第4話 入学式

「おーい! 早く行かないと遅れちゃうよ」


 俺がホールに着いた頃にはカインが既にいた。


「わりぃわりぃ、急ごうぜ!」


「待って! 転移魔法を使おうよ!」


 俺が走って行こうとするとカインに止められた。


「え? 転移魔法?」


 転移魔法はあるにはあるが、まだ4月だぞ? その魔法は初期から覚えてない筈だが。


「うん、最近使えるようになったんだ」


 俺がこの体に乗り移った事で少しこの世界にも影響が出ているのか? まあいいか。ここで悩んで入学式に遅れるよりかはマシだ。


「じゃあ頼むぜ!」


「うん! じゃあ僕の近くまで来て!」


「ここら辺でいいか?」


「よし、じゃあ行くよ!」


 カインがそういうと下から魔法陣が浮かび上がってきた。視界がぐにゃりと歪む、俺はそれに耐えられなくなり目を瞑ってしまった。

 

「着いたよ」


 目を開けるとでかい建物の前に来ていた。ゲームでも何回も見た事がある体育館だ。


「すげぇ」


 感動のあまり言葉が漏れた。本当に自分の世界じゃないんだなと思う。これが魔法か。


 周りを見ると近くにいた生徒もザワザワとしていた。そりゃそうか。転移魔法なんて上級魔法だ。覚えれるやつなんて限られてくる。


「さっ、いこうか」


 そんな周りの反応を気にしないかのようにカインは言った。


「お、おう」


 俺はそんなカインの後ろへと着いていった。



 体育館に入ると教員が立っていて席の案内をされた。カインとはその時に離れ離れになってしまった。


 案内された席へ座り少しすると入学式が始まった。

 だがここら辺はどの世界も変わらないようだ。

 最初に教員の話があって次に学園長の話があるだけの眠たくなる時間だ。実際少し居眠りしてしまった。


「続きまして新入生挨拶、エリカ・シャリアーテ様」


 どうやら新入生挨拶はエリカがするみたいだ。エリカは俺たちが今いる国、シャリアーテ王国の第2王女だ。まあ妥当と言えば妥当だ。

 ゲームではここら辺はスキップされるから知らなかったな。


「はい! まず最初に教職員の皆様、それに生徒の皆様、私の名前を呼ぶ時に様はいりません。私は王族ではありますが、これからはこの学園の生徒です。

 教職員の皆様はご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。そして生徒の皆様も今日から私たちは同じ立場です。同じ学舎で学ぶもの同士仲良くしましょう。

 それでは新入生の挨拶をさせて頂きます。本日という日を迎える事ができ………」


 エリカの挨拶が始まった。しかしここにくる前に出会った時とは雰囲気が違うな、流石王族だ。品を感じる。


「ありがとうございました。最後に在校生代表、生徒会長リディア・シャリアーテさん」


 エリカの挨拶が終わり交代するかのように長い紅色の髪を靡かせた女性が演台と立った。


 凛とした目が特徴的な美人だ。


 名前から分かると思うが彼女はエリカの姉で第1王女に当たる人物だ。

 さらにいうと攻略できるヒロインでもある。


 確か主人公と最初に話すのは7月にある、選抜戦の時だった筈だ。

 選抜戦なんて仰々しい名前をしているがなんて事はない、学園対抗の運動会みたいなものだ。


「まずは諸君らにおめでとうという言葉を送ろう。だがこの学園に来た以上貴族であれ平民であれ立場は平等だ。同じ学舎に立つ者同士………」


 周りの生徒を少し見るが学園長達の話の時とは違い背筋を伸ばして話を聞いている。流石のカリスマ力だ。第1王女は伊達じゃないな。

 


「ありがとうございました。では新入生の皆様はお手元にあります紙に従ってクラスへと移動してください」


 体育館に入った時にもらった紙の事か。


 周りを見渡すと何人かの生徒はもう移動を始めていた。

 

 俺も周りの人に合わせて紙に書いてあるクラスへと急ぐのだった。

 

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