序章

 ある国の城内、えつけんの間には張りめた空気がただよっていた。

めいりん。そなたをせいし上げる」

 青年が不敵なみをかべる。を言わせない強気な態度、まさに選ばれし者の風格を持っていた。

 一方的に告げられた少女は目をまん丸に見開き、きようがくに満ちた声を出す。

「わ、私には、正妃などおそれ多いことです」

 青年のことがこわいのか、ふるふると体がふるえている。少女ががらなせいで、まるで小動物が肉食じゆうにらまれているかのようだ。

「ほう、断るというのか?」

 青年からはうなるような声がこぼれる。

「断ると申しますか、ええと、その、もっとふさわしい方がおいでになるかと思います」

 少女はうっすらと目になみだをにじませながら必死に言い返している。

 だが青年の目は、一度目を付けたものがすつもりはないとぎらついていた。




 逃げたい少女と手に入れたい青年。

 どちらが最後に微笑ほほえむのだろうか。



 さあ、新しい人生の物語。

 がんった人にはごほうが必要でしょう?

 だから、これはわたしからのおくり物。

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