女の子のきわどい写真ばかり撮っていたぼくは、猫を撮ることにした

つばきとよたろう

第1話

 ぼくの学校には、白髭と呼ばれている、年老いた虎猫がいる。体も大きいが、態度もデカい。白髭は呑気なもので、授業中の教室の窓や入り口の扉を開けていると、勝手に入ってきて、日の当たる床に寝転んで欠伸なんかしている。どういう神経しているんだ。それだから、ぼくが写真の被写体に猫を選んだのは、何を撮ろうかあれこれ悩んでいたときに、そんな白髭の姿を目にしたからだった。


「先輩、真面目に撮って下さいね」

 女の子のきわどい写真ばかり撮っていたぼくは、写真部の下級生にぴしゃりと釘を刺された。


 写真部では、コンクールに向けて応募写真を撮ることになっている。その上、今度のコンクールで入賞すれば、何でも欲しい物が買ってもらえるという約束を顧問の先生に取り付けた。が、この約束はあってないようなもので、芸術の才能の無いぼくにとって、入賞なんて現実味のない夢のまた夢であった。


 そうだ。白髭の手を借りよう。ぼくは、まず白髭を探すことから始めた。白髭はすぐに見つかった。太々しく渡り廊下を歩いていた。ぼくはカメラを手に白髭の後を付けた。どこへ向かっているのだろう。学校の敷地を出て、道を幾つも曲がった。


 細い路地の階段を何段も上って、たどり着いたのは小さな社だった。そこに、ぼくを寄せ付けないほどの猫が集まっていた。猫の集会だ。


 写真の展示会で、ぼくの写真の前に人だかりができていた。猫が三十匹ばかり、こちらを向いて写っていた。こんな景色滅多に見れない。入賞は逃したが、顧問は上機嫌だった。


 ぼくは猫の餌を手にしていた。野良猫が殖えるから、餌付けは禁止されているが、一日ぐらいはいいだろう。でも、幾ら路地を曲がっても、階段を上っても、猫が集まっていた社にはたどり着けなかった。

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女の子のきわどい写真ばかり撮っていたぼくは、猫を撮ることにした つばきとよたろう @tubaki10

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