見せてくれた後に「父上は真咲様に用があるそうなので私達は先に行きますね」と言って姫咲の父親を連れて去っていくのである。姫咲の父親は、去り際に俺の方を振り返り「すまない。私は君の敵じゃない。私はただ娘達を危険なことから遠ざけたかっただけだ」と俺に伝えてから、俺から離れて行くのであった。俺の心にはまだ不安が残ってしまっているが。姫咲達が一緒にいれば大丈夫なはずだと信じる事にした。だから姫崎のお父さんが居なくなった場所を俺はじっと見つめた後で俺と姫咲の二人はその場所から離れることにしたのである。

そして俺と姫咲は姫咲の父親の待つ場所にたどり着くことができた。その目的地というのは。

姫咲の家ではなく姫咲の父親と俺の母親が住んでいる家である。

姫咲の母親は姫咲と水に、俺の事をお願いしてからどこかへと去っていったのである。

「真樹様をよろしくね姫咲」と言い残すと、彼女は俺のそばから離れたのだ。そして俺達は今、姫咲の母親と、姫咲の姉と共に食事を摂ることになっていたのであった。その食事中に、俺の母と姫咲の母親と俺と姫咲の4人で色々と話をしていたが、俺はどうしても気になる事があったので、俺は思い切って母に聞いてみることにしたのである。

母は、「どうしたの真樹?」と俺に声をかけてくるのであった。俺は「母上。姫神の母親って、一体誰なのですか?」

と聞くのだが母は答えてくれず、困ったような表情をして「いずれ時が来たら話すよ。それまで待っていてくれよな」と言うだけであった。俺の聞き方がまずかったのかなと思いもう一度同じ事を聞くと。母は俺に真剣な眼差しを向けてきて「いいか、真樹、お前の両親は生きているぞ」と言うのだ。その事に俺と姫咲はとても驚いた。だけど母の言葉を鵜呑みにするわけにはいかないから。俺は質問を重ねると。俺の両親が生きていて、どこにいて、何をしているのかなど、色々問い詰めるように聞いていたのである。そしてその度に、母は「いつかお前が大きくなったらその時は教えるよ」と言われるだけで一向に何も教えてはくれなかった。その態度を見て、俺がこれ以上何かを言うと余計なことまで言ってしまいそうだと感じた俺は、そこで引き下がることを選択したのであった。だけど俺は納得できない部分もあったのでその件は保留にして姫咲の家にお世話になることを決意したのである。

それから俺と姫咲の二人はこの世界で生き残るための方法を模索しようと考えるのだが、そこで姫神に負けた時の光景を思い出したのだ。俺は、姫咲と一緒に戦うために姫神に勝つ方法を考えていたのだが。俺と姫咲は、まだお互いの戦い方の事を詳しく知らなかったのである。それなのに、お互いの力を把握せずに戦おうとしてしまうと、下手したら命を落としてしまう可能性が高かった。だからこそ俺は、姫咲と二人で話し合いをした。

俺は姫神の弱点を知らないか姫咲に相談を持ちかけたのだ。すると姫咲は姫神の弱点を知ているのか。俺に姫咲は「私は彼女のスキルは知っているんだけど、それを彼女に伝える前に、彼女と出会ってしまったからな。だから今は教えられないかな。それにあの時、姫神と戦っていた時は、私の力だけでは彼女に勝てなかったし。私一人でどうにかしようとすれば、負けていたのが目に見えているんだよね」と言ってきたのである。俺は姫神に勝てないと思うと悔しくて仕方がない。そんな気持ちを紛らすかのように俺は「俺は、あいつに勝ちたい」と声に出していた。そんな俺の言葉に対して姫咲は何も言う事はなかったのだが、その代わりとして姫咲は姫神と戦う上で必要な情報を教えてくれたのである。それは武器や能力の相性についてであり。お互いにどんな戦い方が得意なのかを知ることが大事だと言われたのである。それで姫咲から教わった情報を頭にインプットした後で再び作戦会議を行うのであった。

そうして夜も深くなり就寝の時間になったのだが。俺と、俺の家族で川の字で寝ることになった。そのせいで、母に抱かれることになり。母が子守唄を歌うからと言う事で俺の耳元で囁くようにして母が歌うからその歌を聴けばすぐに眠りにつくことができるだろうから。俺も母の子守唄を堪能させて貰うことにしたのだ。

そうして俺が、夢の世界に誘われようとしていた時に、俺の横にいた姫咲が俺の手を握ってくれたのである。俺は、眠い中姫咲が手を握れた事が嬉しくて、姫咲の手を握り返したら、それが伝わったらしくて姫咲は笑顔を浮かべてくれたのだった。姫咲の顔を見つめながら姫咲が傍にいることで俺の心の中が温かくなるのを感じた後、そのまま意識が遠退いて行って深い闇の世界に落ちていくのであった。その日、俺は姫咲と一緒なら怖いものなんてないと思えたのであった。姫咲の体温を感じて俺の中に勇気が生まれた気がしたのである。その気持ちを感じられたことで、これから俺は生きていけるのかもしれないと。そんなことを考えることができた俺は幸せだなと感じることができていたのであった。そうして俺は、明日からの日常が少しでも楽しくなるといいなと思いながら夢の世界に旅立っていったのであった。

翌朝になり目が覚めると俺達は、それぞれで自分の部屋に戻ることになるのだが。俺は、俺の部屋に向かう道の途中で姫咲と出会った。姫咲と顔を合わせることができた俺は、嬉しかったから、つい姫咲に向かって「おはよう」と言ってしまうと、姫咲は俺の挨拶に答えてくれて、嬉しかったが、それと同時に、どうして姫咲と出会えていることがこんなにも嬉しい事なのだろうと疑問を抱いてしまったのである。

そうして、しばらくすると俺は姫咲との待ち合わせの場所についたのである。すると、そこには既に姫咲の姿があって。姫咲に「おはよう姫咲」と俺が言うと姫咲が嬉しそうな笑みを見せてくれたから、朝から俺は元気になったのであった。そうして姫咲が「昨日の夜はよく眠れた?」と問いかけてきたのである。その質問に俺は、「うん、ぐっすりとね」と答えると、姫咲が俺の腕にしがみついて来たから俺は、そんな行動がとても可愛くて、ドキドキしてしまったのだ。そんな幸せな時間を過ごしていると。母が家を出ていく姿を目撃したのである。俺はそんな状況を見たことによって不安を覚えてしまい。母に付いて行くことにすると、母に気付かれないように母の後に続いて行った。

そして、俺達は森の中に入り、さらに奥地へ進んでいく。その事に不安を抱いたのだが。その先には湖が広がっていたのである。その光景に俺達が驚いていると。湖の方に一人の女性が姿を現したのだ。俺はその姿に驚いた。何故ならばその女性は俺がこの世界で見たことのない容姿をしていたからだ。そうしているうちに俺の母がその女性の前まで行き、会話を始めたのである。その内容を聞いて俺は驚愕する。俺の母と姫咲のお母さんが同一人物だったこと。そうしているうちに母と姫咲の母親が俺達の方を指さしたかと思ったら。次の瞬間には俺と姫咲が湖の上に浮かんでいたのであった。その現象によって俺と姫咲は驚くしかなかった。だけど俺達が落ち着く暇もなく俺達二人の体がどんどん小さくなって行くのである。このままだとどうなってしまうのかと俺は怖くなり必死になって姫咲のことを抱き寄せたのである。

そうしていると俺の目の前に大きな島が見えてきて、俺と姫咲の体は島に近づいていく。そして俺と姫咲が島の砂浜に上陸することができたのだが、その直後に姫咲の体に何かの変化が訪れ始めていたのである。姫咲の体が大きくなっていくと。次第に大人の女性へと変わっていったのだ。その事に俺と姫咲の2人が困惑していた。

そして姫咲の胸も大きくなっていき俺よりも大きい胸へと変化する。姫咲のお姉さんよりは大きくはないが。それでも十分な大きさがあり、姫咲は服のサイズが合わなくなって、裸になってしまったのである。そのことに俺は慌てるのだが。

姫咲が自分の手で体を隠そうとする。だけど手が隠れていないし。大事なところを隠し切れていなく、俺に恥ずかしそうな目で俺の方を見てくるのだ。俺は、その視線から逃げたくなっていたのだが。それよりも気になったのは姫咲の髪の毛の長さが変化していき、ロングヘアになっていく事だった。俺には理解できないことばかりで戸惑っていたら姫咲の体が縮んで俺と同じくらいの少女になったところで、今度は姫咲が大人の女性に変わる。姫咲の体の凹凸が無くなりスレンダーになるのだ。そうしてから、姫神がこの島に降り立ち姫神が俺の目の前まで歩いてきて。そこでようやく俺は落ち着きを取り戻すことが出来た。そこで改めて、自分が今まで見ていなかっただけで姫神は実は女性だったんだと思い知ることになる。そして俺と姫神は向かい合った状態になり。

「姫神、何が目的なんだ」俺はそう姫神に問いただすと。彼女は「貴方の力を借りに来たのよ。だから大人しく、私に従いなさい。私に逆らったら殺すけどね」と言うのである。俺はそんなことを言われて姫神に従うつもりはなかったが。俺が逆らおうとすると、姫神は突然姿を消したかと思うと俺の後ろに回り込み俺に蹴りを放とうとしていたのだ。その光景に俺は、死が迫っていることを理解したが、ここで死ぬ訳にはいかないから俺は全力で抵抗しようとした。だけど俺は、姫神にあっさり倒されてしまったのである。そのことに俺はとても悔しかったが。それ以上に俺は今、命の危機にさらされていたことが分かっていたから。すぐに起き上がり戦闘態勢に入ることにした。だけどそこで姫神は俺の方に攻撃はしてこずに、姫神が話しかけて来たのだ。俺はそれに答えたのだけれど。そこで俺は、今の俺は、もう戦うことができないという現実を知ることになる。それは姫神と、戦って俺は負けたことで、俺の能力は完全に消え去ってしまったのである。

俺が、その言葉に絶望をしている時に、姫神からある薬を渡された。その液体を口に流し込むと俺は、みるみると力が湧いてきたのである。そう、これが俺の切り札だと言われて俺はそれを受け取る。それから俺と姫神が手を組むことになり、まず最初にお互いの状況について話し合う事になったのである。

俺は姫神の話を聞きながら彼女が、この世界を創造主であることに驚き、それと同時にこの世界は姫神が作ったものだと聞いてますます、俺は混乱することになった。そうこうしている間にも俺と姫神の戦いは始まっていたのである。その事について姫神は、「貴女の事を少し試させてもらったからね。それと私のスキルについては話さなかったのは正解よ。そのスキルは相手の心を折ることは出来るけど、それだけじゃなくて、心を完全に支配してしまうのよ。そのスキルで相手を操ることができるようになる。でも私のスキルはその人の持つ心の力次第で効果の強さが変化する。つまりは、その人の心に強さがあればそのスキルを跳ね除けられることもあるし。その逆もあるから。もし仮に、私が貴方の心を支配しようとしても。きっと貴方のスキルが発動しない可能性があるということ。それが私の持っている能力について、あなたに教えたことの全てだよ。そうそう、あなたの力についても教えてくれたし。それにあの時助けに来なかった理由も納得できたから。その事は別にいいの」と言い。

そう言いながら姫神は、この世界のルールについて語り始めたのだ。この世界の事と姫神の事を詳しく聞くことになった俺はその事を信じられない気持ちで聞いていたのである。俺達が暮らしていた世界に神様がいるとか、その神はこの世界を作りだして俺達に試練を与えていて、そして俺達はこの世界で死んでしまったりすると元の世界に強制的に戻されてしまうと教えられて。俺は姫神の言葉を鵜呑みにしても良いのだろうかと考えていたのだ。

だけど姫神の言葉に俺は嘘を感じられなったのである。その事で俺は彼女に従うことに決めたのであった。俺が彼女の言う通りにする事を伝えると。俺は彼女と協力関係になることを受け入れるのであった。

姫宮の体に起きた変化に俺が驚嘆しながら、姫宮のことを見ていると。姫崎の髪が長く伸びていくと同時に顔つきが大人っぽくなり始め。姫咲よりも身長が高い少女に変化したのだ。その事に姫咲は驚愕していたが、姫咲は姫宮のことが誰なのか分かっていないらしくて姫宮に話しかけようとした瞬間。

姫野と姫川から悲鳴が上がると。二人は、姫美の姿に変わったのである。その事から二人が別人になっているのが分かり俺は慌てて二人のところに行くと二人に声をかけたのだ。「君達は姫咲の妹だよね」と声をかけると。姫川は「そうですけど、お兄ちゃん、どうしてここに」と言ってきたのだ。すると姫川が「どうして姫矢さんが姫乃達の名前を知っているんですか」と聞いてくるので。

俺がどうして知っているかと言うと説明しようとすると。そこで水樹の声が聞こえてきて「私はここに住んでいる人間ではないからな、昨日たまたま通りかかって見かけてしまったのだ」と言ったのだ。そして水樹が姫花に向かって自己紹介を始めると。姫花は警戒心を強める。だがそんなことは関係ないと言うように水樹は話を続け始めるのだ。

そんな水樹の様子を見て、水樹は本当に俺の母と同一人物なのか疑ってしまうのだが。そこで俺の方を向いた姫花が口を開く。「ねえ、あんたはどうするつもりなの?」と姫花の問いかけに対して。俺は、「姫咲、ちょっとだけ話をしたいんだけど」と姫咲に言うと。姫咲が首を傾げて俺の方を見つめてきたのである。その様子に可愛さを覚えていると。姫華が姫咲の手を引いて部屋から出て行く。

俺は二人の様子が気になったので後を追い部屋の中に入ると。そこにはまだ眠っていた姫川と姫瀬と姫山がベッドで横になっていた。そしてその三人が眠っている部屋に姫咲と姫華が入ってきたのだ。そうすると突然に俺達は白い光に飲み込まれてしまう。そうして目を開けば目の前には姫華が居たのだ。俺はそこで何が起きたのかを理解するのだった。俺達は元の世界に戻って来たのだ。そう俺達が戻って来ると姫咲が抱き着いてきて。俺と目が合うと嬉しそうな笑みを浮かべる。

そして俺が姫咲とキスをしようとすると姫咲は何かを感じたのかさっと俺から離れていったのである。そして、俺は自分の母と妹に視線を向けると、母さんも俺と同じように姫咲の母親に抱きしめられていた。姫咲は姫咲の母親の胸に顔を押し付けていたのである。そうしてから俺の母さんは、俺達の様子を見てから姫咲の母親は俺達の方を見ると微笑んだ。

姫咲の母親が俺達の方に来て、姫咲を俺の方に押しつけて俺の母は、姫咲の母親に姫奈のことを押しつけたのだ。その事について俺が、姫咲の方を見ると思っていた以上に近くに姫咲の顔があって。思わず見惚れてしまいそうになるほど綺麗だったのである。それから俺は、俺の隣にいる姫華の表情が気になって見てみれば、とても冷たい視線が俺の事に向けられていたので。これ以上の事をすれば大変なことになりそうだと思ったのである。そこで俺は改めて、目の前の姫奈と向き合うことに決めると。姫河に話しかける。「あの、君は俺と同じ学校に通っている子だよね」と尋ねると。姫田は「うん」と答えてくれたので。俺達はとりあえず移動をすることにするのだが。俺はどうしても気になることがあり。それを聞くことにしたのだ。それは、なんの偶然なのか分からなかったけれど。この家に住んでいた人は俺にとって身近な人だったのだ。だからこの機会に確かめておくことにしようと思って聞いてみると案の定。予想していた通りの答えを貰えたのだ。

それは俺の叔母がこの家に暮らしており、その人は実は今から20年ぐらい前に死んだはずの人だということが判明したのだった。だけどその人は今もなお、生きていたらいい年齢の容姿のままで。見た目には40代後半ぐらいにしか見えず。まるで若い姿で生き続けているかのような印象を受けたのである。その人の名前は水城 麗奈と言う名前なのだ。俺にとっては義理の叔母に当たる人で。その人が生きているということは俺は親戚の子供として認識してもらえるということだと思うからよかったと思ったのだ。

そうして色々とあったが姫川親子が無事に帰って来て、これで姫神は俺のことを助けてくれると思うことが出来た。しかしそれは、姫神が姫川達を襲ってきたことから分かるとおり。姫神が簡単には俺の事を解放してくれないということを物語っている。俺はこれからのことについて考えることにして、姫宮や、姫川達が戻ってきたのを喜んだのであった。そうしてしばらくすると姫神が姿を現すと、姫神は自分の体から水の人形を生み出して、その人型が動き出すと俺の元に近づき話しかけてくるのである。

俺はいきなり出現した人型の生物を、不気味に思いながら観察していると。その生物は俺に向かって攻撃してきたのだ。それを俺は間一髪避けることに成功して、姫神の方に振り返ると彼女は不敵な笑いを浮かべて、もう一度攻撃を繰り出してこようとしていた。その事に気付いた俺は、慌てて姫神の方に攻撃を仕掛けるも攻撃が弾かれ、その反動で体が痺れ、そのまま俺は地面に倒れこむ。

俺は、どうして自分がこのような攻撃を受けたのか理解できないでいたが、それでもこのままだと、まずいと直感的に察して俺は姫神が俺に仕掛けてきた技がなんなのかを確認するために分析して、それから姫神の攻撃について解析した。その結果。姫神の技の正体について判明したのである。姫神が使った攻撃は水を操作する能力によるもので、俺の体に絡みついた水が徐々に俺の体力を奪っているのだという事が分かった。つまり姫神の作り出した水に触れるだけで体力を奪われるということになる。

その事を姫宮に説明すると、彼女達は姫神のことを警戒し始めて。姫神に敵意のある目線を向け始める。そんな彼女達の反応に、姫川は苦笑いしながら姫神から距離を取る。そんな彼女達の様子など気にならないといった様子で、再び、俺に向けて攻撃を仕掛けてきたのである。そんな彼女を見て、俺は先程、俺を攻撃したのは油断させるためであり、次の一撃が本命だということがすぐにわかり。その攻撃を受け止める準備を始めた。

その事について姫川が俺に対して忠告をしてくれるのだが。俺は大丈夫だと言いながら、俺も攻撃の準備を始める。そうして、俺達が構えを取っている間にも姫神はどんどんと距離を詰めてきていた。そうして姫神が再び水を操作し始めると。俺達との距離が一定になると水の動きが遅くなり。そこで俺は地面を強く蹴って、姫神の作った水を砕く。その衝撃で、辺り一面に水が吹き荒れて視界が悪かったが、そこで俺は水の中にいたはずの俺の体の感覚がなくなっている事に気がついたのだ。そこで俺は姫神が生み出した水で体の自由を奪われていることに気が付くと。俺は自分の体を動かすことを試みる。しかし動かなかった。そうこうしている間に姫神が俺に迫ってくると、俺に近づいてきたことで俺を拘束していた水がなくなり。その隙をついて、俺は、体を思いっきり動かすことに成功する。だが、俺の体は思うように動かない状態なので姫美の方に殴りかかる。

姫野が、俺に拳で殴られそうになった瞬間に、姫華がその事に気が付いて、俺の前に出てきて、俺に膝蹴りを食らわせる。俺はその事に驚くのだが、そのお陰で俺は少しだけ動けるようになる。その事を俺は確認すると、急いでその場から離れることにした。

姫宮達は姫神に向かっていくも、あっさりと避けられてしまうと、そこで姫咲の母親が、姫咲の援護のために、風を操ることによって、強風を発生させて、その風に水が含まれているせいで、大量の水の塊が姫達を襲う。姫瀬が咄嵯の事態で慌ててしまい。姫川は姫瀬の方を守るようにして前に立つと。

水樹の方に向かって行き水樹を後ろに追いやるのだが、水樹はその事に感謝をしながら姫崎を庇う。姫川は姫咲を後ろに追いやり、姫咲を水の攻撃の範囲外へと移動させることに成功したのだ。しかし、姫川の母親は水樹の方に水の攻撃を行っていて、それを回避することが出来ずにいたのである。姫花が姫川の母親の攻撃を防ぐと。そこでようやく水木と姫咲が合流して、姫河と一緒に三人で姫神を攻撃するも簡単に避けられてしまう。しかしその間に、水葉によって操られた水流により、水葉は姫華と戦闘を行い始めていた。そうこうしていれば。姫川の妹の水希と姫華の母親が姫華の元に来て二人で連携を取り合い姫華の母親が俺と姫川を姫川に近寄らせないようにするために姫川と水希の戦いを邪魔しようとする。

そこで姫神は姫乃の方を見ると、彼女の方へ向かおうとする。俺はそんな彼女に攻撃を加えるために近づくと。今度は彼女が、水の操作で、姫神の周りに無数の剣を作り出すと。それで、その事について説明をしてくれたのだ。そうして俺は、俺に迫りくる姫神に対してどうしたらいいのかを考えるが。結局のところ、何も浮かんでこなかった。俺は、この危機的状況を打開する何かを考えようとした時だった。突如俺の目線上に光の柱が現れ。その柱が消えると、その中から一人の人物が姿を現したのである。その人物は黒い髪の女性で、俺の母さんだった。

俺の母は俺の姿を確認すると。安心したような表情をこちらに向けて、微笑むと。俺のことを助けにきてくれたのだ。しかし俺はそのことに喜びを覚えていたのだ。そうすれば、姫咲と水木の二人から同時に攻撃を受けてしまっても、母は軽々と受け止めてしまい、二人は驚いた顔になる。俺は母の力を目の当たりにして母が凄いと思いつつも。今、目の前にいる人物の事を、どうにかしないといけないと思っていた。だから俺は母が姫咲達を相手にしていてくれたおかげで、俺に余裕ができたので。母に話しかけることにする。

俺の呼びかけに、俺のことを助けると答えると。母は俺に手を伸ばすと。俺の体が勝手に動き出して俺の体に密着したと思った瞬間に、突然、浮遊感を感じたのである。

そして次の瞬間、俺と母が空中に浮かび始め、姫神が慌てたようにこちらを睨みつけると俺のことを見つめて。それから手を伸ばしてくるのだが、そんな行動を取った時にはもう既に俺達は空高く飛びあがっていたのだった。

俺が目を覚ますと。俺の周りは一面真っ暗な世界で。俺はこの場所に見覚えがあったのだ。それは、前に姫神と戦ったときに俺の意識だけが飛ばされた世界であり。あの時は、確か俺の目の前には、あの白い世界の景色が広がっていたはずなのに、今は違う景色が広がっていることに驚きを覚えるのと同時に、なぜ今ここに居るのかという疑問を抱くことになったのである。それから俺の体を見れば何故か俺は宙に浮き。俺は俺の体を観察すると、その体は透明になっており、自分の姿が見えなくなっていたのだ。

そこで俺は周りに視線を向けると。なぜか、姫神がいる事に気づいたのである。そうして俺達の近くには唯達が立っており。唯が心配そうにして、俺の事を見ていたので、とりあえず俺に声をかけようと声を上げようとすると。そんな時に、突然誰かの声が自分の中に響き渡ってきた。

その謎の現象について困惑している間にまた、頭の中で女性と思われる声で喋りかけられてきたのだ。それは姫神について教えてくれるもので。その声の正体については分からないのだが、おそらく姫神の事を色々知っている人が話しかけてきているんだろうと思うことにして。そのことについて俺は姫神についてのことを質問すると、その答えは姫神の生い立ちについてのことだった。そういえば俺は以前、俺に宿っている記憶の中には俺が生まれる前の事の記憶がないという事を思い出し。そのことについて尋ねてみると。

確かに貴方の中にあるのは生まれた直後の記憶だけだけど。それ以外についても、貴方が思い出さないだけでちゃんとあるわよと言われてしまったのだ。その事実を聞いて俺としてはそのことが嬉しくもあり。どうして、そんなことを言ってくれるようになったのだろうかという疑念をいだいていた。そこで俺は自分が何者かについて尋ねると。自分は女神だといわれて。その事を信じられるはずがなく、俺が否定の言葉を述べようとしてその言葉が口にでそうになると、それを遮るように俺の頭に響く声に止められてしまうのであった。そうして、俺は女神と名乗る人物に言われるままに自分の体を確認して、それから俺の中に流れている魔力が、俺の想像しているものと違う事を知り、それから自分の体に魔法を使うように指示される。俺はその指示に従う事にしたのだ。それから俺が俺の中に流れる魔力に、俺が今まで使っていた魔素とは違う別の物なのだと確認することができたのである。俺はそこで、その事について考え始めたのだが。その事を気にするのは後でも出来ると思って、まずはこの体の中に流れる魔法の事を詳しく知る必要があった。そこで俺は体に流れる魔力が俺が想像していた通りの効果を持つのかどうかを確かめることにしたのである。俺は、その効果の確認のために。自分の体内に存在している全ての魔力を使って俺の前に氷を生み出すことにした。

俺は、その事に驚いてしまい。本当にその事が可能だというのが分かると。次に、俺は俺が持っている全魔力で火球を生み出し。そして俺がその事を行えば。当然のように俺の生み出したその炎が消えていくのを見て。俺の身体に何か変化が起こっていないかを確認するために。その事を姫神に伝えることにした。

その事で姫神がどういう行動をしてくるのか分からなかったので俺は一応警戒して身構えることにした。しかし姫神は何の動きも見せることなく。そのままの状態で時間が過ぎていき。姫神は俺に攻撃をしてこないどころか何の動きも示してこないので。俺はそこで初めてこの空間について疑問を持ち始めてその事について考えてみる事にしたのである。

そこで、俺が考えたことは。もしかしたらここは俺の精神世界のようなもので。そこに俺が来ているんじゃないかと考える。だが、それにはいくつか問題があると俺は思うのだった。そうすれば俺はこの精神世界に俺以外の人格が存在するのではと考えてみたのだ。しかし、もし仮にそうだとしても俺が俺であるのなら俺に敵意を向けてきそうにないと考えてしまうと、そうなれば一体誰が存在しているのだろうかと気になってしまう。だが、それこそ姫神の魂が、姫神の心が作り出した存在かもしれないと思えると。そう思ってしまうが故に姫神の心が作り出したものだからと言って必ずしも俺を襲って来るわけじゃないだろうと思ったので、その事を姫神に言ってみることにする。

するとそこで、俺の予想は当たり姫神が反応を見せ始める。俺の問いかけに対し。彼女は俺の言っている意味を理解できなかったようで俺に質問を投げかけて来たのである。俺は姫神に俺が考えていることを説明すると、そうですかと言うだけだった。俺は、もしかすると姫神の心を読もうとしていると姫神の心の中を覗けないか試して見ることにする。その事を実行し始め。それから少し経つと、案外簡単に成功してしまったのだ。しかしその結果得られたものは特に何もなく。ただ普通に姫神が生活している風景が見えるだけだったので拍子抜けしてしまう。しかしそれでも何も成果が得られなかった訳ではなくて、この世界で得られる情報が少ないことが分かったのだ。

だから俺は姫神にここで得られえる情報がこれだけなのか聞いてみたところ、彼女はどうなんでしょうといったような顔をするので。俺はもう少し頑張ってみてくれないか頼んでみると、彼女は渋々と言った感じだったが。俺の提案を受け入れてくれたのだ。しかし俺はそこで問題が発生するのに気が付いてしまう。姫神の過去があまりにも薄すぎるのだ。

姫神は普通の子供より大人びており。しかも姫神の母親はかなり年を取っているのにもかかわらずに若々しい見た目をしていた。姫神は母親から姫神の能力についての説明を受けておらず。その能力は自分が生まれた直後に突然現れたものであり。姫神はその能力のせいで周囲から疎まれることになる。そして母親は娘を守るため姫神に戦い方を指導していき、その実力を徐々に上げていったのだ。姫神の母親には水希と呼ばれる双子の姉妹がいたのだが。その姉は水樹という名前を持っており。妹とは仲が良かったのだけれど。その妹が姫神が生まれてからしばらくして突然病気に罹り、死んでしまったのだ。そのせいで水希と姫神の関係は崩れることになる。

そうやって、その事によって水希との関係は崩壊して行き、姫神は水樹に対して敵対意識を向けるようになった。そのことから姫神は水に対しての憎悪を抱き。それから水に対する攻撃方法を身に着けるのであった。そしてその攻撃方法が水への復讐をするための力へと変わり。姫神は自分の中に水の存在を許さないように、水の存在をこの世から抹消する力を手に入れることが出来たのである。水樹を失ったことで水への憎しみが増した姫神であったが、そんな時姫神の前に現れたのは白木だった。姫神にとっての水樹は水である。だから水という同じ存在である白木の事が許せなかった姫神は彼女に襲いかかったのだが。その事を姫神と親しい人物達は良しとしなかったのである。それで水と敵対する組織に入ることになったのだ。

そのあとの姫神の人生はとても悲惨なものだった。その事もあって姫神は人間という存在に絶望し始めてしまい。人間のいるところにはあまり現れなくなり、その事から人々からは怪物扱いされてしまう事になる。そしてそれから長い年月が流れ、姫神は一人ぼっちになっていたのである。そしてそんなときに、俺は水と出会えて仲良くなったことによって姫神は人間に興味を抱くようになり、水と一緒にいたいと思い始めたのだ。そうすれば、いずれは自分が望んでいた家族を手に入れられることを期待していたのである。そして姫神には友達と言える人が誰もいなかったため。そんなときに現れた姫神は、水にとって、初めてできた友人でもあった。

それから姫神は俺と話をしているうちに俺に好意を持つようになっていたのだ。その事には俺も姫神もお互いに気づいており。姫神はその事にとても喜んでくれていて、そんな気持ちを姫神に持たせてくれた俺に、姫神はあるお願いをする事になったのだ。その事とは、俺に力をくれる代わりに俺の命を救ってくれという約束である。姫神がどうして俺の事を助けたいと思っているのかというと。それは彼女が俺の力になりたかったからであり。俺はその話を聞いて驚いたものの。俺は姫神の事を信じることにして、その頼みを引き受けることにしたのだ。俺は、その事に満足した姫神は笑顔を浮かべてくれる。

その事を俺は確認したあとに、今、目の前にいる女性の名前を聞いてみることにした。その事を姫神に伝えてみると。その女性は私の名前は女神だと伝える。

俺は、その事に、その女神に名前を尋ねてみるのだが。その名前が思い出せない事を伝えてくると、そのことについての女神の答えを聞くことにして。その女神が俺の記憶を取り戻すためにはどうすればいいのかについて考えてくれている間に俺は、俺の体が透明なままで宙に浮いていることに違和感を覚える。俺がそのことを女神に相談してみようとすると、そこで俺が先ほどから考えていた疑問について尋ねられた。そこで俺は自分が俺の体の中にいて自分の体を操っているのだと答え。そしてその理由を聞き出してみることにするとその疑問については答えることはできなかった。しかしそこで俺は自分がどういう状況に置かれているのかについて改めて考えることにしたのである。そこで俺はあることを思いついてその事を女神に伝えることにしたのだ。

俺の体は俺の体じゃないんだろ? そこで俺は女神に疑問を尋ねると。その質問に対して彼女はうなずき。どうして分かったのですかと俺に問いかけてきたので。その事で、その体の中に俺以外の人物が存在していて、俺の身体を支配しているという事を考え付いた事を話すと彼女は驚いてしまう。

どうして、私が私の事を話していても不思議に思わなかったのでしょうかと言われたのだが。確かにそういえばそうだと思い。その事に関しては後回しにすることにしてまず先に俺の事を俺が知っている限りで話すと。俺は、自分の事を何も覚えていないことを伝えると彼女は納得したようすを見せてくれたのである。

それから俺は、この世界の事についても教えて欲しい事があったので、その事もついでに聞いてみる事にした。

その事というのはこの世界と他の世界を行き来しているのは何か目的があって行っているのかということだ。そうしなければ俺はこの世界に来られなかったはずなので、俺はこの世界に呼び出されたことを恨んでいるわけではないが、その事だけは知っておきたいと思っていたのである。そしてその質問をしたときに俺の顔はどんな表情をしてしまったのか分からない。

なぜなら俺のその質問に彼女は一瞬だが戸惑いを見せていたからである。しかし彼女は直ぐに冷静さを取り戻し。それから、俺が知りたいということであれば教えるといって俺を案内してくれた。その事で俺がこの空間について色々と調べまわっていたとき。彼女は俺を呼び出したのである。

その事に対して俺は彼女に対して何のために呼んだのかを訪ねてみると。俺の体の状態を元に戻すためのヒントをあなたに与えるためだという事だそうだ。その事に対して俺は、この世界で起きている事に俺が無関係でない理由を教えて貰おうと思って、それを頼んでみたのだ。しかし彼女は俺をその事に巻き込みたくないと思えているらしく、俺にヒントを授ける気は無いらしいので。仕方なく俺もあきらめる事にしたのであった。

そして、彼女は俺の事を、水がいる世界に戻してくれないかという事を頼まれたので俺は、そのことに協力する事を承諾する。

それから俺は俺自身の事を知るために彼女の質問に対して嘘をつくことなく全てを教えることにしたのである。そうする事によって彼女は俺に真実を知ってもらい。それを踏まえて俺の今後の事を決めてもらいたいと願っているからだ。そこでまず最初に、どうして俺がこの精神世界に来ることになったのかについては分からずにいるのである。だからそのことについて説明をしてくれる人が現れるかもしれないと伝えたのだ。そしてそれから。なぜ俺がこんな風に姿を変えられるかと言えば俺は人間ではない存在だからという事と、今の肉体には元々人格が存在しないのだけれど、俺はその肉体を借りて活動している状態なのだと言う。それから、どうして俺にこの世界での生き方が分かるかといえば、俺は記憶を失いはしたものの、その前に俺はこの世界に訪れて生きていたから。つまり俺は一度、この世界の事を見て来たのだと説明したのだ。

それから俺は、自分の体に戻れればこの世界から出て行けることも彼女に教えた。その事を教えたときに俺は俺の体に早く戻りたいと考えるのであった。その事を説明するのと同時に、これからこの世界で何をすればいいのかということも一緒に考えて欲しかったのだ。その事を俺は彼女に頼むと。俺にできる限りのことはすると言ってくれたのである。その言葉に、俺は心の底から感謝して、そして。その言葉を嬉しく思うのであった。そこで彼女が少し席を外してくれというので、俺もその通りにするのである。

そこで彼女は俺の魂だけの存在になる前の事を知っているような口ぶりをしていたのだが、どうしてそんな事を知ったのだろうか。それにその知識があるおかげで俺の体を元の形に修復させることもできると言っていたのである。しかしその方法を聞いたところでその方法がどのような方法で行われているかも分からなければその方法を実行することはできないだろうし、どうしたら実行できるのかどうかもわからない状態だったのである。

それから彼女が、今すぐ戻るつもりなのかどうかを確認するので俺としては一刻も早い方がいいと思うと答えたら、なら急いでやろうといっていたので俺は彼女の力を借りながら元の場所に戻れることになったのだ。そして俺は自分が元々存在していた体に戻っていった。

そうやって俺は自分の本来の姿を取り戻せることができた。だけどその時俺は自分の意識を取り戻すことが出来なくなってしまい、それと同時に意識を失う。そして気が付けば再びあの白い部屋にいたのだ。俺は一体何が起きたのか把握できない。すると目の前に姫神が現れ。大丈夫だったのかといったことを俺に訪ねてきてくれたのだ。そしてそこで姫神が助けに来てくれて。そして姫神と一緒にここまで戻ってきたと俺がいうと姫神はそうだったのかと言い俺を助けてくれたことをとても喜んでくれた。しかしそこで問題が発生することになるのだ。水希と名乗る女性が現れたことによって水希がこの場に現れると。姫神に向かって水樹の仇をとるといい始めたのである。そこで水希の攻撃を水は姫神の能力によって防ぐのだが。姫神の能力によって水樹を殺されていたことを思い出してしまい。怒りが頂点に達すると。水希のことを殺し始めるのである。しかし姫神の攻撃に対処できなくて水は致命傷を受けてしまう。それで俺達のいる部屋に大量の血が流れ始めた。そこで俺はそのことに慌ててしまったがすぐに落ち着きを取り戻したのである。それから、俺は自分の体に意識を集中させて元に戻るようにと願い。それで俺は俺の姿に戻ることに成功したのであった。それからしばらくして水希は死んでしまっていたが姫神の力で生き返らせて、それで水は安心することが出来た。そして水は姫神のおかげで救われたのだということを改めて理解したのである。そして姫神は自分の本当の名前を教えてくれるという事になったのだ。そこで俺達は姫神の本名を聞き出そうとした。

そこで私は貴方達に本名を告げようとするのだが。何故か、私の本当名前は思い出せないので。貴方達がつけて欲しいのですがという事を言ってくる。俺はそんな姫神の様子を見ながら。その事については仕方がないと思ったのだ。なぜなら、彼女が本当に神様であるのならば名前を明かすことが出来ないというのも納得ができたので俺は姫神が気に入ったように名付けることにするのである。

それから俺と姫神はお互いに顔を合わせてお互いの名前を言い合い笑い合うのであった。

そのあとに、俺達は俺の家に戻り、水樹の亡骸の前に立つ。そこで、俺達は再び俺の家族として過ごしてくれるのかというと。二人はその事を快諾して受け入れてくれるのであった。

「なぁなぁ!今度の土曜日、暇?」

昼休みの教室、お弁当を食べ終えた後の気怠げな喧騒の中、一人の男子生徒が突然そんなことを言って私を見下ろした。

唐突な問いかけには、いつも通り答えておくことにするわね? だって私と彼の関係はもうずっと前から決まっていることだもの── 彼は私と同じ中学出身の先輩でありクラスメイトでもある幼馴染み。同じ学校へ通い同じ学年、クラスになって3年目の今でも時々こうやってきて、こうして一緒に帰る約束を取り付けようとしてくるわ。

私の名前は白坂真琴。ちょっと背の高い普通の女の子。

そして私の目の前にいる彼こそは私の幼馴染み、白木悠馬君よ。背が高くて髪が茶色くて、よくモテるって聞いているわ。

今日は彼と二人っきりの下校日、毎日一緒だなんて羨ましいでしょう?でも残念ね、これはただの"幼馴染み同士"でしかない関係なんだから、付き合っているわけじゃないの。

でもまあ、私が誰かに取られるんじゃないかと心配しているんだろうけど、今のところ彼にそういう気持ちはないみたいなの。私のことが好きだとかなんとか、たまに言うことがあるけれど。

「別にいいけれど」

彼が何のために誘ってきたのかなんてわかっているの。私が、私の家の家事をやるからだ。

私が両親に一人暮らしを勧められたとき、「自分でなんでも出来るようになるから、料理洗濯家事全般全部一人でやってみせるから、だからお願い!」って土下座して頼み込んだくらい。もちろん最初は反対されていたけれど、結局押し通す形になっている。

両親がいなくなればきっと私が楽をしたいだけなんじゃと思われていることは明白よね。

まあ実際そうだからしょうがない、としか言いようがないんだけども。

「やったーっ、じゃ、土曜な、絶対忘れんなよ、絶対だぞ、絶対に空けとけよ、約束したかんな、な、絶対な!」

大喜びしながら、それだけ念を押すようにして帰って行く彼を見ながら思うの。

どうしてわざわざ私に確認を取ってくるのかしら。私が断ることなんか、万に一つもないのに。

*

「お邪魔しまーす、あれ?」土曜の午後2時。

玄関のチャイムを鳴らし、ドアを開けた先にあるのはいつもの靴とスニーカーの山。どうもまだ両親は帰っていないみたい。

私はそのまま、慣れた足取りで一番近い和室に向かう。そしてそこに敷いてある布団の中に潜り込んでみた。

ううん、この匂い。これがないと一日を終えた気分にならないのよね。落ち着くというかなんというか。

しばらくゴロゴロと寝転がり、そろそろいいかなって頃合いに目を開けてみると。視界に、人の手が入ってきた。その手の先にあるものはもちろん布団をめくった手。その主は言わずもがななのよね。

見上げると、そこには呆れた顔をする悠馬が立っていた。

さて。どうせこの人はこのままだと、掃除をするなり、夕飯を作る準備を始めるなりするはずだけれど。それでは面白くない、というか、もどかしい。

なので、私はあえてこの場でこんな提案をしてみるの。

「"一緒に遊ぼう?"」

この声音と目線に込められた感情は。『ねぇ遊んで?』

「はいはいっ、わかりましたよお嬢様。で、何で遊ぶ?」

そして、私の意思が伝わったらしく、このやり取りは終わり。

私は、今度はちゃんとした笑顔を作り、答えるのだった。

「えっとねえ、じゃあ鬼ごっこにしましょう、悠馬は逃げ役で私は追いかけ役、ね?」


* * *

どうしてなのかしら。私は今年に入って何度目になるかもわからない、その言葉を口にするの。

この問いに対する返答もまた、今まで何度も繰り返してきたもので。だけどそれでも。

毎回違う言葉で返してくるの。それが嬉しくて、楽しくて。だから。

いつまでも続いてくれればいいのに、と思うわ。そしていつか終わるのだとしても。それまで精一杯楽しめたらいいなとも。そう思えるようになったの。あなたと、出会えたことで。

でも。そんな幸せな時間が長く続くことはない。それは知っていることなの。

「ねえ。明日のデートなんだけど」そう。その日が来ることを。その事実だけは、決して変わらない。

私達の時間は有限なのだから。いずれ別れのときはやってくる。それを覚悟しなければ。

たとえ、それがいつ訪れるかわからなくとも。

「どこに行くつもりなの?私は悠馬の行きたいところでいいわ」

「ほんと!?いや、迷っていたんだよ、どこにしようかなぁ、って。

遊園地、動物園、映画にショッピングもいいかもしれないけど、やっぱし真琴と過ごすならここが一番だよな! じゃ、決定!俺に任せとけっ!」

いつも通り元気で快活に笑う彼を見ていると私まで釣られて笑ってしまいそうになる。だけど。今回はそうはならなかったわね。何故なら──彼の口から放たれた言葉に驚いたのだもの。"俺達"と言ったのかしら?まるで二人で遊びに行きたいと言わんばかりに聞こえるのだけど?まさか、そんなことってありえないはずなのに──いえ!そうよ!きっと聞き間違えたのね。うんそう!間違い無い!だって彼はこう言ったんだもの──

『真琴の好きな所で良い』って───!!︎──ああ!私の心臓が爆発しそう!!! だけど、その日は私の心の中にあったわだかまりのような不安はすっかりどこかへ飛んで行ってしまったわ。

それから私たちはいつも通りに話をしていつもと同じように帰ったのだった。

*

「お待たせっ!」待ち合わせ時刻ぴったりに彼女は来た。彼女の服装を見るに気合が入っていることは容易に想像がついたが。俺もそれなりに格好を整えてきている。これを見て何も思わないわけがない。「おぉ、なかなか気合い入れてるじゃん。可愛いなぁ」「え、あ、ありが、とう?えへへ」少し恥ずかしがりながらも満更でもない表情を見せる彼女に俺はドキッとさせられたのであった。

──── それから俺達は電車に乗り目的地へと向かった。そして降りた先は─水族館前。ここにしたのは特に理由があるわけではないのだが俺達は自然とここで降りていたのだ。

真琴は早速入場口に並びチケットを買うと館内へと進んでいった。俺もそれに続いたのだが。

──正直言って真琴に見惚れていた俺は真琴に腕を組まれ引っ張られる形になっていたのである。「ちょっとこっち見て?似合うかしら?」と尋ねられたが生返事しか返せなかった俺は悪くないはずだ。「あのね。私の家ね。家事の分担とか色々決めたいの。これからずっとやってくことだもの。お互いの負担を減らすために、まずは何が出来るのかを確認しておいた方がいいでしょう?だから悠馬の得意なことを教えて頂戴」そんなわけで。俺達がやってきたのは服屋だ。

「なあなあ。このジャケットなんかいいんじゃないか?結構シンプルで使いやすそうだぞ?」と、店員さんを呼んだ悠馬君は真琴が気に入ったものを選んでくれるようだ。「う〜ん、そうね、それも良さそうだわ。じゃあそれとあとこのニット帽をお願いします」そして真琴が選んだものも試着し、お互いに意見を交換して買ったのは真琴が黒で悠馬が灰色のもの。「じゃあさ。今度はこれを付けてほしいんだけど、どうかな?」「おう、分かった」と言って悠馬君が取り出したのはカチューシャ。それは白でレースのあしらわれた可愛らしいものだった。そしてそれを装着。「どうだ?似合ってるか?」「はい。凄いわね。やっぱりあなたは何でも出来ちゃうわね。私なんかよりも、ずっとずっとすごいわ」と微笑む真琴の表情には一点の曇りもないように見えるが。その裏にあるものを、俺はまだ知ることはできなかったのだった。

その後、ゲームセンターでクレーンゲームの景品のぬいぐるみをとってプレゼントしてくれたりした。(その際も当然のようにお金を払っているのに、また後日にでもと頑として譲らない姿はとても愛おしかった)

だが、この後に起こる出来事のことを考えれば、その時のことをあまり深く覚えているわけにもいかないだろう。何故ならば、俺の記憶に残るべき思い出はこの先に待っているものだから。

だから、この時の光景はあまり鮮明に記憶しているわけじゃない。ただただ、その楽しそうな姿を眺めるだけだから。

「じゃあ次はどこに行こうか。行きたいところがあったら言ってくれ。今日一日は付き合うよ」

そして次に向かった場所は本屋の参考書のコーナー。そこで俺と真琴はそれぞれ別々のコーナーを見て回ることになった。


* * *

私は本を選ぶ。料理、掃除、洗濯、洗濯機やアイロンなどの家電製品の操作法などなど。私はそれらのことを悠馬から学ぶ。これは私の役目であり、彼がやりたいと望んでいることでもあるから。彼が望むことなら私はなんでもやるつもりだ。例えそれが── 私を好きになってくれないという願いだとしても。「お待たせ!」本をいくつか買い、私が会計をしている間に外に出ていてくれた彼と合流し、私達は近くのカフェに入った。そして席に座り、ひと息吐いた瞬間。

──私は意識を失ったのだった。

「ふぅ、これで最後だな。いってっ、爪立てないでよ。お前を飼うと大変だってことはわかっているけど。俺だってもう高校生なんだぜ?」そう呟きながら猫を抱きかかえるのは彼の幼馴染、佐藤悠馬である。この少年は昔から世話好きでよく猫を助けたりするのであるが、動物には何故か好かれない性質だったのである。しかし今はそうではないようである。なぜならばその腕の中には、彼の家で拾った白い毛並みをした子猫が抱かれているからだ。ちなみに、悠馬がなぜこんなにも猫に対して優しいのかといえば理由は一つしかない。それはこの目の前にいる少女が関わっている。そう、この子が来なければ、この子と会えなかったおかげで今の自分があることを忘れてはいけないのだ。だからこそ、自分が出来るだけの恩返しをしてあげたいのだ。たとえそれが、彼女が求めていない事だったとしても。

(この先どうなってしまうのでしょうか。このまま、私の気持ちを悟られないように、彼には接しなければならない。でもそれは同時に私の恋の終わりを意味する。でも、それすら覚悟してこの選択をしたのは他でもない私自身なのですから、せめて最後までやり通すつもりでいます。

ですので私はあなたを信じていますよ、水。

この世界に干渉できない以上は。この世界での私達は他人なのかもしれません。だけどあなたは私の大切な親友であることは変わらない。それだけは忘れないで下さい。私は──あなたの味方です)


* * *

俺は、夢を見ていた。昔の頃の俺達の夢を。その懐かしい日々を思い出すのが、俺は大好きであったのだ。だが──今となってはその時間を過ごす事は出来ない。そう、俺達はこの世界の歯車を狂わせてしまっており。この世界において本来であれば出会うはずのない俺達が出会えたことで本来の運命が変わり始めてしまっていたのだ。


* * *


* * *


* * *

──悠馬と出会って、数ヶ月が経った。悠馬のいない生活なんて考えられないくらい、彼と過ごした日々は充実していた。でも──悠馬の想いに応えることは出来ない。彼のことを思うと、胸が張り裂けそうになるから。そしてその辛さを紛らわす為に私は他の人を求めてしまうかもしれない。それが怖くて、仕方がないのだから。

だから、悠馬のことが大好きな私は悠馬から離れようと決心したのに。

──どうして?なんで私はあなたと一緒に寝てるの?私達の関係は恋人なんかじゃないはずでしょう? そして朝起きて最初に見た光景に愕然とした私は慌てて着替えて部屋を出て行ったのであった。「あれ?どうしました?真琴さん。もしかしてお疲れなんじゃありません?昨日も遅くまで勉強なさってましたもんね。あ!もしかして夜中に小腹が空いたんです?そういえば真琴さんってお野菜とか果物が好きなんでしたよね?分かりました!お昼にサラダ作っておきますね!」とニコニコしながらそんなことを言う彼女の言葉に嘘偽りはないことはすぐに分かったのである。つまりこれは、私を休ませるためにわざとやったことなのだと。そう思った。そう思えば、私は彼女に強く出ることが出来なくなってしまうのであった。

「うん!美味しいっ!ありがとね!悠真くん!」そんな彼女の笑顔が、眩しい。でも。それと同時に私の胸の奥は締め付けられるような痛みに襲われていたのだった。


* * *


* * *

*

「ねえ。ちょっといいかしら?話したいことがあるの。私の家に来て欲しいの」

放課後。彼女は唐突にそんな事を言って、私に付いてくるように言って歩いて行ってしまったのだった。だけど私はそれに大人しく従う。

だって彼女の様子がどこかおかしいことに、私は気がついていたのだから。だけどその理由を知る術はなく。結局彼女の家にお邪魔することになたのだ。

「それで、何の話なのかしら?まぁ予想は付いているんだけどね。きっと私の事でしょ?」

「ええ。その通りよ。だけど勘違いしないで頂戴。私が真琴ちゃんの事を嫌いになるなんてありえないわ。絶対に」

「じゃあ何を言って──」

「ええ。真琴さんが言いたいことは分かってるわ。だって、悠真君はあなたのことばかり気にかけてるもの。あなたも薄々は気がついているのでしょう?彼は私より真琴さんの方がいいんだって」

「違う!私はただ。私は──!」

私はその続きの言葉を口に出すことができなかった。

それはあまりにも惨め過ぎるから。私にとって唯一の救いだったものを。失くしてしまった私にはもう、この感情を止める方法はないから。「ごめんなさいね、意地悪なこと聞いちゃったわ。でも大丈夫よ?安心して。私がなんとかするから」

そんな彼女を見ていると。

「お願い、します。彼を。救ってあげてください」私は、そんな風に言わざるを得なかったのだった。

「もちろん。その為にここに来たのだからね」

そして、その日から水と悠馬の間に亀裂が入り始めたのだった。だが、まだこの時は二人とも良い関係を保っていたはずだったのである。だがある日、いつも通りのデートをしている時のことだった。悠馬がいきなり真剣な顔つきで私に向かって言ったのだ。「なあ、お前が俺のことを想ってくれていることは知ってるよ。だけど、もう少し待ってくれないか?俺が本当に、お前のことを愛し抜くことができる男になったその時までは」

──この言葉を聞いた時、私の心臓の鼓動が跳ね上がったことはいうまでもない。だって、それは私のことを好きでいるのと変わらないようなものだから。でも私は素直にその言葉を喜べず。

「どういう意味よそれ?それじゃまるで──あなたは他に好きな人が居るみたいな言い方じゃないか」と。そう聞いた私は一体どんな顔をしていたのだろうか。それは私にもわからない。だって。その時に見た彼の表情はとても悲しそうなものであったから。だが私はそこで踏み止まって、この話を終わらせておくべきだったのだ。だってこの後から。私と彼の関係性は、少しずつおかしくなっていったのだから。そして。

あの時の水は俺が今までに見てきたどの表情よりも悲痛に溢れている表情をしていたのだから。

その表情に思わず目を奪われてしまっていると突然、目の前にいた水は倒れ込んでしまうのである。そして慌てながら近寄ると俺のことを見上げてきて、苦しそうな声で、

「悠馬、助けて。苦しい、体が焼けるみたい。あ、熱いよぉっ」と言い出した。そして、次の瞬間、水の全身から火柱が立ち昇り始める。そこでやっと我を取り戻した俺はすぐさま彼女に駆け寄ろうとしたのであるが。

(──だめだっ!ここで動いたらまた、同じ過ちを繰り返してしまう)そう思い留まり。

水の様子を観察しているとその体からどんどんと煙が上がり続けているのだが、それでも一向に燃え尽きることなく今も尚、彼女の体を焼いているのであった。これは明らかに異常な光景だったのである。

俺は咄嵯にスマートフォンを取り出し、119番に連絡をする。それから数分後。消防車が到着し、その人達によって、すぐに消火活動が開始された。だが、それでも炎が収まる様子は全くなかったのであった。それどころかその勢いは増していく一方で。これはもう無理だと俺は諦めかけていた。しかしそんな状況の中で、水が、俺の名前を呼ぶ声が聞こえたのだ。俺がその方向を見てみると、水は既に上半身は殆ど炭化している状態だった。その姿を見て、今更後悔したところでもう手遅れなんだと思いながら、せめてもの慰めとして、彼女の頭を優しく撫でると彼女はこちらに手を伸ばしながら。

「悠、ま、くん、だい、す、きだよ、愛、して、る。だか、ら。幸せに、なって、くださ、い」そう途切れ途切れの声を絞り出して、最後に笑顔を見せると完全に灰となって崩れ落ちたのである。そしてその出来事を境に、俺は──。この世界の住人ではなくなってしまったのだった。

そして。次に気がついた時には、この世界にやってきていたのであった。

──目が覚めるとそこはベッドの上で、周りには誰もいなかったので起き上がってみることにする。

ここはどこだろうと不思議に思って部屋から出るとそこにはメイド服を着た少女がいたので、私はその人に話しかけてみることにした。その女性は水鏡水という名前で、私のことを探していたようで。私が目覚めたことを告げると、その人は私を別室に案内して。そこで事情を説明されることとなる。

どうやら私は異世界からの転生者であり、この世界で死んだ人の魂を回収する仕事をしており。私が目覚めるまでこの屋敷の管理を任されていたらしいのだ。ちなみにその仕事は神様が与えたものであり、私の意思とは関係ないそうだ。だけど、こんな可愛い子が担当になってくれていて良かったと心底思う。

そして私は彼女との会話を楽しんだ。彼女が話す話は面白くてつい夢中になってしまうくらいに面白かった。そして話を聞いていると私は彼女と同じ神であることが判明して、彼女と一緒にお茶をすることになった。

その最中。彼女から、悠真君について色々と聞いてきたので私は彼に恋をしてる事を話す。すると彼女は嬉しそうに微笑んで。

「やっぱり真琴さんならそう言うと思ってましたよ。実は彼もあなたに会いたがっていたんです。だからあなたがこの世界にやってきたことは必然なのですよ」と言った。

私はそろそろ本題に入ってもいいんじゃないかと思ったので私は単刀直入にこう切り出したのである。「悠馬君に会わせてもらえませんか?」と言うと、彼女はしばらく悩んでいる様子であったが。「分かりました。会わせてあげましょう」と言ってくれると私は少しホッとしたのだ。これでようやく彼と会うことが出来る。だけど、そんなに上手くはいかないもので──。私が彼と会った時。既に彼は水鏡水のものとなっていたのだ。だから私はその事を水に報告した。

「ふぅん。じゃあしょうがないですね。じゃあ代わりに真琴さんのお願い事を一つだけ何でも聞きますよ。何が望みですか?」

その質問に対して私が望んだことは──「じゃあ私はもう一度やり直すわね。悠真と結ばれるように。今度は失敗しないようにしないと」私は、そんな決意を胸に秘めてこれからの事を考えるのだった。

僕は今、とある場所に来ている。そこはもちろん真琴さんとのデートの場所である公園である。そしてその中央に位置する大きな桜の木の下に座って、真琴さんが来るのを待っているのだ。

──それにしても今日は本当にいい天気だ。雲ひとつない快晴。絶好のデート日和とでも言えばいいのだろうか?そう思っていると、後ろの方から僕の名前を呼ぶ女性の声が聞こえてきたのである。その声の主に気がつくと。僕はゆっくりと立ち上がりその女性の元に駆け寄り抱きしめるのであった。

そしてしばらくの間。彼女のことをギュッと抱きしめた後、お互いに名残惜しそうに離れるのである。その後にその人を見つめてその容姿を確認してみると、それはやはり予想通り真琴さんの姿があった。

「悠真くーん!会いたかったよぉ」そう言いながら真琴さんは飛びついて来てそのまま押し倒されてしまったのだ。その衝撃で地面に倒れ込んだが、幸いなことに怪我はなく。ただ真琴さんが頭を打っていないかどうか心配だったが。それは特に問題はなかったようである。

──その後。お互いの顔が見えるくらいに距離をとると真琴さんが何かを話したいことがあるのか僕のことを見つめてくるので、その意思に応えることにした。

「それで真琴さん、用事って何なんですか?もし、僕に関することであれば遠慮なく言ってください」

真琴さんはその言葉に驚いたような表情を浮かべるが、それも一瞬だけですぐに表情は元に戻り。その表情からはどこか覚悟を決めたかのような真剣な雰囲気を感じることができたのである。その事からも僕は余程のことだということがわかり身構えてしまう。だがそんな緊張感漂う空気の中で、彼女の口から出た言葉はとても簡単なことだったのだ。

「ええっとね、私と、付き合ってくれないかな?悠馬君」

──だがこの時、彼女は何を言っているのかわからなかったのだ。だってまさかこんなタイミングで告白されるなんて全く考えていなかったから。だからこそ理解するまで時間がかかってしまったのだった。

しかしここで何も返事を返さない訳にもいかずにとりあえず彼女の顔を見ながら「ごめんなさい」と答えると、その答えが分かっていたかのように「だよね」と言いながら寂しげな笑顔を僕に向けてくる。

──どうしてだろう?その表情を見た時。なぜかは分からないけど胸が苦しくなった。それはまるで心に傷を受けた時に感じるような感覚に似ている気がする。だがその理由が分からないままなので僕は真琴さんに理由を訪ねてみたのだった。

すると彼女は「ううん、気にしないで」と優しい声でそう言った後、自分の頬を叩き、再び強い瞳を見せながら。「大丈夫だから」と僕に向かって言ってきた。それはとても頼もしく見え、この人の傍にいたいと思わせるほどのオーラを感じさせたのだ。だがそれと同時に僕はこの人がなぜそこまで頑張ろうとするのか疑問を持った。それは普通ならばありえないことのように思えたからである。だからそのことについて尋ねようと思っていると突然。彼女の雰囲気が変わったのだ。今まで感じられた優しさが一気に消え去り、冷たいものになったのだ。

(いったい、どういうことだ?)そう思いながらも、警戒はしておくべきだと思いながら彼女の様子をうかがったのだが。彼女の方からも僕に対する興味をなくしたように「じゃあね」と言って去っていこうとしていた。

そこで僕は「ちょっと待って下さい!」と、彼女を慌てて引き止めたのであった。しかし彼女は僕の言葉を遮り「ごめん、今は放っておいて。また連絡して」と言い残すと走り去ってしまう。

結局。彼女を追うことはできなかった。追いかけてどうするつもりなのかと自分に問いかけると分からなかったから。だから僕は彼女が立ち去った方向に背を向けると、真琴さんを待ち続けるのであった。

*

* * *

私は今。公園の中を走っている。別に急いで帰らなければいけないわけではないのだが、どうしても悠真君のことを考えてしまうと居ても立ってもいられなくなってしまうのだ。

そして走ることで気を紛らわせようとしたのだが全然効果がなく。さらに悪い事に、私が走って帰る姿を見ている人の目線を感じたので仕方なく歩きに変えようとするが、それでもやはり、あの時の光景が頭に浮かび、私の気持ちは落ち着くことがなかった。

そのせいで私は周りを見る余裕がなかったのだ。そのおかげで人とぶつかってしまい、地面に転倒してしまう。だけど私はすぐに立ち上がり謝罪しようとするとそこには見覚えのある男性の姿があり。その姿を見て私は安心感を覚えたのだ。

──この世界に来て初めて知り合った男友達。名前は、たしか、『黒瀬』君といったか。

「大丈夫かい、水鏡水」

その言葉を聞きながら私は彼に助けられたと気付いた。そして彼が私の名前をちゃんと知っていることから、彼が真琴の彼氏だとわかったのだ。

私は助けてもらったお礼として一緒に歩くことになったのだけれど。そこで私は彼と真琴の仲の良さを目の当たりにしてしまい。嫉妬の感情に苛まれることになる。だけどその時は真琴のことを忘れるように努力をして何とか平静を保とうとしたのだけれども。なかなか思うようにはいかなかった。そこで彼は私に対して何かを聞こうとしているみたいだったので私はそれをはぐらかすためにも適当な話題を振ることにする。

するとそこで、私はこの男が私と同じ神様であることに気付いたのだ。しかも私と同じ『勇者召喚係兼管理担当神補佐役(笑)の人』だということまで判明した。その事が分かり。私はこの人のことをもう少し詳しく知る必要があると考え。色々と話を聞いてみることにする。だけど彼の話を真面目に聞いているうちに何故かだんだんと眠くなってきたので、寝たふりをすることにして、そしてしばらく経って目が覚めた私は、自分がどこにいるのかがわかり、少しだけ驚いてしまう。だけど私は冷静にその事を分析してみることに決めるのだった。

まずこの場所について調べるために周囲を見渡そうとすると目の前に男の子がいる事に気付き。そしてその男の子の顔をよく見てみると、悠真君だという事に気づいて驚きつつも少し嬉しくなる。

──悠真君とはついさっき別れたばかりでこんな短時間で再会するとは思ってもみなかったので嬉しかったのだ。

──その後。悠真君とのデートの場所で悠真君と会ってしまったのは本当に運命的な偶然であり奇跡のようなものなのではないかと思えるほど嬉しかったが同時に罪悪感に襲われていたのであった。

僕は今、公園の近くにある喫茶店に来ている。

ここに来る前に水さんは急用を思い出したのでもう帰りますと言ってどこかに行ってしまった。そして水さんを見送った後に、僕が一人になると。

「水鏡さん、帰ったんじゃなかったの?まあそんな事は置いといて、隣に座ってもいいかな?」

その声が聞こえてきた方に顔を上げるとその人物は、真琴さんのクラスメイトにして親友である白谷真司先輩だった。真琴さんの彼氏の悠馬君の双子の弟で、真琴さんのことを心の底から愛しているという変態である。そんな真先輩を見ていると僕はあることを思い出す。真先輩はこの世界でも僕のことを助けてくれた人物なのだ。その事で僕は彼にお礼を言おうと思ったので、僕は彼に話し掛けたのだ。

「はい。僕は大丈夫です。それよりも真先輩はどうしてこちらの世界に来られているんですか?それに他の人達はどうしてるんでしょうか?僕に分かる範囲であれば教えて欲しいので」

僕の言葉を聞いた真先輩は少し悩むそぶりを見せたが。すぐにその答えを教えてくれる。

「うーん。じゃあさ、とりあえず、俺達と水ちゃん以外に、今どんな状況なのか簡単に説明するよ。実はね。こっちの世界と向こうの世界の時間が繋がってるみたいなんだ。で、今はまだ夜中なんだけど、なぜかこっちの世界で朝になってて。みんな起き出してるんだよね。俺は今日が学校休みだからずっと起きててさ。そしたらちょうど水ちゃんが外に出て行って。俺の所に来たんだ。それで、二人でこの辺りを見て回ってたってわけ」

その話を聞いた瞬間。僕は嫌な予感を覚えてしまう。その予感が当たらなければいいなと思っていたのだけれどその考えは無駄だったようで見事に的中してしまったのだ。つまり。真先輩の話を聞く限り、時間軸はズレているがこの世界では時間は経っていないということらしいのである。そして、それは。僕がこの世界に来る時に体験したことでもあったのだ。僕はその時のことを思い出すと、冷や汗を流しながら真先輩の顔をうかがう。

──僕のこの予想が正しいかどうかを確認せずにこのまま帰ることもできるが。僕にとってこの異世界はかけがえのないものであり。大切な人が暮らす場所でもあるのだ。その事から僕は意を決して、そのことについて質問することにしたのである。

「それでその。もしかして真先輩達が来た理由は。悠馬兄さんと沙也加義姉さんが原因とかってことはないですよね?例えば、二人がこの世界に転移させられたとか」

その問いに対して、真先輩は何も言わずに僕を見つめ返してきた。その表情にはどこか哀れみの気持ちがあるように思えた。その表情で僕の考えが正しかったことが分かってしまったのだった。

──僕が異世界にやって来た時、悠馬兄の能力が暴発していた。そしてその現象に巻き込まれたのが、僕と一緒に来た水さんだった。僕はその時の事を思い出すと胸が痛むような気がした。

だが今は、僕のせいではないのかもしれないが、水さんがこの世界にいることに責任を感じてしまっていた。

そしてそんな事を考えていると、真先輩が申し訳なさそうな声で話しかけてくる。

「うん、そうだよ。悠馬が、水鏡さんと一緒じゃないから心配だって言うものだから、仕方なく連れて来たんだよ。一応、あいつの能力も抑えることに成功しているから、今は落ち着いてるはずなんだ。でさ、水さんがこの世界に飛ばされたことに気がついた悠馬が、それを追いかける形でこの世界にやってきたんだ。だからあの二人を責めないであげてほしい」

──どうやらこの二人は、僕と同じように。水さんを心配してやってきたようだった。僕が異世界に行った時と違うのは、この世界の人たちを巻き込まないでくれたことだ。僕はそのことに対してほっとする。だが同時に、僕はどうするべきなのかを考えてしまう。なぜなら僕はもうすでに悠真兄と沙也加義姉の力によって元の時間に戻れることは分かっているからだ。

──だから。悠真先輩が水さんの側にいるなら問題ないと思えたのだ。

そこで僕は考えることを止めると「じゃあ、僕、水さんの後を追うので。真琴のところにでも行ってくれませんか?」と頼んでみることにする。だが真先輩はその頼みを断ったのだ。そしてその理由を聞いてみるとどうやら僕に話したいことがあるからこそ、わざわざ追いかけて僕のところまでやって来たようだ。なので僕は話だけは聞くことにする。すると真先輩は、真剣な眼差しで、衝撃的な言葉を口にする。

「水ちゃんと、別れろ」

「はい?」

「お前も薄々わかっているだろ。もうこの関係は終わっている。だからもう終わりにしろと言っているんだよ。それが嫌なら、せめて、あいつが傷つかないようにしてあげてくれないか?」

──何だよ。その言い方は。

確かに真先輩は僕のことを助けてくれた人だけど。

それでも許せないものがあるんだ。僕はそう思うとついカッとなり真先輩を睨みつける。しかし彼はその僕の態度などお構い無しと言った様子で話を続ける。

「今頃水ちゃんと、悠真は、二人で幸せにしているだろう。だけどさ、それは、あの二人にしかわからない気持ちで。それを俺が口を挟むなんてできるわけがないじゃないか」

「何を言って」

「俺はさ、お前と水ちゃんの関係に、水を刺すような事はしたくないけどさ。それでも、やっぱりダメなものはダメなんじゃないかと思う」

その言葉を聞いた途端。頭に血が上ってしまい。気が付くと、僕は、目の前にいたはずの真先輩の姿を見失ってしまう。そして背後を取られると同時に。後ろを振り向く前に首筋に手刀を叩き込まれてしまい僕は気を失ってしまったのだ。そして気を失う直前で真琴さんの声が聞こえた気がしたが僕は意識を手放してしまう。最後に僕が見た光景は、こちらに駆け寄ってくる姿の真琴さんの姿だったがその顔を見ることはできなかったのであった。

私がこの公園に戻ってきて目にしたものは。私のよく知る人物、黒瀬真が地面に横たわっているという光景であった。私はその事に驚きながらも急いで真の元まで走る。するとその途中で、悠真君とも遭遇して。事情を聞きだすことに成功すると、その話を信じることができず。ただ唖然と立ち尽くすことしかできなかった。だけど私はなんとかして、私のせいで真がこんな状態になってしまったという事を理解しようと努めた。だけどどうしても頭の中では理解できず。混乱してしまい。悠真君に助けてもらい。家に帰ることになったのだ。

そこで私は。家に帰りつくまでの間に、これから自分がすべきことを考える事にする。その結果私は真に対して誠心誠意謝ろうと決意したのである。だけどその謝罪を受け入れることができるかは別だと私は思いながら家の玄関を開けたのだった。

僕はその瞬間目を覚ます。それからすぐに周りを見渡すとそこは見慣れたリビングであり。隣には見知った女性がいることがわかると。すぐに警戒するように距離を取ろうとするも、腕と足を縄で拘束されていることにすぐに気がつく。そして僕は水さんに向かって話しかける。

「これはどういうつもりなんですか?僕がいったいあなたに何をしたというんですか?」

その言葉を聞くなり水さんはこちらを見ると笑った後に僕に向かって話しかけてくる。その顔はどこか狂気を感じさせるような笑顔であった。

「あらあらそんなこと言っていいのかしら?そんなことを言ったらまたあなたの大切なものを奪うだけなのに」

彼女はその顔のまま。まるで子供のように笑いながらそんな事を言ってきたのだ。そんな彼女に僕は、自分の置かれている状況から、僕が殺されるという事はないだろうと思いながらも彼女の質問に答えることにした。まずはこの状況をどうにかする必要があるのだ。だからその事を最優先に考えて、この女と話すことにしたのだ。それにしても僕はどうしてこの人に捕まったんだろうか。僕は水さんの方に視線を向けて。彼女と出会った時の事を思い出していた。

──僕は彼女との会話を終えてからすぐに帰宅することになった。水さんは少し戸惑っていたが僕の後を付いてくることになったのだ。そこで、なぜか一緒に歩いていた悠真兄と水さんに話しかけられる。僕は水さんの方を見て少し考え事をしているふりをしてから。二人との話を始めることにした。

悠真兄はいつも通りに僕に声をかけてくれるが。水さんとは目を合わせないようにしていたのである。

その後。僕は水さんと悠真兄、そして水さんに付き従う形でついてきていた二人のクラスメイトである白谷先輩と一緒に下校をする事になったのだ。

悠真兄に水さんが僕のことについて何か聞かないのか? と聞いたところ悠真兄はその事について何も聞いてこなかったのだ。なので僕もそのまま水さんと二人で帰って行ったのだが。その際にも水さんは特に話しかけてこなかったのである。そして僕達が別れてから数分後のこと。僕は何者かに気絶させられて今に至るのである。だから僕は悠真先輩の言葉の意味を、正確に読み解くことができなかった。

──僕と水さんの関係は終わりを迎えていて。だから、これ以上関わるなってことなのか? ──それともこの世界に転移させてしまった事を気に病んでいるから。もう会わない方がいいと言っているのかもしれない ──あるいは水さんに振られたのに、いつまでも未練を残している僕への嫌がらせってことも考えられるな。

──でもさ。悠真兄が水さんと別れさせる意味って何なんだ?そもそも水さんが悠馬兄を選んだんだぞ?それこそありえない話だと思うんだけど。

──じゃあなんで水さんが悠馬兄を選んで悠真兄がこの世界に来たってのはどう説明をつける?いや。まさか、悠馬兄がこの世界に来て。それを知った水さんもついてきたとか。ありえなくもないが、やっぱりありえないか。

──とりあえず今は現状把握とこれからの行動を考えるべきだな。

僕は悠真兄の方へと顔をむけると、そこには、水さんと一緒にいたはずの白髪の女性がいたのだった。僕がその事に疑問を持つと。その女性は微笑みかけてくる。その顔を見た途端に僕は、その人物が誰なのかわかったのだ。だから慌てて逃げ出そうとするのだが足にうまく力が入らないため逃げ出す事ができなかった。僕はその事を悔しく思いつつ。その女性が口を開く。

「久しぶりだね」

「なんで、ここに?」

僕はそう言いながら、その女性の顔をよく観察した。するとその女性はやはり僕の記憶にある女性であった。

僕は悠太姉から貰ったスマホを取り出して、その女性の情報を表示させて確認する。

──名前は天川美桜。水鏡高校の三年生。水鏡学園では生徒会副会長をしている。成績優秀。性格は温厚で誰に対しても分け隔て無く接する事ができる。容姿はとても美しく男子からの人気が高い。女子からも慕われる人気者で生徒会に所属している事から交友関係が広く。友達が多い。ちなみに彼女が所属している部活は演劇部で。文化祭の出し物では脚本や監督を担当するほど演技にも定評があり。舞台上での演技力は素晴らしい。

そこまで見て僕は考えるのをやめる。だってこれ。明らかに悠真兄が知っている悠太姉の情報じゃないんだもん。だから僕は思わずその事を口にしてしまう。

「もしかしてさ。水さんって、悠太姉と繋がっていたりしないよね?」

その言葉を聞くなり目の前にいる人物は苦笑いを浮かべた後「やっぱりわかるかな?」と口にしてきたのだ。

「あははは。まぁ一応、私と水さんは姉妹だからさ」

その事実は初耳だったが今はそういうことを話してる場合ではなかった。なぜなら目の前に僕のよく知る人物と瓜二つの人物が居るからなのだ。

だから、目の前の人物は水さんの可能性が高いと思っていた。でも僕は、それを口には出さずに、悠太姉から貰った情報から水さんの本名がわからなかった理由を考え始めていたのであった。もしこの人が本当に、水さんなら、僕のよく知る人物、つまりは水さんの本当の名前で呼んでほしいはず。だけどその事は本人には言わずに。僕はその事を隠したままで話を進める事に決めたのだ。それで悠真兄が水さんの名前を呼ばないことに悠太お姉ちゃんが気づいていないのだとしたら、それはちょっとまずい事になるだろうし。悠太お姉ちゃんが気づいていなかったとしても、僕は、この人の事をお姉ちゃんと呼びたくないし、お兄ちゃんとも呼びたくない。それにお義母さんと呼んでしまうのは流石に違う気がするので、やっぱりお姉さんと呼ぶしかないだろう。僕は目の前にいる人を見てそう判断して口を開くことにしたのだ。

「やっぱりそうだよな」

僕はそう言ってその人の顔を見ながら。水さんの事を思い浮かべるが、正直、その顔は全然似てもいなかった。

「あのさ、悠太君、私と水鏡先輩が姉妹なのは嘘ではないけれど、水鏡先輩は私とはあんまり似ている所はないわ」

「どういう事?」

「水鏡先輩は、私が演劇を始めた時に色々とアドバイスをしてくれたから私は水鏡先輩のようになりたいと思ったから、だから私が水鏡先輩に近づけば。きっと私の事を分かってくれると思う」

「確かに。悠太兄は悠太姉のことが好きだからそのくらいで簡単に騙せるかも」

「うん。そう。私は、ずっと昔から。悠奈さんに憧れていたの」

彼女は笑顔で言うと僕に向かってウインクしてくる。僕はそれに困惑してしまい。とりあえずこの場から逃げようとするも手足を縛られているせいか上手く立ち上がれなかったのだ。

それから僕はなんとかして逃げ出そうとするも、結局は縄が外されることもなく、水さんと二人っきりになってしまった。しかもその状況で水さんと目が合ってしまい僕は少しだけ居心地の悪さを感じていたのだった。

僕と水さんとの沈黙を破るかのように突然部屋の扉が開くとそこから悠太君が入ってきたのである。悠太君は僕達の方を睨んできた後でこちらに話しかけてくる。

「水、こいつはお前に相応しくない、さっさと帰れ。俺はそいつと二人で話がしたいんだ。水には用事があるとでも言えばいいだろう?」

その声を聞いて水さんは悲しげな表情になると、そのまま部屋を出ていってしまう。僕にはなんと声を掛ければいいのかわからず。ただ見送る事しかできなかったのだ。するとそんな僕の方へと視線を向けてくる悠太兄さん。その目は先程までとはまるで違っていて、その迫力に負けそうになった僕は一歩後ろに下がってしまったのである。

──悠兄さんがここまで怒ってる姿を見るのは初めてだな。

そんな事を思った僕はその怒りが自分に向いているわけでは無いと知りながらもその迫力に気圧されてしまったのだ。僕は恐怖感を感じながら、悠太兄の方を見てると彼は、いきなり僕の頬を平手打ちしてきたのである。僕はそれを受けて少しよろけてしまうがすぐに体勢を立て直す。

「水を傷つけたら許さないぞ。今すぐこの家から出て行け!」

僕に対して悠兄さんは、僕と同じような口調になって怒鳴ってきたのだ。僕は悠太兄さんの様子を見ると違和感を覚えた。その目には涙が流れており、そして手を強く握りしめていたのだ。僕はそんな彼の姿を見て、水さんを大事に思っているという気持ちに嘘がないということを理解してしまい。このままでは水さんがかわいそうな事になってしまうと思ってしまい、慌てて水さんの後を追いかけたのだった。そして水さんに話しかけるも、無視されてしまって、その態度に腹を立てた僕は彼女にビンタを喰らわせるとそのまま走っていってしまった。水さんはそのまま泣き出してしまったのである。

──あーあ。悠太兄さんにビンタしたせいでもしかして僕、この世界に残り続ける事になったりするのかな? ──それってやばくね? 水さんも一緒に残ることになったとしたら悠太兄さんと一緒に住んで暮らすってことになるし。それこそ地獄のような時間を過ごすことに、まぁ、その事は置いておいて。とりあえず今は、悠真兄と合流するのが最優先事項だ。悠真兄と合流した後にどうするか決めるべきだな。

──悠真先輩って、今どこにいるんだよ? そう思って僕は悠真先輩の居場所を調べようと思った瞬間にスマホが震える音が聞こえてきたので、僕は画面を確認する。するとそこには『悠真兄さんの現在地について』と書かれたメモが表示されていたので、とりあえずその指示に従う事にしたのである。僕はその文面通りにスマホを操作していき、『水鏡高校から歩いて5分の場所にいます!』と書かれている箇所を見つけ出すと、その文字に触れてみる。すると、画面にマップが表示される。どうやらここの近くに居るらしい事がわかり安堵しているとそこで背後で物音がして振り返るそこには何故かメイド服を着用している水さんの姿があったのであった。

水さんがなぜかメイド服を着ていて、僕は何と反応すれば良いのか分からずに固まっていると。水さんはこちらに向かって近づいてくると。僕をじっと見つめてきていたのだった。そんな水さんと目を合わせた僕は気まずくなって目を逸らす。すると彼女の方も同じように気まずくなったようで顔を赤くして下を向いていたのだ。それでもしばらく経つと何かに気づいたような顔をする水さんは、自分の体を抱き寄せ始めたのである。おそらく僕が彼女を殴った時の痛みがまだあるとか、そんな感じなんだと思う。

その水さんの反応を見た事で僕は冷静になることができた。なので今度は落ち着いて話し合おうと思い水さんに声をかけることにした。その呼びかけに対して水さんはすぐに返事をしてくれることはなく。黙って僕の顔を覗き込んできたので僕は思わず身を引いてしまう。すると水さんはクスリっと笑みを浮かべた後で口を開く。

「ごめんなさい。さっきのは私が悪いです。まさかあなたに手をあげるほどに怒らせる事になるなんて、その、想像もしていませんでした」

「気にしないでくれ、俺もやり過ぎたよ」

「えぇ。そうですね。本当に」

「ところで、どうしてそんな格好をしてるの?」

僕が質問すると水さんは驚いた顔をしながら自分の服装を確認して納得がいったかのような表情を浮かべる。

「これは演劇部の練習用の衣装ですよ。今日は文化祭の演目の発表があるので私は生徒会役員として手伝いにきたんです」「そういうことか」

「それで私も生徒会室で台本の最終チェックをしていたのですが。途中でトイレに行きたくなってしまいまして、でもそのタイミングで部長に呼ばれてしまて。そのまま行ってしまった結果がこれって訳なんですよ」

「なにそれ?」

「だから言ったでしょう? 私が水鏡先輩のように振舞えばきっと悠奈さんの事を理解出来るはずって」

「いや、まぁ、確かに水さんが水鏡先輩の妹さんだとは思うけどさ。その、演技っていうよりは、今の君の言葉に傷ついてしまったというか」

「え!? それは申し訳ありませんでした。もう、絶対にそんな事をしないようにします」

「いやいや、別に責めてるんじゃないんだ。ただその水さんの言葉のせいで悠奈さんの本当の性格が見えなくなって、悠奈さんの気持ちがわからなくなってしまっただけだよ」

「なるほど、つまり、私の行動で、水鏡悠奈の性格を誤解させたというわけですか」

「その通り」

「でも、悠奈さんと私は似ていないと思いますが」

僕はそんな言葉を聞き流しながら水さんと一緒に歩き始めると目的地に向かうことにした。それから水さんがなぜこんなに可愛らしくなりたがっているのか理由を聞こうとするも、それを誤魔化されたため。僕にはよくわからなかったのである。

それから僕と水さんは悠真兄さんと悠太姉さんの二人と合流できたのだ。悠太姉さんには頬をぶたれてしまって痛い思いをしたが、水さんのおかげで、なんとか僕は無事に戻ることができたのであった。その後で僕達は再び学校の方に戻り体育館に向かったのである。そこではすでに多くの生徒が集まっており。演劇部の部員達が舞台に立っていた。その人達の演技に感動して拍手を送る。それからしばらくして劇が終わったと思った時だった。一人の男子生徒がマイクを手に取り、僕達の方に視線を向けて話しかけてくる。

「皆さん、今日は僕達のためにお集まり頂きありがとうございます。この劇を見てもらえばわかると思うんですが、今回の主役の二人である水鏡姉妹の悠那先輩と優希さんはこの学校でトップクラスに美しい双子姉妹なわけで、今回僕は、二人のどちらかをヒロインにした物語を書きました。その物語のテーマは愛なわけですが。二人共その役に適していると思って僕はこの役を推薦したのですが、皆はどちらが良いか投票してほしいと思います。結果は今日の夜までに、ここに来れない人は僕宛に連絡ください! それではまた明日会いましょう。それとこの物語は僕個人で書いてるわけではないです。ちゃんとした作家さんが居るんでそちらにも問い合わせよろしくお願いします。では、解散!」

その男はそんなことを言って僕達の前から去っていったのである。僕は彼が去った後の方を呆然と見つめていたのだが。すぐに意識を戻し、他の三人の顔を見ると、みんなが困惑していたのだ。それもそのはずだ、なんせ、その話の主人公は僕なのだから、そしてそのヒロインというのは、もちろん、あの、水鏡先輩なのである。しかも僕は水鏡兄妹のどちらかが主人公の恋愛話を書くために取材されたわけである。それを考えるとなんだか急に落ち着かない気持ちになってしまっていたのだ。僕はどうにか平静を保ちつつこれからどうするかを話し合ったのである。

僕はその話し合いが終わった後で一度家に帰ることにして、水さんは僕と同じ家に帰りたいと訴えかけてきたが、僕と一緒の家で生活しているということに水鏡悠奈のイメージが崩れると水鏡兄さんが嫌がっていたこともあり、僕は一人で帰ることにする。僕は悠真兄さんから水鏡高校の場所を教わったあと、僕は一人になった後で、スマホを操作していたのだけど、水さんが言っていた水鏡悠那の物語が気になってしまい。調べることにしたのだ。するとその物語のあらすじが書かれたサイトが見つかり僕はそれを開いてみる。

その物語の大まかな内容は、ある少女に一目惚れした少年が彼女に振り向いてもらう為に奮闘するという話であった。その主人公である、水鏡先輩を僕に置き替えれば、水鏡悠奈を、僕の好きな女性に置き換えたような物語であり。そして僕はその話を最後まで読むことなく削除するのだった。だって、その物語は、水鏡先輩に僕を当て嵌めたような内容だったからだ。もしこれが、誰かにバレたのなら僕は恥ずかしさで死んでしまうだろう。それに僕は、自分が好きだった人を題材にしている物語を勝手に作られ、そしてその作品の登場人物として僕が使われている事がとても許せなかった。そのためすぐに削除したのだ。しかしそこで一つの疑問にぶつかる。それはこの世界の僕は一体何を考えてその主人公を書いたのかということだ。普通に考えたら水さんをモデルにして書くなんてありえない事である。なぜなら水さんはその作品のモデルとなる人物は妹だと言ったからである。

そのことから考えるにこの世界での僕は、この世界が作り出されたものである可能性が高くなった。そこでふと僕は気になってしまって、僕はその水鏡悠那が書いたという作品を探し出すと。その内容を読み始めたのである。するとその内容はやはり、この世界の主人公が僕のような気がしてきた。その話は、ある男が恋をした女性の気を引く為の話で。最初はなかなかうまくいかなかったんだけど最後にはハッピーエンドになっていたのであった。そんな感想を抱いている中。突然画面にメッセージが表示されたのである。

【水鏡悠奈について】

水鏡悠菜(みずがみゆうな)について知りたい方は下記までメールをください!! 【アドレス】

mzn0310☆gmail.com

(☆→半角に変えてくださいませ!)

→☆はいってないと迷惑フォルダ行きになります。ご注意下さい 水鏡兄さんのメールアドレスが表示されていて僕は首を傾げるもとりあえず、連絡先を教えてくれて良かったと思いながら僕は自分の家の玄関を開けるのであった。

「ただいま」

僕が声を上げると水鏡兄妹が迎えてくれるのだが。そこで僕は二人が何かを言いたそうにこちらを見ていたのに気づく。そこで僕は何も言わずに待っていると。水鏡さんが先に口を開いた。

「えっと、おかえりなさい」

その言葉を耳にした瞬間。僕は何か懐かしく感じてしまい胸が熱くなってしまって涙が零れそうになるも我慢する。

「あぁ、うん、その、ありがとう。えっと、それで水鏡さんの方は大丈夫?」

僕が尋ねるとその答えの代わりに、悠奈さんがこちらに向かって歩いてきて手を差し出してくる。

「悠奈さんはあなたのことが大好きみたいよ」

「へっ!?」

僕はいきなりの事で頭が追い付かずに変な声で叫んでしまう。

「ちょっと悠奈ちゃん、そういうのはまだ早いと思うのよ?」

そんな水鏡さんの声に悠奈さんはクスリと笑うと僕の腕を掴みそのまま引っ張る。そして僕はバランスを崩してしまいそのまま彼女の体の上に倒れてしまう。その事に僕は顔を真っ赤にして離れようとするが悠奈さんは抱きついていて離れてくれない。するとそんな僕を見て、なぜか水鏡兄さんは顔を手で覆い隠しながらもニヤけている様子であった。

「お兄様、鼻血出てる」水鏡兄さんの様子に気付いた悠奈さんの言葉を聞いた僕は慌てて起き上がり、水鏡さんの鼻の辺りに手をかざすと水鏡さんの鼻の頭から赤い液体が流れ出る。僕はティッシュを取り出すとそれを使って拭いたのであった。そしてそれから数分後にようやく落ち着いた水鏡さんは、なぜこうなったのかを説明し始める。その説明によれば彼女は僕のことが好きで好きでたまらなくて抱きしめていたいと思ったのでそれを行動に移したとのこと。

「えっと、水鏡さん、そんなに俺の事を?」

「はい。あなたは私の王子様なんです」

その言葉に水鏡兄妹と僕は思わず唖然としてしまう。そんな事を言われても、僕としてはそんな風に思ったことがないからこその反応だったのだ。

「お兄ちゃんの言うとおりね。やっぱり、私達には悠那が必要なんだよ。お姉さんと一緒に悠奈を支えてあげて欲しい。それができるのは、悠奈が大好きな悠那だけなんだ」

「いやだからさ、なんでそんな事を今ここで」

そこで悠奈は立ち上がり部屋から出て行こうとする。

「とにかく今日から、お世話になります悠太君。それと悠奈って呼んでいいですよ。それと私達と一緒に暮らせるのは嬉しいでしょう? それと私は、あなたのことを愛しています」

それからその言葉だけを残して彼女も立ち去って行ったのである。それからしばらくしてから、僕は、水に話しかけられた。

「あの子は本当に悠太さんの事を愛しています。それはもう、愛しすぎてどうしようもないほどにです」

その言葉を聞いて僕は嬉しくもあり恥ずかしくなる気持ちもある。そんな感情を抱きながら僕は自分の部屋に入ろうとしたところで後ろから呼び止められた。僕は振り返るとそこには悠奈さんがいたのである。

「悠奈、どうしたの?」

僕が尋ねてみたところ。彼女は僕を見上げてくる。その表情を見た僕は一瞬で心臓を跳ねさせる。それほどまでに彼女の上目遣いの可愛さにドキッとしたのである。

「お話があるんですけど、よろしいですか?」

「お、おう、まあ、とりあえず中に入ってよ」

その言葉を合図に僕は、悠奈さんを家の中に入れた。そのあとで、リビングのソファーに座ってもらってから。僕はお茶を用意しようとしたのだが。それを制して悠奈さんが自分でやると言い出してお茶の準備を始めてくれた。僕はそれを手伝うことにしたのだ。僕はお茶を入れ終わり二人で飲んで一息つくと悠奈さんが話を切り出す。

「悠那、今日は一緒に寝よう」

その言葉で僕の体が固まってしまった。僕はその申し出に驚きつつ、どうしてそんなことを言うのか聞いてみると。なんでも、悠奈は寂しがり屋で誰かが側にいないとしっくり来ないそうだ。そして、その相手として白羽の矢が立ったのが、悠斗ではなく僕のようで、悠奈はそのことで悠斗に頼み込み、なんとか許可を得ることができたようだ。そのことに納得してくれた僕と水鏡兄妹だが水鏡さんからこんな質問を受けたのである。

「あの、その、もしよかったらなんですが、私たちも入れてもらえませんか? 私と、この子、悠也の三人で」

そのお願いに対して僕達は問題がないと判断したため、水鏡さんを家に招き入れた。その日から僕と水神兄妹、それに悠奈の四人暮らしが始まりを迎えたのである。ちなみに僕と水神兄妹は別の部屋を自室としているが悠奈が一人になる時間があるためその時間に水鏡兄妹が交代で悠奈と過ごすことになったのである。そうしないと、彼女が心配だったからだ。そんな生活を数日の間続けていたのだが、悠奈が僕と水鏡さんに甘えるようになってしまい、二人に申し訳ないので一人になれる時間を僕が作ると悠奈に伝えた。すると、その時に悠奈が、僕と一緒に過ごしたいと訴えかけてきたので仕方なく悠奈の部屋に行く事にしたのだ。そして、僕のベッドに腰掛ける。するとその隣に、水鏡さんが座り、僕に体を密着させてきて僕にすり寄ってくる。

「えへへ~悠奈ちゃんばっかりずるいな」

「その、水鏡さん、近いんだけど」

「えへへへへ、お兄さんが優しい人でよかったよ」

その声を聞いた僕は、少し恥ずかしくなり水鏡さんをどかすために肩を掴もうとしたら彼女はビクッと震えたので僕はその手を引っ込める。

「えっと、ごめんなさい」

「いや、こちらこそごめん。えっと水鏡さんも、こっち来てもいいんだよ?」

僕はそういうと、水鏡さんが遠慮しだすが水神様がそれを阻止し水鏡さんの背中を押して、水鏡さんも僕の膝の上にちょこんとお行儀よく座る。そんな水鏡さんは、顔を赤くしながらチラッチラッとこちらを見ていたのである。その様子を見ていて僕は可愛いと思いつつも、その視線が自分に向けられていることに気づく。そして水鏡さんの顔を見てみた。水鏡さんの瞳の奥底では僕に対する好意が見え隠れしていたのだ。僕にはそんなつもりはないが、彼女はその気らしい。そんな事を感じながら僕は水鏡さんのことをじっと眺めていたのであった。

僕はそんな水鏡さんの頭を優しく撫でてあげたら彼女は気持ち良さそうな顔をしながら僕の胸に頭を埋めた。その事にドキドキしていると、ふと水鏡さんの方に違和感を覚える。水鏡さんはなぜか服の中に手を潜り込ませて、胸のあたりに手を持っていくのを視界の隅っこに入れていたので僕はその手を止めようとしたが水鏡さんが口を開いたので手が止まってしまう。

「えっと、水鏡さん、ちょっと、それはまずいんじゃないの?」

「んっ? だってこれくらいのことなら普通だよ?」

水鏡さんは僕を信頼してくれているからこそこう言った行動をとってくれているのは分かるのだがそれでもこれはやりすぎだと思ったので水鏡さんを止めるように言うのだが彼女は僕にくっついて離れなかった。そうやって僕達がいる部屋に悠奈も入ってくる。そこで水神様も一緒に入ってきたのだが水鏡さんの行動に唖然としており、その光景に水鏡さんは満足そうに笑うのであった。しかし悠奈がすぐに僕の元に近づいてきた。そして、僕はそんな悠奈を抱きしめる。そんな時、水神様は悠奈の後ろに回り込み悠奈の胸を掴んだ。僕は慌てて離れようとすると、僕に抱きついていた水鏡さんに動きが止まる。それから、僕に胸の感触が伝わり始めたのだ。僕はその事で、心臓の鼓動が激しくなっていくが、それと同時に水鏡さんも心拍数が上がっている事に気づいたのであった。そんな感じでしばらくしてから、悠奈が僕から離れていく。それからは、なぜか水神様は、僕達の近くにずっといたのであった。その日の夜も、結局三人とも一緒の部屋で過ごしてしまったが。その事が両親に知られてしまうというハプニングが起こった。そこで両親は僕達の意見を尊重するとのことだった。そこで悠奈は、自分の両親に相談をしたいということで一旦実家に戻って行ったのである。その次の日に、水鏡兄さんに僕は呼ばれてしまう。そこで言われたことは、水神家で暮らさないかという提案で僕はその言葉を受け入れるのであった。

僕達は学園に戻る前に遺跡攻略の準備をする為に一度、水神様の家に戻ろうと決めた。

僕は、リリアナと一緒に戻ることにする。僕は、ルクスからの依頼を完遂したことになるので依頼書を渡して貰うことになっているのだ。そのため、僕は、ルクスと一緒に王城まで戻り、その事を、ルクスと、セリスと、ティルファーの三人に伝えることにした。

「それじゃあ、俺とルーグは先に行ってるから、みんなは、後からきてくれ」

「了解ですわ」

「うー。わかったよ」

「はい。それで、兄様はいつ頃戻ってくるのですか?」

その質問に対してルクスは答えるが、その内容が、少し予想していなかったものだったので驚いた。そして僕は、ある疑問にたどり着いた。どうして僕達は一緒にいるのに僕だけが呼ばれるのだろう、そう思ってその事を尋ねると、その答えは、水神様が一緒に来て欲しいと言ったからだそうだ。僕はその話を聞きながら、なぜ、自分が選ばれたのかわからず首を傾げるがとりあえずは、行くしかなかったのである。僕は先に一人で水鏡家に向かうことにしたのだった。水神家に辿り着くとその前には一人の男が立っていた。その男は、こちらを見つけるとニヤッと笑って声をかけてきたのだ。僕はそんな男を睨みつけ、剣の柄を掴むがその男の一言によって警戒を緩める。その言葉とは、『久しぶり』という言葉だったからだ。僕と水神家の人間はそこまで親しくないので、知り合いではないと僕は判断し、そいつもまた同じだと考えたのだが、僕はその男の容姿を見るとどこか見覚えのあるような気がした。

僕にとっての、この世界に来た頃の一番古い記憶を呼び起こしていくと一人の少年と会ったのを思い出す。だがその思い出した人物との印象が違いすぎることに驚くが、そんな僕の様子を面白そうに見ているそいつが話しかけてくる。僕のことを観察しているようで気持ち悪いなと思いながらも質問に答えることにしたのだ。

「ああ、久しぶりんですね」

ただ僕の知っている名前で呼んだだけなのだがその返事は違っていたのだ。すると目の前にいる青年の雰囲気が変化し始める。まるで別人のように見え始めてしまったので警戒し直そうとしたところで青年の姿は変わっていき中年のおじさんになったのである。その変わり身には驚かされた。一体、どういう事なのか分からなくなり僕はその男に聞いてみると僕の考えが正解だと教えてくれる。僕は、そいつの話を信じられなかったが。どう考えても今起こっている現象を否定することはできなかったのである。

僕はその男と一緒に王城に戻ってきたのだが途中で襲われそうになったため仕方なく僕はそいつを気絶させることに決めた。ただここで殺してしまうと色々と問題になるかもしれないと思ったので生け捕りにしたのだ。この男の正体は、この国の宰相だということが判明した。名前は、ガルーダで水神家の当主と仲が良くて、その縁で僕も何度か顔を合わせたことがあるのだがこの男が国王と親しいなんて知らなかったのである。その事を僕は問い詰めるが彼は知らないと答え続けた。

この国で一番偉い存在なのに僕にはわからないということと、彼が何かしらの目的で僕に嘘の証言をしたのか分からないままだけれどこれ以上問い詰めたとしても無駄だと判断し、諦めることにした。それにしても水神家の当主である、リリアナはこんな人と知り合いだったのだと思うが一体どんな関係なのだろうか、僕はそう思ったものの。聞くわけにもいかないなと思ってしまった。そんなこんなで、僕の方は、その事が終わったあとに、ルクス達がやってきた。僕は、彼らに事情を説明すると。

リリアナの方で、ルクス達に今回の事を伝えてくれており、これから僕たちは、王都の外に出るための用意をして出かけることになった。その道中で、ルクスとセリスが、二人だけで話をしていた。その時に僕は気になってルクスにセリスは誰に剣術を学んだか聞いたのである。僕は、その時になんとなくではあるが察して、あえてセリスの名前を出さずにその人のことを尋ねたのだがルクスはなぜかその事に驚いていた。

その時に僕は確信してしまう。やっぱりそうなんだと。そしてルクスは、セリスと別れた後のことを話し出した。僕はその話を聞くうちに少し悲しい思いになってしまう。

「僕はさ。その時に自分の実力不足がすごく悔しくて、セリスに謝ろうとしたんだよ」

「そう、なんだ。うん、わかるよ。私も、自分の弱さに苛立ったから」僕はその言葉で、その気持ちは理解できてしまい。自分もそうだったなと昔のことを思い出し始めていた。僕はその出来事があった日から、必死に強くなって、今では『機竜使い』の中で二番目に強いと言われるくらいの強さを手にすることができたのだ。でもまだその当時では、『汎用特殊機体エクスターナルシリーズNo.000 Type-001《スレイヤ》』に勝てる自信がなかった。僕はそのことで悩むがルクスにはそんな僕の気持ちがわからずに慰める言葉をかけていた。

それから僕はそのことについて考えるのをやめて、僕達の方に視線を向けるとセリスはルクスの腕にしがみついていたので僕と視線が合った瞬間に目を逸らされてしまう。その行動で僕の中の感情が燃え上がりそうになっていたのだがそれをなんとか我慢していると、ふとルクスがこちらに目を向けたので目が合ってしまう。僕は恥ずかしさを感じて、すぐに下を向くがその時に僕とルクスが、一瞬唇を重ねていたことに、僕が気づくのはまだ先のことである。

僕と水鏡は王城の謁見の間に辿り着き、その玉座に座り続ける男を見る。僕はこの男を見た時。初めてこの世界で水鏡に逢った時と同じように感じてしまった。だけどその事は今は置いておいて本題に入ることに決める。そして僕は水鏡に頼まれていた件を報告するが、その事で僕達がいる部屋の温度が低くなった。その理由は水神様が水鏡の胸を鷲掴みしていたのだ。僕がそんな状況を見かねて助け舟を出してくれた。

そして水神様が手を離してくれたおかげでなんとか事なきを得たのだが僕はあることを考えてしまう。もしかしたらこれが水神様の弱点になるのではないかと。なのでそれを利用しようと思うのであった。

ルクス達は、王城を出てから街に出てから、王城に戻ってきていたがそこで水神様とルミナスが言い争いを始めてしまうということがあった。ルミナスとしてはこのままではダメだと思い王都を出た後、ルクスに別れを告げるつもりだったが。ルクスに説得されて一緒に王城へと戻っていた。

「もういいですわ! 私一人で、行かせてもらいますわよ!」

水神様は、そう言い残してから立ち去ろうとすると。

「待ちなさい。水鏡さん」

「なんですの? ルーグ様」

ルーグ様と呼ばれた事に、違和感を感じた水鏡だったが。とりあえず話を聞こうと思い振り向いたのだ。

ルーグ様と呼ばれて少し嫌な予感を覚えたが僕は、その質問をすることに決めた。僕はまず最初にリリアナの両親である、ルミナス様に許可を取って貰いたいというとルミナス様からの手紙を渡してきた。

その手紙を読んでいる間に、僕は、この世界に来る前に水神様から貰ったあの装置を、取り出してみる。この装置は、リシアさんと水神様が作ったらしいのであるが僕はこれを使ったことがなかったので試しに使うとしよう。この道具を使うと相手の魔力と体力を見ることが出来るという効果があり。

その能力を使用してから、改めて確認をし直すと水神様の力がかなり弱くなっていたので驚き。

そこでルミナスとルクシアナにその説明を行うとルクスが「それって大丈夫なのか?」

と言ってきているけど、その辺りについては詳しくわからないが少なくとも僕やリリアナは平気だったよと言うとその言葉を信じたようで、ルックス様からの頼みごとを引き受けたのである。その時にルミちゃんが僕の事を睨んでいたような気がしたけれど、まあ、たぶん見間違えだろうと思い気にしないことにした。それから水神様にリリアナに、この国にある迷宮を攻略して欲しいとお願いし。

僕はルクスと一緒に、学園に向かうことにするのである。ルクスが僕に対して、その事を頼んできたが僕としてはかなり危険なのではないだろうかと心配したのであった。ただ僕が断ろうとしたその時に水神様が僕に対して抱き着いてきて、僕に対して、「あなたならできるはずですわ」

と言われたので。断るのも気が引けてしまい引き受けることにしたのである。そのせいでまた水神様が拗ね始めてしまったのでルクスからの依頼を引き受ける代わりに、水神様と仲良くするようにお願いするのである。

「それで僕達に依頼するのは、学園の地下に存在する迷宮の攻略なんだよね。それはわかったけど僕達は戦闘が得意じゃ無いんだけど、本当に僕達でいいのかな」

「ああ、実は、リリアナに、頼んでも良かったんだがあいつは今忙しいらしくてな。お前たちにしか任せられないのは確かなんだ」

「そうなんだ。ところで、今さらだけど僕がここにいてもいいのかな? 僕一応、部外者だよね?」

ルクスは、今の状況を説明しながら、僕のことをどうすれば良いのか考えているみたいだが、この国の王様にここまで言わせてしまったんだから責任は持とうと決めたので。僕もこの依頼を受けることに決めて。僕は今のうちにと、気になっていることを質問した。

「ねえ、一つ聞いていいかな。その迷宮に何があるのかわかっているのかい?」

「わかっているといえばわかるが、あまり大声で言えないんだ。俺もまだ完全に信用されたわけではないからな。それでも構わないか?」

「うん。教えてもらっても、別に構わないよ。それともう一つ、僕達の他にも冒険者を連れて行くこととかは、可能なのかい? 僕一人だけだと、ちょっと厳しいんじゃないかと思ったのだけど。それに他のみんなにこの事を言わないといけないからさ」

僕がその事を言うと、ルクスは少し困った表情を浮かべるが、僕に話し始める。

「本当はもう少し早く、連絡を入れたいところだったのだが、今回の一件のせいで、その暇がなかったという事なんだ。それに水鏡には秘密にしてもらいたかったんだ。それに俺が、直接話した方が早いからな」

ルクスは僕達にその迷宮についての説明をしていく。その迷宮の名前は『神域の洞窟』と呼ばれているのだがその奥にはこの世界の創造神である『創世神オルテマティオ』の遺産と呼ばれるものが隠されていると言われているのだ。そしてその場所こそがルミナスの母親である。『神妃』と呼ばれる人物と。そしてその妹『神姫』と呼ばれていた女性達が眠っているとされる。遺跡が存在しているのである。その遺跡の名は、『神聖王国グランベルク』と呼ばれている場所でそこに存在している。そしてその場所には、様々な謎が存在する場所とされている。

僕が聞いた話によるとそこには。『竜の祭壇』と呼ばれる神殿が存在していて、そこの守り人である。七体の竜種と呼ばれる種族が存在していた。その力はこの世界に君臨する。全ての神々と互角に戦えるほどの力を持つといわれているのだが、その事実を僕は信じてはいない。そもそも竜種が存在をしているなど聞いたことがないからだ。なので僕はルクスと話し合いをしたのだけれども、ルクスは詳しいことは知らないと言われてしまいこれ以上追求する事は出来なかったのである。その事を踏まえてからルクスは、僕の事を見つめると口を開いた。

「お前は確か幻操術を扱えるんだよな」

ルクスはそう言ってきていたので、僕は自分の実力を確かめるために自分の『特殊機体エクスターナルNo.0077《アスタロト》』を取り出してから幻像を作り出す事にした。そして僕が作り出した幻影を見たルクス達は驚いている。そしてその中で僕が作り出した。アスタロトは僕の意思に従い行動する事ができるので問題なく動かす事が出来る。

ルクスに説明をしながら、動かしていくと、ルクスだけでなく。リリアナに水神様にセリスが興味深そうに見ていたのである。

その事に気がついた僕は。その動きを止めた後にルクスの方を見て「今のが幻像だよ」と言うと「そうなのか」と言って納得していたのだが水神様は何かを言いたそうにしている。おそらくは僕がどうやって幻像を扱っている事が不思議に思ったのではないかと思われるがそれを気にせず僕は本題に戻す。

僕は、これからの計画をルクスに伝えるのであった。

「そういえば水神様が僕に話しかけていたのって結局は、なんだったの? やっぱり僕に用があったの?」

僕はさっきから、僕に向けて殺気を送ってきている人を見ながら、ルクスに向かってそんな質問をしていた。ちなみに、その人は僕に対して鋭い視線を向けてきている。ルクスはその視線を感じて、その人に話し掛けた。その人からルクスが呼ばれた時だけ僕の方に目を向けるがすぐに視線を逸らしてしまうのは何故だろうと疑問に思うが僕は気にせずに質問を続けた。

「水神様が僕に声をかける理由が思い浮かばなかったからさ。ルクスから、リリアナが、呼んでいたとか、そういうのでもないし、それだと水神様があんな風に言うとは思えないからね」

僕がそこまで説明するとルクスが呆れたような表情を一瞬見せたがそれから水神様のことを紹介してくれている。僕がリリアナの名前を出してしまった時にルミナス様がルクスに、ルミナスと呼ぶようにと注意を受けていた。ルクスが水神様の事を説明する時に、水神様と呼んでしまったことで水神様が不機嫌になってしまったのだ。

「私、あなたのこと嫌いですわ」

そう言ったのが聞こえた瞬間に水神様から物凄く強烈な魔力の気配を感じたので、僕はルクスの体を掴むとその場から離れさせることにしたのだ。

水神様に「僕に嫌われても、関係ないでしょう?」

と言ったら何故かさらに、怒ってしまいそれからは一言も喋らずに、ずっと睨み付けてきたのだ。そのことにルクスはため息交じりの謝罪をしてなんとか、この場が落ち着いたのであった。ルミナス様と水神様の関係については、水神様とルミナス様の母親が姉妹だったらしいので、お互いに顔を知っているからだと思う。

「とりあえずルクスの話を聞く限りは、僕は迷宮の探索に参加した方がいいのかな?」

「そうだな、正直言えば助かる」

「そっか。でも僕が参加すると他の人の負担が大きくならない? リリアナが、迷宮を攻略できるとは僕にも思えないし、それに、他のみんなに、迷惑をかけたくないんだけど」

僕としては、その迷宮を攻略できれば、いいと考えているのだが。それが難しいなら攻略は諦めようと思っているとルクスがこんな提案を持ち出してきた。その話の内容というのが、ルクスが迷宮を攻略したとして僕達も、同行する許可が貰えた場合。僕の作った武器はどうするかと言うことだ。

「確かにそれは、僕としても気になっていたんだけど、僕が作る武器は特殊なものが多いし。この学園で研究してもわからないようなこともあるから。もし良かったらルクスが迷宮を攻略するまでの間、僕のことを学園で預かってくれないかな。僕はその間に新しい兵器を作りたいんだ。僕にとっての切り札みたいなものを」

僕は学園でルクスからの依頼を達成しておきたいと考えたので。その事は水神様に話した時にお願いしようと思うのである。それからルクスは、リリアナに頼めれば良かったのだが、今は忙しいから無理なのだが、リリアナは、水鏡が、その迷宮について調べている間に、一度実家に帰ることになると言っていたので。その時に迷宮についての詳しい情報を渡せるようにしておくという事だったのだ。そしてリリアナには水神様と水鏡と一緒に行ってもらうという事になるのだが。

「水神様がリリアナのところに行かれるのは良いんですが、リリアナが、水神様の所に居られるでしょうか? 水鏡がリリアナのことが好きすぎるみたいだから」

僕が水鏡が暴走する未来しか予想できずにいるとそのことについてルクスは心配している。そして、リリアナも、今回の件でかなり疲れて帰って来そうに感じられたのだ。ただ、水神様と水鏡に仲が良くなって欲しいという思いもあるので、ルクスがリリアナと話をした後にどうするかを決めるつもりだが、僕はルミナス様に聞いてみると、僕達の行動について、ルミナス様は快く許してくれたのである。

「ありがとうございます。お礼と言ってはなんですけど。この迷宮については必ずや解決して見せますのでご安心ください」

「わかりましたわ。それと水神様には悪いのですが。あなたと水神様の二人が、この学園に留まることは出来ませんからね。一応水神様に頼んだ依頼というのは学園の施設を好きに使ってもらって構いませんのでよろしくおねがいしますわ」

「えっと、この学園をですか?」

ルクスの言葉を聞いた水神様は戸惑っているのだが。ルクスは、水神様に何かを言うわけでなくそのまま放置すると。ルミナス様との話し合いを続けていたのだった。そして僕達の話が一段落したのを確認した後に、水鏡が話しかけてきたのである。

『なあルク坊』

「はい。何でしょうか」

『あのさ、俺ってこれから、お前さんの事をなんと呼んだらいいのか教えてくれないか?』

その事をルクスに聞いた後で水鏡は水神様の方を向いたのだが。ルクスに聞いた通りに説明していた。

「水神ちゃん、俺の事なんて呼ぶんだろうな?」

『その呼び方は恥ずかしすぎます。私は別に神などではないのですよ』

『んなこと言ってもよ。ルミ兄が、神だなんだとかって言いまくってたし』

僕は、その光景を頭に浮かべて笑ってしまうと水神様は頬を赤くしながら僕を睨んでくると僕の体を掴もうとしてきたので慌ててその場から離れるとルクスの隣に立つことにしたのだ。そしてその後すぐに、ルクスが話を始めたのであった。

僕が、今いる場所というのは遺跡の最下層に当たる場所で僕がルミナスと会話を終わらせた後からしばらく歩いているうちにここまで辿り着いたのであった。この場所にたどり着いたのは僕だけだったが僕には確信めいたものがあるのでその場所に向かって歩いて行くことにする。そして僕の前に一人の男性が姿を現す。そして、目の前に現れた人物を見て、僕の心の中には歓喜に似た感情が沸き上がってきた。なぜなら僕はこの人をずっと探していたのだから、そしてこの人こそが僕の探し求めていた人だった。

「やっと見つけましたね」

「久しぶりだな水鏡、まさかお前がここに来ていたとは」

僕達は互いに、そんな言葉を告げてから少しの間だけ沈黙が場を支配する。僕にとっては長い間、待ち望んでいた瞬間だったが。水神様の方は困惑している様子で、ルクスの方も、水神様の方を向いてから、水神様に問いかけるような口調で言うと水神様が慌てた様子を見せるとルミナス様の姿に変化すると水鏡は、その姿を見ると、苦笑いを浮かべているのであった。

「なるほどな。ルミナス姉は、ルミ兄のことを知っていたから。こんな無茶を言って俺と、水神様に水姫様のことを調査させてたんだろう。しかしまあ、驚いたな。水鏡までこの学園にいたとは、それにしてもよくこの場所がわかったな?」

「僕はこの迷宮をずっと調べていたから、最深部に近いところまでは到達することができたんだ。ただ、ここから先は僕一人じゃ危険だったから、水神様にも来て頂きました。それと水神様からこの先に、水神様と同じような力を感じたからここに、辿り着けたってことです」

「そういうことか。それならば納得もできるな」

「水神様は、本当に凄いんですね。僕には、そんなこと全くわからなかったですから」

「そういえば、まだ、ルミナス姉のことは紹介していなかったな」

「そうでしたね。ルミナス様はルミナスという名前をお持ちなんですね」

僕と水鏡が話をしていると、水神様が、ルクスの側に立ってルクスの耳元で小さな声で話しかけている。その話を聞いている内にルクスの顔が段々と険しい表情に変わって行った。

「なんでそれを早く言わなかったんだよ!」

そう怒鳴るルクスに対して水神様は、謝るとルクスは僕に対してこう言う。

「ごめんルクス。僕のミスで、こんな事に」

「ルミナス姉も、俺に隠しごとをせずに言ってくれればいいのに、俺は、ルミナスが俺のことを騙していたことに腹を立てているわけではないんだ」

「違うの?」

「確かに、それはあるけど、それ以上にルミナスが俺のことを考えてくれていることは知っている。俺のことを思ってこその隠しごとだということも、だけど。それでも俺に話してくれる方が嬉しいかな」

ルクスは、優しい表情になると水神様と、水鏡の方を向きながら真剣な顔になる。その顔を見た二人は同時に、同じ行動をして頭を深々と下げているとルクスは笑顔になり、水神様の背中を優しく叩いたのである。それから僕は、ルミナスと水鏡と、そして水神様を連れて先に進むと大きな部屋に入る。

「ここは何なのですか?」

「多分ここで、間違いないだろう。この部屋には大きな石碑があってその台座には鍵のような物が嵌められているんだけど。それが僕達の世界の文字じゃない文字で書かれているから解読できなかったんだけど。ようやく理解できたと思うよ」

僕は、今までは読めないと思っていたが、今の僕は全ての言語を読めるようになっていたのだ。なぜ急に読めるようになったのかわからないがとりあえず石碑に書かれた文章を読んでいく。

そこには世界樹について書かれていたのだがその世界樹は迷宮の中に眠っているということが書かれていた。そのことを確認してから水神様の方を振り向いた時にふと、疑問に思うことがあり質問をしてみる。すると僕の考えていた答えとは違うものが帰ってきたのだった。水神様が言ったのは世界が滅びかけているという話ではなく、世界は崩壊しかかっているというのだ。

僕が、それについて聞いてみたところ世界は一つの大きな魔力によって歪められてしまい、それによってこの世界自体が崩壊するのだと水神様は言う。だから僕達が世界を救わないと行けないんだと言うので僕がその言葉の意味を理解しようとしたときに、水神様が僕の方に手を向けると僕に向かって手をかざして僕の頭に語り掛けてくる。それは僕に何かを伝えようとしていたのだけれど。

『水神様は何をされたのですか?』

『今は時間がないですが私の力であなたに知識を与えました。これから私達と一緒に戦ってほしいのです』

『どうして僕なんかと』

『あなたは不思議な力を持っていましたからね。きっとあなたの力が必要なんです。お願いします』

「ルクスさん、何か考え事ですか? もし良かったら私に話してください」

『いえなんでもないですよ。それより僕達は今すぐ迷宮から出る必要があります』

僕は、水神様の願いを受け入れてから僕が今思っていることについて三人に説明をしたのだけれど、リリアナだけは不満そうな顔をしていたが水鏡は賛成してくれていたのだった。

「俺はルクスがそう判断するのならそれで構わない。それにルミナス姉がいるんだし、その程度の敵であれば、俺とルミナス姉の二人だけでもなんとか出来るはずだしな。それよりも俺の大切な親友の頼みなんだから断れるわけないしな」

僕は水鏡の言葉を聞いて、僕が思っていた以上にルミナスのことが好きなんだと実感すると嬉しく思いながら微笑んでいた。そして、その気持ちが通じたようで水鏡が少し恥ずかしそうにしながらそっぽを向いたのを見て、僕は水神様の手を掴むと水神様を抱きしめて、僕と水神様の力を合わせると転移でこの場所から離れていく。そして僕が今いる場所は王都近くの森であり近くには、この前助けた騎士が倒れていたのである。僕はすぐに騎士の怪我の状態を調べてみたがかなり重傷だったのですぐに治療を開始したのであった。僕にできる限りの治療を終えた後に、僕達は学園に帰ることにしたのだがそこで問題が起きた。

「なあルクス」

「どうしたの水鏡?」

「俺達はこのまま帰ることもできるし水姫姉と、水神様も一緒に連れて行ってもいいんだ。だけど俺達の事情を知っているお前が居た方がいいだろ?」

「そうだね。ルミナス様にも一緒に来てもらいたいと思っているから僕は構わないけどルミナス様は大丈夫ですか?」

『私は、どちらでも構いませんが』

『じゃあ決まりだな』と水鏡は言いながら僕が抱き抱えていた水神様を受け取ると水神様を抱き抱えると水神様の方を見ながらルミナスの頭の上に移動させてきた。

「じゃあ行くぞルミナス姉。俺の後ろについてきてくれ」

「わかりました水鏡。よろしくおねがい致します」

「水鏡は凄く強いんだよ。だから安心していいからね」

「はい。信じておりますルミナス様」

僕は水神様の手を繋ぎながら、ルミナスが転ばないようにゆっくりと歩いて行く。そんな僕を心配そうに見つめていた水神様に僕はこう言ってみると。水神様の表情は明るくなり。水神様が笑顔を見せてくれるだけで僕は嬉しいと感じていた。そして僕達は無事に、遺跡を出ることが出来た。僕達は学園に戻る前に、ルミナスや、水神様と、別れることになったが、最後に水鏡が僕に水神様のことを任せてくれたので僕は、その信頼に応えるため、水鏡に頼んでから僕と水神様だけが先に遺跡の中に戻った。僕が遺跡の中に入るとすぐに、水神様は僕に向かって謝り始める。その謝罪を聞いた後、僕は水神様の頭を撫でてから、僕と水神様は、最下層に向かうために歩き出したのであった。

ルクスが水神様を連れていったことで、ルミナス達と別れてしまった俺は水神様に言われた通り、俺とルミナス姉を学園に送り届けるために学園に向かおうとしている。俺は水神様を抱えていて両手が使えないので、リリアナに学園までの案内をお願いしている。ちなみに俺はリリアナにこの世界の文字を教えるように言われている。俺は最初、面倒なだけだと考えていたがリリアナの機嫌が良くなるから仕方なく教えることにしておいた。俺に教えて貰えるとわかった瞬間のリリアナは少しは可愛かったので良しとしてやる。

俺と水神様とリリアナは、この迷宮に足を踏み入れたときと同じように三人だけになって迷宮から出てくると、水姫様と水神様は驚いた表情をしていた。しかし水姫様と、水神様はお互いに目を合わせたかと思うと笑顔になっていた。そんな二人を不思議そうに見つめていたリリアナだったが。

「おいリリィ。お前はこの二人の護衛な。二人はお前のことを気に入ってくれているからさ、俺がいない間この二人のことをしっかり守ってあげてほしい。あとは、こいつらに文字の読み方を教えといて」

「分かりました水鏡様。では、私は二人を守りながら文字を覚えさせていただきます」

それからしばらくの間、水鏡はリリカと一緒に、リミナとアスタに剣術と、魔法の使い方について、俺が持っている武器を使った戦闘方法について教えることにした。

僕は、迷宮に入ってから数日が経った頃に最下層の石碑に辿り着くことができた。水神様と水鏡のお陰なのだけど、それでも、ここまで来るのに相当な日数がかかったことは確かだろう。だけど石碑に書かれた文章を読み終えると石碑が光を放ち始め、石碑から声が聞こえてきたのである。

『よくこの世界の危機を知りました。あなたは選ばれた者です。この世界を救う資格があります。ですが私の力では世界を救えなくなってしまいました。ですので、私の力の一部をあなたに託しましょう。どうか、世界を救うために力を尽くして下さい』

僕はその言葉を聞くと僕は石碑の前に膝まずいた。

「はい必ず、僕の力で世界を守ってみせます。僕は勇者なのですから!」と僕は自分の決意を伝える。それから僕は石碑に手を当ててみると。僕の手は、まるで石碑と同化していくような感覚になったのだ。僕が石碑に吸い込まれそうになった時に水神様が僕に話しかけてきてくれたのだ。

「ルクスさん! あなたに力を渡しましたが無理だけは絶対にしないでくださいね」

「うんわかっているよ。それじゃあいってくるね」

それから石碑の力が僕に流れ込んできたのだけれど、それと同時に意識を失った僕は目を覚ました。僕が目を覚ました場所は、最初に来た場所とは違う場所で、そこには水鏡と、水姫様が、僕を心配しそうな顔をしながら僕を見ていたのだ。僕は、とりあえず二人が無事なことが確認できたから、水鏡達に説明をしたのだ。

僕達が話をしていると僕達のいた部屋のドアが開く。そこに立っていたのは一人の女の子が僕達の前に現れる。僕はその少女を見た時にあることを思い出していた。

その少女の名前はセフィと言い、かつてルミナスに恋心を抱いていた貴族の子だ。

その、セフィーは僕と水鏡を見て怯え始めたのだが、水鏡と目が合うと、急に水鏡に抱きつき涙を流し始めて、しばらく水鏡の胸に抱かれていたが落ち着いたのか、泣き止む。そしてセフィーは、ルミナスと水鏡を交互に見ていった。

「私と水鏡君はね。ルミナスと君達と一緒にいた。あの人の弟弟子と妹弟子に当たる関係だよ。僕達の関係は今はいいよね。それよりどうしてセフィーはこんなところにいるのかな?」

「それは私が説明しますね。この子は昔、ルクスに助けてもらったの。その時からルクスのことが大好きになっちゃったみたいなの」

「そう言うことなら話は別だな。ルミナス姉も俺達と仲良くしたいんだろ?」

「もちろんですよ。それに私はもうルクス以外の男とは結婚しないと決めていますし、もし仮に、この世界に他の女性がいたとしてもルクス以外はあり得ませんしね。だから私はルクス以外と結婚するつもりはないんですけど?」

ルミナスは当たり前だと言った感じの態度を取り始めると水鏡はそれを見てニヤついていたのだった。僕はその様子を見ながらも目の前にいた女の子を見ると。その子はとても恥ずかしそうな顔をしていた。そしてその表情は今までルミナムや、セシリアなどに向けられた事のないものだったので、僕は嬉しく思ったのである。僕に視線を向けられたことでセフィーは恥ずかしそうにしているのだが僕を見て微笑んでくれた。

「その。ご主人様はお二人と結婚するつもりがあるんでしょうか? お姉ちゃんは昔からあんな調子ですから」

僕は、この子に何があったのかを水鏡と水神様と相談しながら話しを聞いてみるとこの子の両親は貴族派と呼ばれる人達によって殺されてしまったそうだ。そしてセフィリスが一人ぼっちになってしまうと、すぐに水鏡は動き出してくれて、僕達の元にこの子を迎え入れたらしい。

そしてセフィーには両親が殺されたと言うショックから心を閉ざしてしまい。長い間部屋に閉じ籠っていたが水鏡の説得により部屋から出てくてくれて。それからしばらくして僕達の家に一緒に暮らすことになったのである。

僕は、そんなことを考えながらセフィロに優しく笑いかけると。セフィも笑ってくれて、それからしばらく、みんなで雑談をしている間に。僕はこれからのことについて考えていたのである。すると僕の視界に一つの扉が映っていたので。僕がその事を二人に伝えると二人は興味を持ってくれていたのである。僕は、その部屋に三人で入っていったのだが、中に入った途端に僕達の前に一人の女の子が姿を現す。その少女はルミナスの小さい頃の姿に似ていて。僕達を見るやいなやいきなり攻撃を仕掛けてきた。

僕と水鏡は咄嵯に反応してその攻撃を防ぐことに成功したのだが、水鏡はその攻撃を受け止めた後に反撃をしようとしたのだったが、その隙をつかれて僕は押し倒されてしまう。そしてその攻撃を水神様が受け止めると僕は立ち上がりながら。僕はこの子の名前を聞くことにすると、彼女は、僕に対して。

「あなたは何のために生きているのですか? 答えなさいルミナス!」と言ってくるので、僕は。

「僕達は世界を救う為に戦おうとしているんだけど、僕は君にも協力してほしいと思っているんだ」と彼女に話した。しかし彼女が、納得してくれることはなく。僕に、何度も斬りかかってきて僕を攻撃してくるので。仕方なく水神様に相手をしてもらえないかどうかお願いすると。快く承諾してくれた。そんな会話をしていている間も彼女からの攻撃が続いていたのである。そして僕と水鏡が、彼女のことをなんとか押さえ込んでいると、そこにルミナスが現れると、僕の腕を掴んで僕の頬に口づけをしてきたのだ。

「ちょっと!? ルミナス! 何やってんだよ! そんなに嫌なのかよ!」

僕が慌てて、ルミナスを引き離そうとするが、その度に。僕の胸を触ってくるので僕は諦めてしまうと。僕はルミナスを睨みつけるように見るのだが、その行動の意味を理解していないようで首を傾げて僕を見ていたのであった。僕は、これ以上何かされては困ってしまうのでルフィナのことを頼むことにした。そしてセフィの方も見て、大丈夫かと聞くとセフィーが、ルフィナのことを抑え込んでくれているらしく。そのことに礼を言うと僕はルミナスを水鏡に預けることにした。そしてルミナスから距離を取ったところで、僕はルミナスと向き合うことにしする。

僕は改めて彼女を見てみると、やはり似ていると思った。しかし今の僕は、そんなことは関係なしに彼女と、戦うつもりでいる。そんな僕を見ていた水鏡と、水神様が、僕の横に近づいてきて、僕に耳打ちしてくると水神様が、僕の手に持っている『聖剣デュランダル』に目を向けたのだ。

僕はそんな二人を見ていると、僕がルミナスと向かい合ったのを確認した二人は、水鏡と、水神様は、お互いに武器を手に取るなり。二人はお互いの顔を見合わせてからお互いにうなずき合い。僕達の方に歩いて来ていた。そして水神様と、水鏡はルミナスの方を向くと、ルミナスに向かって。二人は同時に言葉を放ったのである。

「ルミナス様! 僕があなたを止める! あなたを止めないとあなたが世界を滅ぼしてしまうからだ」

『あなたをここで止めるわ。ルミナス!』

水鏡と、水神様の言葉を聞きながらも。二人の姿を見ているルミナスの目は少し冷たく感じるが、それでもどこかで期待するような目をしていたのだ。

僕と水鏡でセフィーを相手にしている時に水神さんからルミナスの動きについての報告を聞い。ルミナスが水鏡に狙いを定めていることが分かった僕は急いで、水鏡の元に向かった。僕は水鏡を守ると、水神さんと、水鏡に合図を出すと二人はその場から離れていくのを確認し。僕は目の前のセフィーに話しかける。

「君の気持ちはよくわかるよ。でもね僕達が今一番に守らなければいけないものは、君の命なんだ」

僕は目の前にいる少女に優しい言葉をかけながら説得を始める。セフィーが僕に襲いかかってきた時、水鏡は彼女の背後を取り拘束してもらい。そして僕は彼女の攻撃を紙一重で避ける。そして彼女が、攻撃を避けられた事に驚いたのか、一瞬の隙を見せた時、僕はその隙を狙って彼女を気絶させようとしたのだが、どうやら、彼女はまだ完全に意識を手放していなかったようだ。

僕の蹴りを食らい。地面に倒れる前に体勢を整えてから倒れ込むのを防いだ彼女は僕の方に顔を向けると僕をじっと見つめる。僕は、その目に、敵意を感じられず。僕はそのまま彼女を見続けていると。彼女は、自分の剣を振り上げようとしたときに自分の手が震えていることに気づく。

「あなたを殺す覚悟がないのね?」と、彼女は僕に質問をしてきたのである。その言葉を僕に向けて言ったというより独り言に近い言い方だったので僕は、その問いには答えることなく黙ってその光景を眺めていた。すると今度は僕の方に視線を変えて僕をジッと見てくると、しばらく僕を見て。

「あなたの強さを見せてくれない?」

そう言うとセフィーは、突然に動き出したのである。

そのセフィーの動きを僕は完全に見切ることができたので、僕の方が優勢だと思い僕は彼女に問いかけてみた。

「どうして僕を殺そうとしないの? 君にとって僕の存在は敵ではないの?」

「あなたは強いから。それに私に殺せない理由があるの」と言うと彼女は動きを止めると僕と話をし始める。

僕はこのセフィーに話をする事にして、今までに戦った敵のことを聞いていく。そして彼女は僕と似たような戦い方をしていたらしく、僕は彼女の話に驚きつつも。彼女が、なぜこの国に居続けるのか? と尋ねると彼女は僕に対して。

「この国の人達には悪いけど。私はあなたの国に行ってもきっと何も得られない気がするの。だから私はここに残ろうと思う」と言った。

僕がセフィーと話している間に水鏡が僕の所までやって来ると。水鏡も、セフィと話し始めるのだった。そして水鏡も僕と同じような疑問を持ち始める。

僕達は、水鏡にルミナスに聞きに行かせると僕はセフィの方に振り返ると、セフィはルミナスの事を気にかけているのが分かったので、セフィーとの話を終えると僕はルミナスの元へと向かう。

「水鏡、水神様ありがとう。後は僕に任せてくれる?」と僕は二人に言うと二人共うなずくと僕はセフィーのそばに寄ると僕は、彼女に、これからの戦いは、命の危険があること。それに、この戦いに勝ち残ったとしてもその後に、ルミナスの体に何かがあるかもしれないと伝えた上で僕と、ルミナスは君がこの国を去ってくれることを願っていると。

僕がルミナスの事を思い。彼女にそう伝えると、セフィーは自分の中に居る。この子のことも気になるようで僕とセフィーのことを交互に見て。そして僕はセフィーに、もしもの時は君の力でこの子を護ってくれないかとお願いをするのだが、彼女は首を縦には振らずにただ僕達のことを見続けていた。僕が、このままではこの子の為にもならないと思い、どうにかできないかと考えるのだが、いい方法が思い浮かばないのだ。そんなことを悩んでいると僕達のところに姫咲が現れた。

「あの、お話し中申し訳ありませんがよろしいでしょうか?」

「うん! ちょうどよかったよ!姫咲!ちょっと助けて欲しいんだけど、良いかな?お願いできる?」

僕はそう言ってから。姫咲の手を握るとその感触で僕は思わず驚いてしまった。それはその柔らかさにあった。まるで女の子のように柔らかい手の平に僕の心は高鳴っていたのである。しかし僕が、こんな状況でそんなことを考えている場合じゃないと思ったので。僕の頭の中からその感情を押しのけて、姫咲に協力を求めることにした。

「僕達に何か用事があるんですか?」

僕が姫咲に話しかけると彼女は僕の目をジっと見ていた。

僕は、この人に見られても特に問題はなかったので僕はずっと、この人の事を見ていようと思っていると、ルミナスも同じようにこの人を見ていたのである。そしてセフィーが僕の腕を掴むとルミナスに抱きついてきたので、セフィーを引き離した。

「ルミナス様もしかしてですがこの女性に恋してるんですか!?それなら早く私と変わって下さい!」

僕はそんなセフィーの頭を叩くと僕は彼女の事を落ち着かせ。そして僕の隣に座らせると僕の腕の中にルミナスを抱き寄せるようにしてから姫咲を見るが彼女は何故か嬉しそうな顔をすると。

「私の事は無視で構いませんので続けてもらっても宜しいですか?ルミナス様に、何かあるんでしょう?」と言ってきたので僕は水神様を呼び出し。水神様の力を僕に与えてもらおうとしたのだったが、なぜか僕に力を与えてくれたのはセフィーの方だったのである。その事に僕は驚いた。僕はてっきり水神様の方から、力が授けられると思っていたからだ。

「えっ?なんで僕じゃなくてその子に力をくれたの!?水神様はどうしたの?」

『それがのう、ルミ坊はわしからその娘への気持ちを察してくれてのぉ。その娘からもらったんじゃ。それでルミナスの方にも、渡したいと思ったんじゃ』

『そっかぁ、ありがとうね。水神様。ルミナスのこと守ってあげてくださいね?』

『ああ、もちろんだとも、そのつもりだよ』僕と水神様の会話が終わると僕はセフィーと水神様の二人の力を使えるようにしてもらうことにした。

「水神様、ありがとう。これでルミナスとセフィーを守れる」

「はい、そうですね」

「水神様が二人に力をくれたので。二人に渡して欲しいものがあります」と、僕は、セフィーにそう告げると。彼女はうなずいてくれたので僕はルミナスと、セフィーに『竜装機』の武装を渡し。セフィーに水神様の剣を手渡すと、僕は、自分の持つ剣を水神様からもらいそれを、セフィーに渡すと彼女は、剣を鞘から抜き取りその剣を見ると。その剣から溢れ出すオーラのようなものを感じている様子で。セフィーは剣を見ながら「すごい魔力を感じます。これは、水神様があなたを認めたという証拠なのですかね?」と言い。僕が、水神様の本当の姿を彼女に教えると。彼女は驚いた表情になり。それからしばらく剣を見つめてから。彼女は剣を僕に差し出してきたので僕は剣を受け取り、ルミナスの方に向き直り。僕とルミナスを光の繭で包み込み、その中でセフィーから借り受けた武器でルミナスと僕はお互いに装備を身に着けることにした。そしてルミナスを包んでいた光がなくなった時にはルミナスの手に握られていたものは、『デュランダル改』という武器だったのである。

「セフィーから譲り受けたのはこの剣みたいだけど」

僕達は今。セフィーから、譲られた剣の試し打ちとして。

「水鏡さん、姫神さん、セフィーちゃん少しの間。離れててくれるかな?」と言うと、僕達がうなずくと僕達はその場から離れて行くと。

僕は剣を抜き放つ。すると僕の周りに白い光が漂い始め。その輝きは徐々に強くなっていき、それと同時に。僕の中で眠っているもう一人の人格が目覚めようとしていた。僕は自分の体が熱くなるような感じを味わっていたのだった。

俺が目の前の光景に目を奪われている間に。

水鏡はセフィーに向かって攻撃を仕掛けるのである。セフィーはそれを、自分の剣を使い受け止めると。

二人はお互いの刃を交えるたびに火花が散る。

そして、二人がぶつかり合う中で、ルミナスも姫崎の攻撃を受けていた。

セフィーにセフィーが使うのは双翼の槍。そしてセフィーと戦っているのは姫崎。姫咲はルミナスと、水鏡はセフィーの相手をする事になる。セフィーは姫神の槍を軽々と受け流し姫崎に攻撃する。その攻撃を受けながらも姫崎は、ルミナスに反撃をしていくのだが、ルミナスはその攻撃を見事に捌いていたのである。

(やっぱり。こっちに来てからのルミナスは格段に強くなっているな)と思う。俺は二人の様子を見ながら、この戦いが終わるまでは援護はできないなと思い見続ける事にしたのであった。そしてセフィーの動きを見ていて。彼女に対して、俺は何か違和感を感じたのだ。それはセフィの動きなのだがセフィーの動きがいつもと違って見える気がしたのである。そしてセフィが一瞬だけ隙を見せると、セフィーは一気に間合いに入り込むのだが。

「ふぅ、セフィ、なかなか良かったですよ」

セフィーの動きを見た水鏡と姫咲がそれぞれ距離を取ると姫咲は自分の体に触れると、姫咲の腕や足が変化していき、まるで機械人形のように変化すると姫崎の動きに姫咲の動きに似つかわしくない動きをするのだが。セフィーはそれを受け止めると同時に、その姫咲の蹴りを喰らっても全く効いている様子がなかったのである。そしてセフィーが持っている、水鏡と姫咲のそれぞれの槍と姫神に手を触れると水鏡と姫咲はそれぞれの手に現れた剣で姫神を攻撃しようとするのだが、それを姫神は自分の剣で防ぐのである。そしてその三人の戦いは、姫宮に姫崎、セフィーが戦っているのを、ルミナスが眺めていたのだった。

セフィーが使っている『魔導器』だがそれは普通の『聖装兵騎シリーズ』とは少し違うようだ。セフィーが持つ『幻騎兵』の『機獣使い』、『真竜騎士ドラゴナイト』の力を使っているのであろうが、セフィーが使った技は見たことがなかった。しかしルミナスも同じような事をしている。姫香の能力である「精霊魔法師」「星属性」を使った『星王』だと思われる力を発動させているからだ。ルミナスの力は俺の知っている『精霊騎士』よりも遥かに高い能力を発揮することができるようになっている。

ルミナスの持つ剣。

それは「月読ノ剣ツクヨミノツルギ」と、呼ばれているものだ。その剣には。様々な能力が備わっており。この世界で、最も優れた武器であり、この世界の人間ではまず。その剣の能力を完璧に操ることは不可能だというほどの性能を誇る武器でもある。しかしその剣を使うにはそれなりの代償を支払わなければならない。それは「月の神」が与えし試練と呼ばれる物をクリアする必要があると言われている。

この剣は、その所有者を選ぶといわれている。それは、選ばれた者は。この剣の力を使うことができるとされているのだ。

ルミナスは、その力を解放させることができているのか?と思った。

この世界に存在しているほとんどの人間が知らない事だろうが。その剣の力は。この世界にいる「勇者」達を凌駕するほどの強さを有していると、この前『魔神殺しの英雄』こと。姫川姫咲の父親から聞いていた。だから今の、ルミナスの状況を見て俺はルミナスなら大丈夫だと安心をしていたのである。

そして水鏡は。セフィーとの戦いに集中していたが。セフィーの実力を知っているからこそ彼女のことを警戒をしているようで、常に水鏡はセフィーの事を観察しながら。姫咲と戦うルミナスの方を見て水神様に声をかける。

「ルクス君はあそこに混ざらないでいいんですか?」

セフィーの攻撃をさばきながらルミナスと姫神の戦闘も気にかけていたが。今はセフィーの方が問題だと思い、セフィーの対処に徹することにした。それに姫神にも声をかける。

「セフィーのことは私がどうにかするので。あなた方はそちらの方の方をよろしくお願いします」

「わかりました。でも、姫崎さんのあの能力は一体?」とセフィーが持っている双剣を姫咲の方へと向けると、姫咲はそれに反応し自分の腕を変化させるのだった。セフィーの持っていた『聖装機』は、セフィー専用のものではあるが、ルミナスと姫神とセフィーの三人とも使えるようになっていた。そしてその『機獣使いの鎧装者』のセフィーが扱う「竜装機」はセフィーが、自分専用で作ることができる武装でセフィーにしか扱えない『機竜召喚』と、同じ能力を持つが、「機装」を呼び出し戦う事ができる。その『機竜使い』は、『竜装士』のさらに上位に位置する力だとされていて。セフィーはこの力を自在に扱うことができたのである。そんな『機獣使い』のセフィーもルミナスと同様にこの世界に来る前のセフィーと比べると別人の様に強いのだ。セフィーは元々、水神様の弟子だったらしくて、セフィーも水神様と同じく、この世界でもトップクラスの力を持つ戦士になっていたのだった。

水神様はセフィーを弟子にしていたから。当然と言えばそうなのだが。俺達が、セフィーと初めて出会った時はルミナスよりも弱いぐらいだったはずなのに、今ではセフィーの方が強かったりするのだった。

姫咲は『機竜』に乗っていない状態だが、ルミナスと互角以上に戦い。ルミナスは『幻神機』を使っていないから苦戦をしていて、水鏡がセフィーと戦い。セフィーと姫咲の戦いの隙をついて水鏡がセフィーに攻撃を仕掛ける。

セフィーは水鏡の攻撃を受けると同時にセフィーに隙が生まれたので俺はそこを見逃さずに水神様と一緒にセフィーに攻撃をしかけると。

ルミナスもセフィーをフォローするかのように水鏡の剣を受け止めるがセフィーと姫神の戦いが終わり。ルミナスはセフィーの双剣を捌くと、俺と水神様が攻撃をする。

水鏡と姫崎は一旦離れると、お互いの顔を見てうなずくと、水鏡と姫崎が連携をしながら。ルミナスとセフィーに攻撃を仕掛ける。その攻撃に二人は対応できずに吹き飛ばされる。水鏡の放った水の刃がセフィーを斬りつける。その攻撃を受けるとセフィーが持っている剣が破壊されてしまう。そして姫咲がセフィーの腹に蹴りを入れようとするのだが。ルミナスはルミナスを援護するようにセフィーに向かって飛び蹴りを放つと。

セフィーが持っている剣が光り輝きセフィーはそのルミナスの攻撃を弾こうとする。しかし。ルミナスの攻撃によって発生した衝撃は、水鏡の剣撃を遥かに上回っていた。

ルミナスが放った蹴りはセフィーを壁まで弾き飛ばす。それと同時に水鏡と姫崎もその場から離れていくとセフィーに視線を向ける。

壁に激突したセフィーは、ルミナス達の方に振り向くのだが、そこには姫神の双刃が待ち構えていた。セフィーはそれを受け止めようと構えた瞬間。姫神はそのセフィーに向かって、拳を打ち込もうとしたのだった。

そしてその一撃がセフィーの頭にヒットすると思われた時、水鏡と姫崎は攻撃をやめて距離をとるとセフィーに向かって水と火の刃が放たれるとセフィーはそれを、セフィーは自分の剣で受け止めるのだがそこで完全に決着がつくことになるのだが、水神様とルミナスがそれぞれ武器に魔力を込めるとその攻撃を弾き返してしまう。

俺は二人に近づくと。ルミナスはルリ姉に連絡を頼みたいと言う。

ルミナスは、姫神と姫咲を見てから言う。二人は今の状態で戦って勝つのは難しいと言っていたのだ。それを聞き。俺はすぐに、俺はルリ姉に連絡をする。そして数分後にルミナスの元に『七竜騎聖』の一人であり『創造主』の異名を持つ、リーシャ=アールグレイが現れるとルミナス達はすぐに行動を開始したのであった。

ルミナス達と俺が合流する少し前の事だが、姫香はセフィーと対峙していたのだが、どうも様子がおかしいと感じていた。

「おねえちゃん。大丈夫?」と姫神は心配して、セフィーの顔を覗きこむのだが。

「うん。平気だよ」と言いつつ姫崎に話しかけるのだが。

(何か違和感を感じる)そう思っていた。そしてそれは間違いではなかったのである。セフィーの中にいる存在に姫神は気づいていたのだ。その正体はセフィーの中に入っている『機獣神装機甲グランオーガナ』に宿っている「精霊機竜ワイバーン」だ。そしてこの世界でのセフィーと「精霊機竜」の関係を姫神と水神様は知っていたのだ。

セフィーの持つ「精霊機竜」はセフィーの物ではない。

元々はセフィーの姉。セフィリアが『幻獣』から授かったもので。セフィーはその『機竜使い』の才能がないから。「機竜」を使えないということになっていたのだ。

姫神の体を借りているセフィーもそれは知っていて「機竜」を使いこなせるように努力をしたらしいが。セフィーは結局。『幻獣』を「竜装」する事ができていなかった。

「竜装」がセフィーにはできないのもセフィーが自分の実力ではなく「聖遺物」である「精霊結晶」の力で戦えているからだということを、姫神様も姫咲も知っているのだ。セフィーには才能がないわけでもなく。「聖遺物」の力をうまく引き出せないだけなのであるが、セフィーがそれを知れば悲しむのが目に見えているから、姫神と姫咲の二人があえてそのことを口にすることもなかった。

だから姫神と姫咲の二人の目には、セフィーの姿が痛々しく映っていたのかもしれない。姫崎はセフィーの事が大好きなので。そんな姿を見過ごすことなどできはしなかったのだ。それにセフィーが『幻獣機』を使って戦ったことなんて今まで一度たりともなかったので、姫神としては早く「竜装」を解いてセフィーを元の状態に戻したいと思っているが、姫神の力が強すぎて解くことができない状態になってしまっていて。

『幻竜』の姫神も『幻魔竜』の力を抑えることしかできなかったので、姫崎は姫神様の力を弱めることしかできず。姫神も姫咲もセフィーが元に戻るまで。このまま戦うことを決心したのである。

ルミナス達が合流をしてからしばらくしてから、俺は「セリス」達と合流したのだ。

俺が合流してからの状況は、ルミナス、姫咲、姫神様、水鏡の四人が、水神様とセリスの二人でなんとか食い止めていて、そこに俺が合流した形になっていたのだ。そしてルミナス達は俺にこう言ってきたのである。

「私達とルクス君はここでセフィーと戦います。姫崎と姫咲は、ルミナスさんの加勢をしてください」

セリカとセリスはルミナスと姫咲の方を見て、うなずくと俺達の方に振り向いて。「わかった」と言ってセフィーの方に向かっていった。そしてルミナスに言われたルミナスはルミナスの隣にいる水鏡に目線を送る。

「姫川先輩、少しの間。ルクス君の事をお願いしますね。それからセフィーの方ですが。彼女から発せられる力を感じ取る限りだと、セフィーと一体化しているあの子を助ける事は不可能に近いのかもしれません。それにあの子は「竜族」ではありませんが、「機竜」と同じような性能を持っているみたいです。ですのでルミナスさんがルミナスさんとして戦うことは諦めてください。」

俺はその水鏡の言葉を聞いてうなずくと、セフィーを見るのだけど、俺もなんとなく感じ取っていたが、セフィーの中には、ルフィールがセフィーの中で暴走をしてしまったときのような感覚が伝わってきたのだ。あの時のルリ姉は、「幻創機核』で操られているようだったが。セフィーの体の中に入り込んでいるセフィーの「聖遺物」が、セフィーに無理やりセフィーに憑依をしているように見えたのだ。しかし、セフィーも抵抗ができない状態でセフィーにとりついているような気がするのだ。セフィーが俺のところに攻撃を仕掛けてくる。そしてその攻撃は姫神様や姫咲に受け止められると。ルミナスは水鏡の剣とセフィーの双刃の刃とぶつかり合いながらルミナスに問いかける。

「セフィーちゃん。今助けてあげるから。もう少し我慢していて下さい。セフィーちゃんの中のその子を解放してあげたいのならセフィーちゃん自身に自分の意志で制御してもらうしかありませんから」

ルミナスはそういうが。やはりルミナスにも、セフィーが自分自身で、セフィーの中にあるセフィーの意識を取り戻す以外に方法はないという結論に至るしかないとルミナスは判断をしていたのであった。ルミナスは剣の柄を強く握りなおすと、セフィーを睨みつける。ルミナスはセフィーに向かって飛び込んでいくのだが、その時、水鏡が突然俺の方を向き「ルクス君!!セフィーの攻撃に気をつけて、セフィーに隙ができる瞬間に、私が攻撃をするので援護を頼みましたよ!!」と言った瞬間。俺に向けて何かの攻撃を仕掛ける動作をするセフィー。

「まさか!? 水鏡先生、僕を狙って攻撃する気ですか!? そんな攻撃、僕には通用しないですよ!。」

「違うわ。私は、貴方ではなく姫咲を狙ったのですけど、でも、どうして、今のタイミングで攻撃をしたんですか? 何かが姫咲を狙っていたとしか思えないですね。とりあえずは、ルキナの相手をしてくれていますが」

水神様と姫崎はルリ姉の相手をしながら会話をしていると水神様はルリナの方を見て「そろそろ終わりにしましょう」というと。ルリナもそれに同意した。そして二人も武器を構えると。お互いに向かい合ったまま、セフィーが作り出した障壁の中にいる。ルミナス達の方に向かおうとするのだが、それを阻止するように水神様と姫崎の二人を邪魔してくる水鏡。そのせいでルミナスの元に行くことができないのだ。

俺はルミナスにセフィーの攻撃には当たらないようにと言われ。それに従って行動してはいたが、俺に向かって攻撃が来るたびに、ルミナスの剣とセフィーの攻撃の衝撃波が激突するのであった。そして俺とルミナスの周りに水神様と姫咲の二人が、水神様がルミナスに攻撃を仕掛けないように。そしてセフィーの攻撃を防いでいたのだ。

ルミナスは剣の刃先を向けて、セフィーに向かって走り出そうとするが、姫咲が前に出てきてそれを制止させる。

姫咲は姫神とアイコンタクトをするが姫神はそれを受けて、姫崎に言う。

「ルリが『竜装』を使ったらルリが戦えるからルミナスを守ってくれって。それでいい?」

姫咲はそう姫神に聞くのだが、姫神様はその質問に対して首を横に振る。

「ダメなの。『七竜騎聖』である、セフィーの実力を考えると、姫神様一人でセフィーを止めることはできないと思う。だからセフィーの注意を引くためだけに『竜装』を発動させたとしても、セフィーの注意を引きつけて、その場から離れようとするだけでセフィーはセフィーの力を抑えきれない。そう思った方がいいかも。だから『機竜解放』を使えない姫香は、ルリの方に集中させないといけない。」

姫咲と姫神も、水神様と姫崎の二人の動きを止めつつセフィーの動きも封じなければならないのだから大変だったのだ。

セフィーは、ルミナス達の事を警戒しているのか、水神様と姫神の方を見ずに、俺のことを見ていたのだ。セフィーは自分の中に入って来ている少女が。自分を苦しめていることに気づいているのだろうか。そんなことを思う俺なんだけど。それでもセフィーが、セフィーの体を勝手に動かしている「機竜」のことが、俺は許せなかった。

(セフィを苦しませる奴なんて、絶対倒さなきゃいけない)

俺は、ルミナスのことを守りながらもセフィーがセフィの中から出てくるのを待つことにした。するとルミナスがセフィーに話しかけ始める。

『もう大丈夫だよ。私の中に居ても、何もないから、セフィーの中から出てきなさい』

俺は、ルミナスの声を聞いた後。俺達は一旦セフィーから離れた。

そしてセフィーはというと。自分が作り出したはずの「幻獣」の女の子の「セフィー」と、「幻魔竜」がセフィーにとりついていた。セフィーと、そのセフィーに取りついているセフィーが融合した「セフィー」の3人の戦いが幕を上げたのである。

ルミナス達がルフィーと戦うことになったが。ルミナスの体の中にはルフィールがいた。そしてルリ姉が「幻創機核」を起動させると。ルミナスの体の中に取り憑いている「機竜」が暴れ出すとルミナスはそれを必死に止めるが、抑えきれずルミナスとルミナムの戦闘服の一部が破壊され。さらにそこからセフィーが出てきたのであった。しかし、そのセフィーの体にルフィーが取りついていた。

そしてセフィーは水鏡の「機竜」の力を使ってセフィーとセフィーに取り込まれている「幻魔竜」と、そのセフィーの力を借りて戦っている。水神様と姫神様の二人がルミナス達の元に駆けつけて来てセフィーと戦いを始める。ルフィーはセフィーの体の外に出るとルフィーとセフィーの体が一つになった「幻魔竜」とセフィーとルミナス達が対峙する。セフィーはセフィーに取り込まれたセフィーと「機竜」の力を操り。「聖遺物」と「機竜」の両方を使うセフィーは今までよりも遥かに強くなっていた。ルミナス達が三人を相手にしているが。なかなか勝負はつかなかったのだ。そしてそこにルフィールの姿は見えなかった。しかしルフィールがどこに消えたかなど考える必要はないのだ。なぜならば、セフィーを取り囲んでいたルミナスの使いの3人は「セフィー」とセフィーの中に入っている「幻魔竜」と戦っているからである。その光景はまさに修羅場であった。

しかしセフィーもルミナス達に勝てるわけではないのである。いくら「機竜」を操れても。ルフィールと融合していたときと比べると、圧倒的に力が落ちてしまっているからだ。その証拠にセフィーはルフィーから「機竜」を奪うことができずにいる。そして俺が「機竜牙剣」の一撃を食らわせようと飛び込むがセフィーはその攻撃を回避した。

そしてセフィーの反撃が始まる。俺は、なんとか攻撃をしのぐことができたが。俺の背後にルミナスが現れ。セフィーの双刃の剣と鍔迫り合いになるのだが、そこで突然ルミナスの身体が吹き飛ばされてセフィーと俺が距離を置くのである。

俺が視線をずらすとそこには姫咲さんと水鏡先生がいるのだが、二人ともボロボロになっていたのだ。おそらく二人は「幻神獣」の攻撃によって怪我をしたのだと思う。しかし二人はそんな傷だらけの状態になりながら、二人にセフィーの攻撃を引き受けて貰っていたので俺はセフィーに攻撃することができなかったのだ。しかしこのままでは俺以外のみんながやられてしまう。そう考えた時、俺の中で声が聞こえてくる。

その言葉は、まるで「幻聴」のように聞こえるのだが、それが誰の言葉かはすぐにわかるのだが、俺はそれを聞くことができなかったのだ。

その声が聞こえてくるまでは、ルフィーの攻撃を防ぐことで精一杯であった。俺がその攻撃を防ぎ続ける中、ルミナスにセフィーの攻撃が集中していて俺の方まで手が回らないのである。ルフィーの攻撃はだんだん威力が増していく。それはセフィーの体と「幻獣」の力が高まってきたということでもあるのだ。そしてとうとうその時は来た。「幻神眼」を発動したセフィーは、自分の周囲に、障壁を展開し、ルフィーの「機竜」と、自分の体に、攻撃をしたのだった。その結果、セフィーは自分の障壁で、自分への攻撃は防げたのだが、ルフィーの攻撃でセフィーは大ダメージを受けてしまい、ルフィーにセフィーを奪われてしまうのであった。

俺はセフィーを追おうとしたが。水神様に止められる。

「貴方一人じゃ無理よ。セフィーには敵わない。貴方はまだ、力が目覚めていない」

確かに水神様が言っていることは間違っていない。だがルフィーが持っている「幻神機核」を壊すためにはルミナスの武器が使えるはずなのだ。そう思ってルミナスの方を見るとルミナスと姫神様はルフィーが出した、幻神獣を倒し終える所だったので、姫神様に俺はルリ姉の武器を貸して欲しいというが、姫神様はそれを拒否してしまった。そして俺も姫神様と一緒にルミナスが「幻神装具」を使いルフィーの幻神装機を封印するまで見守ることになってしまったのである。そして水神様はルフィーの相手をしていて、ルリ姉と姫神様の二人だけでルフィーを倒すのは困難で時間がかかる。そうなった時に俺は何をすればいいのか、わからないのだ。俺はそう考えていると姫神が俺に声をかけてきて。俺の剣を俺に渡してきたのだ。俺はそれを姫神に聞いてみると、 姫神は俺の顔を見ながら俺の剣を渡してくれるのであった。俺はこの剣を見て驚くことになるのだけど。姫神は続けて。姫神の剣を俺に貸してくれたのだ。姫神は自分の腰に装備している、姫神自身の「機竜牙槍」を見せるのであった。姫神は自分の分身とも言える。「幻神竜」と「幻創竜」がいなくなったことで姫神自身に、余裕ができたのだと思った。姫神は俺の方に振り返り俺に笑いかけると「後は任せた」と一言言ってその場から立ち去る。俺はそんな姫神様の後姿を見た後に。俺とルリ姉の戦いが終わるまでの時間を考えると姫神様なら大丈夫だと思い。セフィーに奪われたルフィーを追いかけるために俺はルリ姉に言う。

「ルリ姉は、先にセフィーを止めてほしいんだ。俺の使いの3人とセフィーは俺に任せてくれればいいから」

俺はセフィーとセフィーに取りついているルフィーに攻撃を仕掛けようとするが、そこにルフィーが現れる。その事に気づいたルリ姉がルフィーを止めるために動き出すと。水神様もそれに加勢してくれる。

水神様もセフィーの事を気にかけてくれたようなのだが。セフィーが俺に向かって言うのだ。

「貴方が私の邪魔をするなら、私も全力を出します。」セフィーの瞳が紅く染まる。すると俺達の周囲に、竜巻が発生したのだ。水神様と姫神様もセフィーの放った魔法に巻き込まれそうになる。姫神様はその事を感じ取って。水鏡の力を解放したのだ。姫神様の水の神器の力で水の球体を作り出すがそれでも風の威力の方が上回っている。

俺がどうするか考えていたら。突然セフィーの動きが止まる。俺の目の前に、姫神様と水神様が姿を現す。その二人は俺と姫神様に話しかけて来る。俺はその話を聞いて、水神様から「幻創機核」を受け取ることになったのだ。俺は「幻創機核」を受け取った後すぐに。俺はルフィとルフィーの所に行こうとするが。セフィーの攻撃を受けることになる。

ルミナス達は、ルフィールがセフィーに取り込まれていることを知りセフィーに対して有効なダメージを与えることができない状況に追い込まれていた。セフィーはというと、ルフィールと融合することによって今まで以上に力を開放していた。そのため今まではなんとかなっていた戦いにも決着がつくことになる。それはセフィーの攻撃によってセフィーを庇っていた二人の女性が傷ついていしまい動けなくなってしまった。

セフィーの攻撃にセフィーは反撃をしたがルフィールを傷つくことになりルミーナに怒られることになる。

「お前にルミちゃんを傷つけるような真似をさせてごめんね。セフィー」セフィーの攻撃を防御したのは、ルミナスではなく。ルミナスの中に入っていたルフィールなのである。ルフィールの攻撃を受けたセフィーの体に異変が起こる。セフィーの体内から幻神獣が現れたのである。その幻神獣は、セフィーを取り込んでいる「幻魔竜」に寄生した状態で現れ。「幻魔機核」から解放されてもまだ意識を保っていた。

そのセフィーを取り込んでいた幻魔竜がセフィーの中から出てくると。幻魔竜はそのまま倒れこむのである。幻魔竜はその後動くことはなかった。セフィーを取り込むことで力を増していた幻魔竜だったがセフィーから分離したことでセフィーは、自分の意思とは関係なく、暴走状態になり、セフィーはセフィーが取り込まれているセフィーに襲いかかろうとしたが。

「セフィー、もうやめなさい」ルフィールの悲痛の声が響くのだった。セフィーに取り込まれているセフィーは「幻神眼」を発動しながらルフィールを攻撃していたが。セフィーは、幻魔竜と分離することになってしまい、「幻魔眼」の力が弱くなって、そのセフィーはセフィーに取り込まれている幻魔竜に襲いかかろうとするが。その瞬間、ルフィールがセフィーを抱きしめて。セフィーに言う。

「セフィーもう止めて。こんなことをしても誰も喜ばない」

「ルフィールどうして、私を止めるんですか?私にはルミを守ることしか残されていないんですよ。私はルフィールを守るために生まれてきた。私がここで死んでしまったらルミナスはルフィールとルフィールの家族を守り続けることができないじゃないですか?」

「セフィーが死んじゃったらルミが寂しがるよ。だからこれ以上ルミを苦しめないようにセフィーが死ねばいいんだよ。ルフィーのことは私たちに任せてください。ルフィールは安心して」

「セフィーお願いします。どうか私のために命を捨てるのは辞めてください。ルミナスの事は心配しないで、ルミナスならきっとどうにかしてくれます。ですから、今、自分がやっていることに気が付いてください」

「ダメですよ、そんな事したらルミナスに悪いじゃない。でも、ルミをこのままほっておくこともできないからね。私もルフィーと一つになって、ルミールとして生きていくことにするよ。それがルミの願いだし。これからもずっと一緒だよね。セフィー」ルフィーと融合した状態のセフィーとセフィーが融合した状態のセフィーが、ルフィーの前に現れるとセフィーが、ルフィーに向かって抱きつき、セフィーの体から幻神獣が出て行く。幻魔竜はルフィーの中に戻って行きセフィーの体の主導権をルフィーとルフィーが奪い合い。ルフィーが勝利をおさめる。セフィーとセフィーは、お互いに自分の中に戻ることになるのだった。

ルフィーの体が光を放ち。そしてセフィーが、ルリ姉に取り憑いている幻魔竜に取り込まれるはずだったのだが、何故か幻魔竜に憑依されるはずのルフィーとセフィーの姿が消えたのであった。

セフィーは幻神竜の本体にルフィーとセフィーは、吸い込まれるようにして入ってしまう。それを見たルフィーの体は。そのままその場に倒れる。ルフィーとセフィーが入れ替わったことでルフィーに力が戻ってきて、ルフィーは起き上がりセフィーを取り戻そうとセフィーが封印されている場所に向かう。そこには既にルフィーにルフィーとルミナスと水神様と姫神様が到着をしていたのだ。セフィーは、自分を取り戻したことで。セフィーがルフィーに話しかける。「貴方の大切な人を傷つけてしまった事を本当にごめんね。」とルフィーに向かって謝るが。セフィーにルフィーが言う。「気にする必要はないわ。セフィーはセフィーなんだから、ただ今は、その幻魔獣を倒すことを考えましょう。その幻神装具に私の幻神機核を融合させる。そうすれば「天翼剣バハムート」は、セフィーのものになるはずよ」

そしてルフィーは、水神に、幻神竜に取り付いているセフィーの体をセフィーの所に連れて行ってほしいというと水神がセフィーの事をセフィーの体がいる場所に連れて行ってくれたのだ。幻魔竜の体に寄生した状態だと幻魔竜の力を完全には使えなかった。そのため今のセフィーは幻魔竜に完全に取り付くことができずに幻神竜の中にセフィーは存在することができたのだ。

セフィーとルフィーが入れ替わりルフィーにセフィーが取り憑くことで。ようやくセフィーと幻魔竜との戦いは決着がついた。セフィーの体が完全にセフィーになった事で。今まで幻魔竜に囚われていた「幻機核」は「幻魔竜」の元に戻ったので、ルフィールの「神滅覇王」の武装の一つである神剣と神槍の能力の一部を使うことができなくなったが。ルフィールとルフィーのおかげで。セフィーは完全に幻神獣を封じ込めることができたのである。

セフィーは幻魔竜に取り憑いた状態でルフィーが持っている「天羽々斬」を強奪しようとしたのだが、その時ルフィーに「天翼神」が宿り「大天使」の神器の力を開放する。それによってルフィールは、ルフィール自身が所持している能力と水神様の神器の力でセフィーを圧倒することに成功したのだ。そして幻魔竜が取り憑いていた「幻魔竜」が「神喰狼」の力を吸収し始めるとルフィーに「幻創神器」の力が吸収されて行った。

セフィーは、ルフィーと「大魔王の衣」によって作り出した。セフィー自身の「聖鎧機神ヴァルキリア」の二つの神器の力を使うと、ルフィーが、幻魔機核にセフィーと「神喰牙機神」の二つを融合させた神装武具「魔皇機竜」にルフィールが取り込まれているのである。

セフィーの体にセフィーがルフィーの体に入ったのはセフィーの意思であるのだ。

幻神竜に取り付いていた幻魔竜はルフィールが、取り込んだことによって。ルフィールの「聖剣」とルフィーが使っていた武器の神装武具は。全て幻魔竜の中に入ることになるのである。セフィーに取り込まれている幻魔竜は。「魔皇機竜」の力を幻魔竜自身にも使うことができるようになり、その幻魔竜は、さらに力を開放して、幻神獣が進化をする。その姿形は、「幻魔竜」と「幻魔機竜」の融合した姿で、幻魔竜に「幻創神器」の能力を融合させて、幻魔機の力と神魔の力を持つ幻魔機竜になるのであった。そして「幻神機竜」と「幻魔機竜」を融合させて生まれた幻魔機は、今まで幻神機が取り込まれてきた。幻魔機と「幻魔」の融合をしたことで、その能力は飛躍的に向上していた。幻魔機竜に、取り込まれているルフィーの体の幻魔竜が、その力を振るおうとする前に。

セフィーはルフィーの中から飛び出して。幻魔竜に寄生すると。セフィーを取り込もうとするがセフィーはその攻撃に対して、ルフィーとの融合を解き。その瞬間にセフィーがルフィーと「大魔導機核」とルフィールを取り込んで幻魔竜と融合するのであった。セフィーは幻魔竜と一体化することでその力を全て得ることができた。

セフィーと幻魔竜が一対の存在になったことで。幻魔機竜の力を自在に操ることができるようになった。ルフィーが使用していた神装機をセフィーの身体に取り込まれたことで、セフィーは全ての「幻機竜」を扱えるようになっているので。ルフィーの持っていた神装機の力は全てセフィーに取り込まれることになる。ルフィールの持つ神造兵装や水神様とルフィールが持つ「魔剣神」も、ルフィールの体に取り込まれた状態で「幻神機竜」として復活することになる。セフィーに取り込まれている「大魔王の衣」も、神器に進化をすることになった。その「幻神竜」は、「幻魔竜」、「幻魔機竜」の両方の特性を融合した存在となり。その体は幻魔竜と幻魔機竜が合わさった姿をしており。その外見からは、竜種の面影を感じることはできなかった。

ルフィーの体のルフィールは、水神様に助け出されていた。そして「神龍眼」を「天羽々斬」を握り締めながら。ルフィールが言う。

「幻魔竜が「幻神竜」に進化した以上私達ではもうどうしようもない」

「そんなことはない。まだ私は戦える」ルフィールは「天羽々斬」と「天羽」の二本の刀を構え。

ルフィーに向かって話しかける。しかし。ルフィールが話した直後に。

ルフィールが「神滅覇王」の力が発動して。

ルフィーが吹き飛ばされると。そこに姫咲が現れる。ルフィーは姫咲に襲いかかろうとするが、セフィーの「聖剣」と水神様の力を使いルフィーの攻撃を防ぐことに成功する。ルフィーとセフィーが入れ替わったことで。今まで幻魔竜に取り込まれていた「幻機核」は「幻魔竜」の元に戻ったので、ルフィールの「神滅覇王」の武装の一つの武装である「幻機装具」は。ルフィールがルフィーから奪い返したため。セフィーと「幻魔竜」の力は使えなくなり。ルフィールと水神様の力だけでセフィーはルフィーを抑えつけることに成功したのだった。

セフィーは幻魔竜を幻魔竜と融合させることに成功し、その力を取り込み、さらに幻魔竜を神装機竜に変化させることで、セフィーと幻魔竜が、完全な一つになることで。神竜と機械を混ぜ合わせた幻神機へと変化するのだった。その機体名は、セフィストという。

セフィーはルフィールを拘束するのに成功したが。

「神魔」の力を宿す神魔の力がセフィーの体に干渉してくると。セフィーが纏っていた「聖鎧機竜」は解除されてしまうのであった。それを見た水神様と姫神様が慌てて、セフィーの元へ駆け寄ってくる。姫神様は、水神様とセフィーを守るように。水神様と一緒に立ちはだかる。水神様が水神様の力を姫神様は姫神様の力を使うが。二人の力はセフィーの力に負けてしまう。姫神様と水神様はセフィーの「神魔」の力に対抗することができないでいた。そしてその力によって姫神と水神はセフィーに取り込まれることになってしまうのである。セフィーは幻魔竜を「幻魔機竜」と融合させた。そして幻魔機竜の力と幻神竜の力が混ざることで、幻魔機竜は「幻魔機竜」と「幻神機竜」を融合したものになり。その機体は「神魔」の力を持つことになったのだ。

セフィーが神魔の力を発動させるのと同時にルフィーは、神装機竜に変化している。

そしてセフィーが幻魔竜と幻魔機竜の力を使って作り出した「大魔竜」は幻魔機の力を持つ「幻魔機竜」と「幻神竜」を融合した幻魔竜の力は今まで取り込まれた「幻神竜」の力と幻魔機竜の力を使うことが可能になるのだ。セフィーの作り出した「大魔竜」は。見た目的には竜種のように見えるが。その姿には今まで取り込まれていた「幻神機竜」のパーツの幻機竜の姿形をしており。その「幻神機竜」の中には、幻魔機竜も含まれているのだ。

セフィーは、その「大魔竜」に、幻魔竜が取り込んだ「大魔王の衣」をセフィーに取り込ませて、さらに「大魔導機核」を幻魔竜に取り込むことで。「大魔機竜」を完成させることになるのである。そしてセフィーが幻魔竜と「

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勇者はお姫様を救うのがお仕事です!~お姉ちゃんの魔王討伐を手伝ったら何故か僕にプロポーズしてきました?~ あずま悠紀 @berute00

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