第24話 孔冥と秀吉 情報が欲しい
「もっと情報が欲しい。なんとかならないのか」
孔冥は秀吉に激しく噛みつくが、秀吉としてもこればかりはどうにもならない。
「いま政府も自衛隊も、超地震の災害救助でそれどころではない。今回はめちゃくちゃのぐちゃぐちゃだぞ。まず、被害を受けたのが日本だけではないから、他国からの救援は期待できない。太平洋側の大都市は軒並みライフラインが寸断され、連絡も取れないため被害状況の把握もできていない。病院はパンク状態、流通はストップ。海の上に浮いているだけの異星人に構っていられる部署はひとつもない。俺もこれから他の部署の救援にかけつけなくちゃならない。しばらくここには顔を出せないからな。みんな寝る間もなく働きづめなんだ」
「超地震はなぜ起きた?」孔冥は皮肉げに片眉を吊り上げて見せる。「惑星ラクシュミーの強引なニアミスによるものだ。ジャバラがわざとやったんだ。あいつらが気づいていないわけがないだろう。とすると、奴らの目的はななんだ? 地球侵略? あいつらが欲しそうなものがこの惑星にあるのかな? あいつらの惑星と地球では環境がずいぶん違う。ジャバラにとって必要なものが地球にあるとは思えない。ならば人類殲滅? なぜ? そんなことして、ジャバラになんの得がある。おろかな地球人を導きに来た? 友達になりたかった? 銀河帝国への加入の勧誘? 全部ない! 奴らは何しにここに来た? それが分からなければ、打つ手がない。つぎにあいつらが何をしでかすか。百パーセント分かっていても打つ手はないかもしれない。だが今は、ゼロパーセントだ。まったくもって皆目見当もつかない。これでは話にならんだろう!」
「おまえはただ単に知りたいだけなんじゃないのか? 自分の好奇心を満たしたいだけなんじゃないのか?」
「うん、それは案外あるかもしれないな」孔冥は真顔でうなずいた。「ジャバラの奴らは、好奇心から地球にやってきた。たしかにそれはあり得るかもしれん」
真面目に答える孔冥に、秀吉は大きく嘆息した。
「いいかげんにしろ。いまはお前のお遊びにつき合っている状況じゃない。いま日本は有史以来未曾有の危機に直面しているんだ」
研究室をあとにしようとする秀吉の背中に、孔冥の声が響いた。
「ちょっとちがうな。有史以来未曾有の危機に直面しているのは、日本じゃない」
足を止め振り返った秀吉は、闇のようにくらい孔冥の目に射貫かれた。
「人類だよ」
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