第5話

『あっ…すいません』

人がごった返す都会の歩道。ビルとビル、ビルにビルのガラスに反射した日光が都会の日陰に差し込む。片手を両目の瞼に日影を、瞼の上にかざす。少し都会に慣れていない、大阪に来たばっかな岡山県民のような、美しいと評するが正しい中性的な男性。

美しい風貌の美しい男性のオーラに、やや強めの柔軟剤の香りに混じる適度な香水のアクセント。ただよほど鼻が利く人は微かな獣臭。漂う神々しいなにかに人々は、普通は1m近くの距離感で歩く人を避けるが、この男性にだけ1.5m近くの、ぶつかることを極力避けるようにしていた。人の本能がそうするように仕向けたのかもしれない。

避けゆく人々は男女関わりなくちらっとみたやいなや両目の瞳からハートマークという輝きを発した。

道ゆく男性は女性だと思い込み、女性は男性だと。

 その1匹は京橋の地下鉄へと向かっていった。

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