第3話 美味しいの詰まったおでん 3

一通り片付けてお腹はそこそこ満たされたものの、ちょこちょこ個人的に気に入ったものを皿に追加しながらのんびりお酒の続きをする。


「この大根が絶品だな。きちんと下茹でした大根に肉、貝、魚の出汁がたっぷりしみ込んでいる」


「そうゆうのわかるもんなんだ?」


「大根の下茹ではわかるやつにはわかるんじゃないか?」


 エリちゃんはさも当然って顔で言うけれども、いやいや、あたしはたぶんわかんないよ? ワイルドぶってるけどご飯食べるときとかめっちゃ姿勢良いし、実はいいとこの娘さんなのかな。


「しかし全体的に風変わりなタネの多いおでんだったな。キョーコの地元ではこれが普通なのか?」


「え? あ。いや、違うけど……」


 うおお余計なこと考えてて不意を突かれた!


「?」


 ニヤニヤしながら首を傾げて見せるエリちゃん可愛くない! 可愛くないなーっ!!


「これはね、その、旨味成分の強い素材を丁寧に処理することでとにかく旨味オブ旨味を作ろうっていう苦心の果てに生まれたおでんなのよ」


「なるほどな」


 相槌打ってるような顔でしどろもどろに説明するあたしを肴にビールを吞むなー!

 彼女はカラになったビールの缶を置くと立ち上がって心の中で憤慨するあたしの隣までふらりとやってくる。

 キリも良いし一服してくるのかな? そう思ったあたしの肩にするりと手を回して顔を寄せた。まだほんの微かに残る煙草の残り香。彼女の香り。


「確かに旨かったよ。キョーコが料理をできるとは驚きだ」


「えへへ、ちょっとは見直した?」


 満更でもない顔で返すけれども、ほんとはもうわかってる。エリちゃんは普段ボディタッチが多いほうじゃない。


「ああ、もう満腹だ。そろそろデザートをいただこうかな」


「え、ええ?」


 狼狽えて見せるあたしの髪を嗅いで彼女が笑う。


「珍しく洗ったばかりの匂いがする。キョーコもそのつもりだったんだろ?」


 ショォォォォオタァァァァア!! あたしは心の中で絶叫した。

 あのマセガキAI最初っから予想してたわね!?


 けれども、まあ……。


 うん。


「い、いいけど」


 あたしは消え入りそうな声で答えた。



~おしまい~



全て短編です。またネタが思い付いたら続きを書きますネ。

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