第6話 ダイラのタイヤ
岡本太郎の太陽の塔、「芸術は爆発だ!」とぎょろ目&両手で巨大な何かを掴もうとするジェスチャーは幼少ダイラに衝撃を与えた。
この強烈で
「自分の中に毒をもて!人生の岐路に立った時、困難なほうの道を選べ!」
★
1983年、映画ではET,スターウォーズが大ヒットし、東京ディズニーランドがオープンした。YMOは大衆に迎合した「君に胸キュン」をヒットさせたが、テクノカットオジサンたちは迷走していた。子どもたちはデパートのファミコンに群がり、アルフィーは、大切な人を失い、張り裂ける思いメリーアンを歌っていた。
高校生のダイヤは、文化祭で演劇を企画し、脚本と舞台美術を担当した。
アバンギャルドで奇抜な劇は、当時の生徒や教師を驚かせた。
劇のクライマックスでは、巨大なミラーボールに様々な角度からスポットライトを当て、反射させ、体育館を宇宙空間に変化させた。西城秀樹のギャランドゥを爆音で流し、爆竹とロケット花火で異様な空間を演出し会場を騒然とさせた。
バブルな時代と共に、期待と不安で膨張する生徒たちのエネルギーを表現したかった。
困難な道を選んだ、後悔はなかった。
少々毒が強すぎたか、演劇部顧問から叱られ、思いを寄せていた人からは距離をとられた。
明くる日は、自宅で、おしんを見ながら、わらべの「もしも明日が…。」をラジカセで聴いてしんみりした。
★
美術大学に入り、課題制作で行き詰った。
彫刻棟の屋上で空を見上げながら、太陽の塔の壁に小さな穴があり、その中を覗くと、銀河鉄道999が天を突き抜け、四方八方に光が拡散される空想をしていた。
「モニュメントを消せ」
ぼーとしていると、そんなメッセージが降りてきた。
★
美大の教授や講師たちの彫刻作品は、記念碑的な巨大モニュメントが多かった。
学生たちがつくる作品にも、そんな影響が漂っていた。
ある日、ダイラの作品にタイヤがついた。
殻を破った瞬間だった。
時や場所と共に移動するダイヤのタイヤには、モニュメントは受け入れないという強いメッセージが込められていた。
追いかける存在から、追い求められる存在に変わった。
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