第9話 東京都庁視点②

その神奈川に盗作疑惑騒動があった事は東京都庁も把握していた。


盗作・・・か。


今回騒動があったのはたった5000文字にも満たない文章の中で起こった。


ミステリーの世界には「トリックには著作権が無い」と言う説がある。


これは20世紀前半にはほぼ全てのトリックが出尽くして、そのミステリー作家が亡くなって、半世紀以上経過しているから、という論法だ。


実際、彼もその説には賛成であった。

過去にあったトリックを角度を変えて再現してみたり、読者のミスリードを誘ってみたり、伏線の出すタイミングを変えてみたり。


方法を変えるだけで同じトリックの焼き直し・・・つまり「盗作」などいくつも出来てしまう。


そもそも200年にも足りないミステリーの世界ですら、著作権は無いのなら、太古から人間が紡ぎだしてきた「物語」そのものにも著作権は無いように思える。


ここ、カクプラには新鮮な発想が数多く眠っていた。


神奈川の盗作疑惑騒動など可愛いものだ。

自分は今現在、カクプラで生まれてくる「新鮮な発想」を角度を変えて文章を考えたり、新たなトリックの手段に使えないか検証してみたり、面白いキャラクターがいればそれを参考に自作品のキャラクターとしてバレないレベルで登場させたり。


自分こそが今、カクプラで一番「盗作」を行っている人間ではないだろうか?


まあそれは置いておこう。


ミステリー的に神奈川の盗作騒動を検証してみる。


今現在出ている仮説は大きく2つ。


①似たタイトルが盗作と間違われた説


これは大いにあり得る。

それにタイトルだけで、肝心の中身の文章が全く違う。


もしこの説が正解なら、神奈川の盗作疑惑は晴れるだろう。


②オッキー、北海、京都、同一人物説


これに関しては自分は否定的見解だ。


京都というユーザーはオッキー、北海の応援支援を行ってない。


ほとんどカクプラ内では活動らしい活動はせず、ただ神奈川を告発しただけに過ぎない。

「オッキー、北海」と「京都」は別人と考えるのが妥当だろう。


さて、「オッキー、北海」は最後の最後で苦し紛れに面白い仮説を立てていたな。


「神奈川、奈良、同一人物説」だ。

仮にこれを「第3の仮説」としてみよう。


これは作家として長年数多くの作品に出合ってきたから分かる。

神奈川と奈良は確かに作風や文章が似ている部分もあるが、やはり全く違う。


しかし、問題はその後だ、恐らくこの仮説は別の、新たな仮説を誘発してしまうだろう。

神奈川は恐らくそれを第4の仮説として自分にコンタクトを取るに違いない。


その場合はどうする?

誰よりも盗作に盗作を重ねてきた自分に偶然にも白羽の矢が向けられてしまうとは。

無視するか?

沈黙するか?

それとも自分の考えを述べるべきか?


なんだかんだで自分はカクプラにおいてはいつの間にか上位ランカーになっている。

神奈川1個人のために、その地位を投げ出すのはどう考えても合理的ではない。


自分はその他の可能性として第5の仮説と第6の仮説を立てている。


第5の仮説は第4の仮説と全く同じ論法。


第6の仮説は・・・小説家なら多かれ少なかれ、誰もが一度は陥(おちい)ってしまうだろう仮説だった。


もちろん「仮説」はどこまで行っても「仮説」。


「検証」を繰り返す度にその精度が高まるだけだ。


いや、むしろ「検証」によって極限まで高められた仮説は、非常に危険だ。

「仮説」が「真実」となってしまう恐れがある。それが例え「事実」とは異なっていたとしても・・・。

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