第14話 孔冥と秀吉 分裂
ラクシュミーから複数の破片が飛び散ったとき、ニュースはそれを潮汐力による分裂と報じた。ラクシュミ最接近まであと二日というタイミングである。
しかし孔冥は「そんなバカな話があるか」と完全否定。駆けつけた秀吉に噛みついた。
「最優先でこちらにデータをくれ。軌道計算はもういいから、飛翔体の画像解析をいそいでくれ」
孔冥に命じられるまでもなかった。
すでに各観測所からは、破片の形状が正八角形の円盤状であり、表面は金属による防護塗装がされた人工の飛翔体であろうとの報告が来ていた。異星の知的生命体である可能性が高い。すべての観測所からそう報告が上がってきていたし、秀吉もあきらかに人工物──いや宇宙船としか見えないそれ──の画像を見ていた。ただしそれは国家機密であり外への持ち出しは絶対禁止されている。もちろん機密維持の規制も厳しかった。
「おい、なぜ観測所からの報告がこちらにこないんだ」孔冥は研究室に駆けつけてきた秀吉をぎろりと睨んで詰問した。「まさか国家機密だとか言い出しているんじゃないだろうな」
まさにその通りである。だが、そんなのは当たり前のことだ。ラクシュミーから異星人の宇宙船が発進したなどと発表すれば、世界中がパニックになる。
「国家機密なら国家機密でも構わんが」孔冥は鼻で笑う。「あと数時間で、あれは地球の大気圏に突入してくる。そしてそれを、世界中の人間が目にすることになるぞ。機密にしていても意味がない。これは、地球の空のうえで起こっていることなのだから、隠しようがないぞ」
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