優しくなる方法(自分ごと化)

@kuromituno

第1話

小さい頃から漠然とやさしくなりたいなと思っていた。なんとなく自分の冷めた部分を自覚していたんだろう。


二十歳になって友だちに「もっとやさしい人になりたい」と話すと、その友だちは「別に皆やさしくないと思うよ」と言った。

「え、でもほら〇〇とか」

「そういうとこもあるけど、でも悪口言うとき怖いくらいじゃない?」


言われてみればやさしい人と言われて特に思いつく人はいなかった。人は多面的だから親しくなると色んな面が見えてくる。例えば乱暴な人のイメージはある程度決まっているけれど、きっとやさしいというのはぼんやりとしていて人の性格を表しにくいのだ。




最近ロシアがウクライナに侵攻してそれに心を痛めている人も多いと思う。


でもいくら悲惨なことが起きていてもその事実を自分の体験と結びつけなければ痛みはない。


やさしさとはどれくらい自分のことと思えるかだと思う。 

渋谷の道にタバコが落ちていても拾わないけれど、自分の部屋にタバコが落ちていたら拾う。

渋谷を自分の街と思っているギャルはタバコを拾うかもしれないけれど、恵比寿に行ったら拾わないかもしれない。


自分のこととして考えればやさしくなれる。知ることを通じて自分の事のように考えることができる。


それでも地球上のすべてに対して自分のことのように考えていたら頭が何億個も必要になってしまう。切り離して考えることも時には必要で、やさしさと冷たさの間のぬるま湯で私は生きている。もう少しだけ熱くなることを目標にして。




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