第4話

再び細い路地に入って、祖母の家に着いて、懐中電灯で照らしてみた。玄関前に、母が乗ってきたであろう自転車が見えて。


照らす限りでは、ガラスとかブロック塀とか、危険そうなのが散乱してる様子も無いから、そのまま近づいて引き戸の玄関を開けようとした。


したんだけどさ。


全く動かねぇ。


え?あれ?なんでカギかけてんの?って思って、チャイムを鳴らしたんさ。


いつの間にか父が来ていたようで。

中にいて、こっちに近づいてきて、なんか叫んでんのね。

よく聞こえないから、耳を近づけてよーく聞いたんだわ。


「立て付け歪んでて、カギも壊れてる!開かねぇんだ!縁側から回って!」


まじかよー・・・嘘だろおい・・・

立て付け、逝ってんのかよ・・・勘弁してくれ・・・

そんな事思いつつね。


玄関の右手側には、駐車場とは言えないくらいの狭い駐車スペースがあってさ。隣の県に単身赴任中の叔父が、普段使わない車をドーンと停めててね。


壁とその車の、狭い間を抜けると庭に出る事ができて、そのまま縁側に行けるから、抜けようとしたんやけど、なんかバラバラ落ちてるんよ。


うーわ、窓が外れて落ちてるやんけ・・・うわー・・・めちゃくちゃに割れてんじゃん・・・クソあぶねぇ・・・


割れたガラスを慎重にジャリジャリ踏みながら縁側に向かって、ガラスの引き戸から入ろうとしたんやけど


え、どこも開かんって・・・どっから入るん・・・?


立て付けが悪くなってて、もう開かないのね。

唯一、上に持ち上げるようにガタガタ引けば、開く所があってさ。そこを無理やりあけて、中に入った。


感想がコレ↓


・・・え、知ってる家じゃねぇんだけど・・・?


ガラス障子は立て付けから斜めになってて、その内の1枚は既に外れて倒れ、思いっきり割れてた。


その奥に見える廊下は、木の壁が剥がれて、断熱材がむき出しになってて。なんか電線みたいなのがダランって落ちてて。


そんな所を抜けて、祖母が寝起きしてる部屋に行ったら、飾り物がぐちゃぐちゃになってて。窓が半分以上外れて外に落ちてて、もう、吹きっさらし。祖母が呆然と布団に座ってた。


台所の方ではぐちゃぐちゃになっている所を母が乗り越えながら、その奥にある祖母の衣装部屋に服を取りに行ってて。

父は玄関を開けようと試みて、全然ダメで、ずっとガタガタ何かやってた。


あたしはもう、見るなりすぐに諦めた。

この家、もうすぐ崩れる。

祖母を置いてちゃダメだ。


とりあえず、うちに連れていこう!ってなって。


祖母はインスリン注射を必要とする糖尿病を持っているんでね。薬と貴重品をまとめてるからー!と母が大声で言ってるのが聞こえてきた。


あたしは一旦戻って、車で迎えにくるから!って大声で言うて、走って自宅に戻った。祖母はやっぱり年齢が年齢だし、それなりに要介護者だから。歩いて避難なんて到底無理。


あたしの車は軽だから、細い路地なんかでは小回りがきく。こんな時、とても活躍するんよね。


真っ暗な自宅に入って、居間にあるキーを取って、急いで自車に乗って。この時に「あー・・・ガソリン・・・半分以上あるか。うん、すぐに入れなくても大丈夫だな。」なんて確認して。


下手にガソスタなんか行ったら、ガソリン難民で行列ができてるのは予想がついたからね、11年前がそうだったから。そうすると、入れられなかった時に、ガソリンの無駄遣いになるからさ。


津波がなくて、電気がくれば、ガソスタは普通に営業開始する。そう踏んだから、焦りはしなかったな。


確認してすぐに、祖母のうちに向かったさね。


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ああ、しんどくなってきた。

次回にするね。

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