3 五人いる。

 今晩集まったのは、商店街のミーティングのためだったのだ。


 カレー店〈ゴンゴン〉の店主、佐倉井さくらいヘイタが今年の商店街まつりの実行委員長に決まり、その第一回目であった。


 銭湯〈星の湯〉の黄川田きかわだナミ、喫茶店〈タチバナ〉店主の代理、青柳あおやぎユウスケ、ダンススタジオ経営の翠川みどりかわアオイ。商店街の若手が集まった。


 星町第三小学校教師、阿賀川あかがわマモルが同席しているのは、商店街まつりに子供たちが協力するためである。いずれにせよみな幼なじみで気心が知れている。


「……生きてるか?」


 五人は気付くと夜露の匂いと夜風に包まれていた。


「どこだよ、ここ」


 周りには、木々。

 山の中か。街明かりを見下ろせる。


「公園の近くだ」


 この山の頂上に、町を見下ろす公園がある。ここはその隣の森ではないか。


「気が付いた?」


 子供の声。

 そうだ、まぶしくなる直前に聞こえた。


「ああ」


 マモルが答える。

 そこで、顔が何かに覆われていることに気付いた。


「君たちの身体を守って、かつ、攻撃を避けようとしたら、これしか思いつかなくって」


 守って?

 手足を見る。

 銀色のブーツに手袋。


「え、なにこれ?」


 アオイの声で、皆、気が付いた。


「……お? マスク?」


 お互いを薄暗い町灯りの中で見てわかった。顔もそれぞれマスクで覆われていた。


「みんな、無事だったね?」


 そして、子供の声がする方。

 ドッヂボールくらいの玩具のロボットがあった。 ぼんやり目が緑色に光っている。


「君?」

「はじめまして」

「ロボット?」

「静かに。見つかるとまずい」


 ナミが声を押さえた。

 押さえた口が硬いマスクに触れ、


「これは?」


 小声で尋ねる。


「強化服だよ。

 さっき、あいつの攻撃を避けてここまで避難するために、勝手にして悪かったけど装着させてもらったよ。装着だけなら、誰でも安全に身に付けられるんだ。

 手首のブレスレットに強く触れてみて。解除されるから」


 言われて気づいた。左手手首にこれまたみんな装着されていた。腕時計かと思った。

 ロボットの言葉通りに触れると、全員もとの姿となった。


「びっくりした」


 そして、それぞれ持っていた懐中電灯をつける。


「みなさんごめんなさい。ぼくのせいで巻き込んでしまって」

「どうして学校にいたの?」


 マモルが尋ねると、


「ぼくの学校を思い出して、つい入ってしまったんです。追われている身なのに」


 学校を思い出して。

 教師として、聞き捨てならないことを聞いた。


「聞こうじゃないか」


 ああ、マモルにそんな話振って。長くなるかも。

 全員その点はあきらめたが、いずれにせよ妙なことに巻き込まれていることには変わりない。ロボットの次の言葉を待った。


「ぼくの名前はルルウラ=レイ。

 これでも地球防衛庁の一員なんだ」

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