額紫陽花

木瓜

額紫陽花

五月雨

海と緑の香りが混ざって

心が少し、馬鹿になる

「雨、ですね」

そう言って、君は

残った花火を見せて、笑った

それがとても可笑しくて

僕も笑って、火を着ける


海辺の公園、僕ら二人

外は、雨が降っている


夜半(よわ)に競った線香花火

強く弾ける輝きは

掴んでいったら消えそうな

君の存在鮮やかにした


紫陽花

綺麗な色が、移り変わって

青色だけじゃ物足りない

「花火が、したい」

僕に届いた

一通のメールを見ながら

君の話に相槌打って

他の誰かに返信打った


夜半に競った線香花火

強く弾ける輝きは

掴んでいったら消えそうな

君の存在朧気にした




屋根で転がる水の音

花火の熱と君の声


いつも通り

気のない返事をした僕に、君は

笑いながら、何かを言ったんだ


いつも通り

気のない返事をした僕の

線香花火が、小さく揺れていた




夜半に競った線香花火

強く弾ける輝きは

掴んでいったら消えそうな

君の存在鮮やかにした

夜半に競った線香花火

強く弾ける輝きは

掴んでいったら消えそうで

消えそうで

消えたんだ


青い、光が落ちる

僕は、一本手に取って

また、花火に火を着けた

「ほら、君の分」

そう言いながら、見上げた先は

何だかやたらと広くって

ーああ

外は、雨が降っていた

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額紫陽花 木瓜 @moka5296

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