絵画館の詩〔連載🍊〕

夏の課題

　夏の課題

痒い痒い痒い

キミは掻きむしってしまう

爪の痕と血の塊

分かっていてもなぞらえる

夏休みの宿題

ママと一緒にしようとの声

秒速で返される

自尊心は大切にしたい

キミは自分でやると叫び

キッチンで勉強を頼んでも

自室にこもって

時折悲鳴を上げるだけ

毎日渋々取り組んだのは

家庭学習ノートに一頁

二行をまたいで半分書いて限界

タブレットで撮影して提出する

ママは気を揉む

三回寝たらもう九月

キミは空の鞄では登校し難いだろう

教室に上がれる上履きがない

青い上履きは二年生の印

担任が嗤い嘲る

下のルームは本当ではない

お前は上の教室に来るべきだ

がんばって

七月二十日に階段を上がったのに

キミの努力は泥で塗られた

帰宅時に泣きながら兄に漏らす

キミにはフラッシュバックがある

五年生の頃の辛さを思い出して

夏休みの作文にしている

男の先生が怖く哀しみに堕ちて行く

痒い痒い痒い

キミは掻きむしってしまう

爪の痕と血の塊

分かっていてもなぞらえる

もし

担任のせいで

手首を切ったら

お前も手首を差し出せ

キミが家ではどんなに

暴れたり

暴言妄言を吐いたり

嗚咽に嘔吐をしているか

遠慮は要らない

同じ体験をしてみればいい

ママのエゴに見えようが

言わせて欲しい

キミは万能でなくていいんだ

生きていて

もしも笑えたら

一秒でも見つめるから

魔法の上履きで

ルームでも十分だから

登校の練習をしよう

勉強はおうちでしよう

アトピー性皮膚炎も

秋が来ればやさしくなる

茹で卵のように

可愛い肌になれるよ

ママは昼夜なく

キミを想っている

　いすみ 静江✿