推しの連載が終わる

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

『償いのタコゲーム』は、来週で最終回となります。応援ありがとうございました。

◆お知らせ◆


 来週を持ちまして、『償いのタコゲーム』は最終回となります。

 応援ありがとうございました。



       ■       ■       ■



 小説投稿サイトの作者ページに書かれた文面を見て、私はスマホを握りしめて愕然となった。


「ぶあぁわああああああ タコベエエエエ!」


 昼下がりのカフェに絶叫を響かせて、大粒の涙を流す。


『償いのタコゲーム』とは、マンザイ777スリーセブン先生の集中連載小説だ。上下巻で終わるとされている。


「主人公の宇宙人タコベエが、大好きな地球人の女のコを風俗落ちさせないために、デスゲームに参加して一億円を稼ぐ」

 という内容だ。

 しかし、参加者の中に地球人少女のあこがれの人が混じっていた。

 タコベエは彼を勝たせるために奮闘していたが、劇中で彼は仲間をかばって死んでしまう。

 彼を救うために、タコベエがした行動とは……。


 というところで、お話は終わっている。

 

 ネット小説では不人気ジャンルたる『児童文学』でありながら、一日二〇〇万PVを叩き出す。

 児童向けラノベとは思えないほど、ヘビーで倫理観ゼロな展開が物議を醸していた。

 小説をベースにしたマンガがウケたからだろう。

 

 来週、最終回だ。

 

「ぐわああああ。気になるうううう!」


 カフェで私は頭を抱えながら、苦しむ胃にパンケーキを流し込んだ。


「マンガの展開に吐きながら食うなよ、スミエ」

  

 向かいにいるマイコは、最近できた友達だ。

 小説サイトのオフで知り合った。

 マイコはマンガ家志望で、私は小説家志望だ。

 共に大学生二年で同い年なので、タメ語で話す。

 知り合ってから、もう一年になる。


 詳しく話してわかったのだが、私とマイコとは全然趣味が合わない。


「マイコ、あんたの連載、『一〇〇日後に肉体関係を持つ、営業とお得意さん』だっけ? 評判いいよね」

 

 マイコはどちらかというと……百合? とかいうジャンルが好きだ。

 SNSでも、女性同士のイチャイチャマンガを連載していた。

 逆に、『タコベエ』のような闇が深い作品を苦手としている。

 


「そういうスミエも、『アタシのヤバいカレピッピ』、すごいPV叩き出してんじゃん。公募の最終残ったし」

 

 私は父が映画好きだったので、ダークめな話に耐性があった。

 ホラーでもアクションでもなんでも食べる。

 反対に、何も起きない系の話はあまりよくわからない。


「ゴメン電話に出るね」


 急にマイコが立ち上がる。

 

「私もゴメン、メールきた。ウソ……」


 マンガ原作の打診がきた。


 マイコが、電話から戻ってくる。


「あのさ、マイコ」

「スミエ! 私がデビューしても、ずっと友達でいてくれる?」


 真剣なまなざしで、マイコが問いかけてきた。

 

「え……もちもち! ズッ友ズッ友!」


「よかったぁ。ありがとう!」


 笑顔で、マイコが喜ぶ。

 

 

 しかし、私とマイコの関係は、この日からすっかり変わってしまった。


 密かに楽しみにしていたマイコのマンガも、連載が止まる……。

 


~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 


  

「スミエ先生、このコの衣装ってどうなってるの?」

「やだぁ、マイコ先生。韓国セクシーアイドル風って書いてあるじゃん」

「ホントだ! 見落としててた。ゴメンゴメン!」

 

 私たちは机を並べて、一緒に創作作業をしている。


 一年ほど音沙汰がなかったが、私たち二人はお互いにプロとして再会した。

 今は、同じ話を書いている。

 原作を私が書き、マイコがマンガを担当するのだ。


 しかし、マイコにはもう一つ、大事な役割がある。


「うわあああああ! たこべえツーウウウウウウウ!」


 推しの小説『償いのタコゲーム 第二部』が終りを迎えるらしい。


「あーよしよし、スミエ。あたしがこれに匹敵するようなお話のマンガを、SNSで連載してやっから」

「ほんと?」

「約束。だってズッ友じゃんウチら」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しの連載が終わる 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ