私の恋人、いつか必ず報われる?〜出会いとタイミングは大切〜

ハル

第1話 私の恋人、いつか必ず報われる?〜出会いとタイミングは大切〜

私の名前は、

有月 絵利佳(ゆうづき えりか)。37歳。


まあ、大体であろう平均年齢で結婚した女子。


しかし、そんな私は、バツ2という痛いアラサー女子。


まさか自分が、バツ2になるとは思ってもみなかった。


今の職場につくまでは、離婚に至るまで、色々あった。


だから、恋愛もしようとは思わないし、結婚なんて尚更だ。



「有月さん、新しい社員が来るから指導の程、宜しく頼むよ」


「えっ!?部長、私に、また押し付けないで下さいよ!」


「いやいや、優秀な君だから頼りになるんだよ」


「褒めても何も出ません!」




また、新しい社員。


幾つくらいだろうか?


私も良い年齢だ。


私よりも上は来ないはず。


だけど、今の世の中、年齢層は幅広い。




そして――――



河西 向希(かわにし こうき)。27歳。


別の会社から異動してきたみたいだけど、仕事の内容は前会社と違うようなのだ。


私は指導係となり、日々、過ごす。



それから、数ヶ月後、彼は、ここの職場で働くはずだったけど、家庭の事情で辞めざるをえなくなった。


その数ヶ月後、一人の新しい社員が来た。


私が有給休暇をもらっている時の事だ。


彼の名前は、基戸 壱矢(きど いちや)。25歳。


「絵利佳さん、彼の事、宜しくお願いします」


「えっ?」



職場の後輩が私に頼んできた。



「数日、絵利佳さん、お休みだったから、私が指導係として、部長に言われたんですけど、絵利佳さんが来たら、後は彼女に任せておけば良いよって言われて」


「あの野郎…本当、私に任せ過ぎ!」



そして――――



「宜しくお願いします!」と、彼・基戸君。



元気の良い男の人だ。



「有月さん、彼氏いるんですか?」

「えっ?また、唐突だね。仕事と何の関係あるの?」

「コミュニケーションですよ」

「いや…まあ…そうなんだろうけど…」

「で?どうなんですか?」


「関係ないでしょう?」

「ありますよ!」

「どうして?」

「男いたら変に誤解されたら嫌ですから」

「あのねー、そうならないように、普通に報告するでしょう?」



「じゃあ、つまり、彼氏いるんですね?」

「いません!」

「またまた〜」

「私は、こう見えても……」



ヤバイ…。


正直、バツ2なんて言えるわけがない。


恋愛したくないし、結婚なんて尚更な私だ。


しかも、離婚に至るまで、色々あった。


同情されたら困る。




「何でもないです!」


「えっ?」


「私の事、検索しないで!良い?」


「わ、分かりました…」




ある日の事。



「有月さんって、オシャレですね!」


「えっ…?」


「センス良いなって思います」


「そう…あ、ありがとう」




私の職場は、制服がなく、私服勤務。


だから、オシャレには、一応、常に気を使っている。


初めて褒められた。


照れくさいような恥ずかしいような…




そして、また、ある日。


「有月さん」

「何?」

「最近、何かありました?」

「えっ…?」

「…いや…何か元気ないなって…」


「…大丈夫だよ。そう見えた?」

「はい」

「思い過ごしだよ」


「だったら良いんですけど…話なら聞きますよ。いつでも頼って下さい!」


「ありがとう」




頼るなんて出来るわけがない。


良い大人が頼るなんて……


しかも、相手は10以上離れているし年下だ。


だけど彼は――――



「有月さん、過去に何かありました?」

「えっ…?」


「気にはしていたんですけど、何か異性に対する対応が…相談にのりますよ」


「…何もないから」


「そうですか…分かりました」




その後、彼の視線を感じるも、彼は何も聞こうとしてこなかった。


しばらく指導係としていた過ごしていた私達の関係も一人の、一社会人、一人の人間として過ごすようになり、彼は誰にでも気さくに笑顔で場の空気を和ませたりしている姿があった。



「有月さん、好きな食べ物って何ですか?俺、この間、友達と行った店が、めちゃくちゃ美味しくて是非、行ってみて下さい!」


「うん…分かった。機会があったら足を運んでみようかな?」




他にも、こういうメニューありますよと言うと携帯(スマホ)の画面を見せては、店の名前を教えてくれた。





それから、一ヶ月が過ぎる。



この一ヶ月間、彼は1日一回、必ずといって良い程、何かしらの話す機会を伺うように過ごす。


話さない日は、ない気がする。


時には、意地悪したり、からかってきたりしていた。


彼の意図は何なのだろう?


仲良くなる為の行動?


気になる言動もいくつかある。



思わせぶりな態度に、私の胸の奥が、掻き乱される。


もうこれ以上は…



そう思う中、私の決心していた事が壊されていく。




ある日の事だった。



「有月さん」



ドキン…

私の胸が久しぶりに大きく跳ねた。



「何?」

「お礼を兼ねて、食事にでも行きたいんですけど」

「お礼?えっ?私、何かした?」


「自分も忙しい中、指導係して頂いたお礼です。俺がここに来てから、毎日残業していたでしょう?」



ドキッ

まさかの言葉に驚き、胸が大きく跳ねる。




「いや…えっと…」

「隠さなくても良いですよ。バレてますから」



「……………」



「これ、俺の連絡先です。連絡待ってます」




私は彼に何度も連絡しようか迷った。


恋愛なんてと思っていた私の心の中に彼が存在していたからだ。




“好き”までは、いかないけど、


でも好き寄りに近くて、



“もっと仲良くなりたい”


“話したい”



その気持ちは強かった。






ある日の事。



「有月さん、ちょっと良いですか?」


ドキッ


基戸君が、こっそり話しかけては、場所を変えるように促した。



「何?」



私の胸は、ドキドキが収まらない。

こんな気持ちになったのはどれ位ぶりだろう?



「いや…有月さん、連絡待ってくれないから」

「それは…忙しくて」

「そうなんですか…」

「うん。だから待ってるだけ無駄だよ」

「分かりました」


「ごめんね。気持ちだけ受け取っておくから」

「じゃあ、ここに今夜来て下さい!」

「えっ!?」

「既に予約済みなので来ないと、お金請求します!」

「…えっ…?ええっ!?強制!?」



メモられた住所と店の名前。


人気スポットの1つだった。




「ちょ、ちょっと…困…」


「俺、有月さんと、もっと仲良くなりたいんです!仕事仲間として含め、プライベートも。距離感あるの気のせいじゃないですよね。みんなよりも、一番距離感じるから」



「………………」



「みんなとは、ちょくちょく会ったりしているのに、有月さんとは見えない壁があるから、心に秘めた何かあるんだろうなって…」



「………………」



「私は、もう30の後半だし、こう見えても、バツ2なの!恋だの愛だのしたいと思わないから私に構わないで!」


「…それが…有月さんの壁をつくっている原因の1つなんですね」



「……………」



「分かりました。だけど、今日の事は本当に付き合って下さい!マジ、予約制なんです!人の目が気になるなら何処かで待ち合わせしても良いし。絶対に来て欲しいし、行きたいので」



私は、今回は一歩踏み出して付き合う事にした。




「ここの予約、良く取れたね?」

「大変でしたよ」

「倍率高いんじゃ?」


「そうなんですよ!有月さんの好きなのとか、好みの食が分からないから尚更で。有月さん、大人の女性だし、オシャレだから変な店に初めての相手を食事を誘うのは、俺的には抵抗あって。しかも、相手は女性ですよ」



私はクスクス笑いながら彼の気遣いに嬉しく思った。




「ありがとう。その心遣いは凄く嬉しいよ。だけど、もう強制は辞めてね」


「は、はい!以後、そうします」


「後、普通の店で大丈夫だから、下手に気を遣うのは辞めてね」


「はい!良かった!初めて笑ってくれた気がする」


「そう?」



彼も緊張していたであろう。


そんな私も緊張していたけど、何故か普通に接する事が出来た。


私達は、楽しい時間を過ごした。



お互い色々な話しをする。


職場と変わらない彼だけど、時々、異性を感じさせるさり気ない優しさや気遣いに、私の胸はドキドキ加速している。




「お会計は…」と、店員さんが言い掛ける。



「一緒で」

「別で」


同時に私達は言った。




「有月さん、俺が払いますよ。誘ったのは俺ですから。しかも強制でしたし」


「でも…」




ポンと頭をされた。


ドキッ

胸が大きく跳ねる。



「お願いします。有月さん」



私は彼の言葉を受け入れた。



「ありがとう」



私達は店を後に出た。



「ご馳走様でした」

「いいえ」




その後、基戸君とは、不思議と出かける事が増えていた。


自分の気持ちを抑えるもかなりの限界がきている。


基戸君に、誘導されるように、初めて食事に行った時、私の事を聞き出そうとしたみたいで色々と尋問された。



ある日の事。



「基戸君」

「はい?」

「私達の関係って…?」

「えっ…?」


「いや…恋人でもないし、まあ、友達だとしても、出かける理由って…?」


「あー…そうですよね?すみません…」


「いや…私こそごめん…」


「いや…有月さんといると何か落ち着くんですよ。違う意味で同じ時間過ごしたいな〜って…」


「えっ…?」


「あっ…いや…すみません…勝手に突っ走ってしまって…」


「ううん…」



嬉しいけど、私達は、職場の仲間として深入りしない方が良い。


私は、自分自身に、そう言い聞かせていた。


だけど、基戸君は、誰にでも対等だから、私にも変わらない態度で話し掛けたりしてくれていた。


でも…辛い思いをしている私がいる。


基戸君が他の異性と仲良くする事に嫉妬している自分がいる事に。



《最低だ…》



そして、何度涙しただろう?




ある日の事だった。



「有月さん」




ドキッ

名前を呼ばれ、私の胸が大きく跳ねる。




「…基戸君…」


「最近、どうかしました?」


「えっ…?」


「何か元気がないな〜と思って」



「………………」



「そう?き、気のせいじゃない?」


「…だったら良いんですけど…」




基戸君の想いは知らない。


だけど、思わせぶりな態度をとられたりするのは良くある日々。


でも彼の本音が分からないから。


何とも想っていないとすれば、例え、私の想いを知らないとしても辛いのは自分。


一層の事、告白した方が良い?


そんな事が脳裏に過る。



そして、私は、今の関係をどうにかしたくて想いを伝える事にした。



「ありがとうございます。時間貰えませんか?有月さん、良い人なんですけど…」




そして、お互い変わらない態度で過ごすようにして月日が過ぎ、基戸君は、私の前から去った。


何の前触れもなく仕事を辞めたのだ。


連絡先を交換していたのが運が良いと言うべきか?



メールを送ると、その日の返信はなかったけど、次の日、メールの返信が届いた。


少し会話して、すぐにメールのやり取りは終わった。


彼とはまだ、色々と話をしたかったけど……



その後、数日続いてメールのやり取りを繰り返し、私のメールを最後に返信がなく、1週間後、返事はないものの、読んだ形跡はあった。


本当なら返事が来て、メールを送る事が良いんだけど、再び、メールを送る。


もちろん、すぐに読まれた感じではない。



私は、20代の頃、メールで失敗談がある過去があり、嫌われたのかもしれないと…そう考える事が増え、1ヶ月メールを送る事は辞めた。


その間、基戸君からメールは来る事も連絡もない。


全くといって良い程、音沙汰がなかった。


忙しいのかな?


そうも考えるも、私は、正直どうすれば良いか分からない。



告白して、良い人なんですけど…


それ以外ハッキリした返事がないのが一番難しい。



駄目なら駄目だという言葉が正直欲しい。


何を考えているのか分からなくて……


彼女がいる事は言っていた。


そうなると、恋人なんて当然無理な話しだ。


友達?


それはありかもしれないけど……


私達の関係は、友達?


仕事の仲間?


私の存在は、今の距離感じゃ、どう考えても、後者だろう?


私は、そう思うも、基戸君の中では知らない。


ハッキリしない、曖昧さが一番、難しい。


唯一、私の過去を知っている一人の異性だ。



基戸君とは、色々な共通点や価値観など、お互い長く付き合えそうな感覚があったのだ。


良い年して、運命かもしれないなんて……。


前世に何かの関係があったのではないか?


そう思っていたのは…お互い勝手な思い込みだったのかもしれない。


運命とか正直信じないけど、何処か何かしらの繋がりかあったのでは?


だけど、今は、そんな感じは一切感じさせない距離感が、私の心を閉ざしていく。


考えがマイナス思考。


そんな複雑さの中に、私の前に、また、一人の異性が現れた。




彼の名前は、逢沢 由綺(あいざわ ゆうき)。23歳。


ワンコ系?


何か可愛い系の男の子だ。


しかもイケメン。


まさか自分の人生の中で、身近で、こういう雰囲気の子と会う事になるなんて……


私の中で、正直、まともに顔が見れない感じになる相手に初めて会った。


業界の人間でも通る綺麗な顔立ちをしている。


相変わらず、私が指導係だ。


正直…今回に関しては、私は辞退したい。


無理です!


そう言いたい。


でも、そういうわけにはいかないのが社会人として責任感というもの。


大人の世界だ。




そして私は。


「逢沢君」

「はい?」

「あの…前もって、単刀直入にハッキリ言っておく」

「何ですか?」


「私、逢沢君みたいな人、今迄、出会った事ないから、まともに顔が見れなくて、緊張もしまくりなの!」


「そうなんですね。…ん?つまりそれは…どういう意味なんでしょうか?」


「イケメン過ぎて…顔がキレイな顔しているから。芸能人並の顔で」


「あー、そういう事なんですね」


「そう!だから…えっと…至らない部分あったりして迷惑かけたらごめんなさい!」



クスクス笑う逢沢君。


私の胸の奥が小さくノックした。




「……!!!」



《その笑顔は反則!》



世の女性のハートを虜にする笑顔だ。


実は私がもう一つ彼に感じた印象がある。


見た目クールで近寄り難い雰囲気もある彼。


こんな彼と違う意味で上手くやっていけるのだろうか?


そんな不安と闘いつつ、私は頑張るしかないと思った。




ある日の事。



「絵利佳さん、今年のバレンタインどうしますか?」


「バレンタイン!?」



職場の後輩に尋ねられた。



「はい!」


「そうだな〜。私は、いつも、みんなでどうぞって渡してるんだけど、何となく今年は、各々に渡そうかな~?男性の社員は既婚者が多いし、異動とかで随分と男性社員も減ったしそこまで出費も出ないだろうし」


「じゃあ、私も、そうしようかな?別に本命がいるわけじゃないし」




そして、当日。


私は各々に渡した。


見返りは求めるわけでもない。


ただ、いつもの日頃の感謝を込めての意味で私は素直に渡しただけなのだ。



「逢沢君、これ、日頃の感謝の意味を込めて」


「ヤッター、マジですか!?」


「うん」


「ありがとうございます!!」




《可愛過ぎでしょう?》

《いや…彼女が羨ましいかも…》



私も年齢も年齢だ。


再婚とかなんて一切考えていない。


彼氏?


まあ、悪くはないかな?


だけど、誰も相手にしないだろうし、出会いがないから諦めモードだ。


良い人現れれば良いけど……


なんて思うも何も変わらないだろう。



基戸君に関しても、全く分からない為、先に進めないのが現状だ。





そして、ホワイトデー。



私は、見返りなんて求めていない為、すっかり忘れていた。



その日、私は残業。



「有月さん」


「あれ?逢沢君?お疲れ様。どうしたの?」

「お疲れ様です。ホワイトデーなのに、残業ですか?」

「うん。ていうか、私にホワイトデー関係ないし」

「彼氏、待っているんじゃ」


「いないよ。まあ、いたところで変わらないけど。そういう逢沢君は彼女と、ラブラブデートじゃないの?」


「俺、彼女と1ヶ月前に喧嘩しちゃって、お互い距離置いてるんです」


「そうなんだ」


「出かける事はあるけど…よりを戻そうって気にはならないんですよね。お互い」


「そう。また、そのうち、やっぱりって事あるんじゃないの?」


「いや……俺はないです。気になる人いるし」

「へえー…」

「有月さん」

「何?」

「はい、バレンタインのお返しです!」

「えっ?」



小さい透明の袋に入った物。



「私に!?」


サプライズのお返しに、つい笑みがこぼれた。



「はい!」



返事をする彼も、同じく笑顔を見せた。



ドキッ

胸が高鳴るも、平然ぶりを装い



「あ、ありがとう!私、お返し考えてなかったからすっかり忘れていた」



彼に、お礼を言った。



「もっと楽しみましょうよ。有月さん」

「まあ…そうなんだけど…」



そして、ある日の事。



「有月さん」

「何?」

「有月さんって…彼氏いたりするんですか?」


「えっ?いきなりどうしたの?彼氏はいないよ。私、こう見えても✕(バツ)2だから…あっ!」



何の躊躇もなく、言ってしまった。



「今の聞かなかった事にして」

「いや、無理ですよ」

「じゃあ、忘れて!」



逢沢君はクスクス笑いながら



「無茶苦茶ですって」



私は笑う。




「…ただ…気になる人はいるんだよね…」

「告白しないんですか?」


「したよ。進展なし!お互い、連絡先知ってるんだけど…動けないんだよね…」


「動けない?」

「うん…」



「………………」



「…ごめん。気にしないで。忘れて!」

「いや…無理です。ちなみに相手は年下なんですか?」

「えっ…?あ…うん…」

「だったらガンガンいくべきですよ!」


「出来たら…そうしたいよ…でも…嫌われるの怖いんだよね…過去に、メッセージのやり取りで失敗してるから…」


「そうなんですね。ちなみに、相手から返事もらったんですか?さっきの感じだと、何か停滞中みたいな感じだったし」


「告白して、返事もらう事なくて…待ってて欲しい…有月さん良い人なんですけどって…それだけの返事」


「ハッキリ言って欲しいですね。駄目なら駄目って!」


「そう!本当そうなんだよね…いつまで待たなきゃならないんだろう……ていうか…私…何ペラペラと…今の忘れて!」


「無理ですよ。逆に有月さん謎だから、むしろ知りたいかもです」


「あのねーー。ていうか…謎って…」



クスクス笑う逢沢君。



「いつでも気軽に相談されて下さい」

「いやいや…自分の事、さらけ出す気ないから」

「でも、さっき話してたじゃないですか」

「さっきのは忘れて!」

「今更、無理ですって!」



それから、基戸君とは、相変わらず距離も縮まらず、連絡も変わらない状態で、私の中では、期待するだけ無駄。


そう思うも、気にはかけていた。


正直、自分の気持ちも分からなくなっているような気がしていた。



そんなある日、逢沢君を連れ仕事で外出している時の事だった。




「有月さん?」



名前を呼ばれ、振り向く視線の先には



ドキーーッ



「基戸君!?」

「お久しぶりです」

「うん、久しぶりだね」



私は驚くのと同時に、どんな顔をすれば良いのか、複雑な面持ちで、その場にいた。



「すみません…仕事中なのに」

「ううん…元気そうだね」

「はい、お陰様で」

「そっか…」


「有月さんも元気そうですね」

「あ、うん…そ、それじゃ」

「はい。お疲れ様です」

「うん、お疲れ様」



別れ始める私達。




「有月さん…大丈夫ですか?」と、逢沢君。


「えっ?」

「もしかして…今の…」

「何?」

「好きな人とか?」



ギクッ


「ま、まさか。違うよ」



「………………」



逢沢君は、後を追う。



「逢沢君!?」


「あの!」

「はい?」

「彼女との事、今後、どう考えているんですか?」

「彼女?」

「有月さんです」



「逢沢君、どうし…」


「ハッキリしないまま、ズルズルと今の関係を続けるつもりですか?」


「…逢沢…君?」


「友達なら友達って返事を言うべきだと思います!すみません!失礼します!」


「ごめん…基戸君」

「いや…」



私は謝り、逢沢君の後を追った。




「逢沢君っ!!待って!」


「すみません…俺…」



足を止める逢沢君。



「いや…ちょっと驚いたけど…」


「有月さん…あの…もし、これで何も変わらないなら、俺との事、考えてくれませんか?」



振り返りながら言う逢沢君と向き合う私達。



ドキッ

そんな彼からの意外な言葉に胸が大きく跳ねる。




「えっ…?」


「連絡もしない。返事は返さない。例え忙しいとしても、何かしらの連絡するくらいの時間はあるはずですよ。もしくは、甘えて信頼しているとか?」



「………………」



「俺、同じ男として、正直、許せないです。まあ、有月さんが選んだ相手だから、俺が、とよかく言う立場じゃないのは十分分かってますけど…」


「…ありがとう…逢沢君…」




数日後。



「有月さん」


ドキッ



「逢沢君…」

「何か動きありました?」



私は首を左右に振る。



「…そうですか…」

「…ごめん…逢沢君の想いに、すぐ答えられなくて…」

「当たり前じゃないですか?」

「えっ?」



「想いは伝えてあるもハッキリしない相手と俺みたいにハッキリ想いを伝える相手。正反対の性格ですし。有月さん聞いてもいいですか?」


「何?」


「有月さんの中で、好きな人の存在は、今、どうなんですか?責めたり深く追求もしません。素直な気持ちを教えてくれませんか?」


「…正直…分からない…かな……?このままで良いのかな?って考える自分がいるかも…」


「…有月…さん…」



スッと両頰に触れてくる逢沢君。



ドキッ

胸が高鳴る中、ドキドキ加速する。




「…す、すみません…有月さん…に触れたいって思って…つい…」



パッと離す逢沢君。



「有月さん…彼に正直な気持ち伝えてみませんか?」


「えっ…?」


「もし、それで何の変化もないなら…ゆっくり俺との事考えてくれませんか?」


「逢沢君…」




その後、私は連絡する事にした。


電話が手っ取り早く済むけど、電話に出る保証もない。


その為、メッセージを送る事にした。


もちろん、すぐに返事が来るわけでもないのは想定内だ。


今までが、今までだ。


いつ返事がくるのだろう?




「………………」 




そんなある日の事だった。



「有月さん」



名前を呼ばれ驚く視線の先には、逢沢君の姿。



「逢沢君」

「今週末、何か予定ありますか?」

「ううん」

「良かったら出掛けませんか?」


   

ドキッ


「えっ?」



《つまり…それってデート?》 



「いやいや…そんな私が逢沢君と出かけるなんて…」



 《緊張しちゃう》



「駄目ですか?」


「いや…駄目じゃないよ。むしろ嬉しい寄りだよ。でも…ほら周囲の目が…それに私なんかがそんな……」


「……じゃあ目隠ししたら周囲の目なんて気にならないですよ」


「目隠し?ハハハ…そうだね」


「デートプランは、お任せコースで楽しませます」




ドキッ






「デート?」

「はい。デートです。デートじゃないなら何ですか?」

「それは…」

「なんて嘘ですよ」

「逢沢君、案外意地悪?」

「さあ?どうでしょう?」




そして、出掛ける約束をしたものの、何を着て行ったら良いの? 




―――― 当日 




私達は待ち合わせをした。


待ってる間、声をかけられた。


まさかのナンパ!?



その直後―――――




グイッと腕を掴まれた。




「彼女、俺の連れなんで他当たってくれませんか?」



相手は去った。



「大丈夫ですか?」

「あ、うん……」



逢沢君は、私の手を掴み歩きだした。


胸が高鳴る中、繋がれた手の温もりにドキドキ加速する。



「取り敢えず、車に移動しましょう」


「うん……」




私達は移動した。


逢沢君は、基戸君とは違う。


二人きりとなると、何故か緊張感が違う。


どうしてなのか私にも分かりはしない。




「もしかして緊張してますか?」

「えっ…?あ、うん」

「俺もです」

「えっ?」

「こう見えて…かなり緊張しているんです」


「そうなんだ」

「とにかく楽しみましょう!」

「うん」



私は、逢沢君の運転と、考えてくれたデートプランを元に出掛ける。



こうして異性と出掛けるのは、どれくらいぶりだろうか?


私達は、とにかく、楽しむ事にした。


そんな中、私が気になり、引っ掛かるのが私達の関係だ。


私達は、どう見えているのだろう?


考えれば切りが無いけど…




「有月さんって、どういう男性がタイプなんですか?」


「タイプ?あー…」




タイプ??


バツ2にもなると、多分恋愛感は変わるはず。


改めて言われると、分からないし出てこない。




「最近、考えた事ないからな〜。気付いたら気になっていて…」


「じゃあ、俺にもチャンスはありますね!」

「えっ?あ、うん…そうだね」

「あっ!今、そうだねって言いましたね!」

「えっ?あ、いや…えっと…」




基戸君と逢沢君。


人間、人それぞれ違うけど、自分自身、どうして、こうも自分の心の中も違うのだろう?


基戸君は私の好きな人だから?


ありのままの自分を出せていない。


だけど、逢沢君は、ありのままの自分を出せてる気がする。




「有月さん、難しく考えないで下さいね」

「あ、うん…」



私にとって誰が相応しい?




それから、基戸君からは相変わらず連絡がないまま、逢沢君が急遽、異動となった。


私は何も聞かされないまま会えずじまいで別れる事となり……



いつも一緒の職場で積極的に話しかけたりしていてくれていたから逢沢君の連絡先は会社専用の携帯番号しか知らない。


異動になった以上、そこの会社で扱っている携帯しか利用出来ない為、連絡する術がない。


そんな中、意外な人物から連絡がきた。


基戸君からだ。




『今まで、連絡しなくてすみません』


『有月さんとは、今のまま友達として仲良く出来たらと思います』


『気持ち知っておきながら、応えられなくてすみません』




そういう内容のメールが届いた。


だったら早く連絡して欲しかった。



バカみたいに想い続けた結果が、これだ。


気持ちが分からなくなった時もあったけど、気には掛けてたのに………



私は、


   

     『分かった』




その一言だけの返事を返した。






「………………」




こんな時に限って


心の支えになる人がいない


人恋しく淋しいと思う時に


一人で過ごす




だけど


こんな弱味を


見せれるものじゃない




だから


一人で過ごすのが


一番なんだって……




でも……


もし誰かが私に連絡してきたら?



その時 何故か


ふと 


脳裏に逢沢君が過る



何故かは分からないけど……





すると私の携帯に見慣れない番号から


着信が入ってきた


私は迷った挙げ句


出る事にした




「はい」

「有月…絵利佳さんの…携帯ですか?」

「そうですけど…あの…どちら様…」

「逢沢です」

「えっ!?」



《逢沢…?》




私は耳を疑った。



「逢沢…君…?あの…何かの間違い……」



基戸君の件の後の為、頭が追い付かない。



「逢沢…由綺です」


「…えっ…?…本当に…?…嘘でしょう…!?…どうして…?」




偶然にも程がある。


だけど……



連絡先、交換していないのに、どうやって?




「すみません…迷惑…」

「ううん…大丈夫…」

「…有月さん…何かありました?」

「えっ…?…ううん…大丈夫…ないよ」

「大丈夫じゃないでしょう?逢いませんか?」




ドキン…



「えっ…?」

「迎えに行きます」

「えっ…?迎えって……」



私と出掛けたのは一回切りだ。


無茶苦茶だ。


立て続けに色々起こり過ぎて若干パニクってる。



だけど……



しばらくして、私の携帯に着信が入った。


外に出ると、車の前に立っている逢沢君の姿。




夢じゃない。


幻なんかじゃない。


私は信じられない思いで立ち竦む。





歩み寄る逢沢君。


フワリと抱きしめられた。



ドキン…



「…逢沢…君…」


「…すみません…どうしても…逢いたかったから…何の連絡もしないまま異動になったから…」



体を離し見つめ合う私達。



スッと両頬を両手で優しく包み込むように触れられる。




「どうかしたんですか?何か泣いている感じの声だったから」



「…………………」



私は触れられた両手に自分の手を一瞬重ねるも逢沢君の手を一緒に離し下にうつ向く。



「有月さん…?」


「…例の好きな人…彼から…友達って……応えられなくてすみません…って…参っちゃうよね?…だったら…早く言って欲しかった……ずっと…私…」


「有月さん…」



再び抱きしめられた。


ドキン…




「無理しなくて良いから…俺が傍にいてあげます」



私は泣いた。


出掛けられる状況ではなく、私が落ち着いた頃、何件か近くのコンビニに逢沢君の運転で車を走らせた。


そして、私の部屋に戻ると、私達は色々と話をしていた。




次の日の朝、ふと目を覚ます。




ドキーーッ


かあぁぁぁぁ〜〜っ!



私の目の前には逢沢君の姿。


恥ずかしい話、一緒の布団で寝ようと逢沢君の提案で、そういう成り行きになった。


別に何するわけじゃなく、ただただ、同じ布団で寝るだけ。


私達は抱きしめ合い眠っていたのだ。



私は、そのまま流れで起きると朝食を作る。



その途中。



フワリと背後から抱きしめられた。



「おはようございます」

「お、おはよう…」

「何か手伝う事ないですか?」

「だ、大丈夫だよ。ゆっくりしてて」

「分かりました。じゃあ、お言葉に甘えて」



私は朝食を作り終えて、私達は朝食を摂る。



「有月さん、気晴らしに出掛けませんか?」

「えっ?」

「無理には言いませんけど」

「ありがとう…じゃあ、デートの予約入れて良いですか?」


「もちろんです!」



ドキン…


逢沢君の笑顔に胸が大きく跳ねる。




やっぱりこの笑顔は最高だ。



私達は、出掛ける事にした。



「そう言えば、どうして連絡先…ていうか疑問だらけなんだけど…」


「えっ?何がですか?」


「なんか……タイミングとか…良すぎだし…もしかして盗聴器でも仕掛けてる?」


「いやーー、実は……って…そんなわけないでしょう?」



まさかのノリ突っ込みに笑みがこぼれた。



「やっと笑ってくれましたね」

「えっ…?」


「俺、有月さんの笑った顔が好きなんですよ。だから…有月さんが笑顔になってくれるなら何でもしてあげたいんです」



「逢沢君…」


「だから…昨日、有月さんの涙を見て傍にいてあげたいって…本当…不思議と何故か有月さんとはタイミング合うのが俺自身も疑問なんですよね?」


「えっ?」



《つまり、それって……。私の知らない何かがあったりしたって事?》



「あっ!ちなみに連絡先、会社の携帯から検索すれば良いだけですよ。履歴あるんだし。まあ、本当は駄目なんだろうけど…異動の話を聞いた時、有月さんとの連絡の術は会社の専用のでしかない事にすぐ気付いたから。プライベートの携帯に登録すれば良いだけですよ」



「そういう事か……」



「後、休日は気付いたら近くまで車走らせてました。だから、飛んで来れたんです。時々、偶然にも有月さん見掛けてました。ストーカーみたいですよね?引かないで下さいよ」



「クスクス…大丈夫だよ」



「良かった。それに、それっきりにしたくなかったから……」



「えっ…?」



「…仕事だけの関係だけなんて終わらせたくなかったし。だって好きな人なんですよ?手離したくないじゃないですか…?」



ドキン…



「…逢沢君…」



気付いたら、車はとある駐車場に停車していた。


高台にいる視線の先には、海が広がっている。




私は、逢沢君に抱きついた。




「…ありがとう…」

「…いいえ…」



私は抱きついた体から離れ始め、ふと顔をあげると至近距離で逢沢君と視線がぶつかる。



ドキッ

胸が大きく跳ね、ドキドキ加速する。


再び離れ始める私をグイッと引き止め、至近距離のままもう片頰に触れられた。




ドキン…


目をそらしたくても出来ず離れる事も出来なかった。



「もう悩まないで良いから…バツ2だからとか俺には、関係ないです。年上とか年下とかも関係ありません。いつでも俺に頼って下さい。そして、俺は必ず有月さんを笑顔にします。だから…ずっと傍にいて…改めて言います。俺はあなたが好きです……」




キスされた。


ドキン…



「ゆっくりで良いから…」

「…はい…」

「今、はいって言いましたね!」

「えっ…?だって…」


「クスクス…俺、有月さんから卒業するから名前で呼びます。敬語も抜きにします。まあ、時々、出るかもしれないけど……改めて宜しく。絵利佳さん」



ドキン…


「…う、うん…」

「だから、絵利佳さんも名前で呼んで下さい」

「…う、うん…」




恋なんて……


そう思っていた


だけど…


身近にある出逢いを大切にしたい



例えどんな結果であっても


人との出逢いは


人生にはつきものだから――――







〜 E ND 〜





























































































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私の恋人、いつか必ず報われる?〜出会いとタイミングは大切〜 ハル @haru4649

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