第57話 SS『学園で失踪事件は拙いのであるッ!』

 我はついに──学園へ入学した。


 試験ではトップクラスの評価のはずである。


 ソアラ達も勉強を頑張った。


 そして、皆同じクラスになる事が──


 ──


 我とウェルだけ違うクラスに放り込まれてしまった。


 教室に現在いるのだが──


 我の席は教室のど真ん中である。隣にウェルがおるが──


 我らは孤立をしておる。


 これは我の呪い『畏怖』のせいだろう。


 全員が机ごと隅っこに寄り、我を中心にフィールドを展開しておるッ!


 まさしく心の壁であるなッ!


 物語のアークがほとんど学園にいなかった理由を身を持って体験したのである。


 こんな境遇なら教室にいたくないのであるッ!



 入学式中も同じような状況であったし、教師も冷や汗しか流しておらぬかったからな……。


 これは先が思いやられる……。



 なにより、ソアラ達がなのが心配なのである……一応、護衛はつけておるが……。



 とりあえず、我はウェルに声をかける。


「ウェル……すまんな」


「アーク様、これぐらい想定内だぜ!」



 なんと嬉しい事であろう。


 我は学園で友達を作る事しか考えておらんくて、すっかり呪いの事を忘れて全く想定しておらぬかったぞ!


 なんとかウェルには普通の学園生活を送ってほしいものだ。



 うむ……サボるか……これもウェルの為だ。


 ウェルはかなり社交的である。我がいなければ友人ぐらい作れるであろう。


「我は少し外の空気を吸ってくる。ウェルはこのまま授業を受けるように」


 そう言い残して教室を後にする──


 ウェルは呼び止めようとしていたが、我が手で制止させた。



 さて、中庭にでも行って少し考えよう。



 ◇◇◇



 中庭に到着した我は木の根元に座り込む。


「ソアラ、ノーラ、セレナはレオンと同じクラスか……これは間違いなくクラス分けを操作されておるな。こんな事は物語ではなかったはずなのだがな……」


 一応、護衛をつけているものの心配である。


 まさか我が二軍落ちとはな……屈辱である。


 レオンの片腕も何故か治っておったが──道化が何かしたのか?


 そして、何より──


 が入学して来なかった。


 これが1番意味がわからぬ。


 物語では既に全員が同じクラスであったからな。


 我がシナリオを変えたせいで本来の流れが完全に狂っておるな。


 それに問題なのが、クローネを除いた物語で現れる重要人物が全てレオンと同じクラスというのもトラブルの予感しかせぬな。




 ──むむッ、複数人の近付く気配がするな……。


 我は木の上に移動し、光魔術で光を屈折させて姿を見えなくする──


「ソアラ?」


 その中にはソアラの姿があった。他にもう1人見た事があるな──


 確か……公爵家の者だったか?


 よく見れば全員見た事がある。

 レオンの誕生パーティの時にウェルとセレナを虐めておった奴らだな。



「授業をサボってまで何か用ですか?」


 ソアラは冷たく言い放つ。それに対して公爵家の者は──


「──俺の妻になれ」


 そう言った。



 ──ふむ、これは告白現場という奴か……。


 こやつは危険人物認定決定である。我のソアラをかすめ取ろうなど不届き千万ッ!



 我はカッ、と目を見開き睨みつける──




 すると、赤い小さい鳥が我の前にやって来た。


(アーク様、殺気を抑えて下さい。バレますよ?)


(ふむ、我は至って平常心である。護衛についておるのは鎖使いのリーリアか……この状況はどうなっておるのだ?)


(いやいや、小動物が逃げ出してますが? これはずばり──愛の告白現場ですッ!)


 そんなもん見ればわかるわいッ!


 我が聞きたいのは何故こうなっておるかなのだが!?



 そんな押し問答をしているとソアラが──


「──お断りします。私には既に婚約者がおりますので」


 ──断りの返事をしていた。


「以前はレオン様の婚約者だったが──今はたかが伯爵家だろ? んだ。この俺の方が幸せにしてやれる」


 ふむ、ソアラは美人であるから──こういう輩はこれからも増えるであろうな。


 貴族というのは見かけしか大事にしないものなのだな……落とし文句がこれとは……経験の浅い我でもドン引きである。


 しかし……ソアラの怒りで大気が揺れておるな……。



「──たかが公爵家が私を幸せに出来るですって? 所詮は顔しか興味がないのでしょう? 私が醜くなった時──貴方は陰口をしていたのは知ってますよ? そんな貴方が幸せにする? 笑わせてくれますね?」


 ソアラの口撃が中々凄いのであるな。

 この雰囲気はあれである──


 そうッ! 悪役令嬢だッ!


 高笑いをしてもおかしくない感じであるな!


 さて、男の反応は──


「──お前ら押さえつけろ」

「「「はい」」」


 逆ギレだった。



 ──────



(リーリアッ!)


(はッ!)


 赤い小鳥姿のリーリアはソアラの近くに行き──


 無数の血で出来た鎖を放出する。



 これはソアラが学園内でを起こして退学にならない処置である。


 ソアラは既に消し炭にするぐらいの魔力を込めて準備しておったからな……。


「「「──!?」」」


 全員が捕縛された後は遠くに放り投げられる。



「ちッ」


 ソアラは忌々しく小鳥姿の舌打ちをしながらリーリアを睨みつけていた。


(アーク様……怖いです……)


(我も怖い……)


 ソアラの目は冷酷そのものである。


 こんな目は初めて見たぞ?



「……そういえば、この小鳥はアーク様がつけてくれた護衛でしたね……仕方ありません……」


 そう呟きながらその場を後にするソアラ。


 リーリアもその後を付いて行った。



 …………これはちゃんと見張っておらんと、いつか事件が起きそうであるな……。



 入学早々、事件が起こるとは……。



 教室に戻るか……。



 その時に我はふと思い付く──


 ──そうだ。クラスに戻る前にあやつらに相談するか……。


 すかさずスレ立てをする。



 1:元魔王

 誰かおるか!?


 2:黄昏のニート

 シュタッ


 3:迷える暇人

 どうした?



 反応してくれたのは2人か──



 4:元魔王

 学園でクラスメイトと仲良くなる秘決を教えてくれ!


 5:黄昏のニート

 僕には荷が重い……そもそも学校行ってたらネットしてない……。



 そういえばニートとは引き篭もりの事であったな……。今、頼れるのは経験豊富そうな迷える暇人のみか……。



 6:迷える暇人

 ……とりあえず話しかけてみたらどうだ?

 呪いの効果がどれほどのものなのかわからない以上はアドバイスのしようが無い。


 7:元魔王

 確かに。では動画を上げておくのでアドバイスを頼む。


 8:迷える暇人

 おうッ!


 9:黄昏のニート

 久しぶりのリアルタイム動画だ!

 僕も勉強させてもらう。



 我は教室へと向かう──



 ◇◇◇



 我が教室の前に行くと楽しそうな話し声が聞こえてきた。


 ウェルの声も聞こえてくる。


 どうやら、我の思惑通りになっておるようだ。


 この雰囲気なら我が入っても大丈夫かもしれぬなッ!




 我は扉を開けて入る──



 シーンッ



 さっきまでの喧騒はなくなり、音が消え去った。



 10:黄昏のニート

 ……マジか……僕が学校に行ってもここまではされないよ?


 11:迷える暇人

 ……王よ……生きてればその内良い事があるさ……。




 諦められたのであるッ!



 …………我の学園生活は苦労しそうであるなッ!










────────────

お読み頂きありがとうございます。

学園生活の始まりS S投稿でした。日常回なのでアフターストーリー的に捉えてもらえると嬉しいです。

きっと別の意味で学園生活を苦労しそうなアークですね!


これを投稿する為だけに完結を一旦外しています。

継続するかどうかは未定ではありますが……はめデレはかなり構想を練らないとけっこう書けない所が多いのでリアルの時間が無い今はけっこう厳しいのが現状ではあります。


気軽に書ける内容ならいくらでもノリで書けるんですがね……こんな内容でも需要あれば良いんですがね……。



追記:SS水着回の『ノーラ』のイラストが完成したので近況にてUP中です。良ければ!

https://kakuyomu.jp/users/tonarinotororo/news/16817139557293022570

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転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だったので、へし折ったらデレたキャラ達に好かれた件について トロ @tonarinotororo

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