【KAC20229】第ニャン次世界大戦

松竹梅

第ニャン次世界大戦

 ここは戦場、血と硝煙の匂い立ち込める大地。敵と味方が有耶無耶になったまま、政治と経済を犠牲にして始まった醜い争いは、人類の半数を失った今も続いていた。


 私はミーシャ。今はコルニャスク連邦政府特別狙撃部隊に所属するスナイパーだ。男性兵士の総数が減少して数年、子供の徴兵については倫理に欠けるとかいう意味不明な論理の結果、その子供を育てなければならない女性まで、戦場に幾度となく放り込まれた。その一人として、私は何年も鉄と火薬と仲間の血と一緒に寝てきた。


 いつまで続くのか。頭の悪い政治家たち、見栄と虚勢しか張らない上官、振り回されて疲弊してきた兵士たちのことは何も考えていないのか?


 そんな気持ちが何度も押し寄せてきて、数々の作戦が実施されてきた。


 あえて火薬を入れずに、形だけデカデカと作った爆弾。

 引き金を引けば何万羽ものハトが繰り出すピストル。

 設置しておくだけで数時間に一度花火が上がる対空地ミサイル。


 馬鹿らしい作戦しか生まれず、けれど戦争をやめたがらない首脳部に辟易してきたころ、さらに新たな作戦が下された。


「戦時中の疲れを癒すため、各兵士に1匹、好きな猫を贈与する」


 戦時特例として与えられたロシアンブルーは、一応戦争のなんたるかを知っているようだ。


 …おかげで戦う気も失せた。

 これを全世界にSNSで発信すれば、きっと戦争なんか終わるだろう。

 そう思った。

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