田原総一朗、現在の状況を聴取する

 この国、「カラスムギ」の長の名前は「ライ」という。尊敬される長で避難してやり直すことをせずに、住民と共に残っている。

「この、『ようかん』というもの、上手いではないか」

「恐れ入ります。我が国、『ニッポン』のお菓子でございます」

こんなこともあろうかと、土産に和菓子をいくつか持ってきたのだ。


「それでは、間食は済みましたでしょうか?」

「おかわりをくれ」

「え」

側近がきょとんとした目をしている。

「ほれ、食べろ」

側近は、ようかんを受け取って、菓子切りを器用に使って口の中へ入れる。

「お・・・・・美味いでございます!!!!」

「だろう?」

側近まで、ようかんのとりこになってしまった。やれやれである。


 さてと、と言うように長はドスッと椅子に腰かける。

「それでは、おぬしの主張を聞いてやろう」

「はい、まずは一つ申し上げます。戦争を止めてください」

「無理だ。理由を聞かせてやろう」

直で言われて、ショックだった。


「まずな、二年前、領地のうちの半分を『リツハンキュウ』という南の国に取られてしもうたのだ」

「それはマズいですね」

「だが、我々のパートナーである『アコカメ』『ギリスバコト』『モトヒチニ』などは相手国に貿易制限などをする一方で軍事介入をしないのだ」

「それはお気の毒に」

機嫌を取るためには、こうするしかない。途中で理由を話すのをやめてもらえば困る。


「そして、今年、リツハンキュウが東側の一部に攻めた。だが、今回違ったのはそれがパートナーにとっても要所だったことだ。そのせいで、相手は独裁主義の国をこれ以上行かせてはいけない『デッドライン』を超えてしまった。これ以上行くと我々、共栄主義のクニは一段と危うくなる。それで、戦争だ」

「そうなのですか。今の戦況はどうですか?」


我々が劣勢だ。昨日も見たであろう。民間人が殺されていく姿を。これ以上の犠牲を増やしたくはない。だが、このを食い止めるにも我々は戦う。そうでないと、我の立場はどうなるんだ?」

「ですか・・・・・」

それでは、この国は共栄陣営のかいらいではないか。てか、気になることがあった。

とは一体?」


「よく聞いてくれたな。リツハンキュウ相手に、我々は善戦したのだ。おかげで、やつらはもう撤退しようとしている。アコカメ、ギリスバコト、ホトパフツ、ドナチドらの味方が取られた領土も取り返してくれたが、今度は――ツユアという大国が宣戦布告を仕掛けてきたのだ――」

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