第46話 遠足BBQ

「っしゃー! 腕によりを突っ込んで調理してやるぜー!!」


 急遽、BBQの調理係を川岡に頼んだのだが……。

 精肉店から車で配達されてきた機材や食材を見た途端、奴の目が変わる。瞳にはメラメラと炎が宿り、どこからか出してきた包丁セットで食材を次々と切りさばいてく。と思えば、すぐさま炭に着火し、火おこしなどを華麗に行っていく。


「ほらほら! 壮、ともちゃん、うさみちゃん! ボーっとしてないで配膳して! みんなお腹空かせてるよ!」


 料理のことになると、人が変わる川岡であった。

 川岡の号令に、A組メンバーは慌てて配膳の手伝いや食材の補充を手伝っていく。


 公園管理事務局に、BBQの許可を取りに行った南田と小枝からは既に許可が降りた旨のメッセージを携帯に送られている。じゃあ、後は心おきなく焼くだけだ。

 A組の残りメンバーで紙皿に配膳したものを各生徒に配り、みな芝生やベンチでグループとなってお昼を摂っている。

 そんな様子に、無事トラブルをやり過ごせたと胸をなでおろす俺であった。


「安藤君。ホッとしてないで、はい、これ」


 手伝いが少し落ち着くと、どこからか現れた舘林会長に、俺はデジタルカメラを手渡される。


「なんですか? これ?」


「学校の備品のカメラ。レク係なんでしょ? これでみんなの良い写真頼むわね」


 レク係って、こんなこともするのか。


「さぁーて! 私もおっひる~♪」


 そう言うと、舘林さんは料理を持ってルンルンと行ってしまう。


(ったく、しょうがないなぁ。これも俺の務めか)


 カメラの動作確認を行った後、俺は高江洲たちにその場を任せて、各生徒たちのグループを回る。写真を依頼すると、他のクラスの連中や後輩たちはみな嬉しそうに映ってくれていて、なんだか微笑ましい。みな、BBQに大満足のようだ。

 弁当の注文を間違える失態をおかしたが、この笑顔が見られたのなら怪我の功名なのかもしれない。らしくもなく、こちらも嬉しくなってしまう。


「ほらほらー! 食材足りないよ! もっと持ってきてー!」


「川岡! テメー!」


 んん? なにやら調理場のほうが騒がしいな。様子を確認するため、戻ってみることにした。


「あのなぁ、食材の量は決まってんだ! 馬鹿みたいに消費すんな!」


 三科教諭が暴走気味の川岡に何やら怒鳴っている。

 少し外している間に、テーブルに並ぶできあがった料理にはトマトサラダ、焼きそば、焼きトウモロコシ、クリームチーズサーモン、パプリカとアボカドのホイル焼き&バタージャガイモのホイル焼き、肉と野菜の串焼きなどなど。さらにはアヒージョまで作ろうというのだ。


「川岡……別にそこまで作りこまなくても」


 どこをどうやればこんな豊富なメニューが即席で作れるのか。こいつの料理スキルには心底驚かされる。


「アンドレよ、わかってないなぁ。お前がくれためったに来ない役回りだぜ? ここで本気出さないでいつ出すんだよ?」


「そりゃあ、そうかもしれんが」


「もう少し節制して料理することを知らんのか! この川岡! これじゃあ、全員に行き届かなくなるかもしれないだろ?」


「でも先生! 食べ盛りの高校生の昼飯だぜ? 食細ってる場合じゃないぜー!?」


「黙れ!」


 なおも怒り続ける三科である。


「あの、先生……」


「なんだ安藤? 後にしろ」


「記念に一枚」


「撮るな! 馬鹿!」

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