猫はバルーンアーティスト?!

アほリ

猫はバルーンアーティスト!?

 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!


 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!



 「駄目だ!!使う風船の数が多すぎて、1時間後の結婚式に間に合わないわ!!」


 敬子はバルーンコーディネーターだ。


 結婚式に大規模なバルーンアートを任されて、四苦八苦している。


 何せ、新郎新婦の世界観を表した壮大なバルーンアートをこの大ホールに飾り付けなければならないからだ。


 「ほら!そこじゃない!!んもーー!!あっ!!パーン!!って!!ここは肝心なパーツよ?!何で破裂させたの!?

 風船はタダじゃないのよ!?」


 スタッフ総出で大ホール1面の『猫の園』をイメージしたバルーンアートを作ろうも、依頼側の指定が複雑過ぎて、敬子はイライラしっぱなしだった。


 「んもーー!!完成した部分は、まだ新郎新婦の姿のバルーンアートだけよ!?

 後はなーんにも出来てないってらどう間に合わせなゃいけないんだよ?!」


 敬子は遂に頭を抱えた。


 

 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!


 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!



 「ん?」



 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!


 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!




 「何か・・・誰かが見ている気がするんだけど・・・」



 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!


 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!



 「見詰める視線・・・気が散って風船繕うの集中できないわ・・・?」


 敬子がちらっと後ろを振り向くと、1匹の左目が傷付いた片目のキジトラ柄の猫がじーーーーっとバルーンアートを見詰めていた。


 「何処から侵入してきたんだろ?あの野良猫。」


 敬子は、いきなり大ホールにやってきた1匹の猫の存在にドキドキした。


 ・・・もし・・・あの猫がせっかく繕ったバルーンアートにじゃれついてパンクさせられたらどうしよう・・・


 危惧した敬子はその猫を追い払おうと考えた。


 ・・・突然「こらっ」とか叱ったら猫がパニックになって後も木阿弥だし・・・


 ・・・さて、どうしよう・・・


 その時だった。


 キジトラ猫は、床に落ちていた長細いゴム風船を口でぷぅ~~~~~~~~~~~~っ!!と息を吹き込んで膨らませたのだ。


 「猫が風船を膨らませた!?」


 そして、キジトラの猫は膨らませた風船を前肢・・・手の指と肉球を上手く使ってクイッ!クイッ!と捻って捻って、


 「にゃんっ!」


 と鳴いて出来上がったバルーンアートを頭に掲げた。


 「な、何この猫?!猫が風船捻って、犬造っちゃったよ!!?

 ・・・そうだわ!!」


 敬子はグッドアイデアが浮かんだ。


 「ねぇ、猫さん。でっかいバルーンアートをホール1面使って今造ってるんだけど、手伝ってくれませんか?」


 「うにゃん!!」


 キジトラの猫は何度も頷いた。

 

 「ありがとう!!じゃあいい?猫さん。こういうのを造りたいの!!」


 「えっ!?ねこ?」「猫?!」「野良猫にやらせるの?!」


 現場のスタッフは半信半疑になって敬子に聞いた。


 「ほら!!『猫の手も借りたい』と言われてる位忙しいのよ!!猫も手伝いに来たんだから、皆!!正味45分!!早く仕上げるのよー!!

 さあー!いったいった!!」 


 敬子がスタッフにハッパをかけている間も、キジトラの猫は風船をどんどん口で膨らましては指と肉球で捻ってどんどん形にしていく。


 「ねぇ?猫ちゃん。何時風船細工を習ったの?」


 敬子がキジトラの野良猫が聞いても、黙々と風船を膨らまして捻っていく。


 「そうね。私達の見よう見真似ね。その調子で頼んだよ!!私もがんばらなきゃ・・・って、えええええっ?!」


 敬子は後ろの光景に目を疑った。



 にゃーん!にゃおーん!みゃー!にゃーん!にゃおーん!みゃー!にゃーん!にゃおーん!みゃー!



 猫の集団が、わらわらと大ホールに次々と現れてきたのだ。


 「ねぇ!私達にも風船を手伝わせて!!」


 と、言わんばかりにまた膨らましていない長細い風船を一斉にせがんだ。



 にゃーん!にゃおーん!みゃー!にゃーん!にゃおーん!みゃー!にゃーん!にゃおーん!みゃー!




 「解ったわよ!!はい!この箱の中に風船入ってるよ!!

 手伝うなら、どうぞどうぞ!!」


 ・・・あ、言っちゃった・・・!!


 ・・・この猫達も風船細工出来るのかしら・・・?



 ぷぅ~~~~~~~~!!


 きゅっ!きゅっ!


 ぷぅ~~~~~~~~!!


 きゅっ!きゅっ!



 ・・・げっ!!本当に風船細工やってる・・・!!


 ・・・何なの?この猫達は・・・??!


 「君達も手伝ってくれるんだ!有難い!!今、忙しい過ぎて猫の手も借りたかったとこなのよ!」


 「えええーーーっ!!」「まじか?!」「信じられねー!!こんな猫軍団を!!」


 スタッフは一斉に仰天した。


 「何見てるのよ?!手を休めないで早く完成させなさい!!」



 ぷぅ~~~~~~~~!!


 きゅっ!きゅっ!


 ぷぅ~~~~~~~~!!


 きゅっ!きゅっ!



 猫達もスタッフ達も一生懸命、


 猫達もスタッフ達も共に、



 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!


 しゅーーーーーっ!!


 しゅーーーーーっ!!


 きゅっ!きゅっ!



 ・・・・・・



 結婚式の時間まで後1分。


 「やったぁ!」


 「時間ギリギリ完成したぁ!!」


 「猫達もスタッフ達もありがとう!!」


 バルーンアーティストの敬子は、スタッフ達そして猫達を労った。



 ・・・・・・


 

 パンパカパーン♪パンパカパーン♪



 結婚式が始まった。


 新郎新婦は、ウェンディングロードをゆっくり歩く。


 その姿を、敬子とスタッフ達は感慨深げに拝見していた。


 しかし、猫達は見てはいなかった。


 何処かに隠れてじっとしていた。


 仲人のスピーチが始まった。


 「新郎と新婦は猫好きが高じて、次々と捨てられたりした猫達を救い続けて保護猫活動をしてきた縁で、結ばれたといいます。

 この会場のバルーンアートも『猫の園』。

 猫達が大勢戯れて、気ままに遊んでいる姿を風船アートで表現したのです。

 この日の為にゲストを呼んでます!!

 新郎新婦に救われた保護猫達です!!

 どうぞー!!」



 ばぁーーーーーーん!!


 ばぁーーーーーーん!!


 ばぁーーーーーーん!!


 ばぁーーーーーーん!!




 にゃーん!にゃおーん!にゃん!にゃーん!にゃおーん!にゃん!・・・



 4つの巨大風船が破裂して、中からこの結婚式のバルーンアートの飾り付けを手伝った猫達が一斉に飛び出してきた。


 「この猫達は、この新郎新婦が野良猫や野猫達を保護して救ってきた猫達です!

 皆、飼い猫として暮らして幸せに暮らしていますが、この結婚式の為に飼い主達が一同に賛同してここに集ったのです!!

 みんな拍手ーーー!!」


 そうなのだ。


 この元野良猫の猫達は、命を救ってくれた新郎新婦に何かプレゼントしようと計画したのが、この結婚式の飾り付けの手伝いだったのだ。


 「うにゃ~~~ん。」


 片目のキジトラの猫が、新郎新婦の目の前にやって新郎のゴロゴロ喉を鳴らしてすり寄ってきた。


 「マサムネ!君はマサムネじゃないか!久しぶりだなあ・・・元気にやってるかい?」


 新郎が片目のマサムネを撫でている裏で、今の飼い主の叔父さんが手を振っていた。


 「そっか・・・あの最初にやってきてキョトンと座ってた片目のにゃんこが、あの猫達の親分だったんだ・・・」


 敬子は一瞬うるっときた。


 突然新郎が、ソワソワしている猫達に大声で言い聞かせた。


 「猫達!この結婚式の飾り付け手伝ったんだね?!ありがとうな!!この猫達が許嫁と結んだ縁があるのに、また恩返しされちゃったね!!

 みーんな新たな飼い主の元で、幸せに暮らしてるんだと、僕らの保護猫活動してきて本当に嬉しいよ!!」


 新婦も、潤んだ目で猫達に呼び掛けた。


 「ねぇ!!にゃんこ達!!そしてこの結婚式に集まった人達!!あ、この素晴らしいバルーンアートを猫達と一緒に造ったスタッフ達も!!

 記念撮影しましょう!!


 チーーーーズ!!」



 パシャッ!!







 ~猫はバルーンアーティスト!?~


 ~fin~

 



 


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猫はバルーンアーティスト?! アほリ @ahori1970

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