第12話 DQN襲来
◆◆◆
それから数日後、自分が密かに待ち望んでいた事件が、ついに……おきる。
「あ、あのね水月くん! あたし達これからカラオケ行くんだけど、よかったら一緒にどうかなっ?」
放課後、クラスの子達からいつものように遊びに誘われるが、返答は変わらない。
「ごめんね、きょうはちょっと用事があるんだ。また今度誘ってよ」
「え~っ! 最近いつもそれじゃ~ん。美亜子のヤツがさ~、水月君に二人っきりで話あるみたいよ~?」
「も、もう! やめてよヒーちゃん! ごめんね水月くん? ま、また明日ねっ!」
顔を真っ赤にし、あわてて走り去っていく彼女達。
そんな様子を見ていたクラスの男が、声を掛けてくる。
「お~いナツヤぁ、お前行ってやれよ~。美亜子ちゃんって、マジ人気あんだぜ?」
「興味ないな」
「カーッ、じゃあ俺にどうにかして紹介してくんね? うらやましいったらないぜ」
軽口を叩くクラスメイトとのやりとり。
やがてそんな教室に、見知らぬ男がやってくる。
「おい、水月ってのはお前ぇか? ちょっとさぁ、そこまでツラ貸してくんね?」
「? だれだ。君は」
「ば、ばか! 知らねーのかお前!?
「西中? 知らないな。中学時代のやんちゃがどうかしたのか? ……高校生」
対人関係が長く続く街……。
この兜都だからこそ、中学での影響は高校でも濃く生きる。
しかしそんなものは外来者である俺にはまったく関係がない。
クラスメイトがあたふたとする中、鬼島と呼ばれたチャラそうな男は低い声を漏らした。
「オイ。用があるのはコイツだけ。お前、あっち行っていいヨ?」
「はっ、はひい! ししっ失礼しますぅっ! わわわワリーな、ナツヤっ! またな!」
あっさりと走り去っていってしまうクラスメイト。
いつのまにか、教室に残っていた他の連中もコソコソと廊下へ出て行ってしまっている。
「おーおー、友達思いのいい奴らばっかじゃねーか。み~んな行っちまったぞ? なア」
「別に」
「あっそ。で、お前さ。最近ちょっと調子のってね? いいからそこまでつきあえよ」
有無を言わさず教室から連行され、人気のない体育館裏へと案内される。
するとそこには、既に数人の男達が待ちかまえていた。
(やはりな。そろそろ来る頃だと思っていたぞ)
単純な不良というわけではない。こいつらの詳細は、既にリサーチ済みだ。
サッカー部のエースに、陸上部と空手部の部長、更に今まで学年トップにいた眼鏡を掛けた優男が一人。
そしてこの鬼島という三年は……これといった長所のないチャラ男だが、女子からモテるプレイボーイであることと、両親がMASKの重役であることは把握している。
何のことはない。
彼らは俺が活躍し、人気取りであることを好ましく思わない者達だった。
「フッ、これはこれは豪華な顔ぶれだ。各部のエースが、がん首揃えて何のようです?」
言葉遣いは丁寧に、しかし不遜な態度を見せて相手の様子をうかがう。
「あんさぁ、うぜーんだよテメー。新参のくせして、何いい気になってんだコラ? あ?」
「っつーかお前さァ、マジここがどういうトコか分かってる? オレらはさー、この学校卒業したOB……MASKで今じゃ活躍されてる先輩方に、特別にご指導、目ぇかけてもらってたエリートなワケ。よーするにみんなが学校の花形なわけよ」
「ほう? それで?」
「わっかんねーかなぁ余所者は。だからー、オレらがここで活躍するってのはぁ、それがそもそもの伝統っつーか? ぶっちゃけ、マジ学校全体の総意みたいなワケよ。わかる?」
「つつつ、つまりだね! キミのようなにわかが
「……転校生くんよ、君がスゲェのは分かった。だが、それだけ才能があるのに一向に部活に入らんのはどういう了見だ? 同じ兜都の学生として、将来はMASKを背負って立つ身。のらりくらりとしてないで自分を必要としてくれる部活に入ったらどうだね? ……あぁもちろん、俺達とは違う部に、だがな。この意味は……わかるだろう?」
空手部の部長が、これみよがしに拳をゴキリと鳴らせて脅してくる。
他の連中もいつの間にか自分を取り囲むような陣形を取っており、俺は人知れず包囲されつつあった。
「なるほど、俺を呼び出したのはそれが理由ですか。よく分かりました」
「そうか。なら、色の良い返事が聞こうか? 君は賢い人間だ、そうだろう?」
俺は一人一人の顔を見比べる。
どいつもこいつも、MASKによる歪な社会を肯定する者達だ。
こいつらがゆくゆくは、新たなる歪みを形成していくに違いない。
「では、俺からの返答を」
「……ごくっ」
「ザコ共が!ガタガタ抜かしてないで掛かってこい、きょうここで貴様らは引退だ!」
「「「「……てっ……てンめぇぇええッ!? ブっ殺すッ!!」」」」
激昂し、殴りかかってくるエース達。
さあっ、お膳立てはできたぞ? …………今だ、来いッ!!
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