2 最初の戦い
1 巨大ロボットプラニスファー
「ここは?」
マモルはじめ星町の五人は、次の瞬間、操縦席らしき場所にそれぞれ着いていた。
「……地球だ」
眼下に地球がある。
「君たち、大丈夫? 頭が痛かったりしない?
なんてこと! 全員が適合者だって?」
ルルウラ=レイの声が聞こえる。
「……君が?」
目の前のスクリーンに、青い髪をした男の子が映っていた。
「こっちがぼくの本体。この機体、プラニスファーを守るために定位置を離れられなかった。地球の調査に義体で活動していたのはそのためなんだ」
調査として、星町の小学校にいたのか。
「急なことで申し訳ない。でも、この状況下で心強いことに五人全員転送に成功した。
これは君たちが強化服に完全に適合していて、この機体の操作も可能だということなんだ。
一度に五人も? これはめったにないことだよ!
とりあえずプラニスファーの操作方法、攻撃、防御についてデータを送るね。慣れない感覚だろうけど、脳に損傷を与えたりしないから大丈夫」
「えっ」
そしてそれぞれの頭脳に、流れ込んできた。
(これは、巨大ロボ?)
(見た目、超合金みたいなやつか?)
そればかりか、操縦に必要な身体動作、シミュレーション、それらまで一度に叩きこまれる感覚があり、目眩がした。
「……きついぞ、これ」
「気分悪くなった?」
しかし、意外なことに全員平気だった。
そうするうちにすべての知識を受け取り、すべての状況を理解できた。
五人はいま、それぞれの強化服を身に着けている。マモルが赤、アオイが青、ヘイタが桃色、ナミが黄色、ユウスケが緑。そして、最終兵器と呼ばれる巨大ロボット・プラニスファーの操縦席にいる。
これから本機を操作し、地球へ降りかかる脅威を除かねばならないのだ。
「さすが適合者揃いだね。
あっ!」
そのとき。
スクリーンが切り替わる。
「手こずらせるわね、ルルウラ=レイ。その機体もなつかしい」
女性。しかし、その鍛え上げられた体格と勲章の数々から軍人であるとわかる。
「ランダ=ガリア。こちらの地球も、君が担当か」
「もちろん。
とはいえ、今回の地球は、並行宇宙の存在も明らかではない未開の土地。まず我々の立場を理解していただくところからはじめるところよ」
「そういう譲歩って、珍しいね」
「未開の地だけあって、七つの地球の中では環境の良さが飛び抜けているわ」
「えっ、これで? そうなの?」
マモルは毎日生徒たちに環境破壊の現状と、保護の大切さを説いているのだが。
「軍事拠点、産業の拠点はこれまで占拠した地球で実現している。
次なる目標のこちらの地球にも、大帝国の植民星としてふさわしい役割を与えることとなっている」
どんな狙いがあるというのだ。
「ここをすべて大帝国のリゾート地とする」
………は?
「決定事項よ。
先住民に選択の余地はない。大帝国の征服完了後、この地球の先住民は観光産業以外の活動は認めない! 観光の目玉もなく集客活動に消極的で寂れた観光地は都度粛清する!」
「なん……ですって……」
怒りのあまり拳を握りしめたのは、黄色の強化服を身につけた〈星の湯〉、ナミだった。
「観光、観光って!」
〈星の湯〉は今、首都圏を拠点に各地の温泉旅館、銭湯を買収し、自社系列のスーパー銭湯を増やし続けているとあるグループ会社との攻防を繰り広げているところなのだった。そんな私情がつい爆発した。
「何でも観光の名目で、町をいじくり回すな!」
商店街をすべて買収し、一帯まるごとスーパー銭湯に変える計画の糸口に、と、〈星の湯〉にまず話が持ちかけられたのである。
「〈星の湯〉さんが断るなら、って、ほかのお店もとどまってくれてるのよ? これがどういうことなのか、考えてみなさいよ!」
「あなたの町内じゃない。地球の話よ。未開の土地の先住民は、とかく視野が狭いわね」
ランダ=ガリアはうすく笑い、
「見なさい」
操縦席から見える光景。
大帝国の戦闘機の一群が徐々に迫ってくる。
その中央に、母艦らしき大型の宇宙船がある。ランダ=ガリアはそこから通信を送っているのだろう。
(頭はひとつ)
あの言葉は、このことか。
「我々はここで地球担当大臣とともに皇帝陛下の城塞到着を待ち、その間、地球との交渉に着手する」
「お前たちの交渉?」
ルルウラ=レイの言葉にもランダ=ガリアは笑って、
「まあ、お前は知っているのだったわね。
最初の挨拶代わりに……
〈星の湯〉と言ったわね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます