夜空を飛んで光を放つ竜

一陽吉

自由──────────

「     !?」


「   !   !」


「     、     !!」


「   !」


 ──何を言っているのか分からない。


 まあ、不必要なものは遮断するようにしているし、そうでなかったとしても外国の言葉で分かるはずもないから同じだけどね。


 そして。


 迷彩服の兵隊さんたち。


 銃を構えて、当たり前のように撃つのね。


 私は手ぶらで、武器なんか持っていないのに。


 必死になってる。


 小さくてもビルが建ち並ぶ街中では銃声も鳴り響いているんだろうね。


 あ。


 一回、撃ち終わったみたい。


 新しいのと交換しようとしてる。


 それじゃあ、こっちの番だね。


 右手の平を前に出して衝撃波を出すよ。


「!?」


「     !」


「  ・・・」


「」


 大丈夫。


 死にはしないわ。


 ただ。


 一生、戦うことはできないわね。


 ……。


 空。


 戦闘機が飛んでる。


 落とさなきゃ。


 まずは三十メートルくらいまで跳びあがって。


 空中で竜になる。


 竜になるといっても肉体ではなく、人間の身体からだを核とした魔力構成体のもの。


 だから洋服が破れなくていい。


 そしてそこから更に上昇する。


 ……。


 真夜中だから戦闘車両や、街が燃えているのがよく分かる。


 たぶん、逃げ遅れた人もいるよね。


 兵隊さん同士なら、それがお仕事だし、知ったことではないけれど。


 関係ない人たちは自由を奪われた。


 そう、自由を。


 ……。


 お姉ちゃんだから優しいのが当然。


 大学へ行くのが当然。


 有名会社に勤めるのが当然。


 結婚するのが当然。


 ……。


 そんなのにうんざりして、私は竜の血を飲んで人間の枠から抜け出した。


 自由を得た。


 だから。


 たとえ遠くにある異国のことだとしても。


 他人が勝手に決めたものを押し付けられているのは我慢ならない。


 そんなことをする奴ら、いる奴らは。

 

 このブレスとともに、消えてなくなれ────────────────!


 広範囲に向けたから威力は弱くても、損傷はまぬがれない。


 飛んでいるんだもの、いずれ自壊して爆発する。


 運がよければ脱出できるわよ。


 それに。


 向こうでまた新たに炎が上がった。


 行かなきゃ。


 ……。


 暗くて見えないけど、誰かは確実にいる。


 私は別に助けに来たんじゃないし、戦闘を好んでいるわけでもない。


 思い知らせたいだけ。


 正論、規則、規範という夜に包まれ、個性と心が見えなくならないように。


 私は自由の光を放つ─────────────────。

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