焼き鳥が登場する物語

@mitarasi444

第1話

その日、四コマ目である最後の大学の授業が終わり、出されたレポート課題の調べ物をするために図書館に向かおうと決めた。授業があった教室から出て、図書館に向かうために別棟に移ろうと歩いていると友人に声を掛けられた。どうやら飲みの誘いらしい。サークルが18:00までには終わるから、その後にトリテイに行こうと。トリテイというのは、豊富なサイドメニューと焼き鳥、値段の安さ、ボリュームを売りにしているチェーン店の居酒屋だ。僕たちが飲みに行くとなると、決まってはいないのに、何となくトリテイに足を運んでいる。今回も、友達にしてみても、特に理由があった訳じゃないだろうが、図書館での調べ物が終わりトリテイのTwitt○rを見たことで行きたい理由ができた。


友達のサークルが終わるのを待ち、大学近くのトリテイに入り、2人分の焼き鳥とアルコール類を一通り注文し終えた段階で、Twitt○rに更新されたばかりのツイートに載っている動画を友達に見せた。

「何これ」

そのツイートにはトリテイPV゛エンペラーズの活動゛を更新!の文字が動画の上に書かれてある。

「ここのお店のPVらしいよ。お前のこと待ってる間に見つけてさ、見てみたんだけど結構手の込んだ映像で・・・」

友達は自分のスマホをいじりながらふーんとだけ言い返した。

「あ、これ?」

友達が見せてきたスマホの画面には僕と全く同じツイートが開かれている。

「そうそう、それそれ。

最初の部分だけでも見てくんない。」

僕は自分のスマホを机の上に置いて伏せ、友達のスマホ画面に写っているトリテイPV動画を再生した。


ももレッド!

皮ブルー!

ネギまグリーン!

ぼんじりイエロー!

4人合わせて!エンペラーズ!


BGMが流れ、ヒーローが1人ずつポージングを取りながら自分の名前を言っていく。


思いのほか音がでかかったので慌てて音量を下げて、自分たちがぎりぎり聞こえるぐらいの音量に調節した。


街の平和を守り!鶏たちの平和を守る!

そして・・・我らの活動を阻む牛魔王を倒すべく!今日も行く!!


ここで戦隊モノお約束のヒーローの後ろで大爆発がおこり、その爆煙を背景にうっすらと牛魔王とやららしきものが映し出される。

ここで僕は一旦動画を止めた。動画自体は1分ぐらいあり、この後にヒーロー紹介と敵キャラ紹介を兼ねた戦闘シーンがあり、この戦闘シーンの迫力がいち企業で作られたものとは思えないほど迫力があるのだが、最初のこのシーンに僕がトリテイに来たかった理由がある。

「え、止めんの。まだ1分ぐらいあるけど。」

友達はほんの少し驚いた様子で僕を見た。僕は目線をスマホから変えずに、動画を初めからに戻した。

「うん。最初のシーン、僕が特に見せたかったの。」

最初の00:00まで動画を戻すと、初めのヒーローたちの自己紹介の場面まで流してまた一旦とめた。

「この動画見てさ、ちょっと言いたいことがあるんだよね。それをお前にも聞いて欲しくて。まじでトリテイ来るのちょうど良かった。」

そう言って僕はまた動画を再生した。


ももレッド!

皮ブルー!

ネギまグリーン!

ぼんじりイエロー!

4人合わせて!エンペラーズ!


「トリテイのPVだから、全員の名前エンペラーズなんだと思うけど、だとしたら安直すぎない?あと戦隊ヒーローものって5人がセオリーじゃないの。ピンクは?

あと聞いた瞬間思ったけどイエローぼんじりなの?つくねとかヤゲン軟骨とかの王道差し置いてマイナーなぼんじりがイエロー。焼き鳥食べに行く人はわかると思うけど、他の人特に高校生以下の学生聞き馴染みないでしょ。」

友達は僕の喋りをあーとかまあとか軽い相槌を打ちながら聞いていた。そして、友達がなにか喋ろうとした時に注文した焼き鳥とお酒がきた。もものタレと皮の塩、ヤゲン軟骨につくねのタレだ。お酒は2人ともレモンサワー。商品を持ってきてくれた定員さんにありがとうございますと軽くおじきをして、ジョッキを手に持ち乾杯した。

「あと思ったけどネギまってスタメン入りするほど人気かなぁ?」

「それは人によるでしょ。」

その日は動画についての話はそこで終わり、焼き鳥を食べお酒を飲みながら大学のサークルのことを聞いたり、課題の多さや面倒くささに愚痴をこぼすなどして終わった。

また新しい動画が出されないかなとちょっと楽しみにしている。その前に動画の続きの話を友達にまたしたいなと思った。


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