忍び

 忍び


うう

痒い

苦しい

今何時だろう


ママの声だ

九時になるらしい

そうだ

起こされたんだ


体がはりつく

思考が巡る

起きろ

起きろ


起きられない

どうしたらいいのかも

全然分からない


スタディルームの先生は

何時に来て

帰りが何時でも構わない

最初に説明を受けた


ママにアプリで出欠連絡を取られる

選択肢が乏しい

致し方なく遅刻を選んだ

グンジと名乗る者は九時と言う


どこもかしこも

嘘っぱちだろうよ

適当にしないで

嘘で固めた嘘なんて脆いもの


娘は忍び泣き入る

今夜も朝も忍び入る

明日も

明後日も


ひとつでいい

病魔から解き放って

自在に羽ばたかせてやりたい

自信の道で主人公を見付けて欲しい


北風にのって

おばあちゃんは

まだ病院なのかと

優しい娘よ


母の離床は望めない

ここは私の忍ぶところ

母と娘が元気で

どうか命を繋いで欲しい


朝には

きらきらとした望みを持ち

夕には

祝福を贈りたい


忍ぶ心は繋げども


 いすみ静江

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