素材4 ステータス異常値

俺はトラックに轢かれた。そして、気づけばこの世界に居た。

「さてと……まずはここがどこかだな」

辺りを見渡すが見覚えのある風景はない。

いや、そもそも俺の知っている世界ではない可能性もある。

まぁ、それならそれで良いか……。

異世界転移したって事は俺にも何かしら特別な力があるかもしれないしな。

そう思った瞬間だった―――

「おぉ! やっと目が覚めたのか!」

目の前に白い髭を生やした爺さんが現れた。

「えっと……」「お前さん名前は?」

「名前? あー、多分ないですけど……」

「名前が無いじゃと!?」

何だよその反応……まるで珍獣を見るかのような目でこっちを見て来るんだけど……。

「ちょっと待っておれ」

爺さんはそう言うと何処かに消えていった。

それから暫くすると爺さんと一緒に数人の大人達がやって来た。

「ほら、これがお前さんのステータスプレートじゃ」

渡された物はカードサイズの板。

そこには色々な文字が書かれている。

【名】

佐藤和真(サトウミサキ)

【種族】

人間 【性別】男 【年齢】

16歳 【職業】冒険者 【レベル】

1 【体力】

15/15 【魔力】

0/0 【攻撃力】

5 【防御力】

4【素早さ】

2 【賢さ】

10 【運】

32 【スキル】

・経験値倍加(Lv10)

・言語理解(New)

【ユニークスキル】

・ナビゲーションシステム

・アイテムボックス(New)

【称号】

・勇者

「……はい?」

なんだこれ? 俺の名前とか書かれているけど全く知らない物ばかりだぞ? それに職業も『冒険者』ってなってるし……。

「あの……これは一体?」

「ん? 知らんのか? これは自分のステータスを確認する事が出来る魔道具じゃよ」……マジですか? いやまぁ確かにこの世界には魔法という物が有るらしいから有り得ない事じゃないんだろうけど……。

「ステータス確認なんてどうやってするんですか?」

「そんな事も知らずに来たと言うのか……」

爺さんは呆れた表情を浮かべると説明を始めた。

どうやらステータスの確認方法は簡単らしく、ただ念じれば良いだけらしい。

ただ、それはあくまで自分が持つ力を知る為の手段であり、別に他人に見せる事はできないそうだ。

まぁ、そうだろうな。

仮に他人のステータスを見れるような便利な能力を持っていたとしても、それを悪用しないとは限らないし……。

「ちなみにどんなスキルを持っているのか教えてくれないかのう?」

「あ、はい。えっとですね……」

俺は自分が持っているスキルの説明をした。

「なるほ。」「はい。だから恐らくこの世界の人達とは違ったスキルを持ってるかと思うんですよね」

「ふむ……なるほど。ところで佐藤君と言ったかな?」

「あ、はい」

「君はこれからどうするつもりかね?」

「どうと言われましても……」

正直何をすればいいのか分からないんだよな。

だっていきなり知らない場所に飛ばされたんだぜ? しかも目の前に居るのは老人と数人の大人だけ。

こんな状況でどうして普通にしてられようか……。

「あー……とりあえず生活出来る場所を探したいと思います」

「住む所を探すんじゃな」

「はい」

「分かった。ではワシの方で用意しよう」

「え!? 良いんですか?」

「構わんよ。ただし条件が一つある」

「条件ですか?」

何だろうか……まさかタダ飯食らいはいかん!とか言われないだろうな?

「うむ。実は今、この国は大きな問題を抱えている」

「問題ですか?」

「魔王軍が動き出したのだ」……はい? 魔王軍ってアレだよな? モンスターを率いて人族を滅ぼそうとする悪い奴等だよな?……あれ? でも待てよ?

「その魔王軍は人間と敵対してるんですよね?」

「ああ。しかし今は違う。魔王軍の目的はこの国を手に入れる事なのだ」

「えぇ!?」「つまりだ。このままだと我々は魔王軍に滅ぼされてしまう」

「そ、それは困ります!」

「分かっておる。そこでだ。佐藤君には冒険者として魔王軍の討伐をして欲しい」

「……」

「どうした?」

「あの……そもそも魔王って本当に存在するんですか?」

「はっはっは。おかしな事を言うのう」

「へ?」

「魔王はちゃんと存在しておる。そして今もこの世界を侵略しようと企んでいる」

「……」

「佐藤君。君のステータスにはレベル1と書いてあった」

「は、はい」

「だが、そのステータスは異常だ。恐らく君なら魔王にも対抗できる筈」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「何かね?」

「あの、俺は元の世界に帰る事は出来ないんですか!?」

「帰る方法は無い訳でも無いが、まず無理じゃろうな……」

「何故です?」

「レベルが上がるにつれて召喚された時に付与されるスキルポイントがあるじゃろ?」

「えっと、確か50Pだった気がしますけど……」

「それを使うとレベルを100まで上げる事ができる。そうなったらこの世界に戻れるかも知れぬ」

「なるほど……」

レベルを上げる事で異世界転移時のスキルを得る事が出来るのか。

もしかすると転移系のスキルも手に入るかも知れない。

「分かりました。俺、頑張ります」

「おお! 引き受けてくれるのか!」

「はい。俺みたいな一般人に出来る事なんて限られていますから……」

「よし、ならば早速準備に取り掛からねばならぬな。付いてきなさい」

こうして俺はこの世界で冒険者となる事になった――

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