ゴリラ、未知との遭遇

アキラシンヤ

ゴリラ、未知との遭遇

 怪鳥の鳴き声騒ぐ熱帯夜、エイリアンが初めて接触したのはゴリラだった。


「お前たちがこの星を支配する生命体か?」

「ウホ? ウホウホ」


 眩く光るUFOで目を覚ましたばかりのゴリラは意味が分からない。夜を奪うこの光は何か。目の前にいる、小さな銀色のこいつは誰だ。

 まったく訳が分からないが、言葉は通じるのだから仲間かもしれない。


「星ってなんだ? 生命体? どうでもいいが明日にしろ。俺は眠い。夜を返せ」

「お前たちがここの王なのかと聞いている。答えろ」

「いかにも俺はここの王だ。この森に俺より強いやつはいない。お前、俺に挑むつもりか?」


 眠くともゴリラは森の王だ。王の眠りを妨げるなら、銀色のチビは敵だ。

 億劫そうに戦闘態勢をとったゴリラに対し、エイリアンがオモチャのような銃を向けた。


「動くな。我々はこの星を支配し」


 話を待たずゴリラは殴った。400キロを超える握力。振り下ろされた異次元の拳は銀色チビの顔面を砕き、そのまま地面に打ち込まれ。

 森が、揺れた。


「なんだ、つまらん」


 潰れた銀色に少しの興味も示さず、ゴリラは再び寝ようとしたが、未だ眩しいのに気付いた。白く輝くUFOに目を細める。どうやらあれが邪魔らしい。

 よって、光が消えるまで殴った。つまり跡形もなく、ぺちゃんこになるまで、地に沈むまで殴った。そう時間はかからなかった。

 夜を奪い返し、ゴリラはごろりと横になった。


「俺が王だ」


 それだけ言ってゴリラは眠った。

 今晩のことなど、明日には忘れているだろう。


 漆黒の宇宙、青く輝く地球。

 王の目覚めは、まだ遠い。

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ゴリラ、未知との遭遇 アキラシンヤ @akirashinya

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