竜星のミラ 政木朝義様

【タイトル】 竜星のミラ

【作者】 政木朝義

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884894299


 こちらの双子、生き別れ双子です!!

 今まで紹介させていただいた双子はみんな一緒にいる双子ですが、今作は子供の頃に離れ離れになっています。双子なのに一緒にいないなんて良さが半減するのでは? と思う人もいるかもしれませんが、私は生き別れを含めた離れ離れの双子も好きです。今は一緒にいなくとも、過去はともにあり、双子であるからこそお互いのことを考え、今どうしているかと想像し、探してしまう……。エモい……!


 兄弟や姉妹でもこの設定はおいしいのですが、双子の場合の良さは見た目がそっくりということですね。見た目がそっくりだからこそ相手の姿がなくとも、自分の姿から相手の今を想像できてしまう。だからこそ忘れられず、いつまでも引きずってしまう。そして再会したときに想像通りであれば双子の神秘さを感じますし、全く異なる成長をしていれば、あの頃は一緒だったのに。という離れていた時間の経過を感じて切なくなります。

 要するに、生き別れ双子はとっても美味しいのです(長い)。


 今作の場合は男女双子です。いくら双子といえど男女差があれば成長過程は変わります。子供から大人に変わる成長期に離れ離れになったとあれば、その変化は想像もつかないでしょう。


 この作品の主人公ハロルドは赤銅色の竜に故郷を破壊され、母を亡くし、しまいには双子の妹であるシェスカを連れさられてしまいます。

 故郷や母の仇であり、妹の行方をしる唯一の手掛かりである竜を探してハロルドは死の国と呼ばれる地上に向かいますが、志半ばで倒れて生命の危機に。そんなハロルドの前に現れたのは群青色の竜ミラ。ミラと契約を交わすことで一命をとりとめたハロルドでしたが、目覚めると見知らぬ飛空艇の中。ハロルドを保護した飛空艇にはほかにも竜と契約した者たちが乗っており、ハロルドの仇である赤銅色の竜を倒すことを目的としていました。

 妹の行方を知るため、赤銅色の竜を倒すため、飛空艇を管理するアストラノーツ社に入ることにしたハロルド。そこでハロルドは今まで持ちえなかった仲間を持ち、居場所を持ち、ミラとの絆を深めていきます。


 双子の関係性も双子好きとして大満足でしたが、世界観も魅力の一つです。

 ファンタジー要素を強く感じる竜。それに高度な文明を感じさせる飛空艇や空中要塞、自動人形などなど、ファンタジーとSF要素が見事に混ざり、世界の歴史やそれにより出来上がった文化を感じることができます。


 こちらは完結作品のためハロルドのお話には区切りがついていますが、本編後もハロルドとミラの冒険は続いていくのだろうと自然と想像することができるさわやかなラスト。それに加えて作中の描写からさらに想像を膨らませることができる広大な世界観。最後まで読み終えても世界に浸ることができる、ファンタジー好きとしてはとても魅力的な一作でした。


 生き別れ双子が再び出会うことができるのかもそうですが、なにも考えずに竜や自動人形が生きる世界に浸る楽しみもありますので、興味を持った方ぜひ読んでみてください。


 

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