ある合コンでの話

コブシプロジェクト

第1話

最近たまたま知り合った大学生の女の子と飲みに行く機会があった。県内の某大学に通う2回生だ。成人式は地元に帰り、友人達と久しぶりの再会を果たしたなどのありきたりな会話がさほど盛り上がらなかったため、こちらから最近の大学生の恋愛事情について尋ねてみた。ここで驚いたのが最近の大学生は合同コンパいわゆる「合コン」というものをしないらしい。その子も例外ではなく、その手のものをしたことがないらしい。その理由として一番に挙げられるのが、SNSやマッチングアプリなどの普及により男女の出会いが簡単にセッティングできてしまうことがある。その子の今の彼氏というのもマッチングアプリで出会った人らしい。私が大学生であった10年前には合コンというものは其処等中で催されており、かくいう私も新たなる出会いや刺激を求めてそこへのこのこと現れていた一人である。最初に私が合コンを経験したのは19歳の時だった。大学の友人から今夜3対3の合コンがあるから来ないかという誘いに脊髄反射の如くおおよそ1秒かからない早さで行く旨の返答をして、当時私が一張羅としていた茶色の革のジャケットを着用して意気揚々と待ち合わせ場所に向かったことを今でも鮮明に覚えている。友人からは武○川女子の一回生としか前情報を与えられていなかったが、若い阿呆な私の頭の中ではキラキラ輝く清楚な可愛い女子大生3人組に勝手に脳内変換され、半ばにやけ顔で待ち合わせ場所に到着。しかし期待は大きく裏切られることになった。3人のうち2人は如何にも高校時代は文化部でクラスではいるのかいないのかわからないような地味な女の子。そして残るもう一人は女版の新弟子検査があるなら一発合格間違いなし。簡潔にいうとデブだったのだ。この待ち合わせ時点で急に腹が痛くなったとか親族に不幸が起きたとか言って帰ってやろうかと思ったが、それでは男2の女3のアウトナンバーになるし友人の顔を潰すことになると思い渋々店内に入ることにした。最初のビールを飲む前から既に口の中が苦かった。乾杯を済ませ他愛もない会話をしていると何を思ったか友人が「男と女混ぜて座ろう」とぬかしやがった。そして私の横にはないなと思う中でも一番ないなと思っていたデブの子が座ったのである。そこからはバスケ部時代にも経験したことのない徹底マーク、並びに相撲アタックを浴びることとなり、どこ出身からはじまり根掘り葉掘り私に質問をしてくるのであった。この時点で私はほぼ半泣き状態で、6時間ほど前この魔会に1秒で参加すると返答した自分を蹴り殺してやりたい気持ちに駆られていた。ようやく待ちに待った会の終焉が近い雰囲気になったところで、横の関取殿が「ねぇ携帯のアドレスを教えて」と宣うのであった。ここでどんなに頭をフル回転させてもこの子を傷つけずかつアドレス交換を回避する文言が思いつかず、手を震わせながら赤外線送信でアドレスを交換した。あれほどワクワクしない赤外線送信は後にも先にもはじめてである。帰りの電車の中で携帯を触っていると早速彼女からメールが入っていた。その文面には今日は楽しかった。今度畑くんのバイクの後ろに乗せてねとあった。私はアンタが後ろに乗ったら過積載で警察に止められるわと返信してやろうかと思ったが、思いとどまり僕も楽しかったです。機会があればねー。とだけ送った。それ以来彼女とは会っていない。誰かのバイクの後ろに乗ってタンデム走行を無事達成できたのだろうか。つまり私の合コンデビューは2RTKOノックダウンの完敗であった。それからも私は合コンに懲りずに参加していた。事前の写真のチェックやプリクラから推定されるマイナス分差し引いた容姿の判別、幹事の女の子は自分より可愛い子を連れてこない説などのテクニックを身につけた頃には負け試合はほぼなかったような気がする。つまりそんな楽しいものが最近廃れていっていることが衝撃かつ悲しかったのである。コロナが終息したら久しぶりに合コンしてみたい。今はどんな女の子が隣に来ようが負ける気がしない。

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