眩しい

陰陽由実

眩しい

今日も夜がくる気配がする

空の色彩が一瞬だけ明るくなって

あっという間に黒に近づき始める

僕はなんだか気分がよくなって

世界が闇夜に成り代わるのを見届けようと思った


暗い世界

自分がどこにいるかもわからなくなって

あたりを見渡したときに見つける

満天の星空

静かな月

時折流れる光

そんな感動すら覚えてしまうような感覚が好きだ


徐々に暗くなる夜空

まだ薄暗い程度の

周りの景色がよくわかる明るさ

いつの間にか光り始めた街灯が

時間を追うごとに

存在感を増していく


だいぶ暗くなってきた

でもまだ明るい

夕方が夜に世界を明け渡そうとする瞬間

そんなひととき

白くて小さめな月のそばで

一等星が輝き始める

風が吹いて

夜の香りが頬を撫でていった


おかしい

もう暗くなるはずなのに

もうこれ以上暗くなる気配がない

星もまだいくつかしか輝いていない

まだまだ明るい

空の向こうが光っている

おかしい

おかしい

こんなものは夜ではない


はたと気づけば

もう、日付が変わってしまいそうだ

まだ明るい

もうこれ以上は暗くなれない

おかしな色で塗りたくったような

おかしな夜空


理由は分かっていた

明白で、ずっと知っていた

キラキラと

ギラギラと

光る街並み

まだ眠れない真夜中

うるさい世界


まるで空にあるはずの光が

地上に落ちてしまったかのような

もうつまらなくなってしまって

空を見上げるのをやめてしまった


願ってはならない

それは何か、異常事態の時だから

それでも願わずにはいられない


いつか、またここで

輝く空が見られる日が来ますように


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眩しい 陰陽由実 @tukisizukusakura

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